コロナ渦の東京五輪のマーケットリサーチ【外国の意識の変化】

 我々ブレインパッドはビッグデータを解析し、ビジネスや社会に役立てていくことをビジョンとして掲げています。
その対象は、既存の企業内にあるデータに限らず膨大な量が増え続けるソーシャルメディア上のデータも含まれます。
当社はこの領域を、世界最大手の一社であるBrandwatch社とのパートナーシップで進めているのですが、いわゆる「ソーシャル・リスニング」と言われるソーシャルメディア上に残された生活者の声を集めて分析する行為だけでは分からないこともあり、課題となっていました。
そこでBrandwatch社では、能動的にアンケートを掛けることで、ソーシャルリスニングで得た気づきを確認し、確信に変えることがが可能になる新しいサーベイ機能を新サービスとして開発し(Qriouslyといいます)、海外では既に提供が開始されています。

 当社としても、これを日本で紹介する準備として、その活用ノウハウ蓄積に取り組んでいます。

先日紹介した「新型コロナウイルスに伴う活動自粛に関するマーケットリサーチ ~自粛生活が引き起こす人々の意識の変化~」もその一環です。
前回は、調査対象を日本に絞って行いましたが、今回は、逆に海外の声のみを集めるというチャレンジをしました。アンケートという手段を使うことで、今回の中国のようにSNSでの生活者の声が集め難い(あるいはその声に偏りが想定される)エリアでの一定量の声を取れるというメリットもあります。

 せっかくやる以上、日本にとって参考になる調査になればと思い、延期されたオリパラの来年開催にむけて、「沈静化した日本の新型コロナの感染状況拡大状況が海外に伝わっているのか?」という問題意識で取り組んだのですが、生憎、調査実施が日本の感染再拡大の時期と重なってしまい調査結果は評価が難しいものにはなってしまいました。
ただ、それでも一定の示唆はあるかと思い公開させていただきます。

 

 

 
 

世界における新型コロナの影響

 新型コロナウイルスの感染が拡大し、先進国から新興国、途上国にまで広がっています。多くの国々が入国制限を緩和するなか、これから感染のピークを迎えようとしている国も多く、依然として不透明な状況です。

 大規模イベントの開催については、感染状況に応じ、中止、延期、規模縮小の措置がとられ、東京五輪も2021年に延期されました。1年での再準備には、感染対策、競技体制の調整、選手・観客の安全、スポンサーの意向などを考慮する必要があります。政治的・経済的にもインパクトもある、東京五輪という重要なスポーツの祭典の開催に対して多くの課題があります。

 オリンピック・パラリンピックはスポーツの祭典として、その目的は世界平和と国家間の相互理解の促進です。東京五輪についても、この目的にそって、海外の意識や意見を理解することが、今後の決定を下すために重要なポイントになります。今回の調査では、GDPも総人口も日本より大きいアメリカと中国という二つの大国に焦点を充て、意識調査を実施しました。 

 

Brandwatch Qriouslyについて

 マーケットリサーチではBrandwatch Qriously を活用しました(※2)

 この仕組みはデジタル時代の市場調査で、スマートフォンのアプリ内の広告スペースを使用して調査を行うことで、世界20億人の潜在的な回答者にリーチでき、以下のような特徴があります。

  • 「広告ネットワークを介して、リアルタイムで調査を実施し、結果を確認」
  • 「アプリ広告を介して調査し入手困難な市場・国からもデータを収集が可能」
  • 「回答へのインセンティブが発生しないため、調査結果に偏りがでない」  
  • 「回答者のエリアをから回答内容の関係性などの調査が簡単に行える」

 ※2:現在、Qriouslyサービスの提供はおこなっておりません。

 

Brandwatch Qriouslyの調査収集方法について

 Qriouslyでは、リアルタイムに回答を収集することができます。以下は、中国での調査をモニタリングしている動画となります。

 回答を求める広告がアプリに表示されていることが黄色のマークで表示され、回答済みは赤色のマークになり、濃いほど回答者が多くなっています。
このように、中国では、北京、香港、上海、成都のエリアが多くなっていることが分かり、収集後はエリア別での集計も可能です。

