【後編】「サスティナブルなDX」を目指すオルビスの未来
~DOORS BrainPad DX Conference 2021~
#Cross-Talk Session

オルビスのDX・データ活用~アプリコア戦略~

ORBISアプリ

草野 データ活用(DX)の中核戦略となる「アプリ戦略」について伺ってもいいですか?

小林氏 アプリの中でオルビスとしてのパーソナルなブランド体験を体感してもらうことが一番のベースにあります。チャネルとしては、ECと店舗があります。ここが分断していたのですが、アプリをコアにしてECと店舗をすべて包含してブランド体験を設計していこうというのが基本的な考え方です。

アプリコアサービス戦略

草野 まずお客さまにアプリをインストールしていただいて、色々な体験をしていただく。そこから購入をしていただく。それをきっかけに店舗にも行っていただく。こういったことをデザインしていくということですね。

小林氏 最初に店舗に行き、ブラウザのECで買った後にアプリをダウンロードいただいてもいいのですが、アプリの中にさまざまなパーソナライズサービス(※)や記事コンテンツを搭載しています。こうしたサービスに触れていただきながら、ECでの購入、店舗訪問といった行動に繋げていただきたいというものです。

※パーソナライズサービス例

・パーソナルAIメイクアドバイザー

パーソナルAIメイクアドバイザー

メイクアドバイスコンテンツ。 顔写真を元にAIがユーザーのパーソナルカラーとフェイスタイプを分析し、ユーザーに合ったメイク方法やアイテムを紹介。

累計実施者数は80万人、累計実施回数は302万件にのぼる(いずれも2021年7月末時点)。

・AIアイブローシミュレーター

AIアイブローシミュレーター

自撮りするだけでAIがユーザーの顔タイプを分析。ぴったりの眉の形とお手入れ方法を提案。

2019年9月にサービス開始し、累計実施者数は29万人、累計実施回数は56万件にのぼる(いずれも2021年7月末時点)。

・AI未来肌シミュレーション

5年後、10年後、20年後の未来の顔立ちがわかるAI未来肌シミュレーション。写真は小林氏。

スマホで自撮りするだけで、ユーザの現在の肌スコアを測定。さらに、AIが今のお手入れや生活習慣から未来(5・10・20年後)の顔立ちを予測。

これから深くなる肌悩みを分析し、今必要なお手入れやその方法をアドバイスする。

草野 AI未来肌シミュレーションは、小林さんがモデルになっていて印象的でした。

小林氏 はい、私がモデルになっています(笑)。

エイジングケアにおいても、アンチエイジングで年齢を重ねていることをネガティブにとらえるのではなく、私たちは「スマートエイジング®」と呼んでいます。

あくまで誰かとの比較ではなく、自分がどうなりたいかに対して向き合うことが一番大事です。そこで、未来の自分がどうなるかを見たときに、今必要なお手入れをアドバイスすることが大切だと思っています。「あなたがどうなりたいかに対しての伴走者になりたい」というのが我々の顧客体験のコンセプトにあるので、こうしたパーソナライズサービスを搭載しています。

草野 アプリで提供している記事や機能は店舗スタッフの方も熟知していて、お客さまが相談した際に対応ができるような状態に教育されているのでしょうか?

小林氏 おっしゃる通りです。昔は完全に店舗とECが別だったのですが、今はお客さまからコールセンターにお電話いただいても、店舗の美容スタッフに聞いていただいても、どちらもサービスの知識やレベルを合わせています。

草野 店舗とECを統合的に見ることができるからこそ、よりお客さま像が見えやすくなっているのでしょうか?

