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DXの「内製化」とは? ビジネス価値の創造をもたらす真の内製化

公開日
2022.11.30
更新日
2024.02.22

企業のDX推進について考える際に「内製化」というキーワードはよく議論の的になります。時間をかけてでも社内リソースだけでDX推進を目指すべきか、あるいは戦略は自社で立案し、分析や開発などの切り出せる部分は外部に委託すべきか―このような悩みがある方も多いのではないでしょうか。

そんな、DXの内製化の必要性・重要性を株式会社ブレインパッドで内製化推進サービスをリードする執行役員 神野雅彦が解説します。

そもそも「内製化」とは

「内製化」という言葉は「アウトソーシング」が盛んになってきた数十年前から、キーワードとして扱われてきました。最近になって内製化という言葉のレベルがかなり高くなってきています。

言葉の意味は、アウトソーシングの逆で、人や物、そして技術を外部に委託せず、社内のリソースでまかなうことです。言い換えると、自社の事業や様々な取り組みを自分たちだけで実行できる状態にすることです。しかしながら、現在は少し位置付けが変わってきていて、必ずしも社内だけで進めるという感覚ではなくなってきています。理由は後述します。

注目されている理由 

内製化という言葉をよく聞くようになったのは、ここ数年続いているDXブームがきっかけでした。そもそものDX推進/デジタル活用とは、従来のIT活用とは少し異なり、ビジネスとITの両輪で進めなければ成功につながらないと提唱されてきました。つまり、業務の効率化よりもビジネスに価値をもたらすITにしなければならないということです。 

また、DXブームと並行して、ウィズ・コロナでオンライン化が進み、紙媒体の情報もデジタル化され、蓄積されたデータをしっかりビジネスに活用しないといけないと考える人が増えてきました。 

背景として、企業に求められていることが、よりクリティカルになってきていることが挙げられます。少子高齢化の傾向やSDGsのブームがある中で、そもそも企業というものは継続的に成長し、停滞していてはいけない。だからこそデジタルを使うのではなく、使いこなすことでビジネスの成長と価値向上に努めていかなければならない -こんな課題感が出てきたのです。

さらにデジタルを活用するようになって、社内外の変化が以前よりも見えるようになりました。いわゆるデジタルにより蓄積されたデータを見る、見える化です。変化が見えれば、結果や課題が見えてきて、それらに対応しなければなりません。打ち手として、お金や物だけでは解決しないこともわかってきて、やはり使いこなせる人材を確保しようという流れになりました。

これを踏まえて、内製化という、自社で自己完結できるようにデジタル/データを活用できる人材を具備して、ビジネスを継続成長させるということが注目されるようになりました。

また、少子高齢化に伴う労働人口減少の影響もあり、新しく人材を確保するのではなく、今社内にいる人材を上手に活用していくことが求められるようになりましたが、今のスキルのままでは対応できないので、リスキリングが併せて注目されるようになったのです。

【関連】リスキリングとは?DX時代の人材育成に必要な考え方と方法論

まずは変えるべき日本企業の意識

企業は、成長や価値向上につながる様々な取り組みや施策を実行し、新しい事業を始めようとするわけですが、なかなか展開できない。理由はやはり人材がいないからだという「ニワトリが先かタマゴが先か」といった議論になっています。

限られた時間の中で結果を出さないといけないのですが、よくあるのが事業計画を作ったものの着手までに1年以上かかり、取り組んで結果を出すときには、結局機会ロス(チャンスロス)をしてしまっているというケースです。

また、日本企業は投資に対してネガティブに考える傾向があるように感じます。投資は、事業を拡大し成長して企業価値を向上するためのものであることを忘れがちで、事業拡大よりもコストダウンや現状維持に走ることで利益を確保しようとしてしまう企業が多いのではないでしょうか。 

つまり、日本企業の意識を変えることが、「内製化」成功の鍵であると考えます。 

内製化に取り組む意義

内製化が注目されているという意味では、先日の日本経済新聞の一面に「リスキリング」や「内製化」という見出しが躍るようになったことが象徴的です。ベンダーによるセミナーも増えてきていて、DXブームが一段落して、今度は内製化ブームという傾向も見えてきました。

とはいえ、DXを進めていく上で、企業自体が変化しなければならないという理解が進んできたことが内製化ブームに結びついているのは間違いありません。ビジネスモデルを変革するための考え方を身につけたり、変化に対応できる力を強化していったりすることが強く求められているわけです。