 

アンケートの内容について

Brandwatch Qriouslyのサーベイについては以下のような条件で行われました。

  • 対象:18歳以上
  • 場所:アメリカ、中国
  • サンプル数:2051(※3)
  • 設問数10問(うち3問は年齢、性別、職業などの属性に関する質問)
  • 期間は2020年7月2日~7月20日までの結果です。

Qriouslyでは機能として、米国国勢調査局のデータベース(International Data Base)を用い、性別と年齢からアンケート結果のウェイトバックを行う事ができます。今回はこの機能を使いアメリカ、及び中国全体の推定を行いました。

このアンケートの収集中に、アメリカ・日本ともに感染が拡大し、アメリカや東京でも再度新規感染者が増加し、状況が大きく変化しています。今回はそのような状況の中でアンケートを収集し、アメリカと中国における日本や東京オリンピックに対する印象を、Brandwatch Qriouslyを活用して調査を行いました。

※3 Qriouslyは個人が特定できる情報の収集などは行っておりません。

 

アンケート結果

今回のアンケートを行った各設問の回答は以下のような内容となります。

 

質問:日本全体の新型コロナウィルスの感染状況についてあなたの認識を教えてください。

日本の死亡率や感染率は、アジア圏で比較してみると最も低いわけではないですが、感染者数の絶対数は先進国の中でも少なくなっています。3月の頃には「東京は第2のニューヨークになる」 と言われましたが、それほど劇的な感染者・死者数は増加せず、この状況は「日本モデル」が海外からも注目されているという報道が流れていました。

そのような状況において、この両国からみる日本のパンデミックの深刻さのイメージは以下のようになっています。

この結果を見ると両国とも「非常に深刻(7)」という回答がアメリカで、37.9%、中国で29.2% と最も多くなっています。「深刻ではない(1~2)」の回答は、アメリカが16.9%、中国が27.4%であることから、中国よりもアメリカの方が日本の感染状況を深刻に考えている傾向にあると思われます。アンケート収集期間中にも日々、7万人以上の新規感染者が発生しているアメリカ国民の心理的な影響があるとも考えらます。日本は新規感染者数が日々500名前後であったとしてもかなり深刻な印象を持たれているのかもしれません。

日本の感染状況を把握するための情報量や日本に対するイメージの差が、影響していると考えられ、年齢・世代別にみると以下のような結果となりました。

年齢・世代別に確認するとアメリカ及び中国は、共に高齢者の方が日本の感染状況を深刻に考えている結果がでています。

以下のグラフは、55~64歳と65歳以上に焦点をあてています。

 

 

 

 

 

 

中国の高齢者においては、「深刻ではない(1)」と「非常に深刻(7)」の2極化されています。アメリカでは、世代別で似たような傾向がありますが、中国では世代別にその印象が大きく異なっており、認識の違いがあるようです。

 

質問:主に何から日本の感染状況の情報を取得しましたか?

現在はメディアが多様化する中で、様々な媒体から情報を得ることができますが、両国が日本の新型コロナの感染状況に関する情報の入手先を調査しました。

 

 

 

 

 

 

 

アメリカでは36.2%がテレビから情報収集しています。中国ではテレビが突出してはおらずソーシャルメディア、オンラインニュースからも情報を収集していることがわかります。「知らない」の回答は、中国よりアメリカの方が多くなっていることから、中国の方が、日本の情報をより多く収集し興味を持っていると思われます。

以下のグラフではこの情報の入手先と、感染状況の深刻さを掛け合わせて見ました。

 

 

 

 

 

 

両国とも、感染状況を深刻と捉えているのは、テレビ、新聞/雑誌、政府・研究機関からの発表から情報を得た層であると考えられます。感染状況を深刻ではないと捉えている層は、ソーシャルメディアやネットニュースから情報を得ていました。

テレビのような情報ソースは状況を劇的に伝えたり、報道機関の報道姿勢などの影響を受けている可能性があります。逆に深刻ではないと考えている人は、ソーシャルメディアのようなフィルターを通さない情報を直接目にしたり、ネットニュースは複数のサイトへのアクセスが簡易的なため、多面的に情報を収集して、比較されていると考えられます。

 

質問:東京五輪は2021年に開催して欲しい?

