
「化粧品のECは、実際にビジネスチャンスはある?」
「せっかく立ち上げた化粧品ECの売上が伸びないが、どうすればいい?」
競争が激化する化粧品EC市場において、これらの疑問は切実な問いと考えられます。
結論からいえば、日本の化粧品EC市場には、まだ伸びしろが見られ、成功可能性は十分にあると考えられます。しかしながら、時代に合わせたデジタル戦略と、化粧品ECならではの課題解決が欠かせません。

本記事では、化粧品EC市場の最新動向から特有の課題、効果的なマーケティング戦略、そして成功企業の事例まで網羅的に解説します。
競争を勝ち抜き、化粧品ECで成功を収めるために本記事をご活用ください。
目次
- 化粧品EC市場の最新動向
- 化粧品ECで捉えたい3つの成長チャンス
- 化粧品ECが抱える3つの課題と具体的な解決策
- マーケティング戦略で化粧品ECの集客販売力を強化する手法
- 化粧品メーカーのEC成功事例から学ぶ実践的なポイント
- まとめ
1. 化粧品EC市場の最新動向

まずは化粧品EC市場の最新動向から確認しましょう。
1. 化粧品EC市場は年率5%以上で成長し1兆円を突破見込み
2. EC化率はまだ伸びしろが残っている状況
1-1. 化粧品EC市場は年率5%以上で成長し1兆円を突破見込み
日本の化粧品EC市場は堅調な成長を続けています。
経済産業省の調査によれば、2022年の化粧品(医薬品含む)のEC市場規模は9,191億円(前年比+7.48%)、2023年には約9,709億円(前年比+5.64%)と成長し、2025年には1兆円を突破する見込みです。

出典:経済産業省「令和5年度電子商取引に関する市場調査報告書」を加工
化粧品EC市場は引き続き成長が見込まれる有望市場であり、デジタル技術の進化とともにさらなる拡大が期待されます。
1-2. EC化率はまだ伸びしろが残っている状況
一方、EC化率(市場全体に占めるEC売上割合)に目を向けてみると、化粧品(医薬品含む)のEC化率は8.57%となっています。

出典:経済産業省「令和5年度電子商取引に関する市場調査報告書」を加工
全体の9.38%と比較して低く、生活家電等(42.88%)や生活雑貨等(31.54%)、衣類・服飾雑貨等(22.88%)と比較すると、EC化率が大幅に低いことがわかります。
仮に今後、化粧品全体の市場が飽和状態に陥ったとしても、「EC化」という観点では、大きな伸びしろが残されているといえます。
2. 化粧品ECで捉えたい3つの成長チャンス

日本における化粧品ECは2000年頃から成長してきた市場であり、これから参入するうえでは、“2020年代ならではの成長チャンス” をしっかり捉える必要があります。以下のポイントを確認しましょう。
1. 化粧品購入のデジタルシフト
2. メイクアップと基礎化粧品で異なる購買心理
3. D2Cモデルの躍進とデータ活用
2-1. 化粧品購入のデジタルシフト
新型コロナ以降、多くの業界でデジタルシフトが急速に進みました。化粧品購入においても、オンライン化のトレンドが強く続いています。
【化粧品購入のデジタルシフト】
・情報収集プロセス:現代の消費者は店頭に行く前にSNSやレビューサイト、美容系YouTubeなどで情報収集を行うのが一般的になりました。購入検討の最初のステップがデジタルへシフトし、口コミサイト(@cosme)や美容アプリの影響力が増しています。
・オムニチャネル行動:「店舗で試してECで購入」や「ECで情報収集して店舗で購入」など、チャネルの垣根を越えた購買行動が一般化しています。消費者は目的に応じて最適なチャネルを使い分け、各タッチポイント(顧客接点)での体験の一貫性を求めるようになりました。
・モバイルファースト:スマートフォンでの購入比率が高まっており、「ながら見」「スキマ時間での買物」が増加しています。ECサイトのモバイル最適化は必須となり、UI/UXの重要性が高まっています。
・SNS連動購買:InstagramやTikTokなどSNS上の投稿から直接購入に至る「ソーシャルコマース」が拡大しています。インフルエンサーによる紹介・推奨が購買意思決定に大きな影響を与え、とくに15〜29歳は購入の決め手となる情報源としてSNSが最も高いという調査結果もあります(出典:消費者庁「令和6年版消費者白書」)。

