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データ分析環境構築の「標準化」への取り組み~BrainPad DX Conference 2022~実践セミナー

公開日
2022.05.11
更新日
2024.02.21

3月23日に開催した「DOORS-BrainPad DX Conference2022」。
3000人を超える視聴申し込みをいただいた本イベントの内容をお届けいたします。

今回は、

・株式会社ブレインパッド データエンジニアリング本部 エンジニアリング推進部 吉岡 智史

による、「データ分析環境構築の「標準化」への取り組み〜データ基盤立ち上げスピードアップに向けて〜」をお届けいたします。

データ活用を始めるきっかけは?

本日はデータ基盤の立ち上げ、スピードアップについてお話しする予定です。また、本日のターゲットは、「マーケティング部門において、自社で分析する環境を持ちたいと思っている方」、「IT部門でデータ基盤の構築をリクエストされ、これから構築を行う方」を想定しています。

最初に、「なぜこのテーマを選んだのか」についてお話ししていきます。ブレインパッドでは、10数年間にわたりデータ分析に関する顧客の悩みやニーズに応えてきました。また、データ分析を始めるにあたっては、3つの要望をよく聞きます。

1つ目は「データを1カ所に集めて分析を始めたい」「データはそろっているものの、それぞれが別々の場所に保管されているため、データをまとめる環境を作りたい」という要望です。

2つ目は「すぐにでも分析を始めたい」「既に準備されたデータを活用し、ビジネス策を打ち出していく。そのためにデータ分析の環境を用意したい」という要望です。

3つ目に、「現段階が小規模でもビジネス拡大とともにデータ基盤も拡張していきたい」「今後のビジネスの拡大に合わせ扱うデータも増えていくため、それに合わせて基盤も大きくしたい」といった要望も多いといえます。

過去にブレインパッドが提案させていただいた案件では、事前に顧客の声を聞くとこれらの要望はよくあるパターンですね。


直面する課題

ここからは、データ分析を始めようとする中での悩みについて詳しくみていきます。

1つ目は「初期投資が掛かりすぎるのではないか」「自前でデータ基盤を保有すると構築にかかる費用が膨大になってしまい、投資した金額を回収できるか見通しが立てられない」という悩みです。

2つ目は「データ基盤全体の要件を決め切る必要があるものの、ビジネス要件が整理できていないため、決められた期間内に要件を決め切ることができない」「施策を打ち出す時期が決められている。しかし、その期間内にビジネス要件を終わらせることが難しい。また、基盤にどのような機能が必要か考える時間が短くなってしまい、決め切ることができない」というケースもよくありますね。

3つ目の悩みは、「データ集計や定義の変更などが頻繁に発生することが想定されますが、タイムリーに対応できるリソースがない」というところです。データ分析を行っていく中で、集計したいデータが変わるということはよくあります。その変更に合わせてシステムの変更も必要になることもあるでしょう。しかし、「すぐに対応ができる人材を確保し続ける・確保そのものが難しく、迅速な対応ができず困っている」というケースもよくあります。

データ活用において、以上のような課題は常につきまとっているといえるでしょう。
では、これらの課題に対してどのような対応策を取ることができるのかみていきます。

最初の「初期投資が掛かりすぎる」という問題に対しては、大きく分けて2つの対応策で回避することが可能です。1つ目の対策は自前で環境を構築するのではなく、サービスを利用し安価な環境で分析を始めることで、初期投資を抑えることができます。

2つ目の対応策は、次の課題である「決められた期間内に基盤の要件を決め切ることができない」にも効果的です。必要最低限の機能だけを開発して運用するスモールスタートが効果的だといえます。今見えているデータにフォーカスした環境を構築することによって、初期投資を抑えることができます。

