メルマガ登録
フィギュアやアニメグッズなどを扱う日本最大級のホビーECサイト「あみあみ」をはじめ、実店舗の運営や商品企画事業、メディア事業などを展開している、大網株式会社。
「あみあみ」の運用改善を進めている同社マーケティング課シニアマネージャーの小林 裕児氏、株式会社ブレインパッド町山 聖の2人に実施した施策や得られた成果、今後のビジョンなどについてお話を伺いました。
DOORS編集部(以下、DOORS) 改めて御社の事業内容をご紹介いただけますか?
大網株式会社 小林 裕児氏(以下、小林氏) 当社はキャラクター&ホビー総合ECサイトを運営しています。自社ECサイト「あみあみ」にくわえ、Yahoo!ショッピングや楽天市場、AmazonといったECモールでの販売も行っています。
ホビー商品の実店舗での販売や自社ホビーブランドの「あみあみ」「amie」などの商品企画・製造、声優を起用した映像コンテンツの制作やYouTubeでの配信といったメディア事業、セールスプロモーション事業も展開しています。

DOORS 現在、小林さんが担当されている業務についてもお聞かせください。
小林氏 マーケティング課シニアマネージャーとして「あみあみ」と主要ECモールでの通販事業、および広告や分析、マーケティング施策の立案・実施を担当しています。
マーケティング課に所属するスタッフの約7割は通信販売関連業務を担当しており、残りの3割が広告や分析、キャンペーンなどの各種施策の企画、 サイト内接客などを担当しています。
株式会社ブレインパッド 町山 聖(以下、町山) 担当業務を進めていく上で、小林さんがこれまで感じていた「あみあみ」の課題は、どのようなことだったのでしょうか?

小林氏 「あみあみ」が急成長し、 増加した注文にインフラがなかなか追いつかない状況が続いていました。
まずサイトをちゃんと使ってもらえるように安定して稼働できるようにし、お客さんをがっかりさせないことを最優先に考えました。サーバーの増強や仮想待合室の設置などの改善策を実施し、現在もさまざまな改善作業を行っています。
その結果、ようやくこの数年でUX施策の改善にリソースを割ける状態になり、ブレインパッドさんの自動接客プラットフォーム・Rtoasterの活用やメールマガジン、Web広告の配信といった施策の推進に取り組むことができるようになったのです。
DOORS Rtoasterのレコメンド機能を活用することで得られた成果、解消に至った問題点を教えてください。
小林氏 「あみあみ」のトップページにはメイン商材のフィギュアなどを掲載することになります。そのため、他のジャンルを好きな方にはご不便をかけていると思っていました。まず、この点をRtoasterのレコメンドでカバーしたいと思っていました。
町山 売上やPVなどのKPIにとらわれ過ぎず、UX改善を最優先に考えてレコメンドを活用されていますね。 そうした意識の使い方は、私にとっても大きな刺激になります。
小林氏 私が考えていることはとても単純です。トップページには、いろいろな方がいらっしゃいます。フィギュアがメインになっているので、お客さんが好きなカテゴリーへの導線を作ったほうがいいということです。
自由度が高いRtoasterの機能を駆使すれば、そうした動線を作れるのではないかと考えました。商品フィールドへのジャンルの追加や、スコアを利用したジャンル毎の嗜好性の取得と活用などは、Rtoasterだからできたことだと思っています。
町山 自由度を上げてRtoasterを活用できたのは、やはりワンタグの実装が大きく影響したのでしょうか?
