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【マーケ効果改善・生産効率化】 AI需要予測を活用した製造業の成功事例

公開日
2020.10.30
更新日
2024.03.07

※本記事は、ブレインパッドが運営する人工知能ブログ「+AI」に掲載されている記事の転載版になります。

消費者の購買行動が著しく変化し続ける現代、多くの企業がテクノロジーを駆使したマーケティング活動を行うようになりました。
同時に、工場などの製造現場においても、データの利活用を通じた生産効率の向上が進んでいます。
製造業のバリューチェーンに照らしてみると「マーケティングと製造」は異なるプロセスに位置づけられますが、これらの変化の背景には、「ある共通点」 が挙げられます。

今回は、マーケティングの効果改善や生産効率化を実現する、AI活用の最前線をご紹介します。

製造業でも、AI・機械学習による「需要予測」が導入されている

前述のように、マーケティングと製造の現場は今、ある共通の技術によって急速な変化が進みつつあります。
それは、AI・機械学習による「需要予測」です。

需要予測とは、商品の需要に影響を与える要因とその度合いから将来の需要を予測し、モノやヒトの調達の最適化を図るためのテクノロジーのこと。
激しい国際競争にさらされ、人手不足が深刻化する製造業各社にとって、最も必要とされる技術の一つと言えるでしょう。

そして、グローバル競争が激化する中で生き残るための鍵とされているのが、「短期化が進むプロダクトライフサイクル」への対応です。
消費者の心が移ろいやすい昨今、一度生産した商品を短期間で売り切ることが求められるため、「何が、どこで、どれだけ売れるのか?」を予測した上で、速やかに流通・販売を行うことが求められているのです。

また、人手不足が叫ばれる製造現場においては、限られた人的資源を活用しつつ、より高付加価値なものづくりを行う必要があります。

このような課題を解決するために、AI・機械学習による「需要予測」の活用が進んでいます。
続いて次章では、AI・機械学習を活用した具体的な成功事例をご紹介します。


【事例①】AI・機械学習×需要予測でマーケティング効果を20%改善

1つ目にご紹介する事例は、マーケティングの現場において機械学習を用いたデータ分析を行い、顧客ロイヤルティの向上を実現した日本たばこ産業株式会社(以下、JT)様の事例です。

同社は、たばこ製品を扱うという特性上、対外的な広告宣伝活動に厳しい規制がかかっています。
そのため、満20歳以上の喫煙者である確認が取れた会員だけにキャンペーン情報を提供するなど、個客に対するOne To Oneマーケティングに注力している点が特徴です。
しかし、多くの会員データを保有しながらも、十分に活用できていない点が課題となっていました。

JTが課題解決のポイントとして考えたのが、“経験と勘に基づくマーケティング活動” からの脱却を図ることです。
これはすなわち、担当者のスキルに依存した施策展開ではなく、データに基づくマーケティング施策を行うことで、組織としての一貫性を保ちながらマーケティング成果の追求を行うことを意味します。

そこで同社は、今までに活用していなかった定期アンケートの結果や、Webアクセスなどの行動情報を用いて、新たにAIプロジェクトを始動しました。

同プロジェクトでは、「誰に、どんな価値を提案すべきか?」という問いを設定し、ターゲットの分析に着手。
次のようなデータをAIに投入し、「どの会員が、どの銘柄に転移しやすいか」 を予測する銘柄転移の予測モデルを構築しました。
・会員の属性データ
・行動データ(利用銘柄やWebサイト閲覧履歴)
・マーケティングキャンペーンデータ(会員ごとの接触履歴)

ここで完成した予測モデルとは、そこに会員データを投入すると、『6カ月後に転移する銘柄ごとの確率は、A銘柄:29.1%、B銘柄:17.3%、C銘柄:9.7%』 という形で、予測値を返すものです。
この予測モデルに会員データを投入し、6カ月後に実際の数値と照らしたところ、予測値が高い精度であることが判明。
以降、この予測モデルをマーケティングキャンペーン(ダイレクトメールの発送)に活用するテストも行い、約20%の費用対効果の改善にも成功しました。

この成果を受けて、同プロジェクトでは、「ターゲットが銘柄選びの際に重視するポイントは何か?」という新たな問いを設定し、統計的な分析手法を用いた次の施策を始動しています。

【事例②】AI・機械学習×需要予測で工場の省エネルギー化・生産効率改善

2つ目にご紹介する事例は、バッチプラントにおける蒸気量需要の予測を行い、工場の省エネルギー化、燃料・電力等にかかる費用の削減を目指す、三井化学株式会社様の事例です。

同社は従来より、プラント内の必要蒸気量、電力の自家発電量、燃料コストをリアルタイムで監視するシステムを運用しており、プラント運営の最適化に注力していました。

次のステップとして、「近未来に起こる蒸気・電力量の変動の予測」をベースにした、工場の更なる省エネルギー化と生産効率の最適化が求められていました。

そこで、次のデータをAIに投入し、近未来の蒸気の需要量を予測するモデルを構築。
工場内で発生する蒸気ロス、過剰な燃料消費の抑制を狙っています。
・該当プラントの稼働、非稼働の実績データ
・蒸気の使用実績データ
本プロジェクトは、三井化学の中核工場である大阪工場で実施されており、最適なモデルの構築に成功すれば、プラント運営の新たなモデルが確立されると期待されています。

勘や想いに頼らない、データを論拠にした施策を展開しよう

今回ご紹介した事例は、いずれも社内に蓄積した豊富なデータを元に、新たなモデルの確立を目的としたものです。
このようなモデルが構築されれば、それまでは一部担当者の経験や勘(もしくは、その時々によって変化しうる想い)に依存していた施策展開を、データに論拠した施策として展開することが可能になります。
市況の変化を予測することは困難な時代。
限られた人的リソースで成果を最大化するためには、AI・機械学習を活用した需要予測がより一層求められるはずです。

このようにAIを活用することで製造業では意思決定の迅速化や生産性向上などのさまざまなメリットを得ることが可能です。
AI活用が製造業に与えるメリットについて、より詳しく一覧にして紹介した内容は資料にまとめましたので、ご興味がございましたら是非こちらもご覧ください。



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