昭和医科大学との共同研究に見る、ブレインパッドの産学連携──学会発表と大学講義のダイジェスト

公開日
2026.08.03
更新日
2026.08.03

データ分析とAIの社会実装を牽引するブレインパッドでは、目前のビジネス支援にとどまらず、将来的な技術の選択肢を広げるためのR&D(研究開発)活動やアカデミアとの連携にも積極的に取り組んでいます。

今回は、2026年春に実施した歯科医療×AIに関する2つの学会発表と、今年で2年目を迎えた昭和医科大学での講義の模様をダイジェストでお届けします。

この共同研究は、ブレインパッドにとって、すぐにヘルスケア事業としてサービス化することを目的にしたものではありません。しかし、難易度の高い高次元データ(3D)に挑むことで社内の技術的ケイパビリティ(対応力)を拡張すること、そしてデータサイエンスのリーディングカンパニーとしてのプレゼンス(存在感)を社会・学術界に示すことを目指した、ブレインパッドの未来への種まきの一環です。

技術検証については2つの専門学会で成果を公表し、また教育貢献として、歯学部で行われたデータ活用・AIに関する講義にて講師を務めました。本記事では、それぞれの現場での熱気や、活動を通じて得られた知見を詳しくレポートします。

 

本記事の執筆者
  • データサイエンティスト
    西岡 佑眞
    Yuma Nishioka
    会社
    株式会社ブレインパッド
    所属
    流通・小売事業部
    役職
    データサイエンティスト
    大学院修士課程修了後、2025年にブレインパッドにデータサイエンティストとして入社。これまで、機械学習を用いた道路建設業界の損傷道路検出モデル開発プロジェクトや、3次元データ処理を用いた歯科医療分野における共同研究プロジェクトに従事。
  • データサイエンティスト
    登内 茂樹
    Tonouchi Shigeki
    会社
    株式会社ブレインパッド
    所属
    産業基盤事業部
    役職
    シニアリードデータサイエンティスト
    前職ではオペレーションズ・リサーチや統計・最適化モデルを用いた分析業務に従事。現在は、機械学習(自然言語処理、深層学習、画像解析等)のアルゴリズム構築から実装支援までのプロジェクトをリードし、顧客の課題解決を推進している。
  • データサイエンティスト
    田口 雅也
    Masaya Taguchi
    会社
    株式会社ブレインパッド
    所属
    流通・小売事業部
    役職
    データサイエンティスト
    数理最適化を専門に大学院修士課程修了後、2024年にデータサイエンティストとしてブレインパッドに入社。入社後は物流業界における配送最適化プロジェクトのほか、3次元データ処理を用いた歯科医療分野の共同研究などに従事。

1. 【学会レポ】学会での成果公表。ITと歯科、それぞれの舞台から次の一歩へ

近年、私たちが昭和医科大学※1との共同研究で取り組んでいるのは、「3Dスキャンデータを用いた矯正歯科診断サポートの実現可能性」の検証です。

※1 昭和大学は2025年4月1日に名称を「昭和医科大学」へ変更しました。

これまで主流だった口腔内画像(2D)による画像認識AIでは、歯列の微妙な形状差を識別することに限界がありました。そこで本研究では、歯列の空間構造を高精度に保持できる「3Dスキャンデータ」に着目。歯単位のセグメンテーション(分離)や幾何特徴量の抽出を経て、6種類の不正咬合を判定する分類モデルを構築し、その「技術的な有効性」を確かめました。

この研究成果を携え、3月と5月に毛色の異なる2つの学会で発表をしました。

①【情報処理学会】データサイエンスの視点から3Dデータの有用性を検証

2026年3月6日〜8日に開催された「情報処理学会 第88回全国大会」では、主に技術的なアプローチと分類性能(PR-AUC)について発表しました。

今回の検証では、あえて標準的な解析手法を採用しています。具体的には、3Dデータから特徴となる数値を手作業で抽出し、シンプルなAIモデルを用いて分類を行いました。これにより、技術の複雑さに左右されず、3Dデータそのものが持つ有用性を純粋に評価・比較することができます。これは、今後より高度なAIモデルを用いた解析へとステップアップしていくための、重要な前段階の検証という位置づけです。

現時点の検証成果として、症例によって精度にばらつきはあるものの、特定の症例においては高い分類性能(PR-AUC 0.9以上)を確認できた一方、過蓋咬合や切端咬合(PR-AUC 0.7前後)には依然として課題が残るなど、技術的な現在地が明確になりました。

情報処理の専門家が集まる会場では、「3Dデータを正確に扱うための前処理」や「データセットの構造」など、アルゴリズムやデータ工学に関する専門的なディスカッションが行われ、今後のモデル改良に向けた多くの技術的示唆を得ることができました。