小林氏 そうですね。どのようにお買い物するのが一番快適でここちよいのかというのが見えやすくなっています。

例えば、店舗でしか購入しないお客さまがいます。昨年、1回目の緊急事態宣言が発出されたときに、店舗が休業中のため、半ば強制的にECで買わざるを得なくなったんですね。緊急事態宣言が解除されて、店舗でも買えるようになったときに、そんな方は次に店舗かEC、どちらで買い物するのかという点に非常に注目していたのですが、実は、半分以上もの方が、ECでの購入を継続されていたのです。

ECの便利さなど「選択肢」をお客さまが持つことは非常に大切だという教訓を得ることができた、非常に興味深い出来事でした。

オルビス株式会社 代表取締役社長 小林 琢磨氏(写真右)
株式会社ブレインパッド 代表取締役社長 草野 隆史(写真左)

「新・中期経営計画」の戦略

草野 今年から新しい中期経営計画が始まっていると思いますが、この中計でのチャレンジに関してもぜひ、教えてください。

小林氏 「国内に関しては構造強化で、成長ドライブは海外に」というのが基本的な考え方です。

国内では、既存のお客さまのLTVをどう高めていくかということが非常に大事で、そのLTVの高め方も限界利益で見ています。

トップラインを上げる要素は色々ありますが、結局キャンペーンドリブンになりすぎていて、構造を弱くしながらトップラインを保つということをやっているとサスティナブルではなくなってしまうので、筋肉質にして、「限界利益率のLTV」を指標として見ています。そのために、「顧客体験」「顧客価値」を向上するためのブランド体験のDXを中心に据えています。

草野 先日リリースされた「cocktail graphy(カクテルグラフィー)」は、IoT肌測定デバイスでスキンチェックし、それぞれの役割を持った3本のパーソナライズスキンケアが月に1回送られてくるんですよね。

オルビスさんは化粧品の「商品開発力」がすごく高いという認識を持っているのですが、今度はデバイスを開発し、デバイスで計測したものに対しての顧客体験に合うパーソナライズスキンケアを提供するという、「デバイス」と「基礎化粧品」の開発、「専用アプリ」の設計・開発、そして顧客体験の設計には非常に苦労されたのだろうと思います。これは、構想からリリースまでどれくらいの時間がかかったのでしょうか?

IoT肌測定デバイス「skin mirror(スキンミラー)」で肌の状態を解析し、一人ひとりに合ったパーソナライズスキンケアを提供する、「cocktail graphy(カクテルグラフィー)」

小林氏 約2年ですね。外部パートナーの力も借りながらではありますが、デバイスもアプリもすべてフルスクラッチですし、非常に大変でした。

草野 手応えはどうですか?

小林氏 2021年4月中旬にローンチしたばかりなので、まだこれからです。こうした「パーソナライズ市場」がそれがどのくらいの規模で伸びていくかは、正直まだ誰もわかりません。ただし、「伸びる」ことだけは間違いないですね。新しい市場が立ち上がるときには、リスクを負ってでも「先行者メリット」というのは経営的に非常に大きいです。

市場が広がってからだと、プレーヤーがいっぱい入ってきますが、先行者メリットを取っているところは圧倒的に強いです。

当時、99年にECを展開し、オルビスが「通販化粧品市場」でトップグループに入ったのもそこが大きいですね。今のパーソナライズ市場の見方も同じです。メンズスキンケア市場もそのような見方で現在投資を強めています。

データ活用にブレインパッドを選んだ理由と「内製・外注」のバランス

草野 当社は現在もお仕事をお手伝いさせてもらっていますが、当社をパートナーとして選んでいただいた理由を率直に教えていただけますか。

小林氏 「マーケティングや事業戦略に対しての造詣が深い」というのが一番大きいですね。

データは、マーケティング戦略や仮説がある中で、どう活用していくかという順番が絶対に大事です。御社はこうした成果を出すためのアプローチをしていただけるということです。

草野 ありがとうございます。

御社の場合、クイックに施策を回していくためにも分析などは内製化されたい意向も強いのではと思っています。当社はスタンスとして、リソースが足りないときはご協力しつつ、人材育成サービスなども提供しています。「受託事業を行いながら内製化支援を行うこと」は、「自分の仕事をなくすような行為では?」と言われますが私たちはそうは考えておらず、お客さまがデータを活用できるような状態に向き合うことが正しいことだと思っています。

オルビスさんの中長期における内製・外注のバランスの方向性を教えてください。

小林氏 データ分析やデータ活用の部分を内製化する意向は強いですね。

ただ、内製だけでは絶対に難しいです。なぜならば、新しい知見や技術が出てきたり、世の中が変化するということはお客さまが変化するということなので、そこに対しての知見や技術をひとつの会社、ブランドがすべてキャッチアップしてアップデートしていくのは限界があります。

