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入社1年目が教わる「はじめての人工知能」第4回:人工知能(AI)をめぐる国の政策動向とAIに取り組む意義

公開日
2020.10.30
更新日
2024.03.07

※本記事は、ブレインパッドが運営する人工知能ブログ「+AI」に掲載されている記事の転載版になります。

現在、人工知能(AI)は人びとの生活や産業に革新をもたらす技術として世界中で注目されています。本ブログではこれからビジネスにAIを活用する方に向けて、ブレインパッドの入社1年目が先輩社員から学んだAIの“基礎”を連載形式でお届けします。第4回目は「人工知能(AI)をめぐる国の政策動向とAIに取り組む意義」をわかりやすく解説します。

連載第3回「トップ企業にみる人工知能(AI)活用の取り組み」では、世界の時価総額トップ5社GAFAMをはじめとする世界のトップ企業たちが既にAIを事業に実装している様子をみてきました。では、日本は来たるAI時代に向けてどのような戦略を立て、立ち向かおうとしているのでしょうか。

そこで第4回目の今回は、AIをめぐる国の政策動向に目を向け、そこから企業として、また個人としてAIに取り組む意義を考えていきます。

国の成長戦略の中心に据えられたAI

日本政府のAI関連戦略の概要(韮原祐介「いちばんやさしい機械学習プロジェクトの教本」、各種政府発表資料をもとに筆者作成)

上の表は、政府が行ったAI関連の取り組みについてまとめたものです。一つ一つの内容をしっかり読んでみると、政府がどれほど危機感を持ちAI活用に本気で取り組もうとしているのかが分かるので、ぜひ目を通してみて下さい。

さて、今から3年前「日本再興戦略」改訂2015で、IoT、ビッグデータ、AIによる産業構造・就業構造変革の検討が主要施策の一つとして掲げられました。

その後、2016年4月に行われた第5回「未来投資に向けた官民対話」にて安倍総理の指示を受け、具体的な推進体制として「人工知能技術戦略会議」が創設されました。

同会議が司令塔となり、総務省、文部科学省、経済産業省らが一体となって、AI技術の社会実装を進めています。


リアルデータのプラットフォーマーを目指す第4次産業革命の第2幕

AIやデータを基軸とする第4次産業革命

政府が掲げる戦略を見る前に、まず、今が一体どんな時代なのかを理解していきます。

今、私たちは第4次産業革命の真っ只中を生きています。

スイスのダボスで開催される世界経済フォーラム(World Economic Forum)の年次総会(通称「ダボス会議」)では、これまでの産業革命と第4次産業革命を次のように定義しています。

『まず、第1次産業革命では、家畜に頼っていた労力を蒸気機関など機械で実現した。第2次産業革命では、内燃機関や電力で大量生産が可能となった。第3次産業革命では、コンピューターの登場でデジタルな世界が開き、IT・コンピューター・産業用ロボットによる生産の自動化・効率化が進展した。第4次産業革命は、現在進行中で様々な側面を持ち、その一つがデジタルな世界と物理的な世界と人間が融合する環境と解釈している。具体的には、すなわちあらゆるモノがインターネットにつながり、そこで蓄積される様々なデータを人工知能などを使って解析し、新たな製品・サービスの開発につなげる等としている。』(平成29年版 情報通信白書)

こうしたAIやビッグデータなどの技術革新に伴う第4次産業革命の進展は、生産、販売、消費といった経済活動に加え、健康、医療、公共サービス等の幅広い分野や、人々の働き方、ライフスタイルにも影響を与え始めています。

産業革命の変遷
産業革命の変遷(ダボス会議UBS白書(2016年1月)をもとに筆者作成)

プラットフォーマーを目指す日本の国家戦略

ではこのような時代背景を前提に、日本はどのように第4次産業革命を生き抜いていこうとしているのかをみていきます。

「日本再興戦略2016」には『我が国は、第1幕のネット空間から生じる「バーチャルデータ」のプラットフォームでは出遅れた。しかしながら、第2幕の健康情報、走行データ、工場設備の稼働データといった「リアルデータ」では、潜在的な優位性を有している。既存の企業や系列の枠を超えて、第2幕の 「リアルデータ」でプラットフォームを獲得することを目指していく』と書かれています。

つまり、第4次産業革命の第1幕においては、第3回「トップ企業にみる人工知能(AI)活用の取り組み」でもみた通り、GAFAMなどの世界のトップ企業に大きく水をあけられてしまったということを意味しています。