出典:消費者庁「令和6年版消費者白書」を加工
化粧品EC参入の際には、上記のような消費者行動の変化に対応し、各タッチポイントでの体験を最適化することが重要です。従来の店舗中心のマーケティングではなく、デジタルを起点とした統合的なアプローチが必要です。
2-2. メイクアップと基礎化粧品で異なる購買心理
化粧品ECで扱う商品のうち、メイクアップ化粧品(例:ファンデーション・口紅・チークなど)と基礎化粧品(例:化粧水・乳液・美容液など)では消費者心理や販売戦略に違いがあります。
【カテゴリ別の特性】
・メイクアップ化粧品:色味や仕上がりの印象が重要です。「発色がイメージと違った」「自分の肌ではすぐ化粧崩れした」といったミスマッチを避けるため、購入前に試したいニーズが高い商品です。高価格帯コスメほど「失敗したくない」心理が強く、店頭で実際に試用しBA(美容部員)からアドバイスを受けたいという要望が強い傾向があります。
・基礎化粧品:日常的に使う消耗品であり、効果や肌との相性が重視されます。使った瞬間の感触は良くても「何日間か続けて使ったら、合わなかった」というリスクがあります。サンプルやトライアルセットなどで一定期間、自宅で試したいニーズが高い商品です。また、効果実感には時間がかかるため、口コミやエビデンスを重視する傾向があります。
このように、カテゴリごとに異なる消費者ニーズを理解し、それぞれに最適化された販売戦略を展開することが売上向上につながります。端的にいえば、メイクは「色のマッチングや崩れにくさ」、基礎化粧品は「肌との相性と効果実感」が鍵となります。
2-3. D2Cモデルの躍進とデータ活用
近年、化粧品業界ではD2C(Direct to Consumer)モデルが目覚ましい成長を遂げています。自社ECを主軸に据え、データを巧みに活用するブランドが成功を収めています。
【D2Cブランドの成功戦略】
・直販モデルの徹底:たとえばファンケルやオルビスはカタログ通販から発展した自社ECが主力で、オンラインで直接顧客とつながる仕組みを確立しています。自社ECを中心に据え、顧客データを一元管理する精度の高いマーケティングが可能です。また、仲介者のない直接取引により、高い利益率と価格競争力を両立しています。
・データドリブンなCRM活用:D2C企業は会員制度やアプリを通じて蓄積した購買履歴・顧客情報を分析し、最適な商品提案やプロモーションに活かしています。一人ひとりに合った商品提案でリピーターを増やし、購買サイクルの予測や離反リスクの早期発見など、データ分析により効率的なマーケティングを実現しています。
・ストーリーテリングによるブランド構築:D2Cブランドは、その世界観をSNSやコミュニティで共有しファン顧客を育成しています。製品の機能性や効果を伝えるだけでなく、ブランドの価値観や哲学をダイレクトに伝え、価値を創出しています。
D2Cモデルの強みは顧客との直接対話とデータの蓄積にあります。従来の卸売モデルでは得られなかった消費者インサイトを活用し、迅速なサービス改良や商品開発を実現することが、化粧品EC成功への道を開きます。
3. 化粧品ECが抱える3つの課題と具体的な解決策

一方、化粧品ECには実店舗と比較して特有の課題があり、これらを解決することで競争優位性を確立できます。以下3つのポイントを確認しましょう。
1. 「試したい」ニーズに応える工夫
2. 実店舗の接客や利便性に勝る体験価値
3. 競争激化の中での差別化
3-1. 「試したい」ニーズに応える工夫
実店舗と比較してECでは「化粧品を試せない」ことによる購買ハードルが大きな課題です。
色味・質感・香りがオンラインでは伝わりにくく、ユーザーは「自分の肌に合うか実際に試さなければ判断できない」と感じます。
【試せないハードルを下げる施策アイデア】
・サンプル提供やトライアルキットの販売:希望者にサンプルパウチを無料で送付したり、初回限定のお試しセットを安価で販売したりすれば、実物を手に取る機会を作れます。実際に自分の肌で試せることで本品転換率が高まります。商品によっては、本品購入時に返品保証を付ける方法も効果的です。