新型コロナウィルスの感染収束が見通せないなか、東京五輪は来年の夏に延期が決定しました。これにより、先日行われた東京都知事選では、東京五輪の開催の是非を巡り開催、再延期、中止が論点としていました。

朝日新聞社が6月下旬に東京都民を対象に実施した世論調査(電話)で、来年夏に延期された東京五輪開催の是非について、都民の意見を聞くと、6割が「再延期または中止」を望んでいるという世論調査の結果が出ていました。

この都民向けの質問に対し、アメリカ、中国における開催の是非を質問した結果が以下となります。

 

 

 

 

 

 

両国とも、半数近くの回答者が開催を望んでいることが分かりました。また、「開催してほしくない」と答えた回答者は1~2割であったため、基本的に「開催してほしい」という意見が多いことが分かります。

 

質問:東京五輪のための日本への旅行に興味はありますか

東京五輪の経済効果は30兆円を超えるとも言われ、特にインバウンド消費を狙う企業にとっては、開催の動向が気になるところです。

今回とは異なる調査機関のため、直接的な比較はできませんが、株式会社日本政策投資銀行(DBJ)と公益財団法人日本交通公社(JTBF)の共同調査の「DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査(2019年度版)」では、国・地域別での東京2020大会の訪日観戦意欲を調査されていました。

この調査に対し、弊社がBrandwatch Qriouslyで調査したアメリカと中国における現在の訪日観戦意欲は以下のようになりました。

 

 

 

 

 

 

 

訪日観戦意欲に関する「はい」「多分」の回答者は、アメリカでは21.0%、中国では58.4%となりました。前述のように異なる調査の結果であるため、直接的な比較は出来ませんが、アメリカの下落が著しいものになっているのかもしれません。

 

質問:日本で行う東京五輪は開催するにあたって配慮すべきことはなんですか?

東京五輪についてはアメリカと中国の約半数が開催を望んでいる一方で、訪日観戦に前向きな回答はアメリカは約20%、中国は約60%の結果となりました。

東京五輪の開催については、IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長は、東京オリンピックの開催について無観客での開催に否定的な意見を示しております。その様な中で、東京五輪の開催にあたり配慮すべきことが何かを調査した結果が以下となります。 

 

 

 

 

 

 

両国とも、選手の感染対策、観客の感染対策、混雑の解消などが上位に出てくる結果となりました。開催地の日本としては、感染対策(選手と観客の両方面で)を配慮すべきだということが伺えます。アメリカでは「現地入りする選手の感染対策」の回答が多く、中国は「観客の感染対策」の回答が多くなっています。これは前述の「訪日観戦意欲」の調査結果から、「選手を送り込む意識のアメリカ」、「自分が観戦しに行く中国」と考えられて納得がいきます。

 

質問:2021年に日本に少しでも旅行したいと思いますか?(訪日観戦について、回答が いいえ を回答した方のみに表示されます。)

新型コロナウイルスのワクチンの早期完成を目指して開発が進んでいますが、臨床試験の完了までには時間がかかる見通しです。しかし、各国でとられていた渡航制限措置が、緩和の方向へと動き始めています。必ずしも東京五輪の観戦を目的としていなくても、普通の旅行で日本に来る意識があるのかを調査しました。

 

 

 

 

 

やはり、東京五輪の訪日観戦で「いいえ」と答えた層は、一般的な日本への旅行についても、アメリカは約92.2%、中国は82.8% がその意向がありませんでした。そもそも日本に旅行をするという意識が高い層がどの程度までいるかという点はありますが、割合から見ると日本の旅行に対しては厳しい目が向けられているかもしれません。

しかし人口を考えると、アメリカは約3.29億人、中国は約14.41億人(Wikipediaより)となっており、このような状況でも絶対数を考えるとそれなりの人数がいると思われます。

 

質問:2021年 日本に旅行をしたとしたら何がしたいですか?

