これからの小売業は、デジタルの力で顧客に寄り沿い“絆”を築く
「DOORS-BrainPad DX Conference-」レポート①前編

ブレインパッドは2020年2月19日(水)に、創業来初の大型カンファレンスとなる「DOORS-BrainPad DX Conference-」を開催しました。
このカンファレンスは、DX(デジタルトランスフォーメーション)にどう取り組んでいけば良いのか悩みを持つ企業の皆さまに向けて、各業界の最新の取り組みや成功事例に触れていただく「扉」となることを願い開催しました。
当日の来場者は300名を超え、日経BP、東洋経済新報社をはじめ、20名のメディア記者が来場する注目度の高いイベントとなりました。
当日はKeynoteに続いて、ブレインパッドがご支援させていただいている企業様の6つのセッションが開催されましたが、その中で注目度が高かったセッションについて、3回に分けてレポートいたします。

初回は「ECのカイゼンで進む小売業のデジタル化。髙島屋と三陽商会が挑む「これからのDX戦略」とは?」と題して、髙島屋のEC事業部 事業部長・西名香織氏と、三陽商会 デジタル戦略本部 デジタルマーケティング部兼EC運用部長を務める安藤祐樹氏をゲストスピーカーに迎え、小売業におけるDX活用事例と、今後の戦略についてディスカッションをレポートいたします。

顧客の変化に対応するには、DXは必須

小売業界に関わる聴講者が多く参加したこのセッション、まずは当社の柴田から、小売業の現状とテーマの説明からスタートしました。

柴田は小売業にDXが必要である理由に、“顧客の購買意識”の変化を挙げました。モノを買うだけであればECで完結する時代に、わざわざ店舗に足を運びモノを買うのは「体験を買う」ことを求めているのだと分析します。

そして、顧客の購買意識の変化について、SNSの普及が関っていることにも触れました。

柴田 ── モノを買うことの目的の変化も大きいです。
昔はモノを買う=自己満足だったものが、今は承認欲求・共感を得るための要素が強くなってきている。SNSが広まって、共感を拡散しやすくなってきています。社会にデジタルが浸透してデジタルの価値が高まっている中で、企業側もデジタルは外せない時代にきています。

しかし、どの業界でも頭を悩ませている問題が、“デジタル人材不足”。
髙島屋、三陽商会においても例外ではありませんでした。その状況の中で両社が「どのようにしてDXを推進したのか?」また「なぜDXを始めたのか?」を、実際の取り組みをベースに詳しく話していただきました。

業界あるある? 複雑化するシステム構成

三陽商会のDX施策は主に「オムニチャネル基盤強化」「オン・オフラインの会員統合」「会員ステージサービスの導入」を中心に進めていたと安藤氏。

安藤氏 ── 我々のDXはまずはEC強化から始まりました。
最初はガワのほうをやっていましたが、去年から生産仕入れや商品企画(MD)においてもデジタル活用を取り組み始めています。やってみて分かったのは、DXを加速させるには社内データやインフラの整備が必須だということ。
部分最適で、仮にECだけが強化されたり、CRMだけが強化されても、事業として顧客に対応できるサービスというものには限界がきてしまうでしょう。爆発的に増えているデータ量やIoTのデバイスの増加といったことに対応するには、ECに閉じずに、全チャネルでDXを進める必要があると思います。

 2015年から始めたDX施策で気付いた、インフラの重要性。安藤氏は自社のシステム構造図を用いて、三陽商会だけでなく多くの小売業で起こりうる現象を語りました。

 安藤氏── DXを進めて約5年、いろんな機能拡張やAPI連携をしていった結果、とても複雑な仕組みになってしまった。多かれ少なかれ、どの企業もシステム構造図はきれいな状態になっていません。対策となると、どこかの製品で揃えるか、そもそもデータを貯めていくインフラからもう一回見直す、などが考えられます。基盤を整備してくためにも、デジタルを加速させていかなければと感じます。

ここで、システム構造図について柴田から西名氏に質問が。三陽商会のシステム構造図を見てどう思うか?という問いに、西名氏が答えます。

西名氏 ── 百貨店って古い業態なので、店舗のオペレーションにあわせていろんなDB(データベース)が作られていて、そこに、ECなどの新しいサービスが乗っかる。結果的に、連携が増えていって複雑化してしまう。全く同じ状態ですね。

DXを進める上で、インフラ整備は大きな課題であり、また業界共通の課題であるということが明らかになってきました。

髙島屋のDX戦略──絡み合う3つ変革

髙島屋は3年前にDXプロジェクトを立ち上げ、「顧客体験(接客)の変革」「ワークスタイル(働き方)の変革」そして「インフラ(基盤)”の変革」の3つの視点で進めていったと西名氏は解説します。

西名氏 ── 百貨店の状況が厳しいということは皆さんもよくご存知だと思います。お客さまの“モノの購入方法”がどんどん変わっていく。今のまま百貨店の事業を続けていても、未来はないということで、DXプロジェクトをスタートしました。

顧客体験の変革については皆さん、よく議論されたり、いろんな方の話を聞かれると思います。それももちろん大切な要素ではありますが、我々の事業の主体となるものは百貨店の実店舗。そこのオペレーションやシステムによる影響が非常に大きいので、ワークスタイルの変革をしなければ、顧客体験変革に投入する要員やコストが生み出せないのです。

だから顧客体験変革とワークスタイル変革は同時にやっていかなくてはならない。この2つが固まると、インフラも、どういったものを設計しなくてはいけないのか、ということが見えてくるようになりました。

髙島屋が実践している3つの改革の成功には、すべてが相関していると西名氏は言います。特に、ワークスタイルの変革は、他の変革を進めるための力を生み出す重要なポイントだと強調しました。

西名氏 ── 当社のECは、約3分の1は店頭在庫や店舗スタッフの力を借りて商品を出荷しているので、店舗スタッフは接客もするし、オンラインの受注・出荷もすることになります。つまり店舗の人員の業務効率化の徹底が非常に重要になります。そこで導入したのが、販売員さんの動静をリアルに可視化する『デジタル動静板』です。動静の見える化を実現しました。

スタッフの動静を可視化することにより、店舗スタッフの業務配分がコントロールできるようになったと西名氏は振り返ります。小売業は「顧客の体験の変革」にばかり目が行きがちになるところを、それを支える「人」の動きに着目し改善した点が髙島屋ならではと言えます。

WRITER執筆者プロフィール

株式会社ブレインパッド

DOORS編集部

ブレインパッドのマーケティング本部が中心となり、主にDXにまつわるティップス記事を執筆。また、ビジネス総合誌で実績十分のライター、AI、ディープラーニングへの知見が深いライターなど、外部クリエイターの協力も得て、様々な記事を制作中。

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