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【後編】経済産業省はこれから企業のDXをどう促していくのか?最新資料から読み解く政府の方針

公開日
2021.09.09
更新日
2024.02.17

前編に引き続き、経済産業省が2020年末に公表したDX推進に関する最新資料(「デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会WG1 全体報告書」)の内容を紹介します。

この記事の内容を把握することで、企業がDXを推進する際の助けになるリソースとして政府がどのようなものを提供しているのか、そして政府はどのようにDXを推進すれば成果を創出しやすいと考えているのかが理解できます。DXに携わる担当者のみならず、幅広いビジネスパーソンの方に目を通していただければ幸いです。

経営者がDX推進に向けて持つべき5つのマインドとは?

資料で「経営者への提言」として記載されている5つのマインドについて紹介します。DX推進に不可欠な要素ばかりであり、経営者のみならず全ステークホルダーが共有すべき内容です。

価値創造の源泉の変化に気づく

世界的なIT企業が金融やヘルスケアなど多様な業界へ参入していることからも分かるとおり、デジタルを活用した新たなビジネスモデルが出現しています。従来の企業がこうした企業に取って代わられ、競争力を奪われるリスクがあるのです。

センサー、IoT、AIなどにより、データの収集範囲が拡大しています。膨大なデータを活用して新たな価値を創出することがこれからの社会では必須であり、経営者はこうした変化に気づかなければいけません。

現状に危機感を持つ

DXに成功した企業に取って代わられるリスクを理解すれば、自ずと危機感が出てくるはずです。コロナ禍のような環境変化を受けても事業継続するには、場所の制約が少なく柔軟かつスピーディーな業務変更ができるような基盤整備が求められます。

資料は、現状に危機感を持って変革に乗り出す「勇気」を経営者に対して求めています。

行動に移す

DX推進の第一歩として、ゴールを決めてロードマップを描くよう主張しています。ビジョンやビジネス戦略、IT施策戦略とロードマップを策定することで、投資対効果の見極めや施策の優先順位検討が可能となります。

また、「アジャイルマインドで常に変革していくべき」とも主張しています。市場の変化へスピーディーに対応するためにも、一度変革プロジェクトを回して終わりとするのではなく、マインド・組織文化・ビジネスプロセス・製品やサービスに至るまで、アジャイルに変革し続けなければならないのです。

対話の重要性を認識する

ステークホルダー間の対話の中心に経営者がいるため、「対話しなければDXは進まない」と経営者自身が認識しなければ対話も進みません。DX推進にはリーダーシップが求められるため、経営者が将来のビジネスを見据えたうえで取り組みの方向性となるビジョンを示すべきなのです。

IT部門や事業部門、ベンダーなどに丸投げするのではなく、全部門で取り組むべく対話に力を入れることが大切です。そのためにも、まずはビジョンを社内外に向けて発信しなければなりません。

社外とも積極的に連携する

資料では、社内に不足する必要スキルを社外から補完することが「DXにおける近道」であるとしています。経営層の間にITへの理解度が高まらないのであれば、社外の専門家を活用して、経営層としてのIT理解度を高めることが必要不可欠です。情報処理推進機構(IPA)の調査では、IT業務の分かる役員の比率が高いほどDXの取組成果が出る傾向にあることが分かっています。

社外と連携する際でも、やはり丸投げは避けなければなりません。ビジョンに沿ってプロジェクトを推進するべきであり、外部への丸投げではビジョンの実現が困難だからです。

経営層がDX推進に向けて理解すべきDXの「Why・What・How」とは?

資料では、経営層の課題として、DXに対する理解度の低さが挙げられています。ワーキンググループのまとめた「対話に向けた検討ポイント集」の内容を簡単にまとめます。

DXで実現できる企業の姿とは?