前述の通り、割合としては少なくても、日本の旅行について興味を持っている層は絶対数としては多く、新型コロナの状況によってはさらなるインバウンド需要が見込めるかもしれません。その際に、日本への旅行に期待することは何かを聞いてみました。

 

 

 

 

 

両国とも、日本食や日本のカルチャーに触れることに興味を示しています。中国は「グルメ・食事」「温泉・スパ」「ショッピング」など、具体的な活動をイメージし、楽しみにしています。しかし、アメリカは「観光」「特に決まっていない」という層が多くなっています。このことからも、アメリカでは日本での観光についてのイメージが漠然としており、具体的な情報が正しく届いていないようにも思われます。このような状況の国に日本の魅力や正しい情報を発信・広報を積極的にしていくべきだと考えられます。

”Withコロナ時代”に向けた訪日インバウンドを考える

これまで日本は、官民を挙げてインバウンド市場の拡大に注力してきました。2016年から訪日外国人数は年々増加し、2020年の東京五輪には更に増加すると期待が高まっていました。またポスト五輪では、リピーターとしての訪日外国人が増えるのか、それとも熱が冷めて減少してしまうのか議論されてきました。

今回の調査結果では、少なくとも両国共に東京五輪の開催を望んでいることが分かりました。また来日観戦についてアメリカは消極的であり、逆に中国は積極的な回答でした。その理由は、コロナウィルスの感染に関する認識の違いではないかと考えられます。日本の感染状況を深刻だと捉えている層はテレビ・新聞/雑誌などからの情報獲得が多くなっており、この認識の違いの一つの要因かもしれません。

オリンピック・パラリンピックは単なるスポーツの祭典という位置づけだけではなく、海外からの日本に対する興味・関心を向けさせる良い機会です。そのオリンピック・パラリンピックの放送の主たる媒体はテレビであり、このようなメディアを通じて日本の安全性・魅力を認識してもらうのも効果的かもしれません。このような広報活動も訪日客を増やすための良い方法とも考えらえます。

国や媒体によって情報のとらわれ方が異なるため、ペイドメディア(広告)やアーンドメディア(ソーシャル)のどちらでも正しい情報を発信していく必要があることがわかりました。東京五輪及び日本の安全性に関する広報を行い、日本の状況について各国に正しい理解を発信することが、”Withコロナ”・”Afterコロナ”時代のインバウンド回復に繋がると思います。

ブレインパッドとBrandwatchは、リアルタイムのサーベイによる情報収集と、ソーシャルメディアの膨大なデータ解析により、重要な意思決定のための情報提供を今後も行っていきたいと考えております。
 
 
 

 

 

マーケティングリサーチツールBrandwatchについて

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・利用シーン
・事例

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Brandwatchは主なソーシャルネットワークとの公式パートナーです。

【コロナ市場調査】活動自粛に関するマーケットリサーチ

日本における新型コロナの影響

 全国に発令されていた非常事態宣言が5月31日まで再延長されることとなりました。
都道府県では引き続き強い警戒態勢を引き、その他の地域では感染人数を注視しつつ一定緩和を容認するなど出口戦略を模索している状況です。
国民には「新しい生活様式」を提示して感染者の増加を抑えつつ、経済のインパクトを最小限に抑えるための試行錯誤が行われています。

 我々ブレインパッドはビッグデータを解析し、ビジネスや社会に役立てていくことをビジョンとして掲げています。
今回はパートナーである Brandwatch とともに、サーベイ機能である Brandwatch Qriously と ソーシャルメディア分析機能である Brandwatch Consumer Research
(※1)を活用して、市場の声の収集と分析を行いました。

※1:Brandwatch Cnsumer Researchは Brandwatch が提唱する 「Digita Consumer Intelligence(DCI)」の概念をベースにデータエンジニアリングや人工知能(AI)、社内の市場調査やブランド戦略のエキスパートを有するユニークな企業で、10億もの消費者の声をデータとして構造化し、意味のある知見に変換して企業に提供しています。(Brandwatchの未来:Digital Consumer Intelligence(DCI))

 

 

 
 

