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JT(日本たばこ産業株式会社)×AI開発ストーリー対談|AIが導く「顧客ロイヤリティ」の向上

公開日
2020.10.30
更新日
2024.03.08

人工知能をプラスして、顧客ロイヤルティを最大化したい。
ブレインパッドは、JT様のマーケティング活動にAIを組み込むことで、自社商品の好感度や購買意欲の向上を目指すブランドリフトの取り組みを支援しています。

日本たばこ産業株式会社
たばこ事業本部 マーケティング&セールスグループCRM推進部
主任 平谷 朋也様<写真中央右>
主任 佐孝 今日子様<写真中央>
株式会社ブレインパッド
アナリティクスサービス本部
シニアリードデータサイエンティスト 兵藤 誠<写真左>
データサイエンティスト 藤田 洸介<写真右>
データサイエンティスト 馬場 はるか<写真中央左>

「JTスモーカーズID」を通じて会員データを保有

国内企業で唯一、たばこ製品の製造が認められているJT様。たばこは他の商品と違い、対外的な広告宣伝活動が厳しく規制されているため、JT様はマーケティングの対象を成人喫煙者に限定するなど、独自のマーケティング原則にのっとり、顧客コミュニケーションを展開してきました。

そうした施策の一貫が「JTスモーカーズID」です。これは成人喫煙者を対象にたばこ情報を届ける無料の会員サービス。会員登録には身分証明証の提出を必要とし、満20歳以上の喫煙者である確認が取れた会員だけに、キャンペーン情報の提供やサービスの展開などのデジタルマーケティング・One To Oneマーケティングを行います。定期的に利用銘柄のアンケートを実施するなど、ブランドリフト調査も継続して行ってきました。

しかし問題は、こうした仕組みを整え、すでに多くの会員データを保有しながらも、これらのデータをうまくビジネスに活用できていないことでした。


“経験と勘”に基づくマーケティング活動から脱却したい

例えば、JT様は他社銘柄を利用中の会員に、自社銘柄をお薦めするダイレクトメールの送付を実施してきましたが、この施策には蓄積された会員データのうち、顧客の年代や現在利用している銘柄など一部データのみが利用されている状態で、顧客の行動履歴や主に吸っている銘柄の遍歴などの情報は活用されていませんでした。その問題点について、たばこ事業本部 マーケティング&セールスグループ CRM推進部 主任 平谷 朋也様はこう語ります。

「対象となる会員の選定作業は、ほとんどが担当者の“経験と勘”に基づいて属人的に行われてきました。その結果、ブランドマネージャーのスキルによって成果に差が出るなど、様々な問題が発生していました」

施策にかかるコストも問題の1つでした。対象会員の選定は、ブランドマネージャーが複数の属性の組み合わせを施策毎に協力会社に指示するので、その都度人手による抽出の工数が必要となります。また、多くのブランドが重複したターゲットを選定するため、同じ会員に複数ブランドのダイレクトメールが何通も届き、お客様へのコミュニケーションにストーリー性がなくなる事象が発生しやすい状況でした。

今までに利用していなかった、定期的なアンケートに基づく過去からの銘柄の変遷履歴やWebアクセスなどの行動情報。これらのデータを活かせば、もっと効率的に、もっと効果的にマーケティング活動を行えるのではないか。こうしてJT様は、データ分析とAIの業務活用に豊富な経験を持つブレインパッドに、データマーケティングの実践に向けて協力を打診することにしました。


AIプロジェクトのテーマは「誰に、どんな価値を提案すべきか?」

JT様が取り扱う紙巻きたばこ製品は127銘柄(2017年度末時点)。銘柄ごとにターゲットイメージが設定されていましたが、これらが本当に正しいかどうかは十分な検証がされていませんでした。プロジェクトはまず、蓄積されたデータの分析から各銘柄のターゲットを明らかにし、ブランド転移の情報を各種マーケティングキャンペーンに活かすことを目指しました。

ターゲットが明らかになれば、次に、そのターゲットに向けてどんなメッセージを届けるかの検討も必要です。メッセージは、ターゲットが銘柄選びの際に何を重視するのか、そのポイントをふまえたものでなければならないと平谷様は説明します。

「銘柄選びにおいて、ある方は価格、またある方は味やブランドイメージを重視するかもしれません。仮にターゲットが判明しても、その方が銘柄選びの際に重視するポイントに沿ってメッセージを展開できなければ、慣れ親しんだ銘柄からの転移は望めません。どのお客様に、どんな価値を提案すべきか?この2つをデータから把握したいと考えました」

ビジネスにおける究極の問い──「誰に、どんな価値を提案すべきか?」。これをデータ分析から明らかにすることをゴールとし、JT様とブレインパッドのAIプロジェクトは本格的にスタートしました。

AI技術を活用し、「6カ月後どの銘柄に転移しているか?」を予測

まず着手したのはターゲットの分析です。分析には、会員の属性データに、利用銘柄やWebサイト閲覧履歴などの行動データ、さらに、会員とのマーケティングキャンペーンによる接触履歴データ等が用いられました。

プレインパッドはこれらのデータをAIに投入し、どの会員が、どの銘柄に転移しやすいかを予測する、銘柄転移の予測モデルを構築しました。構築を担当したブレインパッド アナリティクスサービス本部 データサイエンティスト 藤田 洸介は、予測モデルについてこう説明します。

「予測モデルに、ある会員のデータを投入すると、その方が6カ月後どの銘柄に転移するか予測値を返してくれます。A銘柄:32.8%、B銘柄:19.5%、C銘柄:10.3%といったように、明確な数値でその確率を示してくれるのです」