また、環境を小さく構築することにより、構築にかかる時間が短くなるため、素早くプロジェクトを開始することも可能です。

最後の「タイムリーに対応できるリソースがない」という課題については、対応策として、「IT部門の人材を強化し、タイムリーに対応できるリソースを準備する」・「ビジネス部門の人材を活かし育成することで対応ができるように教育していく」ことが効果的です。

以上4つの対応策を提示したものの、対応策にも別の問題が出てきます。

例えば、1つ目の対応策であるサービスを利用するという点については一時的な手段としては現実的です。しかし、今後のビジネス展開を考えたときに拡張性、カスタマイズの問題は無視できません。

また、サービスは一般的に仕様によって制限されていることが多く、独自のカスタマイズの必要が出てきた場合には、その対応が難しくなることが想定されるでしょう。

次に、2つ目の対応策である「最低限必要な機能だけを開発し、運用する」場合は、「スモールスタートしようとしても、どのような機能をどのスペックで用意すればよいかを検討できない」というケースも少なくありません。例えば、データベースや分析レポートが出力できる環境を用意しても、外部からデータを取り込む手段がない場合は機能不足が発生してしまうことも考えられます。

3つ目、4つ目の対応策である人材強化・人材育成についても、「時間がかかることに加え、人材強化はターゲットとなる人材を抱え込めるか、対象となる人材が社内にいるのかという点も不明瞭な要素である」といえるでしょう。そのため、この点についてはリスクが多くあるといえます。

この4つの課題は、まだまだカバーしきれない点もあります。


課題に向けた実現

ここでは、先ほどふれた4つの課題に対して、18年間の成功や失敗からブレインパッドが導き出した解決策を3つみていきます。

1つ目は「分析ができる環境をクラウド上に素早く構築する」、2つ目は「サービス型でなく、顧客独自の基盤として納品する」、3つ目は「納品後のシステムを、運用保守も含めて提供する」というものです。

そこで、この3つの要素を持ち合わせるデータプランである「Smart Strategic Platform(SSP)」という環境を提案するという方法に行きつきました。また、Smart Strategic Platformはサービスではなく、データ分析に必要な機能を有した基盤です。

Smart Strategic Platformの機能について詳しくみていきましょう。データ分析を始めるための空の器を用意し、スモールスタートするうえで必要な4つの機能を提供いたします。

1つ目は、外部からデータを取り込むためのデータインターフェースはCSV形式のファイルを暗号化するSFTPで送受信可能です。2つ目は手持ちのデータをフレキシブルにアップロード・ダウンロードできる機能を持つWeb管理画面を活用可能です。

3つ目には、データを蓄積や分析するためのデータとして加工するETL・集計処理ができます。4つ目は取り込んだデータや集計処理した後のデータを格納するデータベースです。

この4機能を構成するためのインフラとセキュリティを標準化・クラウド上に構築し、データ基盤を提供します。また、データ基盤に必要な機能を最初から組み込んでいるため、顧客側で準備する必要はありません。

環境は標準化されているため、構築する対象は決まっています。そのため、大半をコード化し短期間で完成することができるように設計しています。なお、データベースのテーブル定義やデータ設計はそれぞれの案件によって異なるため、この基板では明確に定義されていません。

また、データ設計は別に設計を行う必要があります。加えて、基盤を運用するためのメニューも定義しているため、仮に運用が難しい場合はブレインパッドの運用保守チームが運用を行うことも可能です。

以上の機能がSmart Strategic Platformの全体像となります。しかし、施策によってはこれらの機能だけでは足りない場合も想定されるでしょう。その場合は、以下のように施策に合った機能を開発し、拡張することも可能です。

例えば、現在の販売状況を含めその時々に価格を設定するダイナミックプライシングの機能・分析した結果を社内やクライアントに公開するための帳票機能・案件独自に必要な機能など、案件ごとに必要な機能を要件定義から行い追加することも可能です。都度顧客にヒアリングを行うことから、ビジネス要件に合わせて柔軟に対応できるといえるでしょう。