・AIパーソナライズ機能の活用:肌質、肌悩み、好みのタイプなどをオンライン診断し、最適な商品をレコメンドするシステムを導入します。「自分に合うものを選んでもらえる」安心感を提供でき、専門家のアドバイスに近い体験が可能です。診断精度を高め、ユーザーの特性に合った提案ができれば顧客満足度向上につながります。
・詳細な商品情報とクリエイティブの充実:テクスチャー動画や使用感を詳しく伝える説明、複数人のモデルでの発色サンプル、使用前後の効果比較などのコンテンツを充実させます。使用動画やクローズアップ写真など、店頭で商品を見るのと同等以上の情報量を提供することが重要です。
・バーチャルメイクサービスの導入:AI・AR技術を活用し、自分のスマホやPCカメラで顔を映して気になるコスメを試せるシステムで、実際にメイクしたようなリアルなシミュレーションを実現する手法もあります。メイクアップ化粧品の色味を購入前に試したいというニーズに応えられます。
どのような施策を導入できるかは、各企業の状況により異なりますが、大切なのは試せない不安を取り除く工夫にしっかり投資することです。
大きなボトルネックとなりやすい部分なので、高い投資効果が期待できます。
3-2. 実店舗の接客や利便性に勝る体験価値
全国に実店舗(デパート、バラエティショップ、ドラッグストアなど)が多数存在する化粧品業界では、「すぐ買える・試せる」というオフラインの利便性が依然として強みです。
加えて店舗ではBA(美容部員)の対面接客をはじめとする付加価値ある体験が提供されており、ECはこれらにどう打ち勝つかが課題です。
【店舗を超える体験価値の創出】
・オンライン接客ツールの活用:チャットやビデオ通話で専門スタッフが相談に乗る仕組みを導入すれば、「一人で選ぶ不安」を緩和できます。プロの助言によるクロスセル・アップセルで売上増が期待できる施策です。子育ての都合などで店頭に行けない人にとっても、自宅で専門的なアドバイスが得られるオンライン接客は価値あるサービスといえます。
・物流サービスの強化:即日配送や日時指定など配送面の充実により、「すぐ欲しい」に応える工夫が有効です。加えて、梱包のデザイン性や同梱物の工夫など「開封体験」の質へこだわる施策を通じて、店舗購入以上の満足感を提供できます。
・オムニチャネルでの顧客情報連携:実店舗を保有している企業では、ECでポイントや会員情報を統合し、どのチャネルでも同等のサービスを受けられるようにすることが大切です。自宅で購入した商品の店舗での交換対応や、店舗で試した商品をECでスムーズに購入できる仕組みなど、店舗とECの垣根をなくすサービス設計が顧客満足につながります。
「オンラインショップは、店舗以上に便利で快適」と思わせる顧客体験づくりが、課題の解決につながります。
オンライン上での接客はチャットボットの導入も検討に値します。詳しくは「Web接客ツールで業務改善!機能・効果をわかりやすく紹介」をご覧ください。
3-3. 競争激化の中での差別化
化粧品EC市場は多くの企業がひしめく状況となっています。資本力のある大手からD2Cスタートアップまで参入が相次ぎ、広告費の高騰や顧客獲得競争の激化が見られます。
【競合との差別化戦略】
・独自の商品開発や限定商品の展開:他社にはないオリジナル処方やコラボ限定パッケージなどを投入すれば、「これを買いたいからこのブランドのECを訪れる」という動機付けになります。ほかでは手に入らない希少性を、いかに創出するかに腐心しましょう。
・パーソナライズサービスの提供:肌診断結果に基づき個別処方する美容液や名前刻印サービスなど、一人ひとりに合わせた付加価値を提供すれば顧客満足度が高まりリピーター獲得につながります。大量生産品とは一線を画す特別感や、自分だけのための商品という価値観が訴求でき、競合との価格競争から脱却できる強みとなります。
・独自のブランドストーリーと世界観:なぜその商品が生まれたのか、どんな価値観やこだわりがあるのかといったストーリーを丁寧に伝えていくと、単なる商品以上の意味を持たせられます。価値観に共感するファンを増やしてブランドへの愛着を育み、価格や一時的な流行に左右されない支持層を築きましょう。
