メルマガ登録
ラスベガスで開催された「Google Cloud Next 2025」に現地参加してきました。
速報ブログ(Day 0からDay 3)では、主に現地の熱量や発表内容をリアルタイムでお伝えしましたが、今回は“振り返り”として、注目セッションや全体を通じた学びを整理してお届けします。
Google Cloud が年に一度開催する、クラウド技術とAIの最前線を体感できるグローバルカンファレンスです。今年はアメリカ・ラスベガスのMandalay Bay Convention Centerにて、2025年4月9日から11日の3日間で開催され、3万人以上が世界中から参加しました。
最新プロダクトの発表や企業による導入事例、生成AIを活用した次世代の業務変革などをテーマに、基調講演をはじめ、300以上のセッションと展示(EXPO)が行われました。参加者は開発者から経営層まで幅広く、Google Cloudの進化を“体験”できる機会となっています。
「Google Cloudでは、AIがお客様のミッションの推進を支援する最も重要な手段であると考えています。」
──この言葉から始まったキーノートには、「AIを全方位でビジネスに実装していく」という強い意志が込められていました。
最初に、“2025年に750億ドルの設備投資”を計画しているという発表がありました。これはAIを支えるインフラ整備に向けたもので、単なるトレンドではなく、“本気の産業基盤化”を目指していることがうかがえます。
AIを「作る」から「使われる」、さらに「共に働く」存在へと昇華させようとする方向性は、Geminiシリーズや各種エージェント製品群の展開からも明らかでした。技術だけでなく、社会実装の視点が随所に感じられ、Google CloudがAIの民主化を本気で推し進めていると感じました。
発表された数多くのアップデートの中から、特に重要と思われるポイントを領域ごとに厳選しました。
領域 | サマリ | 主要発表 |
---|---|---|
AI/ML |
|
|
Data Analytics |
|
|
Infrastructure/Application Modernization |
|
|
Database |
|
|
Google Workspace |
|
|
Security |
|
|
Google Cloud Next 2025では、AIやデータに関するセッションが数多く行われました。
ここではブレインパッド社員が参加したセッションの中で、データを活用する弊社として特に印象に残ったテーマをいくつかピックアップします。
Vint Cerf博士(TCP/IPの開発者の一人)の講演では、生成AIの利便性と並行して「信頼できるAIとは何か」という根本的な問いが投げかけられました。
同日発表されたA2Aプロトコルのように、エージェントエコシステムが構築され、エージェントとエージェントが対話する時代になる際には、インターネット黎明期に人同士のコミュニケーションにおいて問題になったように、相手のエージェントをどのように“信頼”して通信をしていくか、ということが非常に大きな問いになるだろう、という主旨の発言がありました。
「AIとプライバシーは対立するものではなく、共に進めるべき両輪である」というメッセージは、生成AIの実用化フェーズが進む中で重視すべき観点だと感じました。今後、生成AIはさらにビジネスの中に溶け込んでいくと思いますが、「性能」だけでなく、「安全性」、「信頼性」といった、これまで我々がAIシステムの構築において取り組んできた領域に改めて目を向ける必要があると認識しました。
今回のイベントでは、Google Cloudが特にAIエージェントを軸に、エンタープライズ領域の業務変革を推進する戦略的方向性を示していました。
Google Cloudの優位性として、異なるプロバイダー/フレームワーク上に構築された複数の AI エージェントが相互に連携する「マルチエージェント」に対応したシステム提供について基調講演や各種セッション内で述べられていました。
中でも企業のエコシステム全体でのエージェント連携を実現するためのA2Aプロトコルは、ベンダーやフレームワークという違いを超えて、エージェント同士の共通言語となる存在で、マルチエージェントシステムの実現に貢献しています。現状では、Box、Deloitte、Elastic、Salesforce、ServiceNow、UiPath、UKGなど50社以上のパートナーとの共同開発が進められています。
他にも、Agent BuilderやData Agentなどの登場により、エンジニアだけでなくビジネス部門も自律的にAIと連携できる環境が整いつつあります。これらのセッションからはGoogle Cloudが「業務を超えた対話型AIの普及」を目指していることが強く伝わってきました。
