企業研修 エヌ・ティ・ティ・コムウエア様
顧客のDX支援に向け、データサイエンスのスキルが必須に
デジタル技術を駆使して、ビジネスにこれまでにない価値を生み出す―。デジタルトランスフォーメーション(DX)があらゆる企業のミッションとなる中、それに向けた提案をSIerに期待する企業が増えている。
特に、「データ活用」は、SIerへの期待が最も高まっている領域の1つといえるだろう。高度な活用を実現するには、統計学の知識や分析ツールの操作方法など、専門的なスキルが必要だからだ。プロの支援のもと、他社に先駆けて高度なデータ活用を具現化し、成果につなげたいと考える企業は多い。
一方、この状況はSIer側にも新たなチャレンジを求めている。
顧客の期待に応えるには、データサイエンスに精通した人材を潤沢に揃える必要がある。ところが、豊富な知識と経験を持つデータサイエンティストは、今や市場で引く手あまた。獲得することは容易ではない。また、社内で育てようにも、データ活用人材の育て方について十分な知見を持つSIerは少ないだろう。特に、研修については人事部が主導するケースが多くある。高度に専門的な研修プログラムをどのように作成し、どのようなサイクルで回すべきかが課題である。
そこで今、様々なSIerが注目しているのが、データサイエンス領域に特化した専門企業の研修プログラムだ。今回は、NTTグループのSIerであるNTTコムウェアの事例を基に、その概要や効果などを紹介する。
SIerが選んだ「データサイエンティスト入門研修」とは
「システムインテグレータを超え、ビジネスインテグレータへ」というビジョンのもと、顧客のDXを支援するNTTコムウェア。NTTグループの大規模システムを開発、運用してきた高い技術力と豊富なプロジェクト経験をベースに、NTTグループ各社をはじめとする顧客の要望に応えている。
同社が現在、注力しているのが、データサイエンスを駆使したITサービスの提供だ。組織体制も整備し、2018年7月には新規ビジネス創出を担うビジネスインキュベーション本部内に「データサイエンス推進室」を新設。SIサービスやSaaS型サービスの開発を担う部門をデータサイエンスの面から支援することをミッションとして、様々な活動を展開している。
「そのため、データサイエンス推進室のメンバーは、全員が漏れなくデータサイエンスの知見を有していることはもちろん、ビジネス領域にも通じている必要があります」とNTTコムウェアの西村恒人氏は紹介する。
この考え方に基づき、データサイエンス推進室では、データサイエンスを専門分野とする外部パートナーの研修サービスを積極的に活用している。そもそも同社では、希望に合わせて任意の外部研修が受けられる制度を全社員に提供してきた。そこで、データサイエンス推進室のメンバーが過去に受講した経験から、役立ちそうな研修をピックアップ。人材育成計画を主幹する総務人事部に、全社員向けの研修への導入を提案したという。
「選んだのは、ブレインパッドの『データサイエンティスト入門研修』です。私も受講しましたが、他社の入門研修にはない、実務での活用を講義と演習の双方に反映させた非常に実践的な内容で、講師も含めてとても質が高いと感じました。新人をスピーディに戦力化したり、社員のスキルを平準化したりするために役立つと考えたのです」と西村氏は言う。
また、同社の総務人事部は現在、技術系領域の人材育成テーマとして「DXを推進できる人材」を掲げている。中でも「データサイエンス」は柱になる知見の1つと位置付けており、データサイエンス推進室からの提案は、まさにその方向性とも合致した。
「もちろん、社員を講師に立てて研修を実施するケースもあります。ただ、データサイエンスのような専門性の高い領域は技術の詳細や最新の業界動向をキャッチアップする意味で、信頼のおける外部パートナーに委ねる場合もあります。そこで、ブレインパッドの研修を導入することにしました」と同社 総務人事部の山田 泰平氏は語る。
演習に力点を置いた研修で、業務に役立つ実践的内容を学ぶ
ブレインパッドは、データサイエンティスト入門研修として6つのプログラムを用意している。そのうち、NTTコムウェアが選んだのは、①「現場で活かせる統計解析実践」②「機械学習による問題解決実践」③「Pythonではじめるディープラーニング実践:画像解析入門」の3つ。いずれもエンジニア向けの技術研修として中~上級の内容に設定されているものだ(図1)。