少し視点を変えると、情報システムにおけるベンダーロックインという問題があります。このベンダーロックイン状態になってしまうと、少しの変更をするにもベンダー都合でスケジュールやコストが決まってしまうため、市場の変化に迅速に対応できない懸念がどうしても出てきてしまいます。これを避けるために「内製化」に取り組む企業も出てきています。

DXの内製化が指すもの

DXの内製化とは何を指すのかと聞かれた場合、「デジタル/データを使いこなすための人材/組織および仕組みが自社で具備できていて、恩恵を享受できている状態」と答えます。この状態が、内製化を実現できている状態であり、目指すべき姿になります。

とはいったものの、具体的に何を考えていけばよいのでしょうか?

ブレインパッドはデータ活用の専門家なので、データ活用に絞って話をしてみます。この状態を目指すための考え方として、データガバナンスの監督と執行のフレームワークを用いることを推奨しています。特に、6つの観点(戦略、組織/人材、データ品質、プロセス、技術、統制/管理 )を踏まえて検討を進めることが肝要です。

例えば、いくつかご紹介しましょう。

データ活用を推進する上での大上段に構える戦略を明確にし、内製化における戦略を具体的に明文化します。

戦略実現に必要となる組織や人材を組成/育成するためには、ルール化とその管理統制が必要になるので、ガバナンスが求められます。つまりデータガバナンスも「内製化」を進めていく上で必要となる重要な事項であるということです。 

そして、デジタル化に伴うツールの導入・整備、さらにそれらを用いたデータ活用基盤の構築も「内製化」を進める上で必要なものです。 

更に「DXの内製化」においては、プロジェクトマネジメントの方法も対象になります。従来のシステム開発プロジェクトにおいては、納期・コスト・品質を守りながらシステム要件を実現することに重点が置かれていました。それが実現できれば、極端に言えばウォータフォール開発であろうがアジャイル開発であろうが進め方は何でもよかったわけです。

しかしDXプロジェクトにおいてはビジネスとの連動が求められており、機会ロスは許されません。これまでとは異なり、プロトタイプの状態でもいいから短期間に開発し、結果を見ながら素早く改良/改修していかなければなりません。つまり、スピード感が求められるので、進め方としてはアジャイル開発しかないということになります。そうなるとアジャイル開発のためのプロジェクトマネジメントが、「DXの内製化」を実現するための必須スキルとなるわけです。

このように、「内製化」と言いながらも、システム開発や物作りの論点だけではなく、データガバナンスの論点を意識した取り組みなど、幅広い視点が必要とされているということがわかってきます。

【関連】【シリーズ】データガバナンスがもたらすもの-第1回 「データガバナンス」とは何か?


これからの日本企業が目指すべきDX内製化の「理想形」

ちなみに、私が思うに「DX内製化」には「3つの段階」が存在します。我々はその3段階をそれぞれ「内製化1.0」「内製化2.0」「内製化3.0」と定義づけています。下図をご覧ください。

現在、多くの日本企業が「内製化2.0」ステージにいますが、最終的には「内製化3.0」を目指すべきです。
これらのステージに関するより詳しい解説や、日本企業が内製化3.0を目指すべき理由について知りたい方は以下の記事をご覧ください。

【関連記事】ブレインパッドが提唱。今の日本企業が目指すべきDX内製化の理想形「DX内製化3.0」とは?


真の内製化とは

よく「内製化って、システム開発の内製化ことですよね?」という話を耳にするのですが、その認識はあくまでも狭義の内製化であり、DXおよびデータ活用の世界では、もっと広義の内製化として使われています。「ビジネスとITを合わせたものがデジタル」という観点がないと「内製化」によるビジネス貢献にもつながらず、その先に私たちが目指している日本経済の活性化にも寄与しないと考えます。 

またデータ活用やDX推進のためにデータマネジメントオフィス(DMO)といった組織を作ることが多いのですが、それだけではうまく進まないことが多いのです。組織といった箱を作るだけなら、企画して上申すればいいだけですが、その箱が価値を生み出していくためには、箱の中にいる人材の確保と育成および動かす仕組みが必要であり、そのための予算確保も必要です。その上で、その組織に属する人たちが会社全体に内製化の取り組みを伝播していかなければなりません。この広げる活動=文化醸成が、内製化成功の鍵でもあります。