DXに取り組むにあたって認識すべき事項として、以下の点が説明されています。

①企業を取り巻く状況変化

社会やビジネスモデルにデジタルの力で変化が起きていること、そしてDXに取り組む企業が増えていることを示し、経営者の危機感とDXの必要性への理解を促しています。

②DX後の姿の定義

DX後の姿として、「デジタルエンタープライズ(DE)」という企業像を示しています。これは、ビジネス戦略とITシステムを迅速かつ柔軟に対応させていく企業のことであり、質量ともに増加しているデータを活用してデジタルビジネスを拡大させていく企業のことです。

DEはビジネス判断にデータを活用するため、ITの知識やビジョンを持つ必要があります。また、IT部門と密に連携することが重要です。

③DXの定義と実施における勘所

「DX=システム導入」という誤解を解消し、経営者のビジョンありきの取り組みであることを訴求しています。ビジネスとITの両面で戦略を立てることが重要であると指摘しています。

④DXにおける既存システム(≒技術的負債)の取り扱い指針と勘所

DX推進にあたって、必ずしも既存システムを全面的に破壊する必要がないこと、段階的に見直していくことでDXを推進するべきであるとのメッセージが提示されています。

何をすればDX実現と言えるのか?

データ活用について説明した内容では、以下の要素を記載しています。

①DXにおけるデータ活用

今後のビジネスではデータ活用が必要不可欠であることを説明しています。また「既にデータを使っている」という経営者の反論を想定して、そもそも何をすればデータ活用と呼べるのか、具体的なステップを記載しています。

簡単に要約すると、このステップは「目的策定→データ管理・運用体制づくり→データの収集→データの精製・加工→データの蓄積→データの分析・利用」です。活用用途を想定して、価値のないデータを捨てるなど、管理コストの増大を防ぐことの大切さも言及しています。

②データ活用ができている企業になるための勘所

データ活用ができている企業を「データドリブン企業」と呼んでいます。データドリブン企業となるためにPoC(Proof of Concept)の重要性が強調されており、ビジネスの試算やユーザー/市場の反応を検証事項としてビジネス判断に用いるアウトプットが出せるかどうかという視点を持ち、実現性を確認するよう求めています。

ただし、PoCから先に進んで組織的な成功へ結びつける難しさにも触れています。経営層によるゴールイメージの明確化とPoCの振り返り、全社最適の視点を持つ重要さなど、PoCから先に進めるためにはいくつかポイントがあります。

③データ活用が可能な状態になるためのプロセス

データ活用のために、その前段階のプロセスが重要とされています。特に、データ精製(クレンジングや名寄せ)・加工フェーズのデータを目的に合わせて適切な形に変換することの重要性が指摘されています。

DXのためにITシステム企画は何を検討すべきか?

ITシステム企画の考え方について、3つの点から説明しています。

①ビジネス戦略からITシステム企画へ落とし込む

ビジネス戦略からITシステムを企画することの重要性が記載されています。「AIを使って新しいことができないか」ではなく、「この製品を利用する顧客へ新たな価値を提供したい」というビジネスニーズが先にあり、これにデジタル技術が結びつくことでITシステム企画が成り立つのです。

②技術的負債の解消による投資確保

既存システムを見直す際の考え方が提示されています。既存システムの全体像を把握し、そこに潜む課題を特定したうえで、競争領域(顧客の要求の変化が早い業務システム)と非競争領域(顧客の要求に影響されない業務システム)に既存システムを仕分ける方法が有効です。

③テーマ別ケーススタディ

ITシステム企画のケーススタディとして、「コールセンター業務における顧客接点強化」「消費者ニーズの変化に合わせてビジネスモデルの変革に取り組む」「システム運用保守コストの削減」の3つの事例が取り上げられています。

まとめ

経営者に気づきをもたらし、各ステークホルダー間の対話を促すための資料として、研究会の報告書は有益なものです。DXの概要から具体的なケーススタディまで押さえており、関係者をDX推進プロジェクトに巻き込む際の参考資料としても役立てられます。

今回の報告書は経営者に向けられた提言ではあるものの、経営者以外が読んでも示唆を得られるものです。DXに関係する、あるいは興味を持つビジネスパーソンであれば目を通す価値はあるでしょう。

DXの本質について改めて知りたい方は、こちらの記事もぜひご一読ください。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?今さら聞けない意味・定義・事例をわかりやすく解説【2024年最新版】

参考

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