BigQueryは、AIと連携しながら“自律的に考え、提案する”分析基盤へと進化しつつあります。
「データエージェントファミリー」は、データエンジニア、サイエンティスト、ビジネスユーザーそれぞれの立場に対応しており、従来よりも直感的にデータを扱えるようになります。
グローバル玩具メーカーの事例では、数ヶ月かかっていたレビュー分析が数分に短縮され、ESGの観点で新たな気づきも得られたことが取り上げられました。こうした事例を通じて、AIが意思決定の質を高め、判断までの時間を大幅に短縮していると実感しました。
ガバナンス関連セッションからは、「AI時代にふさわしいデータ管理のあり方」が具体的に示されていました。
特徴的だったのは、“生成AIがガバナンスそのものを支援する”という新たな視点に立ち、分類・メタデータ付与・ルール生成などをAIが自動で行うことです。これにより従来の手作業では追いつかなかったスピード感と正確さを実現しようとしています。
また、「BigQuery universal catalog(Dataplex Catalog+metastoreの機能統合)」や「Knowledge Engine」のような仕組みを活用することで、“誰が見ても、何のデータかがわかる状態”を保ち続ける環境づくりが可能になってきました。
セッションで紹介された事例からは、「業務全体における“データの扱い方”を明確に設計すること」がAI活用における信頼性と拡張性の鍵であることが伝えられており、「ガバナンスはルールではなく“使いやすさ”の設計である」という考え方に、大きく共感しました。
Google Cloud Nextは、単なるプロダクト発表や技術共有の場にとどまらず、“体験そのもの”に価値があるイベントだと強く感じました。発表内容やデモはオンラインでも把握できますが、“人と話し、見て、触れる”ことで得られる理解や気づきは、やはり現地ならではのものです。
Duet AIによるライブコーディングやGeminiを使ったアーキテクチャ設計支援など、実演を通じて製品理解が一気に進む展示が数多く用意されていました。実際に“動いている様子”を見ることで、技術の成熟度や使いどころがより具体的にイメージできました。
セッション後の質疑応答や、ブース周辺では、Googleのプロダクトマネージャーやエンジニアと直接話す機会もありました。プロダクトマネージャーとの会話で「なぜ今この機能なのか」「何を解決したいのか」といった背景や将来像を直接聞くことができたことは、現地にいたからこそ得られた体験でした。
Japanからの参加者が集う交流会では、他のパートナー企業や事業会社の方々と直接対話する貴重な機会がありました。イベントの所感から実際の業務課題まで、カジュアルな場でも密度の高い情報交換ができました。偶然にも同じテーブルの方が弊社のお客様であり、嬉しい出会いもありました。
Google Cloud Next 2025に参加したことで、技術的な学びはもちろんのこと、個人的にも大きな刺激を受けた3日間でした。ラスベガスという非日常な空間で、スケールの大きな演出とともに、普段の業務では得られない密度の高い体験が得られました。日々の業務から離れ技術やビジョンとじっくり向き合える、貴重な時間となりました。
今後、生成AIやデータ活用はますますビジネスに浸透し、それをどう扱い、どう根づかせていくかが問われていくであろうと感じました。
そして、2025年8月5日(火)と6日(水)には、Google Cloud Next Tokyo 2025が東京ビッグサイトにて開催されます。ブレインパッドも出展を予定しておりますので、ぜひ会場で直接お話できることを楽しみにしています。
【参考】
【早期登録特典あり】8 月 5 日、6 日 Next Tokyo 東京ビッグサイトにて開催! | Google Cloud 公式ブログ
あなたにオススメの記事
2023.12.01
生成AI(ジェネレーティブAI)とは?ChatGPTとの違いや仕組み・種類・活用事例
2023.09.21
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?今さら聞けない意味・定義を分かりやすく解説【2024年最新】
2023.11.24
【現役社員が解説】データサイエンティストとは?仕事内容やAI・DX時代に必要なスキル
2023.09.08
DX事例26選:6つの業界別に紹介~有名企業はどんなDXをやっている?~【2024年最新版】
2023.08.23
LLM(大規模言語モデル)とは?生成AIとの違いや活用事例・課題
2024.03.22
生成AIの評価指標・ベンチマークとそれらに関連する問題点や限界を解説