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「マーケティングDX」による、データ活用と顧客創造~BrainPad DX Conference 2022~実践セミナー

公開日
2022.05.09
更新日
2024.02.21

3月23日に開催した「DOORS-BrainPad DX Conference2022」。
3000人を超える視聴申し込みをいただいた本イベントの内容をお届けいたします。

今回は、

株式会社ブレインパッド ビジネス統括本部 データテクノロジーコンサルティング部 大澤 温

による、『「マーケティングDX」による、データ活用と顧客創造』と題したテーマについて解説していきます。

マーケティング施策を実施する場合、データをどのように使用するのかといった考え方が大切です。しかし、データの集め方や顧客とサービス提供側には壁があることも少なくありません。そこで、今回のセミナーでは、どうやって顧客理解の壁を越えていくのか、越えたあとのマーケティング施策は何をすればよいのかといったポイントを具体的にみていきます。

データストラテジーで「顧客理解の谷」を超える

ある企業で、社長が「これからはOnetoOneマーケだ、一人ひとりに合わせたマーケティングを行う」という号令を出したとしましょう。

その号令に対して、マーケ担当のAさんは「一人ひとりに合わせたマーケティングを進める前に顧客行動を分析して、顧客グループを分けるセグメント化から始めたいので、お客様を分けるためのデータを貰ってきます」という動きをしようとしました。

しかし、情報システムの方から「私たちは顧客行動に対するデータは持っていない。また、製造業で卸売業者との取引がメインだから、顧客情報に関しても卸売業者は持っているが私たちにはない」という意見からマーケ担当のAさんも諦めざるを得ない流れとなっています。

今回の顧客理解を阻む壁は、大きく分けて2つです。

1つ目は顧客からの距離が遠いことです。小売店や卸売業者が間にいることから、顧客との接点がなく、情報を手に入れられません。加えて、一人ひとりに合わせて最適化されたマーケティング施策が困難な状態となっています。

2つ目は、複数の接点から顧客情報を集めたとしても統合できず、一人格としての顧客理解ができないことにあります。また、そういった状態となっている場合、同一の顧客が違う購入方法でショッピングを行うだけでも、担当者からは偏った顧客情報しか見えません。そのため、顧客の全体像がより見えにくくなり、偏りのある情報から自社の顧客の全体像を語るといった状態になると想定されるでしょう。

この2点から、私は、「顧客行動にまつわるデータの量・質が担保されておらず、顧客を正しく理解することができないことを”顧客理解の谷”」と捉えています。

そして、”顧客理解の谷”を解決するための方法の1つとして、「データストラテジー」が考えられます。

では、ここからはデータストラテジーによって何が解決できるのかをみていきましょう。

前提として私は、データストラテジーを「目指すべきマーケティングモデルやビジネスモデルを整理し、それを実現するために必要となるデータの確保、品質担保のための戦略を考えること 」と定義しています。

目指すべきマーケティングモデルやビジネスモデルを定めた上で、どのような顧客理解が必要なのか、どのようなデータを確保して品質を担保していく必要があるのかといった戦略を立てることが大切です。

図表では、今までのマーケティング施策から目標を定めます。目指すべきゴールがOnetoOneマーケティングなのか、アプリやメルマガといったオムニチャネルなのかといった定義からスタートし、戦略を策定しましょう。

実現のためには、「顧客理解の幅を広げる必要があるのか」「住所や年代といった属性・購入履歴などの行動・動機やCXなどの心理を深める必要があるのか」といった選定を行う必要があります。そのうえで、データストラテジーは幅と理解を広げるために使用されるものだといえるでしょう。

データストラテジーを実現する1つの方法として、幅を広げる場合は、「顧客データを活用するためのCDPの導入」「マーケティング施策の作成・運用」「外部データの取り込み・活用」などの選択肢が考えられます。

顧客理解の深化では、「顧客育成状況の整理及び体系化」「直営チャネル(流通経路)の強化」「顧客データの分析力の強化」などの施策が選択肢となります。特に、マーケティング施策を実行する担当者のリテラシー強化は効果的な施策の1つです。

では、顧客理解を深めることによってどのようにアプローチが進化するのかについてみていきましょう。 

まずは「点」でのアプローチです。点でのアプローチでは、顧客のデータがないことから顧客を分けて考えることができません。そのため、全員に同様のアプローチを行ってしまうだけでなく、離脱した顧客の状況も分からなくなってしまいます。

次に、顧客理解が進むことで「線」でのアプローチに変化します。育成の経路を見込み顧客から離反顧客まで、線で並べることができるため、「線」でのアプローチと表現しました。