【関連】【シリーズ】データガバナンスがもたらすもの-第4回 組織組成・人材育成とデータガバナンス(前編)

デジタル活用およびデータ活用を推進して内製化を実現するためには、今までのように「新しいビジネスを始めるから担当する事業部門が中心になって進めていく」という取り組み方ではなく、「企業全体が新しいビジネスに取り組んでいく」という概念、変革意識を持たなければなりません。ということは、IT部門やデータマネジメントオフィスだけが「内製化」ができればいいという話ではなく、ビジネス部門含めて、社員全員が何らかの形で「内製化」に関わっていくことが求められるということなのです。その中心にデータマネジメントオフィスがあって、そこから「内製化」の輪が広がっていく。これこそが、内製化の本質なのです。 

「内製化」に向けた取り組みを続けていくと、会社全体がデータドリブンな組織に変わっていきます。その結果、「KKD(経験・勘・度胸)」ではなくデータに基づいた意思決定ができるようになります。またシステムだけではなく、人や組織も含めた事業基盤ができあがり、ビジネス全体が高度化します。その結果、より高品質で高速にビジネスを回す状態が出来上がり、ビジネスの迅速化が実現されて、今まで8時間かかっていたことが2〜4時間程度でできるようになっていきます。 

そうして生まれた時間的余裕は、もっと価値を生む新しい事業を考えるために使えるようになります。いま注目されている言葉で言えば「クリエイティブ・エコノミー」の実現です。社員一人一人がクリエイティブで付加価値を生む仕事に時間を使えるようになっていき、今までとは次元の違う新しいビジネス展開ができるようになるという意味です。

こうした恩恵が生まれる「内製化」が、私たちの考える「真の内製化」です。 

さて、ここまで読んで、「こんな取り組みは、自社だけではできない」という感想を持たれた方も多いかもしれません。ただ、矛盾するようですが内製化は自社だけで取り組まなくてもよいのです。 

では「内製化」はどのように進めるのがベストなのでしょうか。以下でそのことについてお話ししていきます。 

支援会社による「内製化支援」

よくお客様に、「自社でDXを推進できるようになると、あなたたち(ブレインパッド)のような支援会社の仕事はなくなるのでは?」と言われます。しかしこれは大きく違うと断言します。 

これと似た話に、「AIが人間の仕事を奪う」というものがあります。英国の某大学教授が「消える職業」「なくなる仕事」ランキングを作られていましたが、それを見ると、銀行の融資担当者、スポーツの審判、不動産ブローカー、レストランの案内係、動物のブリーダーなどの職業がなくなると書いてあります。しかし実際になくなった職業はありません。これらの職業に就いている人たちが大量に解雇されて、路頭に迷っている人であふれかえっているというニュースを見たことがあるでしょうか?

古くは産業革命のときにも同じようなことが言われ、労働者が機械を打ち壊したりしていましたが、実際には産業革命後に人口が著しく増えたにも関わらず、大半の人に職が行き渡ったわけです。職がなくなるどころか、職種や業種が増えていき、明らかに労働人口が増えたわけです。

昔々、Windows 95が発売されて、一気にオフィス環境が変化し、インターネットが爆発的に普及し、ブロードバンド網が整備されたとき、業務が効率化されて、不要な人が大量に出てくるのではないかと、同じようなことが言われました。また、iPhoneのことを考えてみてください。iPhoneはとても良い製品で、持っている人は使いこなし、満足しています。最新バージョンはiPhone14(記事執筆当時)ですが、iPhone 8でもみんな満足していたのではないでしょうか。十数万円する高い商品ですから、iPhone 8のまま使い続けていてもいいはずですが、最新機種が出たらみんなこぞって買い求めます。なぜでしょうか?それは、先端テクノロジーや先進動向に触れたいという欲求を満たすためには、、その道の専門家に頼らないと体験/吸収することが難しいからなのです。

「内製化」にも最新動向が必ずあります。それを一般の企業がウォッチし続けるのは難しく、ウォッチすること自体が直接ビジネス価値につながるわけでもありません。そこで、私たちのような専門家が必要になるわけです。 

先のプロジェクトマネジメントにおいても同様です。ウォーターフォールからアジャイルに開発手法が変化していったときに、ビジネスとITがキャッチボールではなく、共同でプロジェクトを進めるというアプローチは当時革新的でした。アジャイル開発も進化し、そのうちポスト・アジャイルも出てくることでしょう。その都度マネジメントの仕方も変わってきます。最新方式を追いかけることで、直接ビジネス価値の導出と恩恵享受を実現できるものの、常にキャッチアップし続けることは一般の企業の場合、そうもいきません。