ここまでお話した機能を含む基盤を構築することで、リスクや当初の課題をクリアしていくことをサポートします。

※ダイナミックプライシングの意味について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

【関連記事】ダイナミックプライシングとは?5つの導入事例とビジネス活用時の検討事項

直面する課題をSmart Strategic Platformで解決

では、このセミナーの最初でふれた問題についてSSPによる解決法を具体的にみていきます。

1つ目の拡張性、カスタマイズの問題に対しては、「ビジネスの要件の追加や変更に伴い、機能拡張や改修をしやすい構成とする」ことで解決を行います。

2つ目の「スモールスタートに必要な要素が分からない」点については、「データ基盤として必要最低限の機能を用意し、標準提供する」ことでサポート可能です。また、最低限の機能とその設計が準備されていることから、「要件に合った基盤を短期間で設計・構築ができるようになる」でしょう。そのため、スピーディーにスモールスタートできます。

最後に、「人材確保に時間を要する」という点に対しては、「人材の強化・育成が済むまでブレインパッドの運用保守体制を使う」ことで、顧客のリソースを割くことなくデータ基盤を活用できるようになります。

こういったメリットから、簡易分析基盤Smart Strategic Platformを使うことで、顧客が抱える悩みや課題の解決につなげられるといえるでしょう。ここまでは、ビジネス視点からお話をさせていただきました。

情報システムが抱える疑問や課題

では、情報システム部の方々のヒアリングでわかった疑問や課題について詳しくみていきましょう。特に、以下5つの疑問や課題はよく聞かれる項目です。

  • 非機能面は考えられているのか。
  • 運用はどうやって面倒を見るのか。
  • セキュリティ面での心配は?
  • ランニングコストは安く抑えられるのか。
  • ベンダーロックインが発生するのでは?

こういった疑問や課題に対して、Smart Strategic Platformも準備しています。

1つ目の非機能面に対しては、非機能要件定義のメニューを用意しているため、要件に合わせて調整やアップデートが可能です。

2つ目の運用面については、ブレインパッドとして用意した運用メニューが存在しているため、心配はありません。

3つ目にセキュリティ面の心配についても、グローバルで使用されているフレームワークを使用しています。データ基盤として必要なセキュリティ要件を定義し、既にシステムとして実装しているため、高いセキュリティ性を担保しているといえるでしょう。

4つ目のランニングコストはクラウド環境を構築することで、利用スケジュールに合わせて稼働させるなどの対応を行うことが可能です。そのため、ニーズによってランニングコストを安く抑えることもできます。

最後に他のシステムに乗り換えることが困難となる「ベンダーロックインが発生するのでは?」という点にも対策しています。Smart Strategic Platform はサービスではなく、ドキュメント・基盤およびソースコード一式を顧客に納品する形式です。そのため、顧客側での改修にも対応し 、ゆくゆくは運用するなどといった対応も可能です。

情報システムが抱える疑問や課題をSSPで解決

ここからは、非機能要件・運用要件・セキュリティ 要件について、もう少し詳しくお話しします。非機能要件と運用要件については日本のIPA、情報処理推進機構が発行しているフレームワーク、セキュリティについてはグローバルで使われるフレームワークを使用しています。

それぞれのフレームワークから、データ基盤に必要な要件を定義し、その要件に合わせた環境を標準形としています。加えて、内容を確認いただくことで、要件定義の時間も短縮化でき、合意いただくことで、すぐに構築に取り掛かれるといった「スピーディーで短期間のリリース」が可能です。

非機能要件・運用要件・セキュリティ要件については、顧客独自の要件が必要であれば、その要件に応じた定義の時間を確保し、対応することでシステムに反映させられます。

ここまでの話をまとめると、標準機能ではセキュリティ要件・運用要件が包含されています。非機能要件に関しても、メンテナンス手順なども用意されていることから、最低限の機能を有した基盤として機能性を果たせるといえるでしょう。

