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DXとCXって何が違う?「誰のためのDXか」から見えてくるデジタル技術の導入目的

公開日
2020.12.22
更新日
2024.02.17

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、デジタル技術の導入によって製品・サービスやビジネスモデルを変革する点に主眼を置くべきものです。しかしながら、DXについて検討する際に、何らかの技術の導入自体が目的となってしまい、「何のために?」「何を目指して?」という議論が抜け落ちてしまいがちです。 ここでポイントとなるのが「カスタマーエクスペリエンス(CX)」という言葉です。今回は、CXについて説明するとともに、DXとCXの関連性について解きほぐしていきます。

単なるIT化ではないDXの本当の意義とは?

まず、DXの本質的な意味について簡単にご説明します。理解しているようでも、社内でDXについて議論していると目的がずれてしまいがちです。単なるIT化との違いについて、確実に理解しておきましょう。

DXの定義

DXとはDigital Transformationの略語で、直訳すると「デジタルによる変容」となります。もともと学問的な用語でしたが、2010年代を通じてビジネス用語として知られるところとなりました。

経済産業省では、以下の通りDXを定義しています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

このように、製品・サービスやビジネスモデルをデータやデジタル技術によって変革することがDXの定義として理解されています。Transformation(変容)という言葉が示す通り、何かしら大きな変化をデジタルの力によってもたらすことがDXの目的です。

▼DXの定義や意味をより深く知りたい方はこちらもご覧ください
「DX=IT活用」ではない!正しく理解したいDX(デジタル・トランスフォーメーション)とは?意義と推進のポイント

単なるIT化ではない!DXの注意点

DXは製品・サービスやビジネスモデルの変革を目標としており、単なるIT化とは一線を画しています。

「IT化」が何を指すか公的な定義はありませんが、既存のアナログな業務プロセスにIT技術を導入して効率化させるといったニュアンスを含んでいます。単純な例で言うと、手書きで資料を作成していたのが、パソコンおよびアプリケーションを使用するようになったのもIT化の一つです。最終的な成果物(資料)自体は同じでも、作成過程がIT化されたことで劇的に効率化したのです。

また、製品・サービスは同じでも、それを提供する過程がIT化されることもあります。例えば、顧客へのアンケートをハガキで出していたのが、Eメールに置き換わったのもその一つです。 このように、既存の成果物なり製品・サービスなりは残しつつ、その過程を効率化させるのがIT化と言えます。一方、DXは製品・サービスやビジネスモデルの変革を意味しています。したがって、IoTやRPA、AIなど最新技術を社内に導入するだけでは、DXではなくIT化のカテゴリーにとどまると言えます。

▼DXの定義や意味をより深く知りたい方はこちらもご覧ください
「DX=IT活用」ではない!正しく理解したいDX(デジタル・トランスフォーメーション)とは?意義と推進のポイント

DXを進めるうえでのポイント

DX推進のポイントについて、経済産業省は『デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン』(DX推進ガイドライン)において、「DX推進のための経営のあり方、仕組み」「DXを実現するうえで基盤となるITシステムの構築」の2点を挙げています。

ここで重要なのは、ITシステムの構築はもちろん、経営のあり方や仕組みにも言及していることです。特に、経営層がデジタル技術を用いてどのようにビジネスモデルを変革したいのか、という戦略策定が求められます。戦略がないままで「取りあえずAIを使って新しいことをしてほしい」と部下であるマネージャー層に指示を出しても、DXを実現できる可能性はほとんどないでしょう。新しい技術を活用した小規模で試験的なプロジェクトが立ち上がるだけで、全社的なビジネス変革は難しいと思われます。

製品・サービスやビジネスモデルを変革する試みであるだけに、DXを実現するためには経営層の強いリーダーシップと覚悟が必要です。さらに言えば、DXによってどのようなビジネスを形作りたいのかという経営戦略が求められるわけです。

注意したいCXの定義と類似キーワードとの違い

ここからは、CXの定義、UXやCSとの違いについて説明します。DXとの関連を理解するためにも、まずはCXの基礎を押さえましょう。

CXの定義

CX(カスタマーエクスペリエンス)は、直訳すると「顧客体験」となります。「顧客体験価値」と呼ばれることもあり、顧客が製品・サービスを購入したり利用したりする際に受け取る価値全体のことを指します。

顧客が「価値があるなと実感する」のは、必ずしも製品・サービスの値段の安さや使い心地の良さだけではありません。カスタマーサポートに問い合わせたら迅速に分かりやすい答えを返してくれた、店内の雰囲気が良いなど、製品・サービスに付随して感じられる体験による「好ましさ」も価値とみなすことができます。