そんな中で、内製化が今、デファクトスタンダードになろうとしています。他社よりもレベルの高い「内製化」ができるとそれが競争力の源泉になり得るということで、ならばレベルの高い「内製化」を支援してくれる専門家に教えてもらおうということになります。

「内製化」に対する価値の捉え方が大きく変化したのです。

「内製化」が進むことで、従来のように「社内にスキルのある人がいないから外部委託する」のではなく、「継続的な成長をするためにビジネスパートナーを選ぶ」時代が必ず来ます。そこで選ばれる会社になれれば仕事がなくなることはないと、支援会社であるブレインパッドは考えているのです。 

内製化とリスキリング

ここで重要になってくるのが、少子高齢化による労働人口の減少です。即戦力を採用するとなると年俸を高くして集めるしかないわけですが、それは企業の持続性という観点からはナンセンスです。いつまでも続けられるとは思えませんし、今いる社員の大半が無駄なリソースになってしまいます。 

現在1,000人の社員がいるのだとしたら、その1,000人を、ビジネスとITをしっかり融合させてDXやデータドリブンを推進できるハイブリッド人材としてどんどん育てていかなければなりません。 

これがリスキリングの必要性であり、内製化推進の大きな要素です。

「内製化」を進めると言っても、こうした部分をおざなりにして一部の人間だけが「内製化」をやり遂げても形だけの成果となり、ひとまずデータドリブンな意思決定ができるようになったとしても、それは継続しないでしょう。

継続的な企業課題としたのは、継続的な企業価値向上と成長が求められているからです。 

継続的な企業課題に対する内製化支援の考え方

では、私たちブレインパッドは「内製化」の支援企業として、お客様がデータ活用によってビジネス価値を最大化するためにどのような支援をしているのでしょうか。

これまでの話をひとつの図でまとめてみました。

こうしてみると、内製化は企業に与えられた命題ではなく、企業における重点課題を解決するための施策のひとつであるということが見えてきます。

常に求められる企業成長と価値向上、そして内外環境の目まぐるしい変化、慢性的な人材不足と成長機会の損失、機会損失に繋がる打ち手の遅さ、投資に対する壁、内製化というキーワードの理解齟齬といった企業課題を打破することで、企業は新しい価値やより高みを目指すことができるようになります。

しかしながら、なかなか大きなアクションを取るという舵取りは勇気がいるものです。そこで、ブレインパッドではデータサイエンスの専門集団として支援するだけではなく、管理監督省庁、外部団体、ビジネスパートナーと協力しながら、企業の課題解決に向けて、内製化実現を支援することとしています。

このスキームが、「内製化支援オファリング BrainPad  DAY(ディー・エー・ワイ)」です。

【関連】ブレインパッド、データ活用の内製化支援オファリング「BrainPad DAY」を提供開始

本取り組みにより、これまで論じてきた「クリエイティブエコノミー」、「リスキリングによるハイブリッド人材」、「変化への強い対応力」の実現に寄与します。

特に、クリエイティブエコノミーとして、新たなビジネス展開/進出を実現していくことで、日本経済の活性化に大きく貢献していきたいと考えています。

内製化支援オファリング BrainPad DAY

ここから私たちブレインパッドが提供する「内製化支援オファリング BrainPad DAY」について詳しく説明します。これは以下の6つのメニューから構成されています。

  1. データドリブンアセスメント
  2. 人材育成/分析伴走
  3. データドリブン組織組成/組織変革
  4. データガバナンス整備
  5. プロダクト導入
  6. 分析基盤整備

 「データドリブンアセスメント」とは、お客様のデータドリブンおよびデータ活用に係る状況および組織力がどれだけ成熟しているかを評価するものです。また、評価だけでなく、具体的な施策の素案を助言として提示するところまでが対象となります。自社のポジションと強み・弱みが見えてくるので、強みをどう伸ばしていき、弱みをどうカバーするのかといった助言も中長期的展開します。