また、データ分析を行う中では、機能拡張が必要なシチュエーションは必ずと言っていいほど現れるものです。機能自体は新たに要件定義が必要となるものの、すでに基板は用意されているため、ネットワークを拡張し、運用を追加することで1から作るよりも短期間で実装が可能です。

ここからは、Smart Strategic Platformを使った案件進行例についてみていきましょう。

課題の1つで「ビジネス要件が整理されていないため、基盤の用件を決めきることができない」というものがありました。確かに、データ基盤の構築とデータの定義はそれぞれ異なる考え方を行わなければなりません。

例えば、ビジネス要件から、データの種類・分析モデルの構築を要件化していく場合、時間がかかります。また、データ基盤の構築とビジネス施策からシステムを構築していくのではスパンが合いません。 

そのため、基板は空の器を用意することに特化しています。Smart Strategic Platformではデータ基盤の立ち上げとビジネス要件を切り離しているため、先行してデータ基盤の立ち上げが可能な構成としています。非機能要件や運用要件を当社の標準形として、合意を得られた場合は要件定義の時間も削減できるでしょう。

では、ビジネス要件に目を向けていきます。よくありがちな事例としてAという施策は最初の施策であるため、要件定義だけでなく、施策を打ち出すまでの時間がかかるケースは多いといえます。また、その中で実行までに時間がかかる場合、Bという短い時間でできる施策から先に実行したいというケースもよく聞きます。

対して、Smart Strategic Platformの場合、先行して基盤が出来上がっているため、それぞれの施策に必要なデータ定義の追加や修正を適宜行うことができます。データ基盤には、データを格納するデータベースのテーブル定義を反映させれば良いため、すでに立ち上がっているデータ基盤に定義してすれば、すぐに分析施策の実行に移すことが可能です。

また、途中から新たな施策を実行したいというケースもあるでしょう。今までのノウハウから要件定義はすぐに終わるため、すぐに施策Cを打ち出すことができる企業も想定されます。この場合、施策Cのためだけにデータ基盤を構築していたとすれば、止めるというジャッジがしにくくなってしまいます。

このような状況でも、Smart Strategic Platformを使うことで、施策Cの拡張機能だけを停止するということが可能です。つまり、システム面の施策の取りやめが容易になるといえます。データ基盤の立ち上げと施策推進を分けて進めていくことが大切です。

最後に

ブレインパッドは18年にわたりコンサルティング・基盤構築・データ分析・アルゴリズム構築・システム実装・人材育成とデータ活用、それぞれ上流から運用実行まで 一気通貫で行ってまいりました。

今回は、データ蓄積環境・データ基盤などのシステム構築フェーズからデータ分析フェーズにフォーカスし、顧客への価値提供につなげる取り組みを解説してきました。ブレインパッドのノウハウや知識はこれまで1000以上の顧客のデータ分析をサポートしてきた実績、プロジェクトから実践してきたデータ分析の経験に裏付けられたものです。

 この18年間の経験から生み出したブレインパッドのベストプラクティスの結晶がSmart Strategic Platformになります。この強みと結晶であるSSPを活かし、今後も多くの企業のサポートを行っていきたいと思っています。

▼DXの定義や意味をより深く知りたい方はこちらもご覧ください
「DX=IT活用」ではない!正しく理解したいDX(デジタル・トランスフォーメーション)とは?意義と推進のポイント


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株式会社ブレインパッドについて

2004年の創業以来、「データ活用を通じて持続可能な未来をつくる」をミッションに掲げ、データの可能性をまっすぐに信じてきたブレインパッドは、データ活用を核としたDX実践経験により、あらゆる社会課題や業界、企業の課題解決に貢献してきました。 そのため、「DXの核心はデータ活用」にあり、日々蓄積されるデータをうまく活用し、データドリブン経営に舵を切ることであると私達は考えています。

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