・顧客コミュニティの形成:顧客同士が交流できるオンラインコミュニティの提供や、ファンクラブのような特別会員制度の運営で顧客との絆を深めます。商品開発への参加機会やモニター募集、ユーザー投稿の活用など、顧客を巻き込むことでロイヤリティを高め、競合に乗り換えられにくい関係性を構築できます。
・エコ・サステナブルへの取り組み:エコパッケージやリフィル対応、環境や社会問題に配慮した原料の選択など、サステナビリティへの取り組みを明確に打ち出すことも差別化要因となります。環境や社会への配慮を重視する層の支持を得られる可能性があり、長期的なブランド価値向上につながります。
商品面・サービス面で独自性を打ち出し、ブランドファンを創出する戦略が、競争の激しい市場で生き残る鍵となります。価格だけでなく、価値で選ばれるブランドを目指すことが重要です。
4. マーケティング戦略で化粧品ECの集客販売力を強化する手法

続いて、化粧品ECのマーケティング戦略で押さえたい手法を確認していきましょう。とくに重要となるのが、以下の3つです。
1. SNS戦略でエンゲージメントと購買意欲を促進する
2. インフルエンサーマーケティングで認知度と信頼性を高める
3. CRM施策でLTV向上とファン化を実現する
4-1. SNS戦略でエンゲージメントと購買意欲を促進する
InstagramやTikTokなどSNSを活用した集客・販促は極めて重要です。商品情報や使い方のコツを積極的に発信し、認知度向上に活用しましょう。
【SNSマーケティング成功のための施策】
・プラットフォーム特性を活かした発信:各SNSの特性を理解し、最適なコンテンツ戦略を立てます。Instagramでは世界観のある写真やリール、TikTokでは短尺でインパクトのある動画、Xではリアルタイム情報やキャンペーン告知、YouTubeでは詳細な使用方法やチュートリアルなど、プラットフォームに合わせた発信を行います。
・ユーザー参加型コンテンツの活用:ハッシュタグキャンペーンや投稿コンテストでUGC(ユーザー生成コンテンツ)を促進する、公式アカウントでフォロワー参加型の企画(投票・質問募集など)を行うなどの施策が効果的です。ユーザーが主役となるコンテンツは拡散力が高く、「#ブランド名」をつけた投稿が増えることで自然な認知拡大につながります。購入検討者はほかのユーザーの使用例を参考にできるので、背中を押す効果も期待できます。
・広告による拡散:好反応を得た投稿は広告として活用し、より多くのターゲット層にリーチしましょう。SNS広告では購買意欲の高いオーディエンスに絞った配信ができるため、費用対効果を最大化できます。
化粧品は見た目や使用感が重要な商材のため、視覚的にアピールできるSNSと非常に好相性です。継続的に発信を続け、ユーザーとの絆や信頼をコツコツと積み重ねていきましょう。
4-2. インフルエンサーマーケティングで認知度と信頼性を高める
前述のSNS施策とも連動しますが、「インフルエンサーによる発信」も化粧品マーケティングと高い親和性があります。人気モデルや美容系YouTuber、TikToker・インスタグラマーに商品を紹介してもらい、拡散効果と信頼性向上を狙います。
【インフルエンサー施策の実践ポイント】
・適切なインフルエンサー選定:ブランドコンセプトに合致するインフルエンサーを起用し、宣伝臭を感じさせず共感を呼ぶ発信をしてもらうことが重要です。フォロワー数だけでなく、エンゲージメント率や実際の影響力、ターゲット層とのマッチング、コンテンツのクオリティなどを総合的に判断して選定しましょう。少数のメガインフルエンサーよりも、複数のマイクロインフルエンサー(フォロワー1万未満規模)活用の費用対効果が高いケースも少なくありません。
・効果的なコラボレーション形態:商品提供によるレビュー投稿のほか、タイアップ動画の制作、ライブ配信への出演、アンバサダー就任などさまざまな形態があります。自社製品との相性を見極めつつ、一過性のプロモーションよりも継続的な効果が期待できる形態を模索しましょう。