「人材育成/分析伴走」は、コーチングとハンズオンの2つの方法で、ブレインパッドのデータサイエンティストがお客様の環境の中で実際に分析活動/データサイエンスを実施しながら、その手法をしっかりとお教えしていきます。また、その会社に最適なデータサイエンティストの育成方法/評価方法やキャリアパスなども助言として提示します「データドリブン組織組成/組織変革」は、データ活用による恩恵を最大化するための戦略立案や施策検討をしたり、分析を実施する人材や組織組成を実現するためのリスキリング内容の提案をしたりします。「内製化」をするということは、今までとは仕事のやり方や企業文化も変えていくことになりますので、文化醸成も含めて支援することになります。文化醸成のために必要なもの、たとえば「データサイエンスによってビジネスはこう変わる」「これだけの恩恵がある」など、社内に情報発信するための価値訴求の仕方や、データドリブンを達成するまでのジャーニーマップなども含めて提供しています。

引用元:【シリーズ】データガバナンスがもたらすもの-第4回 組織組成・人材育成とデータガバナンス(後編)

「データガバナンス整備」は、戦略・人材/組織・プロセス・データ・テクノロジーの5つの観点で、お客様のデータガバナンス成熟度を評価し、その会社に応じて必要な観点に注力したり、全面的なガバナンス整備を実行します。 昨今では、施策を優先してガバナンスを後回しにすることが多く見られましたが、各種管理統制の厳しい業界や事故防止の論点で、しっかりとしたガバナンス整備に注力するお客様が増えてきています。

「プロダクト導入」は、ブレインパッドが提供している豊富なプロダクトの中から最適なものを提案し、導入、保守するサービスです。また、単なる導入だけではなく、内製化を踏まえた支援を提供しています。「分析基盤整備」は、DWHやデータレイクなどの情報基盤を構築するだけではなく、分析関連のツールを併せて提案したり、DevOpsやDevSecOpsとして使いこなせるような環境づくりや、組織組成の支援、分析基盤構築自体を自走できるようにするなど、いわゆる請負開発にとどまらない部分についても提供しています。特に、企業のみなさまがベンダーロックインとならないように、自社で運用できることを目指したソリューション(SSP=Smart Strategic Platform)を有していることもあり、情報基盤に係る内製化を推進することが可能です。

【関連】【シリーズ】データガバナンスがもたらすもの-第5回 データ基盤構築とデータガバナンス(前編)

こうした支援を通じて、お客様の課題を解決しながら、その結果としてビジネス価値を導出し、さらなる「内製化」にもつなげていくことができると私たちは考えています。 

【関連】データ活用内製化支援オファリング BrainPad DAY 紹介資料ダウンロード

内製化支援の実例

内製化支援の実例をいくつか紹介します。

先述の6つのメニューですが、 必ずしも順番通りにメニューをすべて提供するわけではなく、その会社に必要な支援だけすることもあれば、フェーズを分けてすべてのメニューを提供していくパターンもあります。

ゆうちょ銀行様には、「人材育成/分析伴走」、「データドリブン組織組成/組織変革」、「データガバナンス整備」の3つを支援してきました。 

現時点で20名弱のデータサイエンティストが成長されていて、この方たちを中心にどのようにして銀行全体にデータサイエンスの恩恵を享受させていくのか、データサイエンスの文化を広めていくかを考えながら進めています。それに伴って「データの民主化」や「分析の民主化」が進んでいくわけですが、同時にデータが勝手に使われる「無法地帯」になってしまうおそれがあるため、ガバナンス整備も並行して進めています。

りそなホールディングス様にも、長く「人材育成/分析伴走」、「データドリブン組織組成/組織変革」を中心とした支援を展開しています。どちらの銀行もいよいよこれからデータドリブン組織として、実際のビジネス価値を生み出していく段階に入り、以降は経験を積みながらデータドリブン組織として高度化し続けていくことが期待されます。人材育成も組織改革もブレインパッド自身が成長していったときの体験を踏まえて、お客様を育成する際にどのような取り組みをしていかないといけないか、自分たちが成長していく中でどういう気づきがあったか等を考えながら進めています。そのあたりが育成成功の要因ではないでしょうか。

【関連】りそなホールディングスの「データ分析組織」の現在地

また、あるお客様では、「データドリブンアセスメント」を実施し、「人材育成/分析伴走」の検討に入りました。こちらのお客様では、当初お話を伺ったところ三桁クラスのデータサイエンティストがいるとのことだったのですが、アセスメントの結果、ビジネス価値を高めるようなデータ分析ができる方は、極めて限られた方々ぐらいしかいないことがわかりました。「データサイエンティスト」の定義が非常に幅広く使われていたことの現れであり、そのような実態を明らかにさせていただき、人材育成の重要性を認識の上、今後の取り組みについて検討させていただいています。