そこで日本は、リアルデータのプラットフォーム化での覇権獲得を目指しているということです。

高い技術力と整備された社会制度によって産業を発展させ、リアル世界を主戦場とする多くの日本企業が本気で取り組めば、リアルデータを巡る競争では勝機があると考えられています。

リアル世界のプラットフォーマーへの兆し

既に国内企業において、リアル世界のデータを活用してプラットフォーマーになる可能性を手にしている事例が出てきています。

弊社が支援している大手食品メーカーの工場では、これまで1日100万個以上流れるダイス型のポテトを1つ1つ、人の目で見分け、異物混入や不良品がないか確認していました。消費者の食への安心のために行われた業務でしたが、目視の原料検査は作業負荷が高く、課題となっていました。
そこで、食品製造ラインに流れる食品を撮影した動画から、ディープラーニングを用いて良品・不良品を判別できるアルゴリズムを開発しました。

詳細はこちらをご覧ください。

ITmediaの取材でも、同メーカーが「さまざまな商品の原料を対象にシステムを開発、さらに自社工場だけでなく、原料サプライヤーでの導入を進めていきたい」と、今後の計画について言及したことが紹介されています。

すなわち、この技術があらゆる工場の食品の原材料検査に用いられることになると、Googleが検索などの領域でプラットフォーマーとなったように、工場内のデータのプラットフォーマーになり得るということを示唆しています

まさに日本の成長戦略の通り、リアル世界のデータを用いてAI技術を活用することで、世界のプラットフォーマーになる可能性が生まれたといえます。


世界に大きな遅れをとった日本

ここまで、第4次産業革命においてAI活用がどのように行われてきたのか、今後日本がどのような領域で世界と渡り歩いていくのかについて眺めてきました。

ここからは、日本企業のAI活用の取り組みについてみていきます。

IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が上場企業を対象に2017年3月に行った調査によると、AI活用についてアメリカでは7割を超える企業が「重要検討課題、または検討課題として位置づけている」と回答したのに対し、日本では半数以下の企業にとどまっています。

AIの取り組み状況
AIの取り組み状況(IPA「AI白書2017」)

また、AIへの投資額に関しては、現在までのところ日本企業は小規模の投資にとどまるケースが多いようです。

1社あたりのAIへの投資額(IPA「AI白書」)

拡大を続けるAI関連市場

AI関連の市場規模に目を向けると、今後大きな成長が見込まれます。

AIビジネスの国内市場規模は、富士キメラ総研によると2015年には1,500億円であったものが、2020年に1兆20億円、2030年には2兆1,200億円にまで成長すると予測されています。

AIのシステム・サービスの市場規模(IPA「AI白書」)

誰しもが第2幕で覇権を取るチャンスがある

これらのデータを見ると、第4次産業革命の最初のフェーズで出遅れた、という政府の認識は相違ないと言えます。

一方、今後拡大するAI市場において、海外並みの大規模投資を行う企業や、新たなビジネスチャンスを狙い参入してくる企業が今後増えてくると考えられます。

先述した大手食品メーカーの事例のように、これまで築いていたリアル世界での強みを活かし、いち早くAIを活用した事業に挑戦することで、既にリアル世界でのプラットフォーマーになる兆しが見えている企業もあります。

第2幕の覇権を取れるチャンスは誰にでも平等にあります。

ブレインパッドも「データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる」ことをミッションに掲げ、AIやデータの活用を通して、まだ見ぬ未来をともにつくっていくチャレンジをご支援しています。

人材不足というAI活用促進の足かせ

このように国を挙げてAI活用の取り組みを促進していますが、決して課題なく進んでいるわけではありません。その大きな足かせとなっているのは、「人材不足」です。

統計や数学など深い分析訓練を受けた大卒の人数をみても、世界とは大きな差があります。

深い分析訓練を受けた大卒の人数(2008年)
深い分析訓練を受けた大卒の人数(2008年)(McKinsey Global Institute「Big data: The Next frontier for Innovation, Competition, and Productivity」(June 2011))

実際に日本企業がAIに取り組む上での課題として挙がっているのが、「人材の不足」です。

AIに関する取り組みを進める上での課題
AIに関する取り組みを進める上での課題(IPA「AI白書」)