・透明性とコンプライアンスの確保:インフルエンサー施策を行う際は、景表法など広告表示ルールの順守(PR表記の明示など)が不可欠です。透明性の確保によって信頼性が高まり、消費者からの反感を避けられます。広告であることを隠さず、かつ自然な形で商品の魅力を伝えられるインフルエンサーとの協業が理想的です。事前に明確なガイドラインを共有し、コンプライアンス違反を防止しましょう。
インフルエンサーマーケティングは、新規顧客の獲得に即効性があります。とくに20〜30代の若年層をターゲットとする場合、広告としてではなく、信頼できる人からの推薦という形で認知を広げられる効果的な手法と考えられます。
4-3. CRM施策でLTV向上とファン化を実現する
新規獲得以上に重要なのが既存顧客のロイヤリティを高め、LTV(顧客生涯価値)を向上させるCRM(顧客関係管理)施策です。化粧品ブランド各社は会員プログラムやアプリ、メールマーケティングなどを駆使しリピート促進を図っています。
【効果的なCRM戦略のポイント】
・顧客セグメンテーションとパーソナライズ:購入履歴や閲覧履歴を分析し、ユーザーの関心に合った商品やコンテンツをメールマガジンやアプリ通知で届けます。たとえば、購買履歴を分析して「毎月購入するアイテム」と「ときどき購入するアイテム」を把握し、適切なタイミングでリマインドやレコメンドを行いましょう。
・会員ランク制度とロイヤリティプログラム:購入金額や頻度に応じたポイント付与や会員ランクアップ特典(送料無料や限定クーポンなど)は、多くのブランドで導入され効果を上げています。累計購入金額に応じた会員ランク制度や、誕生月の特別割引、新商品の先行予約権の提供などの例があります。特別感や優越感を感じさせる特典設計が重要です。
・ファンコミュニティの運営:近年では、顧客同士や企業スタッフと交流できる場を提供するコミュニティ施策も多くのブランドで見られます。コミュニティでは商品開発アンケートやモニター募集、投稿キャンペーンなどを実施し、参加意欲を高めています。顧客はブランドに愛着を持ちやすくなり、競合製品への乗り換え防止につながります。
CRM施策を通じて「このブランドを使い続けるとお得・快適・楽しい」という状態を作り出せれば、顧客一人当たりの購入額・購入回数が増えてLTVを向上できます。化粧品は継続使用で効果を実感できる商材のため、長期的な顧客関係構築が売上拡大の鍵となります。
高度なCRMを実現する具体的なソリューションとしては、「Rtoaster(アールトースター)」が挙げられます。
「Rtoaster」は、ブレインパッドが提供する顧客データプラットフォーム(CDP)であり、Webサイトやアプリの行動履歴、顧客属性、購買履歴など、さまざまなデータを統合・分析し、パーソナライズされた顧客体験を提供できます。
詳しくは以下のリンクより、資料をご確認いただけます。
5. 化粧品メーカーのEC成功事例から学ぶ実践的なポイント

最後に、より具体的なイメージとして化粧品ECの成功事例を3つ、ご紹介します。
1. ファンケル:データを元に顧客と深くつながり根強いファンを獲得
2. オルビス:パーソナライズ提案で顧客満足度とリピート率を向上
3. BOTANIST:SNS特化型マーケティングで急成長
5-1. ファンケル:データを元に顧客と深くつながり根強いファンを獲得
FANCL(ファンケル)は無添加化粧品・健康食品で知られるメーカーで、創業当初から通信販売に注力してきました。現在では自社EC「ファンケルオンライン」が主要チャネルとなっています。
【ファンケルの成功戦略】
・直販による顧客データの一元管理:店舗や他社ECに頼らず自社で顧客と直接関係を築き、購買履歴や嗜好データを蓄積し、きめ細かなマーケティングに活かしています。オンラインと店舗の顧客データを統合管理し、オムニチャネル戦略を展開しています。販売チャネルを問わず一貫した顧客体験を提供できる点が強みです。
・定期購入モデルの推進:サプリ商材などと同様に化粧品でも定期コースを展開し、顧客の継続利用を促しています。定期会員向けに特典や割引を提供し、長期顧客をしっかり囲い込むことでLTVを高めています。1カ月〜3カ月に一度届く「ファンケル定期便」は5〜15%OFFとなるお得感に加え、自分の使用ペースに合わせた頻度設定ができる柔軟性が魅力です。
