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近年、生成AIが多彩な応用領域で注目を集めています。特にユーザーとのやり取りを担うアプリケーションでは、高度な言語生成や画像生成といった先端技術を取り入れ、より豊かなUI/UXの実現が進められています。
こうした流れの中で、実用性と快適性を両立するインターフェース設計が大きな焦点となっています。しかし、多様な機能を整合的に設計へ落とし込むことは、開発者にとっても容易ではありません。
本記事では、様々なインターフェース形態を中心に、生成AIを活用するアプリケーションのUI/UX設計に求められる考え方を詳しく解説し、今後どのような視点が設計に必要かを提示します。
生成AIを活用したアプリケーションにおいて、UI/UXが果たす役割は非常に大きいといえます。先端技術の恩恵をユーザーが十分に受け取るためには、使いやすい操作方法や分かりやすい出力表示が不可欠です。
生成AIの本質的な強みは入力されたテキストや画像から新たなアイデアやアウトプットを創出できる点にあります。
しかし、その結果が的確に伝わるかどうか、安全に利用できるかどうかは、適切なUI/UX設計に大きく依存します。
例えば、AIが提示する複数のプランやテンプレートを効率的に比較できる仕組みがあると、利用者は最適な選択をしやすくなります。逆に、複雑な操作画面や画面遷移が乱立し、結果の評価基準が不明瞭な状態では、高性能な生成AI技術を搭載していても、その効果は十分に発揮されません。
近年の調査では、ユーザはAdobe SenseiやFigma、Stable Diffusion、DALL·E、Uizardなど、多様なAI関連ツールを組み合わせて利用するケースが増加しています。
これらのツールは、ワークフローの速度や創造性、ユーザビリティを高める可能性を持つ一方、連携方法やデータの扱いを誤ると、全体としてのユーザー体験が損なわれる要因にもなり得ます※1。
NNGroupをはじめとする研究機関は、こうした点を重視し、現在UX/UIの基盤整備に注力しています※2。例えば以下のような項目についてです。
また、彼らは現状のUX/UIの改良についても以下のようなテーマで取り組んでいます。
また、別の切り口では、Microsoftなど、ベンダーの発表するAI原則やHAXツールキットなどのリファレンスも、生成AIのUX/UI設計のガイダンスとして推奨されています。
例えば以下の3つのように、生成AIのインターフェースを画面の中でどのように配置するかは、用途によって変わります※3。
これらの資料を活用することで、利用者が誤操作によって混乱しないように、入力と出力の透明性を確保し、根拠をわかりやすく示すアプローチが検討しやすくなります。
では改めて、生成AIに利用されているインターフェースの利点と注意点について触れていきます。
チャット形式のインターフェースは、多くのユーザーにとって直感的に利用しやすい点が大きな魅力です。ユーザーが問いかけるたびに生成AIが応答する仕組みは、対話型の操作感を提供し、新たなアイデアの発想を容易にします。一般的なフォーム入力よりも柔軟性が高く、企業の問い合わせ対応や学習支援アプリケーションなど、幅広い利用シーンが想定されています。
一方で、連続する会話の文脈をAIが十分に追跡できない場合や、誤った情報を返すリスクも存在します。そのため、ログ表示や再確認機能を設けるなど、ユーザー自身が回答の信ぴょう性をチェックしやすい枠組みが必要です。特に、GenUIなどの新しいチャットシステムでも、FigmaやGoogle Slidesなど他ツールとの連携が課題として挙げられています※4
こうした課題を総合的に捉え、ユーザーの業務フローや目的に合わせてチャット形式を最適化することが、活用価値を高めるポイントとなります。
ウィザード形式やステップ形式は、操作手順を段階的に案内することで、ユーザーの迷いを最小限に抑えるアプローチです。特に、生成AIが複雑な出力を行う場合に、どのように入力を行えば最適な結果が得られるかという導線を明確に示すことができます。
また、これらの形式はページ遷移が整理されているため、追加の要素や機能を組み込んでも利用者の混乱を防ぐ利点があります。
ただし、ステップ数が多すぎると煩雑さが増すため、バランスを取ることが重要です。生成AI特有の柔軟な質問応答や出力のカスタマイズを阻害しないためにも、ユーザーがいつでも前後のステップに戻ったり、高度なオプションを選択できる仕組みが求められます。これにより、初心者から上級者まで幅広いユーザーにとって使いやすいワークフローを実現できます。
生成AIが生み出す大量の情報を一元的に整理するには、ダッシュボードや可視化形式が有効です。例えば、生成AIが作成した複数のアイデアをカード形式で同時表示したり、数値データをグラフやチャートに変換したりすることで、利用者が多角的な視点から迅速に意思決定できる可能性が広がります。
特に業務分野では、Power BIなどのプラットフォームでAIアシスタントを統合する事例もあり、ユーザーは別のシステムに移動せずに分析を完結できます※3。
ただし、視覚化が過剰になると利用者が情報過多に陥り、意思決定に時間を要する場合もあります。見やすい要素配置や絞り込み機能など、取捨選択を手助けするUI/UXの工夫が重要です。
コマンド入力やキーボードショートカットによる操作は、熟練ユーザーにとって高い効率をもたらすインターフェースです。生成AIの出力を素早く呼び出したり、特定のパラメータを一度に指定したりすることで、作業フローを短縮できます。また、文章作成やデザインツールで頻繁に機能呼び出しを行う際に、コマンドベースのやり取りはスピード感を損なわずに連続的な作業を可能にします。
一方で、コマンド形式は習熟までのハードルが高く、初心者の利用には向き不向きが生じることもあります。生成AIアプリケーションでは、簡易的なボタン操作と高度なコマンド入力を併用できる設計が推奨されます。これにより、幅広い層のユーザーが最適な操作方法を選択できるようになります。