②【日本デジタル歯科学会】臨床の視点から3Dデータ活用の意義を提示

続く2026年5月9日〜10日には、歯科医療の専門家が集まる「日本デジタル歯科学会 第17回学術大会」が開催されました。

こちらでは、情報処理学会での発表と共通の研究成果をベースにしつつ、昭和医科大学の学生によるポスター発表が行われました。歯科医師や医療研究者に向けて発表が行われ、ブレインパッドは技術的フォローの形で参加しています。情報処理学会での発表が手法そのものの検証に重きを置いていたのに対し、今回は医療現場の専門家が集まる場ということもあり、より臨床の立場からの検証としての側面を強調した発表となりました。

発表では、従来の「2D写真」と今回の「3Dデータ」を比較した結果が提示され、2D写真では判別が難しかった症例において、3Dデータを用いることで大幅に精度を向上させられることが示されました。データサイエンスの技術が、医療現場の具体的な課題にどうアプローチできるかという可能性を提示する内容です。

先行研究としてのプレゼンス タイムリーなことに、口腔内スキャナーは2026年6月から保険適用が開始され、学会でも今後の臨床活用への関心が非常に高まっていました。世界的にもまだ研究事例が少ない「3Dデータ解析」の領域において、このタイミングで共同研究の成果として具体的な検証データを提示でき、そこに技術面で貢献できたことは、「歯科×デジタル」の領域において弊社の存在感(プレゼンス)を強く印象付ける貴重な機会となりました。


2. 【教育貢献】未来の歯科医師へ届ける、ビジネス最前線のAIリテラシー講義

こうした研究活動を進める一方で、私たちは変化の激しいAI技術の動向を、未来の医療現場を担う学生の皆さんに伝える活動も行っています。

2024年から続く昭和医科大学との共同研究の一環として、今年も歯学部の学生向けに、AIに関する講義を実施しました。

なぜ今、歯科医師にAIリテラシーが必要なのか?

文部科学省の「歯学教育モデル・コア・カリキュラム」にAIに関する項目が導入されて2年目。実際の医療現場でも最新技術の導入が進む中、未来の歯科医師が「AIを正しく理解し、乗りこなすリテラシー」を持つことが求められています。

当日は80名を超える学生の皆さんに加え、大学の先生方も聴講に訪れ、会場は大きな熱気に包まれました。今年の講義は、ビジネス最前線の知見を交えた3つの切り口でお話ししました。

  • ①「生成AI」と「マルチモーダル」で体感する、進化の速度(担当:登内) ここ1〜2年で急速に身近になった生成AIや、今後の医療分野にも関わる「マルチモーダルAI」の動向を解説し、技術変化のスピード感を強調しました。
  • ② AI「社会実装」のリアル(担当:上席執行役員 鵜飼) あえて数式は使わず、身近なサービスを題材に「AIは研究室の中だけのものではなく、すでに社会のインフラである」というビジネスの現場感覚を共有しました。
  • ③ 共同研究と、医療人としての倫理(担当:登内) 現在進行形である昭和医科大学中納研究室との共同研究(3Dデータ解析など)を共有。その上で、医療人として知っておくべきデータの取り扱いリスクや倫理的課題について問いかけました。

受講した学生たちの声

講義終了後には、AIの活用法や共同研究の内容について個別の質問が寄せられたほか、受講アンケートでも技術を自分ごととして捉えた具体的な意見が多く集まりました。

  • 臨床・経営への期待: 経験や勘に頼るだけでなく、客観的なデータに基づいた適切な診断や、将来の医院経営に役立てたいという声が多く見られました。
  • AIの限界と医療人の役割: AIの誤答リスクを理解した上で、人間との適切なバランスを見極め、AIには代替できない「人がやるべき仕事」に目を向ける声もありました。
  • 学ぶ必要性の実感: 今後の医療現場や社会においてAIは必須の知識になると捉え、専門家と対等に話せるレベルのリテラシーを今のうちに身につけたいという姿勢が見られました。

AIの臨床・経営への活用、誤答リスクへの向き合い方、リテラシー習得の必要性といった具体的な視点まで見据えた意見が多く、学生の皆さんが自身の将来に関わるテーマとして、AIに真剣に関心を持っていることが伝わる結果となりました。


3. 次のステップへ

昭和医科大学との共同研究や学会発表、大学講義といった一連の活動は、ブレインパッドにとって「未来への種まき」となる大切なステップです。

今後は次の段階へと着実に取り組みを進めてまいります。これからもビジネスの枠にとどまらない技術探究とアカデミアとの連携を通じて、データサイエンスの可能性を広げてまいります。


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株式会社ブレインパッドについて

2004年の創業以来、「データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる」をミッションに掲げ、データの可能性をまっすぐに信じてきたブレインパッドは、データ活用を核としたDX実践経験により、あらゆる社会課題や業界、企業の課題解決に貢献してきました。 そのため、「DXの核心はデータ活用」にあり、日々蓄積されるデータをうまく活用し、データドリブン経営に舵を切ることであると私達は考えています。

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