顧客の育成条件に応じて顧客をセグメント化できているため、一般顧客や優良顧客などそれぞれに合わせたマーケティング施策が可能です。顧客を単発ではなく、中・長期的な目線で育成することができます。

そして、さらに進化すると「面」でのアプローチに変わっていきます。 マーケティング施策として、LINEやアプリのプッシュ通知など複数のチャネルでそれぞれのニーズに合わせたアプローチを行うことが可能です。また、アプローチの方法が多角化するため、CDPの導入や複数チャネルをまたいだチームビルディングが必要です。

「面」のアプローチを実現するためのマップでは、横軸は顧客の育成状況、縦軸はチャネルを表記しています。

主にどのようなマーケティング施策を実施するのか、明確に記載されています。このように表すことで、「施策やチャネルの取り組みに対して、一貫性が生まれシームレスな体験を提供できるようになる」「各チャネルと連携することで、会社の目標に合わせた施策提供が可能となる」といったメリットを享受できるでしょう。

これまでの課題解決方法を知ることで、冒頭のAさんの返答が大きく変化しました。OnetoOneマーケに対して、深い顧客理解が必要であることから、ECサイトのスタートを提案。ECサイトが成長すれば、他のチャネルも統合し、中・長期的に「面」で顧客にアプローチする方法が戦略として立てられるようになりました。


チームビルディングで「チャネル間の谷」を超える

エピソードからみていきましょう。チャネル横断を前提としたマーケティング施策を行う場合、全社一対で顧客に向き合うというパターンは多いといえます。上記の図では社長・マーケ担当・各チャネル担当で方向性が決まったものの、具体的な話が進むほど不安感や拒否感が出てしまい、施策が上手く打てなくなってしまっています。

例えば、BtoBの売上が減少する可能性がある、使い慣れたシステムが変わる可能性がある、他の担当との調整が多くて業務が進まないといった問題はどの企業でも起こりえる課題です。

では、なぜこういった問題が起きるのか解説していきます。

どのようなチャネルで顧客に接しているのかは、全員が見えている部分です。しかし、各項目に分けてみると各チャネルは文化・商習慣・関心も大きく異なります。

例えば、ECは歴史・文化では「歴史が浅く、非対面であるため恰好もラフ」、商習慣に関しても「時間単位での取引管理」であり、関心事項は「トレンドを捉える」ことが大切です。対して、B2Bであれば歴史・文化は「社内の歴史は最も古く、恰好も堅実」、商習慣は「月単位での取引」、関心事項は「チャネル増加による縮小」となっています。ほぼ、対極と言っていい価値観ですね。

こういった「見えない領域の差異が生み出す各論反対によって、部門・チャネルの連携が取りにくくなる」ことを私はチャネル間の谷と呼んでいます。

チャネル間の谷を超える1つの方法として、チームビルディングが効果的です。ワークショップを開き、 各部門の担当者をそれぞれ集め、構想・検討を実施していきます。

数時間単位でみっちり行うことで、お互いの考え方・価値観に対して、腹を割って付き合うことで相互理解・共通認識を作っていくことが目的です。 

また、今まで見えなかった範囲をワークショップによって広げていくことで相互理解につなげられます。

もう1つの大切なこととして、ブレインパッドでは、データという共通言語で自由に話せる文化を作ることを重視しています。チャネル統合はソフト面とハード面から検討しなければなりません。

例えば、ハード面では「部門を横断するチームを形成する」「各部門からのデータを集約・分析・施策に使用できるようなシステムを作る」といった取り組みがあります。

また、ソフト面も整備していく必要があり、大きく分けて2つの要素があります。1つはデータの共通言語化です。各担当者が客観的なデータをもとに、議論するためのデータリテラシーの向上やデータサイエンティストの育成を含みます。

2つ目は心理的安全性の担保です。データに基づき合理的な議論を行う場合、立場によってはどうしても不都合なデータと向き合わなければならないケースもあります。そのため、立場によって発言できなくなることを防ぎ、自由に発言できる組織をつくることが大切です。

ここから、上記でふれたソフト面の重要な要素を統合していくための2つの方法について詳しくみていきましょう。

1つ目の伴走支援は、「個人の能力を高め、組織風土を変える」ことが目的です。顧客のチームの一員として入り業務を行う、メンターとしてアドバイスを行うなどの方法でデータリテラシーの向上や人材育成・データをもとにして議論できる風土を作ることを目指します。

また、どの立ち位置にいるのかを明確にするデータリテラシーのアセスメント・データを活用できる文化作りをサポートし、最終的には自走を促すことが並走支援の内容です。

2つ目のチャネル横断型KPIの設計では、追っていく状況や「共通の目標を作る」ことが目的となります。ポイントとなるのは、全チャネルの貢献度を可視化することです。例えば、 マーケティング施策によってはリアル店舗から EC サイトへの送客ケースも想定されるでしょう。