図1 ●ブレインパッドが提供するデータ活用人材育成サービスの全体像経営層や一般社員を対象にデータリテラシー向上を支援する講座から、データサイエンティスト養成のための講座までをラインアップ。NTTコムウェアは、このうち右端の列の公開講座を複数採用している。
「私は①と②を受講しました。受講前にはデータ分析のテクニックを学ぶものと思いこんでいましたが、実際は『課題の設定方法』や『仮説をどう立てるか』といった考え方から学ぶことができました。また、どんなグラフを選べば可視化した際に伝わりやすいかなど、業務に直結した内容も多く、データサイエンスに関する基礎力が獲得できたと実感しています」とNTTコムウェアの岩下 侑輝顕氏は語る。
2019年に入社した岩下氏は、新入社員研修でシステム開発の基礎を学んだのちブレインパッドの研修に参加した。まさに、社員が実務に携わる際の導入をスムーズ化するために活用した好例といえる。受講後は、日々の業務でも課題を体系的にまとめ、適切に組み立てる習慣がついたという。
このように、単に知識を習得するだけでなく、業務の実践に役立つスキルを習得できる点が、ブレインパッドの研修の大きな特徴だ。
「課題解決のフレームワークである『PPDAC(Problem、Plan、Data、Analysis、Conclusion)の考え方を最初に学び、基本的な理論とプログラミングを学習した上で課題演習に移ります。この演習でPPDACサイクルを回す方法などを実際に体験することで、実業務に生かせるようにしています」と、ブレインパッドの奥園 朋実氏は説明する。
他社のエンジニアとの意見交換で、新たな気付きも得られる
また今回NTTコムウェアが既存の公開講座に参加する方式を取った理由の1つは、様々な企業のエンジニアと共に研修を受けることで、社内にはない刺激を受けられると考えたからだ。
「データサイエンティスト入門研修には、様々な業界から異なる職種の方が参加されます。エンジニアの方もいれば、データを使った新事業の企画を担当する方もいます。様々な業務に携わる人が3~4人のグループを組んで演習に取り組み、意見を交換する中で、新たな気付きを得ることができるのは我々が提供している公開講座ならではの体験価値だと考えています」とブレインパッドの摂待 太崇氏は言う。
オープンイノベーションの必要性が叫ばれる昨今、ITベンダーにとって、顧客との“共創”に基づくビジネスが重要度を増している。研修の場で「立場・視点の異なる者同士が共通の課題に取り組む」という体験ができることは、非常に意義深いことといえるだろう。
ブレインパッドの研修を含めた人材育成の取り組みにより、社内スキル認定制度であるComCP(Comware Certified Professional)へ2019年に新たに追加したデータサイエンティストの取得者は順調に増加中(図2)。社内システムへのデータ活用関連機能の実装や、顧客に提供する新サービスに予測機能を実装する際の支援活動などを随時進めているという。
今後もNTTコムウェアは、データサイエンティスト入門研修への参加をエンジニアに対して継続的に促していく。これによって、データサイエンス領域の人員拡充、サービス開発の支援力強化につなげていく計画だ。
「参加講座のバリエーションを増やし、エンジニア以外の社員にも裾野を広げていきます。今やデータサイエンスにかかわる基礎スキルは、決して特別な人のものではなく、あらゆるビジネスパーソンに不可欠な素養となりつつあります。ブレインパッドの研修を、今後も活用できればと考えています」とNTTコムウェアの小林 和恵氏は語る。
データサイエンスという強力な武器を、多様なSIサービスの高度化につなげるNTTコムウェア。ブレインパッドが、その取り組みの一端を支えている。
図2 ●ComCP(Comware Certified Professional)の全体像ITスキル標準(ITSS)やiコンピテンシ ディクショナリ(iCD)に準拠しつつ、NTTコムウェアのビジネスプロセスを踏まえて人材タイプを定義している
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