小林氏 従来は新規レコメンド施策に際してシステム会社への改修依頼が必要となっておりましたので、施策実施のハードルが高かったのです。2024年後半にワンタグを入れたことで、社内での実施が容易になりました。
Rtoasterのいろいろな機能に触れることで、こうすればできるというノウハウが蓄積されてきて動きやすくなりましたし、実現できるパターンも増えてきました。レコメンド経由のCV(コンバージョン)も順調に増加していますね。
町山 レコメンド経由でのCVは以前の3〜4倍に増加しています。レコメンドの面が純粋に増えたこともありますが、購買されるところに配置されて使われているからこそ、レコメンド経由が増えたと思っています。適切な場所にユーザーが求めるレコメンドを入れたことで、CVが増えたのでしょう。
かなり驚異的な成果だと評価しています。元々数千ほどあったCVが約1年で3倍以上になったわけですから、私もびっくりしました。サイト全体と比べた商品購入数もレコメンド経由のほうが多い傾向にあります。販売についてもしっかりと提案して拡張につなげられているのかなと推測しています。
御社のエンジニアの方が「あみあみ」の運営に加わったのも、ワンタグを入れた頃でしたね。
小林氏 ちょうどワンタグ導入時に、システム部のエンジニアがマーケティングも見てくれることになったのです。このことも大きな転機でした。曜日を決めてマーケティング部門に来てエンジニアに仕事をしてもらうことで、システム部門とのコミュニケーションが非常に取りやすくなったと感じています。
従来は前提知識の差などコミュニケーションに課題を感じておりましたが、体制の変更後はこまめに相談や依頼ができるようになったのです。こうすれば実現できる、こういうフローにすれば効率的だといったインサイトも提示してもらえるようになりました。
エンジニアがマーケティング部門で施策を打っていくケースは、今後増えるのではないかと思っています。新しいフィールドを探しているエンジニアにおすすめですね。
DOORS 小林さんが入社した当時の大網さんはどのような状況だったのでしょうか?
小林氏 まだマーケティング課がなく、私が最初に配属されたのは仕入課だったのです。そこで商品掲載などをやっていました。商品情報を入手して掲載準備をし、発注業務も行っていました。
2014年のRtoasterの選定は、システム部門が行っていたことは覚えています。その後に私はバイヤー業務と併せてAmazonでの販促も担当し始めたのです。その業務がいつの間にか増え、 業務拡大に伴い、マーケティング課が設置されました。
私の視点では新商品がどんどん出てきて埋もれてしまう。ニーズに合う人がきっといるはずなのに、商品が埋もれてしまうという課題感を仕入れ担当者として抱えていました。そこで、レコメンドがその課題解決に役立つのではないかと考えたのです。ニーズのある方々に新商品を見せたかった。お客さんとしてはやはり新商品が気になるところ、注目しているところになりますから。
町山 サイトの一番最初に掲載されているのも、新着商品ですね。
小林氏 新着商品がトップページでいちばん見られるのですが、新着商品も私たちの中で考えて、掲載する商品を決めています。
町山 御社の施策の手法や内容を拝見していると、もちろん売上もあるとは思うのですが、UX(ユーザーエクスペリエンス)を強く意識していると感じます。
小林氏 そこは一番気にしている点です。長くやっていますし、お客さんもシビアな目を持っている人は多いので、また来てもらえるような快適な体験をしてもらえるようにという意識が強いですね。来ていただいた方に満足していただき、信頼を獲得していきたいと思っています。
コレクター商品を扱っているということもありますし。注文いただいたものをちゃんと受け取って、ちゃんと送ることに注力してきました。コレクターの方々にご満足いただけるように、倉庫に対する投資も積極的に行ってきました。
UXを重視する姿勢は以前からずっと変わっていませんね。お客さんに満足していただく、信頼されるショップであるという姿勢は一貫していると思います。レコメンドなども、お客さんたちにどれだけ満足していただけるかを気にしながら実施しています。
町山 UXは良さを測るのが難しいと言われますが、その点はどうお考えでしょうか?
小林氏 確かに個々の施策のUXを検証するのは難しいですが、使ってくれているということは便利なんだろう、お客さんにとって良かったのだろうと評価しています。
町山 ユーザーがセッションの中で、どういう体験をしてくれたのかといった点も、見えにくい部分だと思うのですが?
小林氏 グッドボタンとバッドボタンのような、レコメンドに対するフィードバックを受けたいと思っています。
町山 確かにユーザーとのインタラクションがもう少しあるといいですね。
直近で印象が変わったのが、カテゴリ検索のリンクをユーザー行動に応じておすすめカテゴリーを出すこと。UXを意識されているのだと強く感じました。
小林氏 ホビー商品を幅広く扱っているため、そのユーザーが見たいカテゴリーに遷移できるよう導線は目立たせたいという考えがありました。
町山 カート画面やお気に入りリストのレコメンドは成果が出ていますね。マイページ周りはいかがでしょうか?