・「無添加」「安心・安全」というブランドコンセプトの徹底:自社サイトで研究開発ストーリーや成分へのこだわりを詳しく紹介し、ブランド価値を訴求しています。「無添加」を掲げる化粧品を作った企業として、その専門性と安全性へのこだわりを徹底的に伝えています。ECサイト上では店頭では伝えきれない詳細な成分情報や製造過程を公開し、製品への信頼を高めています。
・ファンコミュニティの運営:近年ではオンライン上で顧客が交流できるコミュニティサイト「fancl park」を開設し、ファンとの接点強化にも取り組んでいます。コミュニティ内では商品レビューの共有や悩み相談、開発者とのQ&Aセッションなどを実施し、単なる購買関係を超えた絆を構築しています。
これらの施策により、ファンケルは年代を問わず根強いファンを獲得し続けています。
「直営通販+定期+コミュニティ」でファンを育成するファンケルの戦略は、化粧品EC成功のお手本といえるでしょう。さらには、健康食品と化粧品の垣根を越えた総合的な顧客価値提案も、他社との差別化につながっています。
参考:株式会社ファンケル「FANCLコミュニティサイト「fancl park」がオープンしました!」、「3-7『ファンケル定期便』について」、「ファンケルグループ 2024年3月期 決算説明会資料」
また、同社では15年以上にわたって「Rtoaster」を導入されています。

詳しくは「株式会社ファンケル | お客様の声・導入事例」にてご確認ください。
5-2. オルビス:パーソナライズ提案で顧客満足度とリピート率を向上
ORBIS(オルビス)はポーラ・オルビスグループ傘下の通販化粧品ブランドで、創業時からのカタログ通販で培ったCRM力をデジタル時代に適応させた好例です。現在オルビスは自社EC比率が高く、売上の6割超がEC経由と推計されます。
【オルビスのパーソナライズ戦略】
・アプリを活用した顧客接点強化:公式アプリやLINEを軸に顧客との継続的なコミュニケーションにも注力しています。アプリ上で購入履歴やスキンケア日記を管理できる「肌カルテ」機能や、チャットボットでの問い合わせ対応など、UX向上施策も評価されています。
・データ駆動型マーケティングの実践:顧客データを細かく分析し、ライフステージやニーズに合わせた最適なアプローチを行っています。たとえば肌変化が起きやすい季節の変わり目に、過去の購入パターンから最適な商品を提案するなど、タイミングを捉えたコミュニケーションを実践しています。また顧客の購買サイクルを分析し、使い切りタイミングに合わせたリマインドメールなど、データに基づく効果的な施策を展開しています。
・オムニチャネル体験の統合:オルビスは店舗展開も並行して行い、店頭計測とECデータを連動させるOMO施策も進行中です。実店舗で受けた肌診断結果をオンラインでも活用できたり、実店舗とECで共通のポイントが貯まる仕組みなど、シームレスな顧客体験を提供しています。チャネルを問わず一貫したブランド体験を提供し、顧客の利便性と満足度を高めています。
オルビスの事例が教えるのは、パーソナライズとデジタル接点強化による顧客体験向上がEC成功に直結するということです。顧客起点の発想でサービス開発を行う姿勢は他ブランドにも示唆を与えています。
参考:通販新聞社「オルビス、流通戦略を強化 ドラッグストアで低価格化粧品を展開」、オルビス「ORBISアプリ 肌カ.ル.テ」、オルビス「コンテンツ制作を起点に「ブランド価値」を守りつつ「売上」をつくる。コミュニケーション企画の面白さとやりがい」
5-3. BOTANIST:SNS特化型マーケティングで急成長
ヘアケアブランドBOTANIST(ボタニスト)は、2015年の発売からSNSマーケティングを駆使して急成長し、“ネット発ブランドがオフライン進出を果たした”成功モデルとして知られています。
【BOTANISTのSNS戦略】
・Instagram中心の発信戦略:運営元の株式会社I-neは、当初からInstagramを中心としたデジタルプロモーション戦略を掲げ、SNS映えするシンプルでおしゃれなパッケージデザインを採用しました。発売当時、欧米のSNS成功ブランドを研究し「BOTANISTはInstagramに全振りしよう」と決めていたとのことで、商品開発からプロモーションまでSNS時代の消費者を強く意識していたことが伺えます。