「分析そのものはあくまで手段」なので、戦略を作りながらPDCAを回していくために伴走していただく「パートナー」の存在は絶対に、永遠に必要です。

草野 そういう会社であり続けられるよう、頑張ります。

サステナビリティへの取り組み

草野 当社のミッションは「データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる」としており、創業時から「データ活用」と「持続可能性」を会社の存在意義の2本柱にしています。

オルビスにとってのサスティナビリティへの取り組みがあればご紹介してください。

小林氏 DXやデータ活用、ブランド体験など色々な言葉が出ますが、最も大切なのは「顧客価値を高めること」です。顧客価値を高めるために、お客さまが感じるブランド体験をどう進化させるかが全てです。

昨年の夏に通販向け出荷ラインの7割ほどを自動化しました。小型AGV(自動搬送ロボット)を導入したのです。配送のドライバーや倉庫で働く人も不足する、いわゆる「宅配クライシス」が話題になったのが3年ほど前。

このままで我々がどんなに商品を作ろうがマーケティングをしようが、ラストワンマイル、「お客さまにモノを届けられなければ顧客体験の一番大切な部分」が抜けることになるので、そうした部分をサスティナブルにするために実行したものです。

昨年AGVがサービスインし、コロナ禍真っ只中だったので、結果的に密にもならずという効果もありましたね。

「コロナ禍だからやった」のではなく、「顧客体験をサスティナブルにする」ということを一番大切にして取り組みました。

小型AGV(自動搬送ロボット)導入による物流センター自動化

草野 AGVは未来感満載ですね。日本で作られているのですか?

小林氏 中国のベンチャー企業が作っています。我々がやりたいことを議論させてもらいながら、カスタマイズしていただき、実装しました。

草野 ここまで自動化しているセンターは日本でもあまりないですよね?

小林氏 そうですね。Amazonやアリババが導入しているのは、人がいるところにAGVが棚を持ち上げて、棚が移動してきてそこからピックするという方法でいわゆるGTP(Goods to Person)と言われるものです。

我々の場合は、1オーダーに対して1台のAGVが責任を持って最後まで回っていきます。なぜその方式を取り入れたかと言うと、1オーダーに対して、既存のお客さまの注文数は7~8品あります。7~8品入れるために棚を前から持ち上げていたら生産性が下がります。

そこで、現在の方式にたどり着きました。非常にうまく実装・実現することができました。

小林氏が考えるリーダーシップ

草野 全体のお話を伺っていて、商品開発やブランドづくり、物流の革新に対して全て小林さんがリーダーシップを発揮されているのは超人的な感じがしますが、どうしてそのようなことができるのかシンプルに経営者として知りたいです。

小林氏 私がすべてにおいてリーダーシップを発揮してやっているわけではないです。「こういうことが必要だ」という考え、意義を示しながら、具体的なところは社員に自走してもらわないとあらゆることを2、3年で一気にはできません。社員が自走してくれました。

そして、やはり「意義」であると考えます。

なぜ我々というブランドが存在するのか、どういう価値を提供してお客さまや世の中の役に立っているのか。こうした本質的なスピリットを変えなければ、手段はすべて変えていいというスタンスでやってきています。

意義を考えている社員はたくさんいるので、能力をどんどんと引き出していっているのが非常に大きいです。

草野 やはりDXにおいて、DXを目的化せず、その先にある顧客価値、ブランド価値向上のためにDX技術を活用していくという一貫した思想によって、オルビスが着実に前に進んでいる、変革を推し進めているということに改めて感動しました。勉強になりました。ありがとうございました。


WRITER執筆者プロフィール

株式会社ブレインパッド

DOORS編集部

ブレインパッドのマーケティング本部が中心となり、主にDXにまつわるティップス記事を執筆。また、ビジネス総合誌で実績十分のライター、AI、ディープラーニングへの知見が深いライターなど、外部クリエイターの協力も得て、様々な記事を制作中。

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