【後編】伊藤忠商事が掲げる「次世代商人とDX」
~DOORS BrainPad DX Conference 2021~
#Key Session

[執筆者]
DOORS編集部

機動性のあるDXを目指して

関口 伊藤忠グループは、堀内さんが抱えているIT産業を含めて、グループでどのように機動力を高めて実行するかというのがキーワードだと思いますが、「内製化」へのこだわりは強いですか。

堀内氏 「内製化」は絶対に必要ですね。例えば、昔ながらの情報システムであるERPやCRM、バックオフィス、業務系システムであれば、きちんとスペックを作るためにもウォーターフォールで要件定義、設計して開発していく必要があります。しかし、DXであれば新しい市場環境や競合環境に合わせにいって、ビジネスを変えないといけない。環境変化に合わせてシステムを変えなければいけません。
すなわち、今のシステムの作り方では対応できないのです。

アジャイルであったり、クラウドベースでどんどんと新しく中身を作っていく開発形態、もしくはプラットフォームに変えなければいけません。

新しい仕組みを作る際に、「お客さんから言われたので、この仕様だけはこう変えたい」などとSIerに見積りを依頼すれば、1週間後にそれが返ってきて、それを精査します。少し変えるだけで、SIerとのやり取りは1か月かかってしまいます。
例えば、自分の席の横に開発部隊がいて、クラウドベースですぐに直すのであれば、1時間でやれます。1時間と1か月の差は大きいですよね。

これからのDXやLOB(Line of Business)の世界は、だからこそ内製化、クラウドベース、そしてアジャイルベースなのです。ウォーターフォールが残る部分は絶対あると思います。しかし、フロントの営業や企画、プロモーションといった部隊がDXを推進するにあたり、ITを活用する分においては「内製化」というキーワードは絶対に必須でしょうね。Slerに見積り依頼を出している時間はないです。

関口 お二人と日頃からお話をさせていただいて、伊藤忠様の収益重視というところは、本当にシビアだと思っています。DXやデジタル活用の話になると、とりあえずやってみようというのが一般的な会社ですよね。その姿勢はすごく良いと思いますが、どこかで必ず「いつまでお金を使い続けるのか」「これは本当に意味があったのか」という問題にぶち当たります。

「いくら儲かるのか」という話を私たちに対しても、データサイエンティストのチームに対しても、ここまで最初から突きつけられることはないだろうと思いながら、仕事をさせていただいていたと思うんですね。
それくらいシビアにやっていくということは、一方で技術やDXのブームに踊らされないということですよね。非常に大事なことだと思います。やはり地に足をつけて進めていった裏側の中心にある収益性重視というのは、私個人的には、非常に特徴的な進め方だと思っています。

関川氏 それはありますね。デジタルを活用するとお金もかかりますし、それなりのビジネス課題の一定規模の母数、事業規模があって「このような生簀の大きさがあります。ここを効率化したら、投資に見合う収益改善効果が得られる」といったビジネス側の事情が先にあって、そのためにどういったデジタル投資、データ活用をしていくのかということだと思うんですよね。

ただ、誤解があると良くないと思いますが、ITパートナーやデジタルパートナーを買い叩くという話ではありません。持続的な取り組みにしつつ、内製化もですが、全部伊藤忠グループ内でやるという意味ではなく、❝身内と思えるような仲間❞と一緒にやっていくことで、先ほど堀内が申し上げたような機動性のあるDX、デジタル活用ができるということだと思うんですよね。

収益性については、これを使ったらどれだけお金がかかるのかと必ず聞かれるので、「このお金を使ったら、1、2年以内にこのようなリターンがあって、さらには3~5年で、このようになるのを狙っている」というのを必ずストーリーとして持っています。それを途中で塗り替えてもよくて、そこは「ストーリーを持った上で、走っていくこと」を基本動作化しなければならないと思っていますね。

ITがビジネスに寄り添い、ワンチームに

関口 今年2月、伊藤忠商事様が日本アクセス様(伊藤忠商事株式会社の100%子会社)と進める「食品サプライチェーンDX」を、ブレインパッドがデータ活用コンサルティングと需要予測技術を用いて支援することをプレスリリースで発表させていただきました。

本プロジェクトの最初に日本アクセス様に行き、現場で何が起きていて、皆様がどう働いているのかも見ながら、本当にやれることは何なのか、どこでデータが使えるのかというのを一から考えるきっかけとなりました。これが改善されるのだという現実の光景を見ながら進められたのは、良い経験でした。ついデータの話だと、データだけを見て何かの精度だったり、数字作りの話に陥りがちなので。

しかし、実際に配送センターに伺い、ビジネスをやっている現場の方々がどう変わるのか、ハッピーになるのかを常に考えることができたことは、私たちにとって非常に勉強になったと思っています。

関川氏 当時、プロジェクトが初期の頃に、ブレインパッドのデータサイエンティストのメンバーが来て、ビジネス課題の話から入りました。デジタル側のメンバーとビジネス側のメンバーのコラボですよね。どちらかと言うと、ビジネス側がデジタルを理解しようとするところだと思っていましたが、ブレインパッドさんの何人かのデータサイエンティストが、「食品卸とは」や「初めての食品流通」など物流に関する書籍を買って、「昨日、徹夜して読みました」と(笑)。この情景をみたときに、こうやってIT側・デジタル側とビジネス側がワンチームになると何か化学反応が起こるなと、思いました。

