【シリーズ】データガバナンスがもたらすもの-第5回 データ基盤構築とデータガバナンス(前編)

2022年現在、多くの企業がDX推進に取り組むようになり、業務のデジタル化が進展している中、データガバナンスの必要性が叫ばれるようになった。しかし言葉だけが一人歩きし、多くの企業がデータガバナンスの真の意味を理解していないように見える。

そこで当社で専門的にデータガバナンスに取り組んでいる人材がモデレーターを務め、他の社内有識者と対談しながらデータガバナンスについて解き明かしていく連載を企画した。

第5回目は、ビジネス統括本部 データビジネス開発部でデータガバナンス関連のコンサルティングをマネジメントする櫻井洸平がモデレーターを務め、同部の阿南哲也とデータエンジニアリング本部 エンジニアリング推進部 部長の泰健浩と一緒に、スモールスタートでデータ基盤を構築する際にどうやってデータガバナンスを効かせていくかについて討論した。

■登場者紹介

  • 櫻井洸平
    ビジネス統括本部 データビジネス開発部 シニアマネジャー

独立系SIerにて、オンプレ、プライベート、パブリッククラウドのインフラ全般の技術知識から、お客様へクラウドシフト、クラウド活用、クラウド推進のコンサルティングを経験。ブレインパッドに参画後 企業におけるデータ活用のためのシステム企画から、活用を推進する組織醸成や人材育成のコンサルティングをプロジェクトマネージャとして対応。

  • 阿南哲也
    ビジネス統括本部 データビジネス開発部

外資系SIerにて金融・自動車業界を中心にシステム構想策定から導入までを包括的に支援。
2021年のブレインパッド参画後は、データ分析基盤の構想策定および、分析基盤に収集したデータのマネジメント/ガバナンスについて、
計画/ルール策定/実施まで一貫した支援に取り組む。

  • 秦健浩
    データエンジニアリング本部 エンジニアリング推進部長

SIer、事業会社を経てブレインパッド入社後は、某エンターテインメント施設における「データドリブンマーケティング」システム構築案件などを担当。2020年7月からは、データ基盤の構築標準化を目的に新設された、エンジニアリング推進部の部長を務める。

写真左から阿南哲也・秦健浩・櫻井洸平

トップダウンのデータガバナンスとボトムアップのニーズ

ブレインパッド・櫻井洸平(以下、櫻井) ブレインパッドのデータガバナンス構築支援の方法論として、「攻守一体のデータガバナンスフレームワーク」というものを提唱していることは以前の回でお話ししました。

「守り」とは監督、すなわちルールを作ってそれを守らせることで、戦略と統制/管理の2つの観点があります。また「攻め」とは執行、すなわちガバナンスによって効率的にデータを活用しビジネス価値に結びつけることです。これには組織/人材とプロセス、技術、品質の4つの観点があります。これら6つの観点をデータ活用の全体戦略に基づき、網羅的にバランス良く検討していくというのが私たちが提唱するデータガバナンス策定の進め方になります。

これは全体戦略から落とし込んでいくトップダウン型のアプローチになることは言うまでもなく、これこそが本来ブレインパッドが提唱すべき理想的なデータガバナンスの進め方という信念を私たちは持っています。

株式会社ブレインパッド 
ビジネス統括本部 データビジネス開発部
シニアマネジャー 櫻井洸平

しかしながら、これとは逆方向であるボトムアップ型アプローチのニーズが多いのも現実です。ニーズに応えるべくボトムアップ型の支援も行っていますが、これは理想とは違い非常に難しい面があります。その難しさをどうやって克服しようとしているのか――これが今回の討論のテーマになります。

そこで今回は、ボトムアップ型アプローチの中心となる、データガバナンスの実行環境となるシステム開発を横断的に推進、統括されている、秦さんをお招きしました。

では秦さん、まず簡単に自己紹介をお願いできますか。

ブレインパッド・秦健浩(以下、秦) データエンジニアリング本部 エンジニアリング推進部の部長を務めている秦です。同本部のビジネスをスケールさせる施策の企画、実行を担う部署を統括しています。

株式会社ブレインパッド
データエンジニアリング本部 エンジニアリング推進部長
秦健浩

注力している業務は、アーキテクチャ、セキュリティ、運用に関する標準化策定とその実行です。また、それだけの用途に限りませんが、今回のテーマであるボトムアップ型のアプローチを進めるために有効な「SSP(Smart Strategic Platform)」というデータ活用プラットフォームを提供しています。

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ブレインパッド・阿南哲也(以下、阿南) 櫻井さんの下でコンサルティングを担当しているメンバーの阿南です。データ分析基盤の構想策定および、分析基盤に収集したデータのマネジメントおよびガバナンスについて、計画からルール策定、実施までを支援しています。

株式会社ブレインパッド 
ビジネス統括本部 データビジネス開発部
阿南哲也

データガバナンスのボトムアップ型アプローチ

櫻井 早速ですが阿南さん、ボトムアップ型のアプローチが必要な背景について説明してください。

阿南 ブレインパッドではデータガバナンスのアプローチはトップダウン型を理想としていることは櫻井さんからも説明があった通りですが、実際には、主にIT部門ならIT部門に、マーケティング部門ならマーケティング部門に、という風に、現時点で必要なビジネス目的に限定したデータ基盤を構築しながら、データガバナンスも効かせたいという要望が寄せられることが多いのです。