今後AIやそれを支える機械学習を事業に活用し、第2幕でプラットフォーマーの獲得を目指すためには、人材の不足という問題は越えなければならないハードルです。

AIやデータ活用人材の育成における方向性

「人材不足」というハードルを超えるため、政府は産官学連携でAIやデータの力を使って価値を生み出せる人材を育成しようとしています。

AI 時代に対応した人材育成について「未来投資戦略2018」では、以下のように記されています。

『AI 時代には、高い理数能力で AI・データを理解し、使いこなす力に加えて、課題設定・解決力や異質なものを組み合わせる力などの AI で代替しにくい能力で価値創造を行う人材が求められることに鑑み、教育改革と産業界等の人材活用の面での改革を進めるとともに、「人生 100 年時代」に対応したリカレント教育を大幅に拡充する』

ここから人材育成について、大きく2つの方向性が見えてきます。

1つ目は、未来を担う学生や子どもの教育です。

プログラミング教育や大学入試科目改訂などの教育課程の見直しや、AI等を活用して習熟度に応じた学習コンテンツを提供するアダプティブ・ラーニングなどの活用により、今後の社会に求められる資質・能力を育んでいくことが示されています。

もう一つが、既に働いている社会人への教育です。これは「人生100年時代構想」とも関係しています。

健康寿命が世界一の長寿社会を迎える日本は、今後の更なる健康寿命の延伸が予測されています。政府は、こうした人生 100 年時代を見据えた経済・社会システムを実現するための政策のグランドデザインに係る検討を行う「人生100年時代構想会議」を設置しました。

そこでは、「生産性革命」と「人づくり革命」のキーワードを掲げ、この問題に取り組もうとしており、社会人の学び直しを推進する「リカレント教育の抜本的拡充」も重要課題として検討されています。

リカレント教育とは、1973年OECD 報告書によると、「義務教育終了後の教育に関する包括的な戦略であり、青少年期という人生の初期に集中していた教育を、個人の全生涯にわたって、労働等の諸活動と交互に教育を行うもの」です。

すなわち、人生100年時代に向けて、誰もが人生を再設計する社会において、大人が学び直し出来る環境を整え、AI時代に必要な能力や経験を身につけていこうということです。

多様な教育プログラムや組織

こうした人材不足の解消に向けた取組は既に始まっています。

経済産業省は2018年1月、第4次産業革命スキル習得講座として、データサイエンス関連の民間企業、計13事業者26講座を認定しました。ブレインパッドが提供するデータサイエンティスト入門講座・データサイエンティスト入門講座(アドバンスド)も、認定されています。

経済産業省 認定講座一覧(抜粋)
経済産業省 認定講座一覧(抜粋)(経済産業省「第四次産業革命スキル習得講座 認定講座一覧」)

また、国の取り組みの他に業界団体としての取り組みも進んでいます。

データサイエンティストの育成のため、そのスキル要件の定義・標準化を推進し、社会に対する普及啓蒙活動を行う一般社団法人データサイエンティスト協会(DS協会)や、ディープラーニングを中心とする技術による日本の産業競争力の向上を目指して昨年6月に発足した一般社団法人日本ディープラーニング協会(DL協会)などの組織があります。

DL協会では、 ジェネラリストと呼ばれるディープラーニングの基礎知識を有し、 適切な活用方針を決定して事業応用する能力を持つ人材を、2020年までに10万人規模で輩出することを目指しています。

ブレインパッド代表取締役会長の草野は、DS協会では代表理事を、DL協会では理事を務めており、国を成長させる力の強化に取り組んでいます。

AIへの挑戦が新しい価値を生み出す

このように来るAI時代に向けて国を挙げて大きく舵を切っていく中で、企業として、また、個人としてAIに取り組む意義を考えていきます。

一刻も早いAIへの取り組みが企業の未来を左右する

今後AI関連の市場は大きく拡大していくことは確実です。実際、世界をリードする企業は皆、AIを戦略の中心に据えて事業を展開し、大きな成果を生み出しています。

また先の大手食品メーカーのように、いち早くAIや機械学習に取り組むことにより、自社のサービス・業務改善だけではなく、同様の課題を抱える他社にサービスを展開することで、業界でのプラットフォーマーとなれる可能性があります。