完成した予測モデルに、過去のある時点における会員データを投入し、6カ月後の利用銘柄と予測値を照らしあわせ検証したところ、予測モデルは高い精度で転移銘柄を指し示すことに成功しました。

予測モデルをキャンペーンに活用し、高い費用対効果を実現

この結果を受け、予測モデルを実際のマーケティングキャンペーンに利用するテストが行われることになりました。テストは、他社銘柄を利用中の会員に、あるJT銘柄をお薦めするダイレクトメールの発送を行なう形で行われました。人が企画・抽出した会員と、予測モデルが抽出した会員に同内容のダイレクトメールを送付し、6カ月後の銘柄転移の状況を調査しました。

その結果は驚くべきものでした。予測モデルが抽出した会員の該当銘柄への転移数は、人手で配信対象を設定した場合より1.2倍多くなったのです。その効果を金額に直して試算すると、施策1回につき20%程度の費用対効果の改善が見られることがわかりました。

成功の要因について、たばこ事業本部 マーケティング&セールスグループ CRM推進部 主任 佐孝 今日子様はこう分析します。

「今までのダイレクトメールは、“この銘柄を選んでほしい”という私たちの意思も一定程度反映されている送り方になっています。予測モデルによる配信では、“このお客様なら、この銘柄選んでいただけるだろう”という予測に基づいてお送りしています。キャンペーンの起点をお客様に変えたことが、高い成果に結びついたのだと思います」

味わい重視?価格重視?クラスター分析で顧客の心理を把握する

AIプロジェクトでは引き続き、ターゲットが銘柄選びの際に重視するポイント、つまり「銘柄転移を促す際に、どんな価値を提案すべきか?」を明らかにする作業が進められています。

この作業では、統計的な分析手法の1つであるクラスター分析が用いられています。クラスター(cluster)とは「集団」「群れ」を意味する英単語。すでに取得している「JTスモーカーズID」の情報に、新たに実施した外部アンケートの調査結果を加え、会員を「味わい重視派」「価格重視派」など複数の集団に分類していきます。

クラスターごとに銘柄選びの際どんな価値を重視するのかがわかれば、例えばダイレクトメールのクリエイティブやメッセージをクラスターにあわせて変えることで、マーケティングキャンペーンの効果を高めることができます。すでに効果が立証されている予測モデルと組み合わせることで、さらに費用対効果の高い施策が展開できるものとJT様は大きな期待を寄せています。

AI活用を定着させる秘訣は、日々の地道な業務実装にあり

JT様は、AIプロジェクトで得られた成果や気づきを、日々のマーケティング活動に落とし込む業務実装にも力を入れています。その理由を平谷様にうかがいました。

「JTの場合、AIの分析結果を人間が受け取り、なんらかの判断を下した上で、アクションを実行しています。そのため、AIの分析結果が現場の人間にとって“腹落ち”するものでなければ、その情報は業務に使用してもらえません。そこで、AIのアウトプットを理解しやすい、使いやすいものにするため、業務実装には特に力を入れています」

その1つの例が、前述した予測モデルの改善作業です。もともとこの予測モデルは、複数の予測モデルの結果を組み合わせ、様々な数値の補正をかけながら作成していました。理解が難しいというJT様のフィードバックを受け、ブレインパッドは予測モデルの結果やそこに至るプロセスを、利用者にとって理解しやすいシンプルなものに改善しました。

さらに、予測モデルではその運用を自動化する仕組みも構築しています。その意図について、ブレインパッド アナリティクスサービス本部 シニアリードデータサイエンティスト兵藤 誠はこう語ります。

「AIプロジェクトの失敗事例としてよくあるのが、予測モデルのプロトタイプだけは作成したが、継続的に業務で利用できる形まで落とし込めずにそのまま風化してしまうケースです。どう業務に使用するかの検討不足、リソース不足、予算不足といった理由で、AI活用のPDCAがうまく回らず、頓挫してしまうプロジェクトは意外と多いものです。こうした事態を避けるため、JT様に予測モデルの学習・予測を定期的に自動で行える仕組みの実装を提案しました」

この自動化により、通常は手作業で行われる最新データの投入や、予測精度のモニタリングといった作業の大部分を自動化することができました。こうした日々の地道な業務実装の取り組みが、JT様のAI活用の定着に大きく貢献しています。

ビジネスにおける“究極の問い”に挑み続けるAIプロジェクト

一歩ずつ、着実に成果を積み重ねているJT様のAIプロジェクト。しかし、AIの業務活用は、「ようやくダイレクトメール施策における効果検証と、業務で活用可能な仕組み作りが実現したところで、まだスタートラインに立ったばかり」と平谷様は評価します。今後、さらに広い範囲の業務、例えばWebサイト上における最適なブランドのレコメンドなどにAIを活用していきたいとJT様は考えています。

目指すゴールは引き続き、「誰に、どんな価値を提案すべきか?」をデータから明らかにすること。ビジネスにおける究極の問いに答えを出すべく、ブレインパッドはこれからもJT様のAIプロジェクトを支援していきます。


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株式会社ブレインパッドについて

2004年の創業以来、「データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる」をミッションに掲げ、データの可能性をまっすぐに信じてきたブレインパッドは、データ活用を核としたDX実践経験により、あらゆる社会課題や業界、企業の課題解決に貢献してきました。 そのため、「DXの核心はデータ活用」にあり、日々蓄積されるデータをうまく活用し、データドリブン経営に舵を切ることであると私達は考えています。

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