04Rtoasterの「レコメンド機能」は何が違う?機械×人で最適な顧客体験を実現

2020年10月、「Rtoaster(アールトースター)」は大幅な機能強化に伴って従来の“プライベートDMP”から“データから価値を引き出すプラットフォーム”へと進化を遂げました。

今年でリリースから15年を迎えるRtoasterには現在さまざまなモジュールが実装されていますが、その中でも核となる機能として多くのお客様に使われてきたのが「レコメンド機能」です。

今回はこの機能に深く関わってきたエンジニアの柳原さんを中心に、前回から引き続き事業責任者の安田さんやエンジニアの篠原さんにも加わってもらいながら、レコメンド機能の誕生秘話から特徴について聞いていきます。

開発者プロフィール

株式会社ブレインパッド

プロダクトビジネス本部長
安田誠

分析サービスの営業部門、自社製品の開発部門責任者を歴任。予測、最適化、機械学習技術を軸として、さまざまな企業に分析サービス、マーケティング関連のプロダクト・ソリューションを提供している。

株式会社ブレインパッド

プロダクト開発部 エンジニアリングマネジャー
柳原淳宏

自社プロダクトRtoaster、L2Mixerの開発を経て、現在はConomiのプロダクトマネージャー兼開発を担当。レコメンド/マッチング技術を中心に企画、提案から開発、チューニングまで数多くの案件に従事。

株式会社ブレインパッド

プロダクト開発部 プロダクト統括エンジニアリングマネジャー
篠原聖

自社プロダクトRtoasterの立ち上げ時からインフラやアプリケーションの設計・開発に従事。現在もRtoaster action+を担当、プレイングマネジャーとして活躍している。

顧客のオーダーから生まれたレコメンド機能

── 2009年に「Rtoaster」に加わったレコメンド機能ですが、まずはこの機能が生まれた経緯から教えてください

安田 : もともとはあるレコード販売ショップの案件で、自動レコメンドの軸となるアルゴリズムを開発したのが最初ですね。ユーザーをセグメントごとに分割して、データを学習してレコメンドリストを生成するといった形で。

当時はコンピューティングリソースとの戦いというか、限られた時間で計算しなければならなくてかなり苦労しながらも、何とかいい結果が出せたんです。そこで以前からRtoasterで存在していたルールベースのオファリングエンジンと合体させる形で、2009年に自動レコメンド機能を搭載しました

柳原 : そのお客様の特徴としては、実店舗の入り口に設置されている端末を使って会員さんがいろいろな情報を調べられるようになっていたんですね。ECサイトだけでなくその端末上でも商品のレコメンドなどに取り組みたいという目的のもと、プロジェクトを進めていました。

最初はサイト上で企画している商品を出しやすくするとか、購買後に次回購入する際におすすめの商品をレコメンドするようなアルゴリズムの開発から始まって。しだいにヘビーユーザー向け、ライトユーザー向けのような形でセグメントを区切ってコンテンツを出し分けたり、アーティストやジャンルといったコンテキストに重みをつけたりといったことに挑戦するようになりました。

単にアルゴリズムで何を表現するというよりは、どのようなコンテキストの時に、どんなデータソースやアルゴリズムを使うと、上手く商品とユーザーの距離を埋められるのか。そんな話をしていたのが面白くて印象に残っています。

── それが2009年のことだと考えると、なかなかチャレンジングな取り組みですよね

柳原 :  以前から「KXEN InfiniteInsight」というブレインパッドの分析ツールを導入されていた関係で、そこで分析した結果をレコメンドエンジンのロジックに応用するということができました。実際にお客様のオフィスにもデータサイエンティストと一緒に訪問して話をさせていただく機会もあり、その点はブレインパッドならではの特徴が出せたのではないかなと思っています。

── 最初は1つの案件としてレコメンドエンジンの開発をされていたと思うのですが、そこからRtoasterの1機能として組み込むことになったのにはどのような背景があったのでしょうか?

柳原 :  1つは、やっぱりエンジン単体で売っていくのは難しかったということ。お客様側でそれを活かすための仕組み(レコメンドエンジンの結果を表示する仕組み)を用意してもらうことのハードルが高かったんです

でもブレインパッドはRtoasterをコンテンツの「発射台」として持っていて、外部のレコメンドリストを取り込める機能もあった。レコメンドエンジンとRtoasterを組み合わせるとゴールデンコンビになるんじゃないかと考えたわけです。実際にRtoasterのオプションとして自動レコメンド機能を提供することで、お客さんが増えて知見もどんどん蓄積されていくというプロダクトにとってよい循環が生まれました。

篠原 :  実は自動レコメンド機能がRtoasterに合流することになった1つのきっかけが、カタログ通販事業を運営されているとあるお客様なんですよね。当時そのお客様は他の企業から「自動でレコメンドリストを作れますよ」と提案を受けていたそうです。その時、自社のマーケターが作ったリストと他社様の自動レコメンドリストで精度を戦わせてみようとなり、実際にやってみたそうです。すると、結果は他社様のリストよりもマーケターの方々が作られたリストの方が圧勝したんですよね。