こうして見ると、DX、データドリブンやデータ活用の取り組みと対象範囲の認識は、お客様によって様々であるということが見えてきました。一様に確定した手法があるわけではありませんが、ブレインパッドだからこそ、多くの経験と専門的知識から、お客様に合ったアドバイザリーを展開させていただくことが出来ていると自負しています。

このように、内製化実現に向けて、今後も共同での取り組みが継続するものと考えています。ご相談も、ここに来て件数が飛躍的に増えています。ここでは紹介できていませんが、業種・業態を問わず、内製化支援のお話を非常に多くいただくようになっています。

今後の展望

「内製化」の取り組みにより、データドリブン組織の組成、新たな事業基盤の構築、そして新たな事業展開がもたらされると言いましたが、今後は「新たな事業展開」にもっとシフトしていかなければならないと考えています。 

今までは事業パートナーシップと言っても、発注元と発注先、発注元と業者といった垣根がありました。それが「内製化」が進むことで、それぞれの強みがぶつかりあってシナジーが生まれるのではないかと思うのです。今は過渡期なので「内製化」と言っていますが、将来的に内製化が浸透した後には内製や外注といった概念がなくなり、Co-Create型の協働関係が成立するのではないでしょうか。

そうなれば、今まで私たちから見ればお客様だった方たちがビジネスパートナーになるわけで、同じサービスを一緒に展開できるようになると思うのです。実際、りそなホールディングス様は元々は私たちのお客様だったのですが、今は業務資本提携をさせていただき、ビジネスパートナーとしてビジネスを推進する関係になっています。 

「内製化」によってデータドリブンが実現し、新たに価値を生むことを考える時間ができる。上段ではこれを「クリエイティブ・エコノミー」と言いました。そうすると、例えば自動車会社が自動車製造や販売業務だけでなく、それ以外の全く異なる事業領域に業務範囲を広げていくことも可能になります。また、サービス提供を受けていた企業が、今後はサービスを提供する側にポジションチェンジすることも可能になります。ただ新しい知識と技術を身につけるだけでなく、組織力としてパラダイムシフトさせることが成功の鍵です。

「内製化」に成功したのであれば、「内製化」のサービスプロバイダーになって、他の企業が「内製化」を実現するための支援をしてもいいわけです。 

それ以外でも、先日プレスリリースされていた事例として、ある銀行が地図データサービスに参入したことを発表していました。地方銀行でも都市銀行の支店でも周辺の土地については知り尽くしているので、今までの地図データにはない価値を持つデータを付加することができます。「銀行が地図データサービスを始める」と聞くと、一見突飛な多角化のように見えますが、実は銀行の強みを活かした新たな事業展開とも評価することができます。 

これまでと違うビジネスと異なるフィールドで展開できる。ワクワクしてきませんか?まさしくチャレンジであり、クリエイティブエコノミーの目指す姿ではないでしょうか?

このように新しい事業展開を考えるのも結局は人であり、人が新しい事業のアイデアを考える時間を作らなければなりません。そのためには、まずリスキリングにより全社員が「内製化」を担えるようにしていくことが肝心であり、当面はその支援に注力しつつも、その先にある日本経済の活性化につながるだろう展開に思いを馳せている今日この頃です。

改めてですが、データ活用に係る内製化は「リスキリングによりデータを「使う」ことではなく、「使いこなす」ことを目指すことが本質であり、継続的な企業課題」です。これを念頭に置いた上で、内製化の取り組みを活性化していただき、日本経済の活性化に向けて少しでも貢献をさせていただければと考えています。

この記事の続きはこちら
ブレインパッドが提唱。今の日本企業が目指すべきDX内製化の理想形「DX内製化3.0」とは?


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2004年の創業以来、「データ活用を通じて持続可能な未来をつくる」をミッションに掲げ、データの可能性をまっすぐに信じてきたブレインパッドは、データ活用を核としたDX実践経験により、あらゆる社会課題や業界、企業の課題解決に貢献してきました。 そのため、「DXの核心はデータ活用」にあり、日々蓄積されるデータをうまく活用し、データドリブン経営に舵を切ることであると私達は考えています。

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