また、生成AIアプリケーションにおける全般的な課題にも触れていきましょう。
まず、AIが提供する情報の信頼性です。特にユーザーが専門知識を持たない場合、誤った回答や偏ったデータに基づく推論を無防備に受け取りやすくなります。
こうしたリスクに対処するには、アプリケーション上での透明性あるデータ元の提示と、継続的な検証サイクルが不可欠です。例えば、異なるドメインの問題に直面した場合、ユーザーがすぐに出典や証拠を確認できる設計を組み込むことが重要です※5。
次に考えられるのが、作業フローの中断リスクです。Assistive型のように既存のアプリケーション内部でAIアシスタントを統合すると、別の画面に移動せずに支援を受けられるため便利ですが、その実装が不十分だとメイン作業との往復が多発し、業務効率を損なう恐れがあります※3。
また、UIの初期ドラフト生成は早い段階で役立つ一方、最終的なUXデザイン品質の確保には人間のチェックが不可欠です※4。
さらに、生成AIによる大量のペルソナやシナリオ提案は、見た目が整っていても現実のユーザー像と乖離する場合があります。生成AIから出力されたデータは、必ずユーザ自身による検証が必要となりますが、大量のデータを検証する気を失わせるような表示は、ユーザの利便性を損ないます。
実際、Kyle Soucyの議論では、出力量だけに注目せず、実際のユーザー背景を正確に捉える検証姿勢が必要とされています※5。
ここからは、上を踏まえて、実際にUI/UXを形にする際の具体的なポイントを解説します。入力面と出力面の双方でユーザーが快適に利用できるようにするためには、どの部分をどのようにデザインするかが重要です。
入力設計とは、ユーザーがどのように指示やデータを与えるかを定義する作業です。生成AIアプリケーションでは、テキスト入力だけでなく音声入力や画像アップロードなど、マルチモーダルな方法を取り入れることも可能です。ただし、あまりに多くの手段を提供すると、かえってユーザーに選択の負担を強いる場合もあります。
そのため、利用場面に合わせて最適な入力チャネルを見極め、わかりやすいガイドやヒントを表示することが求められます。
また、Microsoft社のcopilotUXにおける基本原則の一つである「人間が操作を主導する、人間を受け身にしない」という視点も重要です。AIが使いやすい入力インターフェースを提供するだけでなく、利用者自身が責任を持って最終的な判断を下すための選択肢を常に開示するインターフェースが大切です※3。
生成AIの出力は多様な要素を含むため、ユーザーが理解し、検証しやすい形で提示する工夫が必要です。例えば、画像生成機能であればサムネイル画像を軽量に表示してから詳細閲覧へ誘導したり、文章生成機能であればハイライトや注釈を付与して出力内容の根拠や意図を可視化する方法があります。こうすることで、ユーザーはAIの処理を追いやすく、結果を正しく評価する時間を確保できます。
フィードバックについては、ユーザーが出力の品質を評価し、それがAIの学習や将来の提案精度に反映される仕掛けを作ることで、使うほどに賢くなるアプリケーションが期待できます。しかし、高忠実度化が過剰になるとデザインの自由度が損なわれ、創造性が阻害される点にも注意が必要です※4。
それ故に、今後の展望としては、ユーザーとの対話がより自然に進化する方向性が挙げられます。生成AIがリアルタイムで意図を汲み取り、利用者が明示的な指示を出さなくても、先回りして必要な情報を提案してくれるようなインターフェース設計が想定されます。
また、その延長上では、チャット形式とウィザード形式、ダッシュボード表示などが統合された複合型のUI/UXも登場する可能性があります。例えば、データ分析の場面では対話的なチャット画面で指示を出しながら、並行してダッシュボードが更新される仕組みが考えられます。
また、徐々にMicrosoftや他企業が推進するAI原則を軸に、インターフェース単位での透明性と説明責任が求められるでしょう。
生成AIがどのようなデータを使用し、どのプロセスを経て出力を導いているかをユーザーが理解できるようにすることで、納得感と安心感が生まれます。一方で、その情報開示が長文化すると操作画面を圧迫してしまう懸念もあります。最終的には簡潔さと説明責任を両立するデザインが鍵となります。
また、AIアシスタントの活用範囲は、企業の内部システムだけでなく、個人レベルにも広がると考えられます。そのため、多言語対応やアクセシビリティへの配慮など、グローバル規模で検討されるべき課題も増えています。
そのため、前述したように、NNGroupなどの研究組織は、こうしたインターフェースの進化と並行して検証を進め、利用者がより自在に生成AIの能力を活用できる社会を目指しています※2。
生成AIアプリケーションのUI/UX設計は、技術力だけでなく、ユーザーの行動や心理を深く理解する姿勢が欠かせません。多彩なインターフェースを組み合わせることで、利用者が本当に求める価値を最適な形で提供できる可能性が広がります。
※1 AI Image Generation: Emerging Trends and Its Impact on UI/UX Design
※2 Nielsen Norman Group – A Research Agenda for Generative AI in UX
※3 Docs – Creating a dynamic UX: guidance for generative AI applications
※4 A Formative Study to Explore the Design of Generative UI Tools to Support UX Practitioners and Beyond
※5 Medium – Mitigating the risks of using GenAI in UX design and user research
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