シリーズ:マーケティングの意思決定とデータ
第1回:マーケティングとDX

今回から、全6回の予定で、マーケティング領域での意思決定とデータとの関わりについて私の考えを述べようと考えています。 第1回となる今回は、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)をテーマとする本メディアの中で、この話題を選んだ理由を述べ、本連載の位置付けを明らかにしていきます。

デジタルマーケティングはDXの一丁目一番地

私は、マーケティング、特にデジタルマーケティングを「ビジネスのDXの一丁目一番地」と考えています。
これは非常に単純な話です。DXの提唱者とされるエリック・ストルターマン教授が情報システム研究の論文の中で述べた通り、DXを「デジタル技術によって引き起こされる人の生活のあらゆる面での変化」と捉えると、ビジネスにおけるDXは「ビジネス領域での変化」と言い換えられます。
そしてその変化は、「顧客を起点とした変化」となります。なぜなら、ビジネスは「顧客のニーズ」から出発するものだからです。
そして、その「ビジネス領域での変化」を企業が主体的に起こそうとするなら、その第一歩は、デジタル技術によって繋がっている「顧客の理解」となるでしょう。 そして、顧客を何で理解するか、となればその最有力候補は、デジタルマーケティングによって得られた「顧客の行動データ」となります。

顧客の行動データ分析の重要性

例えば、私の所属するブレインパッドでは、ビジネスでのDXの対象領域を、以下の5つに分類しています。

  1. オペレーションのデジタル化
  2. 接点チャネルのデジタル化
  3. 意思決定のデジタル化
  4. サービス/製品のデジタル化
  5. 新規デジタルビジネスの創出

これらはいずれも企業側の変化に関わるものですが、すべてにおいて、顧客理解を誤っては成功しないことは一目瞭然でしょう。

そしてまた、これらに関わる顧客理解が、デジタルマーケティングで得た顧客の行動データを分析することから始まることも、お分かりいただけるのではないでしょうか。当然ながら、このような変化の先にある顧客とのコミュニケーションのほとんどは、インターネットを介して非対面で行われます。当然、非対面のコミュニケーションでは、顧客を感覚的に理解することは不可能であり、その唯一の方法は、「そこで得られたデータを分析することだけ」なのです。

マーケティングの意思決定とデータとの関わり

ここまでで、私がデジタルマーケティングをビジネスのDXの一丁目一番地と考えている理由、今回の話題の領域をマーケティングにした理由をご理解いただけたかと思います。

ここからは、マーケティングの中でも、意思決定とデータとの関わりを話題とする理由についてお話します。
マーケティング領域でのデジタル技術による変化のうち、ベストプラクティスとしてビジネスメディアにとりあげられるものの多くは、業務の効率化(自動化)か、顧客コミュニケーションの多様化のどちらかではないでしょうか。
先程のDX5領域で言えば、①のオペレーションのデジタル化と②の接点チャネルのデジタル化にあたります。一方で、その背景にある意思決定のデジタル技術による変化については、あまりきちんと取り上げられることがないように思います。せいぜい、デジタル広告に対する反応の分析の結果で、広告費の配分を最適化したような事例くらいでしょうか。
しかし本来、マーケティングにおいてはまずこの意思決定こそが、デジタル技術により最も大きく変化しているものであるはずです。なぜなら、マーケティングでの意思決定は、全てのマーケターの顧客理解に基づくものであるはずであり、先程述べた通り、デジタル技術を用いた非対面のコミュニケーションでは、従来とは異なる、顧客の行動データの分析に基づく顧客理解が試みられているはずだからです。にも関わらず、それをきちんと取り上げた記事も書籍も少ない現状の背景には、データ分析に対する大きな誤解があるのではないか、というのが私の考えです。

データ分析に対する誤解

私は、博士課程時代の研究から、今も所属するブレインパッド(現在は、電通クロスブレインに出向中 )、さらには昨年まで兼業していた大学准教授業に至るまで、およそ20年にわたって、データ分析に携わってきました。
その過程で、専門知識を持っている人から、ほとんど持ちあわせない人まで、幅広い層に対して、それを理解してもらう努力を繰り返してきました。そこで驚いたのが、多くの人が、データを分析すれば唯一正しい選択が導き出されるため、意思決定が不要になる、と考えているという現実です。
(おそらくほとんどの専門家も同じ意見でしょうが)私からすれば、統計は「意思決定のための道具」です。機械学習の技術をビジネスに応用するには、学習の前提となる様々なことを意思決定しなければなりません。そしてそれらの意思決定は、決まりきった約束事に基づいて行われるだけというような簡単なものでは決してないのです。

次回予告

以上が今回、私が本連載にあたり、マーケティング領域の中でも意思決定とデータとの関係を話題とした理由となります。
DXをテーマとする本メディアの中では、少々違和感のある話題と思われたかもしれませんが、ご理解いただけましたでしょうか。
長々と決意表明のようなことを書いてしまって、読者の方にはあまり目新しい発見をご提供できなかったかもしれません。今後は、これまでの私の経験を活かし、読者の皆様のお役に立てるような、内容豊富な記事を書いていきたいと思います。ちなみに次回、連載の第二回は、「意思決定とKPI」というタイトルで、今更ながら知っておくと役に立つ、KPIの真の活用方法に迫ります。
ぜひご期待下さい。

シリーズ:マーケティングの意思決定とデータ

第1回:マーケティングとDX
第2回:マーケティングの意思決定とKPI
第3回:マーケティングの意思決定とKPI

第4回:消費者理解のためのデータ活用

Thank you for reading.

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WRITER執筆者プロフィール

株式会社電通クロスブレイン

取締役業務執行担当
佐藤洋行

九州大学院修了(農学博士)。大学院でリモートセンシング画像解析を研究。2008年ブレインパッド入社。2014~17年、Qubitalデータサイエンス取締役(兼任)。プロジェクトマネージャー、データサイエンティストとして幅広いプロジェクトに携わる。2016~19年多摩大学経営学部経営情報学科准教授兼任、後に客員教授。現在はブレインパッドより出向し、株式会社電通クロスブレイン取締役執行役員担当。著書『データサイエンティスト養成読本』(共著、技術評論社)、『AI時代の意思決定とデータサイエンス』(単著、多摩大学出版会)。
※電通クロスブレインについて詳細はこちらをご覧ください。 (https://dxb.co.jp/)

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