Brandwatch Qriouslyについて

 マーケットリサーチではBrandwatch Qriously を活用しました(※2)
この仕組みはデジタル時代の市場調査で、スマートフォンのアプリ内の広告スペースを使用して調査を行うことで、世界 20億人の潜在的な回答者にリーチでき、以下のような特徴があります。

  • 「広告ネットワークを介して、リアルタイムで調査を実施し、結果を確認」
  • 「アプリ広告を介して調査し入手困難な市場・国からもデータを収集が可能」
  • 「回答へのインセンティブが発生しないため、調査結果に偏りがでない」  
  • 「回答者のエリアをから回答内容の関係性などの調査が簡単に行える」

※2:現在、Qriouslyサービスの提供はおこなっておりません。

 

アンケートの内容について

 Brandwatch Qriouslyのサーベイについては以下のような条件で行われました。

  • 対象:18歳以上
  • 場所:日本国内
  • サンプル数:1753サンプル(※3)
  • 設問数10問(うち4問は年齢、性別、職業、家族構成などの属性に関する質問)
  • 期間は2020年4月30日~5月10日までの結果です。

 Qriouslyでは機能として、米国国勢調査局のデータベース(International Data Base)を用い、性別と年齢からアンケート結果のウェイトバックを行う事ができます。
今回はこの機能を使い日本全国の推定を行いました。

※3 Qriouslyは個人が特定できる情報の収集などは行っておりません。

 

アンケート結果

 今回のアンケートを行った各設問の回答は以下のような内容となります。

質問:平日(出勤日)の自粛状況を教えてください。

 全国で非常事態宣言が発令され、多くの企業が国や自治体から在宅勤務の促進を強く要請されています。
そのような状況において平日の自粛は以下のようになっています。

 


この結果を見ると「毎日自粛している」という回答が一番多くなっており、次いで「自粛していない」が19%「週に3日以上在宅」が17%と続きます。
このような状況であっても19%が「自粛をしていない」という点では、ある意味驚きでもありますが、仕事内容などによっては避けられない場合もありそうです。

 Brandwatch Consumer Research を使い、Twitter に投稿される位置情報アプリ(Swarm)から発信される投稿を調べると、週末に出かけた際の投稿が多いようです。
非常事態宣言が発令されてからは投稿数が急減しています。
しかしながら3月末の3連休でかなりの投稿があり、桜の開花などに伴い、直前の数週間と比較して多くの外出があったようです。
この時点での ”ゆるみ” があったと言えそうです。

 

質問:あなたの自粛理由を教えてください 。

 日本は諸外国と異なり、個人の行動を罰則付きで制限するような法律を持っていません。
あくまでも強く自粛を要請するという事にとどまっています。このことからも自主的に行動を制限する理由が重要です。
自粛の理由は様々と思われますが、以下の回答を見ると「自分が感染しないため」が多く、その次は「社会に感染を広げないため」「家族が感染しないため」となっています。

 

 政府や会社からの指示、マスコミの影響などは少数派であり、その感染のリスクを理解し感染を防ぐために自粛に協力していると思われます。

 Brandwatchを利用し、自粛に関するキーワード( 自粛 NOT (RT OR “http”) )でTwitterの検索を行いました。
投稿を見ると、自粛の理由としては『自分、家族、子供に感染が及ばないよう自粛』という意見が多く見られました。
家族を守ることが大きな理由となっているようです。

 以下は投稿から、キーワード、絵文字、フレーズのトピック抽出の結果です。

 

 ”自粛警察” というフレーズがトピッククラウドに出ています。
SNS上での投稿を調査すると、『自分勝手な人々が許せない』という気持ちからストレスが発生している傾向もあるようです。
公園の砂場にカッターの刃を置くなどの悪質ないたずらや、ガイドラインに沿って営業中の店舗のガラスを割るなど、行き過ぎた自粛強要に波紋が広がっています。
このような行動を ”自粛警察” と呼び、自重を呼びかける投稿が多くなっていました。

 その様な中、以下の様に今回の新型コロナの状況下での行動を4つのセグメントに分けて分析をしている投稿も見られ、「リツイート」と「いいね」を合わせて15万以上の賛同を得られていました。
多くの人が、新型コロナに対する自粛の姿勢、またマスコミの報道の姿勢など共感が集まっているようです。