関口 そのワンチーム感が、まさに外部のパートナーに求めることですよね。どの会社も、自分たちだけではやりきれないので、最初はパートナーが必要です。そこで、私たちのような会社や、SIerやITプレーヤーと一緒に始めることがあり、パートナーのあり方はこのようなワンチームの形に変わってくるのだろうと私は思っています。

コロナ前には皆さんと撮った飲み会の集合写真がスマホにいっぱい入っていますが、それぐらい身内な距離感でワンチームでやらせてもらっているということなのですよね。プロジェクトルームを用意いただいて、伊藤忠社員の方も私たちのメンバーも同じ島の席に一緒になって座っている状態で作業を行っていました。デジタル活用でも「teamsの会話」がものすごい量回っていますもんね。このワンチームでやらせていただいていることが、私たちも非常に良いと思っています。
「ワンチームへのこだわり」は最初から言われてましたが、これは、DXだからこうしなきゃいけないと思われたのか、そもそもパートナーさんとの付き合い方というものをもう少し考えていかなければいけないと思われたのか、「どのような考えからワンチームにこだわったのか」をお聞かせいただけますか?

関川氏 直接的な枠組みだと、受発注の関係であり、業務を委託する関係かもしれません。しかし、同じ課題を背負って、そこに向かって一緒に走るとなると、机を並べて同じ枠組みの中でやっていくというのがベストだということは、誰しもが思うことです。これを実践するのは意外と難しいですが。当時、データ活用プロジェクトを立ち上げる前に、やはりパートナーは必要だということで、そのような会社にいろいろとお会いしたんですよね。その中で、ブレインパッドさんが最もビジネス課題に寄り添ってくれそうだと思いました。データ活用でその業界の課題、社会の課題を解決していこうというパッションを感じたのです。

伊藤忠商事株式会社
IT・デジタル戦略部 デジタル戦略室長
関川 潔 氏

関口 昨年11月に資本業務提携をし、二人三脚の体制になったのですが、メンバーたちを快く受け入れていただいたなと感謝しています。普段はコミュニケーションを活発にし、メンバーたちのあだ名もたくさんつけていただいて、そのように呼び合える関係性でご一緒させていただいています。一方で、「成果に対するシビアさを感じること」は私たちにとって学びだと思います。
パートナリングのあり方が変わってく中で、「私たちIT業界の人間が変わらなければいけない部分」があると思います。マインドセットや働き方などいろいろあるとは思います。

堀内さん、一番変わらなければいけないところはどういうところでしょうか。

堀内氏 ブレインパッドさんとは今の資本業務提携の割合(伊藤忠商事が3%出資)でこれだけ良くやっていただけている。要するに内製化と同じように、我々と同じゴールを見ていてくれているということです。

この間合いを作ってもらっていることに対してはすごく感謝しています。それができる会社は意外とないのです。資本業務提携するときには、経営者や幹部の皆さん、もしくは現場の皆さんを見て、「この人たちは本当にファミリーになってくれるのだろうか」「内製化とか格好いいこと言っているけど、私たちと一緒にマーケットに対して同じ歩調で進んでくれるのか」ということを一番のポイントとして考えますね。

DXを通じた未来の展望

関口 資本業務提携という形ですが、私たちが「データを用いて持続可能な未来をつくる」ことを実践する中で、伊藤忠商事様のお取引先や、伊藤忠商事様が抱えているマーケットも含めて、新しい未来を創っていくことをご一緒できるということが、いま一番の私の楽しみです。先日プレスリリースも出させていただきましたが、他にもベルシステム24様や伊藤忠グループのたくさんの方と新しいチャレンジをしていけることが、ものすごく楽しみです。

堀内さんも、ITビジネスをけん引する、DXをある意味支援する立場として、さまざまな仕掛けに取り組んでいらっしゃると思います。私たちをはじめ、DXをサポートするために必要なケイパビリティをさまざまな角度で取り揃えていくことを進められていると思うのですが、それを少しご紹介いただいてもよろしいですか?

堀内氏 先ほど申しましたが、IT業界、特にシステムインテグレーションの業界は、典型的なプロダクトアウトの業界だったなと振り返っています。
「お客さんの話を聞いて、要件定義をし、そして基本設計をする」
お客さんにしっかりと寄り添って、ソフトウェアを作っているのが、と言うかもしれませんが、ウォーターフォールやソフトウェア開発の部分も、結局はプロダクトアウトしているだけであって、最新のテクノロジー、製品をリリースしたら、マーケットにどう売るのか(プロダクトアウト)という側面が、SI業界だからこそ強かったのではないかと思います。

しかし、DXが主流の世の中になり、このDXはお客様の状況によって変わってくる。DXに対してプロダクトアウト側がここ数年間PoCをどんどん実施していますが、ほとんど失敗だらけですよね。やっとこの1年で成功したという事例を、うちでも他社でも聞きますが、やはりプロダクトアウトと、マーケットインでは全然やり方が違います。