この時はマーケターの方が作られたリストをRtoasterが取り込み「発射台」として使っていただく形でした。しかしこの経験をきっかけに、自分たちは「発射台」となるインターフェースを持っていて、しかも自動レコメンド機能にも自信を持っている。それなら1つのプロダクトに統合して提供していくことにしようという話になりました。

計算コストの高い良質なレコメンドを商用化

── そこからレコメンドエンジンもどんどんアップデートされていくわけですね 

柳原 :  実際にそのお客様に協力いただいたおかげで、レコメンド機能の軸となる部分が磨かれていきました。たとえば閲覧(次に見られやすいものをベースにレコメンド)と購買(同じものは買わないので関連商品などが出やすいように調整)でレコメンドのロジックを変えてみたり。実はこの案件を通じて1番よかったパラメーターをRtoasterのデフォルト設定として活用させていただいてます。

── レコメンド機能を磨いていく上で、特にこだわっていたポイントなどはありますか?

柳原 :   当時多くの会社で使われていたのは「協調フィルタリング」という手法を軸としたものでした。簡単に説明すると「自分と近い行動をとっている人は、おそらく自分と似たような興味・関心があるはずだ」という仮説に基づいて、集合知を利用しながら推奨するアイテムを導き出すようなロジックです。

たとえば目の前にいるAさんと似たようなユーザーの集団を見つけて、そのグループ内で流行っているものの中からまだAさんが見ていない商品をレコメンドするようなイメージです。このやり方は割と簡単に実現できるのですが、ボトルネックになりやすいのがグループの境目に位置するような人たち。本来はクラスタ1とクラスタ2の真ん中あたりに位置しているのにたまたまクラスタ1に分類された結果、レコメンドされる商品があまりピンとこなかったりする。

一方でブレインパッドが採用しているグラフ理論は、その人を中心に近郊にある商品や近くに位置するユーザーの行動などを基に計算していくようなロジックになっているため、どんな人であっても極端な結果にならないのが強みです。

その代わりに計算コストが余計にかかるので、商用の製品に載せていく上でいかに計算コストを下げていくか?いい感じにグラフを分割していくか?といった裏側の部分は技術的な難易度も高くてチャレンジングでした。

ここは説明が難しいのですができるだけ正しくお伝えしますね。弊社が採用しているグラフ理論も同じ「協調フィルタリング」という手法の実装なのでアプローチ自体は同様です。しかしRtoasterでは内部での推論に関する実装の部分が、他とは一味違うのです。

── 使っているアルゴリズムが違う、ということ以外にはいかがでしょう?

柳原 :  実際に普段自分たちがユーザーとしてさまざまなサイトを使っている中で「これはちょっと不快だよね」と思ったことなども話しながら、レコメンド機能がユーザー体験の向上にも繋がるかどうかは意識しました

たとえば前回も話題に上がった周期性レコメンドの例だと、コピー用紙のように定期的にリピートする商材に関して次に必要になる時期に合わせてリマインドしてあげられれば、ユーザーにとっても便利ですよね。でもそれが常にレコメンドされてくると、ちょっとイライラする。だから必要な期間以外はレコメンドの対象から外れて、また次の消費期限が近づいたタイミングで表示をされるようにしたりとか。その辺りは工夫の余地が大きくて面白いんです。

顧客のポリシーを汲み取る、商用レコメンドに必要なこと

──  お話を伺っているとレコメンドの精度の高さが重要であることは間違いがない一方で、そのような判断に至った理由をマーケターがきちんと解釈できたり、調整ができたりなど他にも大事なポイントがありそうですね

柳原 :  最終的に「どのようにお客さんに訴求するか」を決める際には、ビジネス的なコンテキストもすごく大事だと思うんです。レコメンドエンジンのアルゴリズムと、ビジネスをする上でのお客様のポリシーのようなものの2つの要件を満たすことで、初めてお客様向けにレコメンドエンジンを提供できるのではないかなと。

たとえばRtoasterはビジネスフィルターが充実していて、「ファッションサイトで男性に対して女性向けの下着をレコメンドしない」といったことが可能です。仮にユーザーと商品の相関が高かったとしても、企業のポリシーに合わせてフィルターを使いながら柔軟に調整できるんです。

市販のレコメンドツールの中には計算の精度は高いものの、企業が実運用する上でコントロールが効かなかったりするものもある。実際にお客様たちも「なぜこの商品がレコメンドされているのか」をすごく気にされるんですね。ビジネスで使う上では、説明できるアルゴリズムであることが求められるんです。

だからこそ、他のシーンにおいても何か判断をする際には「ビジネス的に求められるものは何か」を考えながら意思決定をしています。

安田 : そういう意味では、自動レコメンドはアルゴリズムだけをひたすら追求するというよりも、ビジネス側の要件も重視しながら、お客様のリクエストに合わせて機能開発をしてきたというのが特徴かもしれない。

お客様にヒアリングをして、最もビジネスにフィットするものを提供したいという思いは強いし、今後もそこはブラさないでやっていきたいですよね。

Rtoasterのレコメンド機能は、機械と人の力を組み合わせて、最適な顧客体験を実現するという点が特徴であり、強みだと言えるでしょう。

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