小林氏 うちは予約商品を扱っているので、注文した商品の状況を確認するためにマイページに来る機会が多くなります。マイページはどうしても堅いイメージがあるので、手続きなどの邪魔をしない範囲で楽しくしたいとは思っています。
メルマガに関しても、お客さんの購入した商品などに応じたカスタマイズ、フィギュアが好きならフィギュアの情報を配信するような設定もできたらいいですね。
ワンタグを入れて以降、どんどん施策を追加していき、ある程度、成果を出してきたと思っています。これからおそらく、これは本当に適切なのかと悩んで壁にぶつかることもあるでしょう。
町山 我々もどうやってUXを測ればいいのかを、御社から刺激を受けて考えているのですが、データだけでも判断が難しいところだと思っていて、最近の悩みどころになっています。そういった点もいろいろと相談していければいいなと思っています。
小林氏 「あみあみ」は運営スタッフ自身も商品を好きなので、自分たちの感覚でやってきた部分も少なくありません。ブレインパッドさんからいろいろな考えを聞かせていただいて、非常に参考になっています。
AIでタグを生成するBastet※1(仮称・以後Bastet)を最近導入しましたが、私は非常に満足しています。当初はフィルターをかけるタグを選択しても画面遷移するとリセットされていたのですが、選んだモチーフの表示が維持されるように改善しました。
※1 Bastetは、Brainpadで現在開発中の生成AIアノテーションツールです。画像など不定形なデータをもとに特徴を抽出しタグを付与する形でデータ拡張を行います。
もしもあのBastetを他のサイトで先にやられていたら、専門店としては悔しかったでしょうね。あんなレコメンドをするサイトは無いじゃないですか。
町山 最初ご提案させていただいた時、正直ダメ元かなと思っていたのですが、結果的にこういう形で実装していただいてたいへん良かったと思っています。使っているユーザーさんも面白い仕組みだと思っていて、売り上げだけでは評価しきれないメリットがある気がします。
小林氏 私もWebサイトでのAIの活用例としては、大きな一歩だったと思っていますね。
町山 ユーザー側からするとあまりAI感がないでしょうし。
小林氏 AIが生成したタグを付けているだけですから。AI感がないけど面白いですね。タグのクリックをもとにタイムリーにレコメンドを更新しているので、お客さんのインプットからアウトプットまでが速い。AIの使い方として合っているのかなと思います。フロントはDBに任せてタイムリーに安定して出すようにしておくのが、現状では使い勝手がいいですね。
町山 ユーザーの嗜好をクリックで計測できるかなと思って、今いろいろ見ているところです。そういうデータが取れると、例えば商品のほうに反映したりといった今後の活用方法も考えられるのではないかと思っています。
小林氏 ユーザーのインタラクションを促して商品側にフィードバックする、しかもユーザー側に余計なものを押させるわけではなく、面白がって押した結果がフィードバックとして返ってくる。面倒さを感じないインターフェースになっていると思っていて、そういう意味合いでの活用も考えていけるといいなと思っています。
DOORS 今後のビジョンとしてはどのようなことをお考えになっていますか?
小林氏 1年前と今では技術環境も違ったりするので、想像できないところではあるのですが、お客さんに満足していただく、信頼を積み重ねることは今後も変わらず続けていきたいと思っています。あまり外部環境に振り回されず引き続き、着実にいただいた注文をしっかりお届けしていきたいですね。
そうは言っても技術は急速に進歩しており、AIでの接客のようなものが入ってきているので、そういった部分はいずれ取り組むべきだと思っています。
町山 AI検索やGoogleのAIモード、ChatGPTなどの中で商品購入ができるようになるだろうとGoogleもアナウンスしていますが、 まだ日本ではできていません。そういった環境が日本でも整備された時に「あみあみ」としてのサイトの意義や役割をどう考えていけばいいのかなというのが、今後の重要なテーマになってきそうですね。
小林氏 時期的には少し遅くなるかもしれませんが、UCP※2などへの対応も考えていく必要があるとは思っています。
※2 UCP(Universal Commerce Protocol)とは、GoogleやShopifyなどが共同開発した、AIエージェントがユーザーに代わって「商品の検索・選択・購入」までを一貫して実行するためのオープンな共通標準プロトコルです。事業者は自社の顧客データやブランド制御を保持したまま、AIコマースに対応できます。
お客さんがどれだけ使うのかというところにもなっていくのですが、試行はいろいろな形でしていくと思います。いろいろとチャレンジしていく上で、最新技術に関する情報をブレインパッドさんから提供してもらっているので、助かっていますね。
町山 ユーザーを理解することが今後さらに重要になるかと思いますが、データ分析についてはどのように考えていますか?