この場合、一見すると売上的には送客部門が損をするように見えるものの、KPI ツリーを整理・可視化することで貢献度を可視化すれば全社をあげた取り組みが実施しやすくなります。 

データマネジメントで「戦略と現場の谷」を超える

このエピソードでは、ある企業の上層部が戦略に基づいてシステムを導入することを決定しました。しかし、現場からすれば導入されたシステムは使いにくく、結果として全く受け入れられないものとなってしまいました。

こうした、戦略を策定する上層部と研磨のすれ違いが起きる原因についてみていきましょう。 簡潔にいえば、「戦略と現場の間に谷がある 」ということになります。

例えば、戦略に重きを置きすぎると、「戦略を実現するための機能拡充に熱心になるほど、現場の体験が軽視されがち」になります。また、戦略や計画を策定する場合には、ロードマップを策定し、締め切りが決められることで、ウォーターフォール型の開発になるケースも少なくありません。そのため、導入前の利用感を現場で働いている従業員がつかめなくなってしまいます。 

対して、現場に重きを置きすぎた場合、現場の利便性を追求した結果として単なる便利ツールとなってしまい、戦略の実行ができなくなります。加えて、各論の議論になることが多くなるため、システムのゴールがブレやすくなる点も戦略に悪影響を与えるといえるでしょう。

バランスも難しいものの、「戦略を実現するはずのシステムが現場で受け入れられなかった」ことで、戦略が実現できなくなります 。

では、どのようにして「戦略と現場の間の谷」を超えて行けばいいのでしょうか。ブレインパッドでは、データの価値を正しく引き出していくための取り組みであるデータマネジメントで超えるサポートを行っています。

データマネジメントを行う場合、2つの大切なポイントがあります。1つは、「現場で受け入れられる」ことです。 例え、データの価値を引き出すシステムだとしても現場で使わなければ意味がないといえます。

2つ目は「正しくデータが解釈される」という点です。データのみが独り歩きしたり、誤解を招くようなデータ表現を防いだりすることが大切だと感じています。条件がしっかりしていなければ、データマネジメントも実現できません。

ここからは、2つのポイントのうちとくに「現場で受け入れられる」に焦点を当てて取り組みを解説していきます。ブレインパッドが大切だと思っているのは、「動くプロトタイプにより戦略と現場を結びつける」ことです。

早い段階からシステムのプロトタイプを触ってもらい、現場を巻き込むことを意識しています。そうすることで、得られるユーザ体験や嬉しさをシステム導入前に実感でき、実際に動くシステムにふれることで新しいアイディアや要望が言語化しやすくなります。加えて、戦略を現場に反映しやすくなるといえるでしょう。

また、ブレインパッドとしてもビジネスインテリジェンスやデータ分析といった動くものを作れるメンバーが多いことから、戦略と現場をより仲介しやすくなります。

取り組みの結果・成果

ここでは、データストラテジー・チームビルディング・データマネジメントを軸にある企業を支援した際の事例をみていきましょう。

現場での評価では、「店舗や来店顧客の状況を確認分析するBIツールが日々利用されるようになった」・「マーケ施策がトップダウンではなくボトムアップ型での施策検討に転換しつつある」との声をいただいています。

また、「コミュニケーション方法を決めた施策マップが使われない仕組みにならない」ため、顧客のニーズに答えられていると感じてもらえたようでした。

事業レベルでの評価では、「施策マップを策定しMAツールによるメールを送ることで顧客育成がじわじわと進んでいる」「顧客の状況に合わせたメール配信などによって顧客のニーズを面で抑えつつ、量を作るマーケティング施策が活きている」とメール配信による顧客育成の成果がみえました。

加えて、「コロナ禍でもロイヤリティの高い層が来店するようになり、顧客育成に成功した」という変化を感じられるようになっています。

▼DXの定義や意味をより深く知りたい方はこちらもご覧ください
「DX=IT活用」ではない!正しく理解したいDX(デジタル・トランスフォーメーション)とは?意義と推進のポイント



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株式会社ブレインパッドについて

2004年の創業以来、「データ活用を通じて持続可能な未来をつくる」をミッションに掲げ、データの可能性をまっすぐに信じてきたブレインパッドは、データ活用を核としたDX実践経験により、あらゆる社会課題や業界、企業の課題解決に貢献してきました。 そのため、「DXの核心はデータ活用」にあり、日々蓄積されるデータをうまく活用し、データドリブン経営に舵を切ることであると私達は考えています。

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