 

質問:あなたの自粛はどのくらい続いていますか?最も近しい項目を選択ください。

 非常事態宣言が強制的ではない日本において、その自粛のタイミングも企業や個人に任されています。
在宅勤務の準備の整った企業や個人、休校となった学生から自粛生活をスタートしています。
これらがより早い段階からスタートできていれば、感染の広がりにも影響を及ぼすと考えられます。

 

 回答では「1ヶ月以上」が最も多くなっており、非常事態宣言が発令後に在宅をスタートし、外部との接触がかなり減っていると考えられます。

 「1週間程度」「数日間」と自粛期間が極めて短い層も14%ほどいることが分かり、全国民が自粛を同時にスタートするのは難しいこともわかります。

 

質問:今の自粛生活にストレスを感じていますか?

 今回の非常事態宣言により、自粛生活の不便さ、経済的な不安、物品の不足で大きなストレスがかかっていると考えられます。
この質問ではそのようなストレス度合いを質問しています。

 

 長い自粛生活で約14%が「非常に強いストレス」、45%が「ストレスを感じる」と、全体の約60%がストレスを感じているようです。
逆に32%は「ストレスは無い」、5%が「非常にストレスが減った」、4%が「ストレスが減った」と回答していて、合わせると約40%がストレスもなく、むしろ減っている層もいることが分かります。

 ストレスは職業によって大きく変わると思われるため、職業ごとの構成比を算出しました。

 

 職業によってストレスの具合が異なっており、特に「主婦」については12%が「非常に強くストレスを感じる」、60%が「ストレスを感じる」と回答し、72%がストレスを感じている状況です。
自粛生活で家事が増えたり、買い物が不自由になるなどネガティブな影響を受けているようです。

 ワードクラウドではニュースなどの目や耳から入ってくる情報が不安・ストレスの原因でもあるようです。
家族との関係(コロナDV、コロナ離婚、一人になれる時間がない)や、自粛が子供に及ぼす影響などの不安要素が多く報道されているため、その点がストレスを増やしている可能性があるようです。

 

 以下のようにSNSでストレスに関する投稿は現在も増加傾向のままです。

 

キーワード (ストレス NOT (RT OR “http”))で検索をした結果。

 

 生活の中で明確な自粛の適用範囲やルールがわからず、周囲との認識齟齬をストレスに感じているようです。このような状況で『子供を連れての外出』『子供を外で遊ばせる』という点で議論が起こりました。
主婦や子供などにも適切な環境やルールを設け、周知・アナウンスすることにより、余計な衝突を避けることができるかもしれません。

 

 

質問:自粛生活をあとどのくらい続けられますか?

 一般的なインフルエンザと違い、新型コロナ(COVID-19)はワクチンがまだ開発されていません。
感染のリスクが絶えず続いており、決定的な解決策が無いという状況下において、自粛生活がどこまで継続できるかを聞いてみました。

 回答の状況は「1ヶ月以上」「1ヶ月程度」が59%となっていて、自粛生活に慣れてきているとも考えられます。
逆に「もう限界」「1週間程度」「数日」という極端に短い層の回答も22%あり、限界に近づきつつある層もあるようです。

 

 自粛が続けられるかは職業によって大きく違うと想定されるため、質問「職業を教えてください。最も近しい項目を選択ください。」と掛け合わせてみると、以下のような回答となりました。

 

 「会社役員/経営者」「会社員」「学生」などについては「1ヶ月程度」「1ヶ月以上」の割合が60%以上と多くなっており、収入・生活が安定している層は自粛状況に耐えられる状況であると思われます。
しかしながら「自営業」「パート・アルバイト」「専業主婦(夫)」については「2週間程度」以下で回答している層が多く、長くは続けられないという状況が見られます。

 

自粛解除後、楽しみにしていることを教えてください。

 日常で楽しみにしていることを制限されるという事も大きなストレスになると考えられます。
自粛解除後に最も楽しみにしていることを聞いてみました。

 