逆にこの潮流に乗り遅れてしまうと第1幕のように、他社のエコシステムに組み込まれ、データを吸い上げられ続けるという状況が待ち受けています。

いっそう高まるAI人材へのニーズ

企業だけでなく、いち個人としてもAIに取り組む意義は大いにあります。人材不足が加速しているということは、それほどニーズがあるということです。

オックスフォード大学のオズボーン准教授が「今後10~20年程度で、米国の総雇用者の約47%の仕事が自動化されるリスクが高い」と記された論文を発表したことや、アルファ碁が世界のトップ棋士に勝ったことなどが相まって、AIが人間の雇用を奪うのではないかということに世間の関心が集まっています。

しかしオズボーン准教授の論文(原典)には、『We make no attempt to estimate how many jobs will actually be automated. (実際にどれほどの仕事が自動化されるかを見積もることには取り組んでいない。)The actual extent and pace of computerisation will depend on several additional factors which were left unaccounted for.(実際どれほどの仕事が、いつコンピューターに代替されるかは、ここで考慮していないいくつかの要因に依存している。)』とも書かれています。

マッキンゼーが行った自動化と雇用、生産性に関する調査では、すべての仕事の6割の職種について、30%以上の仕事量が自動化されるものの、業務全てが機械に置き換わる職種は5%に満たないと試算されています。

AIによる雇用への影響
AIによる雇用への影響(McKinsey Global Institute「A Future That Works: Automation, Employment, and Productivity」(Jan 2017))

完全に自動化される仕事が殆どないというこの調査を踏まえると、これから必要となるのは「AIやデータを使いこなし、それらが持っている力を解き放てる」能力であり、「AI vs. 人間」の対立構造を恐れているのは問題を取り違っていると言って差し支えないでしょう。

未来に向けた舵取り

政府が取りまとめた「日本再興戦略2016」では、『時代は大きく変わろうとしている。変革を恐れず新たな成長の途を目指すのか、世界の先行企業の下請け化の途を取るのか。日本は今、歴史的な分岐点にいる』と書かれています。

第4次産業革命期において、私たちは変化を恐れるのではなく、企業としても個人としても未来に向けて舵を切っていくことで、結果として大きなリターンが得られるのです。

私自身もAIやデータ活用に未来を感じて、この業界に飛び込みました。専門的な知識を要するだけでなく、日進月歩で進化するAI関連技術の情報をアップデートし続けることは大変です。しかし、この経験や知識は必ずこれからの社会において求められるものであると思っています。そして何より、まだ誰も答えのわからない未来を創っていくことはこの上なく面白いことだと感じています。

*****

連載第4回目となる今回は日本政府による政策動向を眺めながら、企業や個人がAIに取り組む意義についてみてきました。次回からは、機械学習に関する正しい理解や、取り組むテーマ設定の仕方、実行の方法論を学び、実際何に取り組めば事業成長に繋がるのかということを考えていきます。

今回の要点

  • 私たちはいま、AIやビッグデータを基軸とする第4次産業革命期に生きている
  • 第4次産業革命の第1幕、ネット空間から生じる「バーチャルデータ」のプラットフォームでは、日本は世界に出遅れた
  • 日本は、第2幕の「リアルデータ」でプラットフォーム獲得を目指しており、リアル世界を主戦場とする日本企業が本気で取り組めば勝機がある
  • 既に、リアル世界のデータを用いてAI技術を活用することで、プラットフォーマーになる可能性を手にしている国内企業もある
  • AI活用を促進する上で、人材不足という足かせはあるものの、政府は産官学連携でAIやデータをつかいこなして価値を生み出せる人材の育成に力を入れている
  • いち早くAI時代に向けて舵を切ることで、企業として、個人としても大きなリターンが見込める

参考文献

・McKinsey Global Institute(2017)「A Future That Works: Automation, Employment, and Productivity」(Jan 2017)
・McKinsey Global Institute(2011)「Big data: The Next frontier for Innovation, Competition, and Productivity」(June 2011)
・首相官邸Webサイト
日本再興戦略 改訂2015 ―未来への投資・生産性革命―
日本再興戦略2016 ―第4次産業革命に向けて―
未来投資戦略2017 ―Society 5.0 の実現に向けた改革―
未来投資戦略2018 ―「Society 5.0」「データ駆動型社会」への変革―
産業競争力強化に関する実行計画(2018年度版)
・人工知能技術戦略会議「人工知能の研究開発と産業化のロードマップ
・独立行政法人情報処理推進機構(2017)「AI白書2017」株式会社KADOKAWA
・韮原祐介(2018)「いちばんやさしい機械学習プロジェクトの教本」株式会社インプレス


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