・ユーザー投稿(UGC)の促進:BOTANISTは立ち上げ初期から知人のスタイリストやモデル経由で商品を広めつつ、ユーザー自身が「#ボタニスト」を付けて投稿したくなる世界観作りに成功しました。結果としてInstagramでの話題拡散→EC売上急増という好循環を生みました。地道な人間関係の構築から始まった口コミ拡散が、大手広告代理店を通した従来型の宣伝よりも高い効果を生んだ好例です。
・世界観とパッケージの一貫性:BOTANISTは「植物学者」を意味するシンプルなブランド名と、ボタニカルなパッケージデザインの一貫性が特徴です。商品設計の段階からSNS投稿されることを想定し、洗練されたデザインと環境に優しいコンセプトで「見せる化粧品」としての価値を高めました。バスルームに置きたくなるようなデザイン性の高さが、自然と口コミを生む要因となっています。
・オンラインからオフラインへの展開:SNSで人気が出たあと満を持してバラエティショップやドラッグストアに店舗展開し、オフラインにも販路拡大しています。デジタルで認知とファン層を獲得した後に実店舗展開するという順序が、従来の化粧品ブランドと逆の展開パターンであり、EC時代の新たなブランド構築モデルとして注目されました。
BOTANISTの成功から学べるポイントは、商品コンセプトを明快に打ち出しSNS映えを意識すること、UGCを促進し広告に頼らない自然な口コミを醸成すること、デジタルでブランド力を高めたうえでオムニチャネル展開することです。
SNS世代をターゲットに据えたマーケティングの威力を示したBOTANISTは、大手資本がなくてもアイデア次第で市場を席巻できることを証明しました。「SNS映えする商品設計」と「ファンとの共創」が新興D2Cコスメ成功の鍵であることを示す事例といえます。
参考:大西洋平(株式会社I-ne)「note始めます〜BOTANISTのヒットを振り返る〜」、ネットショップ担当者フォーラム「「ボタニスト」はなぜヒットしたのか? ネット発からオフライン進出までの戦略をI-neの責任者が語る」
6. まとめ
本記事では「化粧品EC」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。
化粧品EC市場の最新動向として、以下を解説しました。
1. 化粧品EC市場は年率5%以上で成長し1兆円を突破見込み
2. EC化率はまだ伸びしろが残っている状況
化粧品ECで捉えたい3つの成長チャンスは、以下のとおりです。
1. 化粧品購入のデジタルシフト
2. メイクアップと基礎化粧品で異なる購買心理
3. D2Cモデルの躍進とデータ活用
化粧品ECが抱える3つの課題と具体的な解決策を解説しました。
1. 「試したい」ニーズに応える工夫
2. 実店舗の接客や利便性に勝る体験価値
3. 競争激化の中での差別化
マーケティング戦略で化粧品ECの集客販売力を強化する手法として以下が挙げられます。
1. SNS戦略でエンゲージメントと購買意欲を促進する
2. インフルエンサーマーケティングで認知度と信頼性を高める
3. CRM施策でLTV向上とファン化を実現する
化粧品メーカーのEC成功事例から学ぶ実践的なポイントをご紹介しました。
1. ファンケル:データを元に顧客と深くつながり根強いファンを獲得
2. オルビス:パーソナライズ提案で顧客満足度とリピート率を向上
3. BOTANIST:SNS特化型マーケティングで急成長
顧客との絆を大切に、“魅力あるオンライン化粧品体験” を創り上げることが成功の鍵となります。デジタル技術を活用しながら、化粧品EC特有の課題と向き合い、価値を創造していきましょう。
関連記事
・Web接客ツールで業務改善!機能・効果をわかりやすく紹介
・ECサイトの課題解決!Rtoasterで実現する「Web接客×レコメンド」鉄板施策3選
・リピーター獲得のメリットやECサイトで効果的な方法を徹底解説
・Web接客とは何か?ツールの選び方や導入するメリットも解説
・顧客体験の向上で必ず知っておきたい、 業界別「パーソナライズ」の上手な使い方(オンデマンド配信)

「すべてのお客様への個別接客」を
効率的に自動化する。