 「旅行/帰省」、「外食」、「飲み会」、「エクササイズ・トレーニング」、「ショッピング」などが上位に出てくる結果となりました。

 世代別に何を楽しみにしているかを見てみると、世代によって異なる結果となっています。

 

 29歳以下の若い世代は「ライブ、観劇、コンサート」「カラオケ」などが多く、40代以上の世代は「旅行・帰省」「外食」「ショッピング」が多くなっており、70代以上の世代では「エクササイズ・トレーニング」が18%を占め、アクティブな活動を求めているようです。
新型コロナの影響が大きいフィットネス・宿泊業・旅行業ではアクティブなシニア層が戻ってくることが重要であると思われます。

 

 この点をSNSで調べてみると、旅行・ライブ・イベントなどのキーワードが出てきています。
また飲食店での食事などを楽しみにしている投稿が見られるため、このような業種での再開を欲しているようです。
その反面、自粛期間終了後には生活のために仕事を再開し、仕事量を増やすなどの投稿も多くみられました。

 

自粛でストレスにさらされた主婦層

主婦層のストレスの増大

 アンケートの結果から見ると、一番、ストレスにさらされたのは主婦層であると言えそうです。
TwitterのBIOから「主婦(夫)」と「会社員」を抽出し、ストレスに関する投稿を2019年12月29日の週を100%とした場合に、どれだけ変化があったかを比較してみました。
当初は両方ともストレス関連の投稿が伸びていますが、
3月の三連休明けに小池東京都知事が会見を開き、「緩み」への牽制をされたり、非常事態宣言後(4月6日~)、より強い自粛を求められたあたりから主婦によるストレスに関する投稿が一気に増えており、在宅勤務・休校で家事の増加や買物の制限が影響しているかもしれません。
そんな状況も最近になり、徐々に落ち着いてきているようです。

 

 主婦はアフターコロナに何をする?

 アンケート項目にあった、「自粛解除後、楽しみにしていることを教えてください。」を主婦に絞ってみると以下のようになりました。

 主婦層でも30歳未満は「旅行・帰省」「ショッピング」「カラオケ」などで、30代は「旅行」、40代~60代では「ショッピング」「外食」、70歳以上では「運動・トレーニング」などをしたいと考えているようです。
全体的には「旅行・帰省」「ショッピング」「外食」が多くなっています。

 

 

 この調査をもとに、Brandwatch Consumer Researchで、主婦層のオーディエンスに限定し、「旅行 AND 行きたい」で抽出した場合の結果が以下となりました。

 

 キーワードを見ると「海外」・「ハワイ」・「田舎」・「温泉」・「ドライブ」・「食べ」などのキーワードが出てきています。
また、「思い出」・「友達」・「旦那」などのキーワードも出てきているため、新型コロナが一段落したら、仲のいい友人や家族とのんびりと旅行や帰省をしたいという気持ちが表れているようです。
色々と大変だった時期を乗り越えた後には、このような家族サービスをしてみてはいかがでしょうか。

 

「COVID-19」がもたらすであろう今後の新しい生活

 多くの市民が自粛生活を耐えつつも、生活を取り戻していくことを強く要望していると思います。
一方、自粛生活を『1ヶ月程度』、『1か月以上』続けられるという回答をみると、経済的な安定を得られるような状況であれば、テレワーク、リモートワークなどが新たな働き方として定着していく可能性も考えられます。
”アフターコロナ”の生活は、”ビフォアーコロナ”と同じ生活ではないかもしれません。

 

 史上初のオリンピック延期、非常事態宣言やロックダウンによる生活の制限、経済収縮と株価低迷、ワクチンが無い状況でのウィルスとの戦いといった未曽有の事態に世界中が直面しています。
世界中で400万人以上が感染し、28万人以上が死亡しているという状況下での意思決定が、今後の政治・経済の方向性に大きな影響を及ぼしていくことは間違いありません。

 

 ブレインパッドとBrandwatchは、リアルタイムのサーベイによる情報収集と、ソーシャルメディアの膨大なビッグデータの解析により、重要な意思決定のための情報提供を今後も行っていきたいと考えております。
 
 
 

 

 

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