CXが強調するのは、物質的な価値のみならず「心理的な価値」です。製品・サービスの改善はもちろん、それに付随する各種サポートや購入経路・物流などの便利さも、企業にとってCX改善の手段と考えることができます。

参照:カスタマーエクスペリエンス(CX)とは何か?成功事例や向上のポイントも解説

UX(ユーザーエクスペリエンス)との違いと注意点

UX(ユーザーエクスペリエンス)は、直訳すると「ユーザー(使用者)体験」となります。ユーザーが企業の製品・サービスに触れた際に感じられる価値全般をUXと言うことができます。

CXとよく似た言葉であり、どちらも単一の定義が存在するわけではないので混同してしまいがちですが、UXの方がより製品・サービスの機能そのものに近いと考えられます。例えば、購入後のサポート体制の良しあしはCXに含まれることが多い一方で、UXに含まれることはほとんどありません。

CS(カスタマーサティスファクション)との違いと注意点

CS(カスタマーサティスファクション)とは、日本語で「顧客満足」あるいは「顧客満足度」のことを指します。顧客の満足度を高め、それを継続させることが売上の向上につながると考えられることから、企業において重視されるようになりました。営業やマーケティングの世界では、アンケート調査によってCSを数値化することでモニタリングが行われています。

CXとの直接的な関連性があるわけではありませんが、CXを数値化したのがCSとして表面化すると捉えることもできます。

CXの向上は部署横断的な課題

CXを向上させるには、商品に付随する周辺サービスや各種サポートまで含めて網羅的に改善する必要があります。ただし、全てを同時期に改善するのは難しいため、アンケートやヒアリングによって顧客が「何に価値を感じているか」「何を問題視しているか」を具体的に言語化し、CX向上に効果的と思われる施策に絞って優先順位をつけて部分的に実行していくことになるでしょう。

ここでポイントとなるのは、顧客と直接接する機会が多い部署以外もCX向上に取り組む必要があるということです。顧客が製品・サービスに付随するさまざまな要素に価値や問題意識を感じているのであれば、営業やマーケティングのような部署のみならず、広報や情報システムなどの部署も含め、「部署横断的な課題としてCXを意識」することが、これから求められる志向となるでしょう。

手段と目的を混同しない!DXとCXの関連性

では、DXとCXの関係について整理します。特に、DXがCX向上など何らかの目的を明確に意識して推進されるべきプロジェクトである点については、忘れないようにしておきましょう。

テクノロジー導入は目的ではない!CX向上とDX

DXとCXは、手段と目的の関係にあると言えます。

DX推進のためには、ITシステムの再構築や新たなテクノロジー(AIやRPAなど)の導入などが行われます。しかし、こうした施策そのものは目的ではなく、何らかの目的を実現するための手段であることを忘れてはいけません。

この際の目的の一つとして考えられるのが、CXの向上です。製品・サービスを一新したりビジネスモデルを変革したりすることで、顧客が製品・サービスやそれに付随する各種サポートを体験する際に感じられる価値の総量を大きくしなければなりません。CXが向上しないのにテクノロジーを導入しても、それは顧客の思いとは関係のない独り善がりな施策にしかなりません。

DXだけではない!CX向上の手段とは?

CX向上の手段は、必ずしもDXだけではありません。DXによって製品・サービスの姿を一変させることがCX向上につながる一方、製品・サービスによってはデジタルテクノロジー以外でもCXを向上させられる可能性があります。

例えば、商品購入後の問い合わせ窓口となるカスタマーサポートの質もCXに関連しています。問い合わせ方法が電話だけで、その電話もなかなかつながらず、つながっても的を射ない返答しか得られないようであれば、顧客の製品・サービスや企業に対するイメージは悪くなるでしょう。それに対して、問い合わせ方法が電話だけでなく、メールやチャットなど複数あり、迅速に明確な返答を得られるようであれば、信頼感は高まります。

このように、CX向上を目的とするのであれば、DXだけにとらわれるべきではありません。CXの現状を詳しく分析して、その改善方法を広く検討する必要があります。

まとめ

DXは、データやデジタル技術の活用によって製品・サービスやビジネスモデルを変革する取り組みです。それに対し、CXは顧客が製品・サービスや企業と接する中で感じる体験価値全般を指しています。

誰のためのDXか。
DX推進によって、CXの向上につなげることが重要です。DXを検討する際は、CXの向上といった目的に合致しているか判断することが求められるでしょう。

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