我々IT業界が本当にマーケットインするのであれば、「お客さんの目から見てUI/UX、CX、これらが本当にいいものなのかと」を見極めることなのですよね。そのためには、極端な言い方をすると「最新技術というのは実は不要」なのです。お客さまが実現したい目的に満足すればいいのですから。

そういったものを作るときは、感性だけではなく、客観的に見ることも必要ではないかと思います。そこで、データが出てくるのです。データ活用というのは、最先端の技術を回さなくてもできるのです。しかし、データを「どのように使うのか」、私達にはそのノウハウがありませんでした。それをお金にする方法も、活用する方法もなかったのです。そこでブレインパッドさんが、その辺に落ちている砂利か土みたいなデータを、お金になる木に昇華する入口を作ってくれたんですね。

伊藤忠はあらゆる業界でいろいろなビジネスをしていますが、その情報をどうやって価値のあるものにするかが大切です。そのためには、データを整合性があるものにし、分析をしなくてはいけません。その入り口を作るためのパートナーとして、ブレインパッドさんが必要なのです。

そのような面では先ほどから何回も言っていますが、データやデジタルを儲けるものにするための最初の布石がブレインパッドさんとの提携だったと思っています。我々も昨年から一緒に仕事をして、そのように確信しています。

伊藤忠商事株式会社
情報・金融カンパニー 情報・通信部門長代行
堀内 真人 氏

関口 ありがたいお言葉です。データについていろいろな方々とお話をしていて、やはりキーワードとなるのが、「消費者、マーケット」ですよね。データが、見えないお客さんの写像となるのではないかと思っています。この一年ぐらい、力強く推進されている方々のキーワードが、マーケット、消費者のために、生活者のために、生活のためにというものなのです。

やはりDXに踊らされずに、着実に地に足をつけて成果を出していくということですよね。関川さんは、今後どのような進化を考えていらっしゃいますか。

関川氏 あまり遠い先を見るような会社ではないので、3年先、5年先で言うと、今はDXやデジタルだと言っていますが、世の中は3年も5年も経てば、DXという言葉はおそらく使っておらず、データやデジタルを活用するのはビジネスの当たり前の基本動作になっていると思います。

25年前くらいにインターネットが商用化されましたが、今は当たり前になっていますよね。その時間軸がもっと短いと考えていて、我々としては、伊藤忠グループが持つさまざまな産業でのビジネスにおいて、デジタルやデータを活用するという動作が当たり前になっている状態を、この1、2年でひとつひとつ丁寧にDXの取り組みを積み上げて当たり前化し、3、5年スパンでやっていかなければいけないと思っています。
本当の意味でのデータドリブンなグループ経営になっていくのが、伊藤忠にとってのデータ活用であり、デジタル戦略だと思っています。

関口 堀内さんはいかがですか?

堀内氏 冒頭、「次世代」という話がありましたが今現在、伊藤忠では次世代という言葉は使っていないのです。なぜなら、すでに伊藤忠は次世代になったので、それは使う必要がなくなったのです。
今年の後半や来春くらいには、デジタルと言えなくなるのではないかと思うのです。DXが当たり前だからその言葉は使わないんですね。「BEYOND DX」とはどのようなものかを考えています。

私たちは今、ホリゾンタルな部分を作っています。「データを活用する基盤」を作ったり、儲かる形でDXやシステム化、デジタル化を進めていったりして、それをデータでつなぐというものです。その先にあるのは何なのかということです。

例えば、今で言うと流行りのSDGsです。デジタルの力を使って世界の一番大きな課題を解決する、もしくはヘルスケアにデジタルを使って皆さんがもっと健康に気をつけて生活できるようにするといった縦の部分に関して、大きな部分は来年、再来年にはフォーカスされていき、おそらくDXという言葉は2、3年後にはもう誰も言わないのではないかという気がしています。
そのときに、御社や我々が、アメーバのようにしなやかに変化していきながら、フレキシブルに、一つひとつ丁寧に、お客さまのビジネスをうまく前に押し出せるソリューションを提供できていたら、カスタマーサクセスに寄与できていたらいいな、という夢を見るのです。

関口 今回のイベントは「DXカンファレンス」となっているのですが、このタイトルが3年も続いたらやばいということですね。

堀内氏 もう来年には違うテーマにする必要がありますね(笑)。

関口 私たちも「持続可能な未来をつくる」ことが本当の目的です。データ、AIを浸透させることではないと思っています。この点を引き続き一緒に考えさせていただきながら、進めていければと思います。
長い時間、たくさんのお話をお聞かせいただき、大変勉強になりました。ありがとうございました。

関川氏 堀内氏 ありがとうございました。

WRITER執筆者プロフィール

株式会社ブレインパッド

DOORS編集部

ブレインパッドのマーケティング本部が中心となり、主にDXにまつわるティップス記事を執筆。また、ビジネス総合誌で実績十分のライター、AI、ディープラーニングへの知見が深いライターなど、外部クリエイターの協力も得て、様々な記事を制作中。

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