 IT部門という部門の性格上、経営層から「データ活用のために早々にデータ基盤を構築せよ。また、データを活用しやすいようにデータガバナンスも整備せよ」というテーマだけが下りてくることが多いですね。そうなると限定された業務範囲を対象にできるだけ早くデータ基盤を構築する必要があるわけですが、一方でデータガバナンスをトップダウンで行うと、それは難しくなる、すなわちデータガバナンスもスモールスタートしたいということになるわけです。

阿南 早期に、しかも安全・安心にというのが要望の核心ですね。とはいえ、会社全体のデータ利活用戦略と整合性がなければデータガバナンスとは言えません。その後、会社全体に広げていくのだとしたら、整合性がないと経営層とIT部門の乖離がどんどん広がっていくことになります。この点についてはしっかりと留意してほしい旨、初期段階で必ず顧客には伝えるようにしています。

ですが、そもそもスモールスタートしたいという会社には、明確なデータ活用戦略がないほうが普通です。そこで手始めに顧客の課題をヒアリングしながら、データ利活用構想・戦略をまとめあげ、それに基づいて優先順位を付けるようにしています。

櫻井 何に優先順位を付けるのですか。

阿南 具体的にはDMBOK(Data Management Body Of Knowledge:非営利団体DAMA(Data Management Association International)により作成されるデータマネジメント知識体系ガイド、データガバナンス推進に必要とされる知識体系)で定義される領域の中から、どの領域を優先的に対応するかを決めます。

DMBOKはベストプラクティス集ですから、全てに対応する必要はありませんし、逆にそこに正解があるとは限りません。まず実施する領域を選択し、それぞれどのように実施するかは会社の業態、規模などに基づいて検討する必要があります。

 その中でもかなり具体的に戦略や課題が見えているものは第1フェーズに、そうでないものは第2フェーズ、もっと曖昧なものは第3フェーズにと、徐々に曖昧さをなくしていきながら拡大していく、というやり方をします。テーマによっては、そのデータ基盤の運用ルールを全社的に拡大するよりは、その基盤だけに特化させておくほうがいいもの、つまりスケールしていかないケースもあります。

実情に応じたデータガバナンス組織の組成

櫻井 ボトムアップ型アプローチで検討すべきことをもう少し具体的に説明してください。

阿南 IT部門主体で進めることが多いのですが、その場合にはDX推進組織や経営層といった権限を持つ組織と歩調を合わせることが必要になります。そうしないと話が二転三転して無駄な時間が掛かりますし、せっかくのガバナンスの取り組みが横に広がらず、個別のものにとどまってしまいます。

実際には、事業規模や組織体系、組織間の力関係、各種認証の取得有無、マネジメント体系の有無などに応じて、DMBOKの実施領域を整理します。場合によっては、専門のデータガバナンス組織を組成するか否かについて考えることもあります 。

 データガバナンス組織の組成については、原則全社横断型になるはずですが、事業規模が大きくなるほど横断組織の運営が難しくなる傾向があります。
従って、データガバナンスをスモールスタートで進めていくうえでは、優先的にガバナンスを効かせる組織を選定するところから将来的なスケールのさせ方まで、初期段階でしっかり計画しておき、事前に調整しておくことが重要となります。

阿南 現場では業務で必須だからデータを見ているわけで、面倒なガバナンスのルールに従ってデータが見たいわけではありません。データガバナンスが大切だという価値観を理解してもらうのは極めてハードルが高く、文化として根付かせるのは困難なのです。

 事業活動において、既にデータの活用が進んでおり、そこには事業部ごとのローカルルールも存在しています。その上からデータガバナンスの横断組織が新たなルールを策定してもなかなか受け入れてもらえません。

そういった現場の状況をしっかりヒアリングしながら進めていく点では、ボトムアップもトップダウンのアプローチも大きくは変わりません。阿南 顧客企業ごとに、ガチガチにルールを固めたいと考えるところもあれば、既にデータ活用が進んでいる現実に合わせてルールに曖昧さを残したいと考えるところもあります。要するに「使えるルール」にしたいが、それが何なのかは会社の規模やデータ活用の進み具合や文化などによって違ってくるということです。


 あるいは、プライバシーマークのような法的な要請による認証制度であれば有無を言わせずに守らせなければなりません。しかし、データガバナンスに関しては(コンプライアンスやセキュリティは別として社内ルールであれば)守らなくてもお咎めを受けるわけではありません。「うちの事業部にそのルールは必要なの?」「現状のデータ活用の仕方で組織目標は達成しているのだから問題ある?むしろ効率悪くなったらどうする?」といった声にIT部門は負けてしまいがちです。

阿南 さらりと「DMBOKの実施領域を整理します」などと言いましたが、実際には考えることは山積みです。正解のない話で、顧客の実情に応じて腹を据えて取り組んでいくしかありません。

※後編に続く。

本シリーズのラインナップ

その他、「番外編」としてデータドリブン組織に変革を遂げた企業との対談も予定しております。

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WRITER執筆者プロフィール

株式会社ブレインパッド

DOORS編集部

ブレインパッドのマーケティング本部が中心となり、主にDXにまつわるティップス記事を執筆。
また、ビジネス総合誌で実績十分のライター、AI、ディープラーニングへの知見が深いライターなど、外部クリエイターの協力も得て、様々な記事を制作中。

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