小林氏 分析したいことは数多くあるのですが、その分析で何をめざすかを明確にする必要があると思っています。今はページに来るユーザーさんに迷いなく自分の好きなカテゴリーに行ってほしいという目的があるので、そこをどうしようと思ってスコアリングという手段を選びました。何かしら目的があれば新たな分析も行いたいですね。
町山 AIなどの技術が進化すると最新の技術をどれぐらい知っているかによって個人差が大きくなる傾向が見られます。御社のユーザーさんの中でそうした個人差を感じることはありますか?
小林氏 はっきり個人差を感じることはありませんが、AIは勝手に動いてくれないので何かしらインプットしなければならない。その点を大変だと感じる方もいらっしゃるでしょうね。インプットは今のレコメンドでもそうですが、フィルターとしてこういうものがありますよという、わかりやすいUIみたいなセットが適切かなと思っています。仕事だと10秒程度はAIの回答を待つでしょうが、 ECサイトのユーザーはなかなか待ってくれません。素材はAIが作っているけれど、出し方はツールで決めるということをやってみて、この形がいいのだろうと、現状は思っています。

町山 「あみあみ」ならではの顧客対応の特色やポイントだと感じていることは、何かありますか?
小林氏 当社としては、コレクターの方々のニーズに対応しなければならないと考え、他のショップだと気にしないところも気にして改善に取り組んでいます。お客様の特別なニーズを自社の力にしているのです。
一例として、注文したお客様が不安にならないよう、発売日などの変更やトラブルがあった際は都度メールでご案内しています。また、その他カスタマーサポート面でもコレクター商材を扱っていることを意識した対応がとられています。
町山 御社はお客さんに買っていただくだけではなく、サイトを楽しく快適に使ってもらうという目的に向けて施策を実施していますね。
小林氏 趣味のサイトですので、お客さんが快適にサイトを使ってくださることを重視しています。
知らなかった商品との出会いの場としても意識しており、レコメンドを活用してお客様に商品を見落としてほしくないという思いもあります。
ニーズや嗜好に合ったものがちゃんとお客さんに伝われば、商品を作っているメーカーさんもお客さんも、いい方向に行くはずだと考えています。ユーザーとメーカーさん、ユーザーと商品をしっかりと繋げること。それが私たちの重要な役割だと思っています。今後もメーカーさんが作ったものを、ちゃんとニーズがあるところに伝えるマーケティング施策を行っていきたいですね。
町山 御社はクリエイターさんに対しても、ユーザーさんに対しても、全体的に思いやりがあると感じます。そこがとても素晴らしいと改めて思いました。
DOORS 本日はありがとうございました。
大網株式会社では現在、採用募集中です。募集職種や詳しい募集要項については、ぜひ採用ページをご覧ください。
あなたにオススメの記事
2023.12.01
生成AI(ジェネレーティブAI)とは?ChatGPTとの違いや仕組み・種類・活用事例
2023.09.21
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?今さら聞けない意味・定義を分かりやすく解説【2024年最新】
2023.11.24
【現役社員が解説】データサイエンティストとは?仕事内容やAI・DX時代に必要なスキル
2023.09.08
DX事例26選:6つの業界別に紹介~有名企業はどんなDXをやっている?~【2024年最新版】
2023.08.23
LLM(大規模言語モデル)とは?生成AIとの違いや活用事例・課題
2024.03.22
生成AIの評価指標・ベンチマークとそれらに関連する問題点や限界を解説