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【前編】DX×SaaS~DX時代の変化に対応するために必要となるSaaSソリューション~

公開日
2020.12.03
更新日
2024.02.20

DXとSaaSの変遷

本記事では様々な資料やお客様との会話の中から、テーマとなっている「DXとSaaS」の組み合わせについて述べていきたいと思います。筆者も、アナリティクス関連の業界に身を置き20年以上もの時間が経っていますが、このような多くの”横文字”が出現しては消えていきました。本質ではないものは消えていく、もしくは他の概念に組み込まれて発達してきました。

今回の”DX”と”SaaS”は密接に関係しており、本記事の中で整理していきたいと思います。


DXとSaaSが必要とされる三つの観点

不確実・不透明な時代での対応

現在、テクノロジーだけでなく、社会的、経済的な大きな変化が起きています。度重なる国際紛争などから、正規軍同士の戦いではなく、不確実性や変化が激しい対ゲリラのような非対称の戦いがVUCAおよびOODAループといった新たな概念を生み出しました。これはビジネスにおいても同様であり、変化の激しい市場やテクノロジーに対して、企業も変化に対応をしたスピーディーな動きが必要となりました

このような社会・経済・テクノロジーの大きな変化・変動が、「DX導入の方法論」に大きな影響を及ぼしていると考えられます。

ITプラットフォームの劇的な変化

続いて、二つ目はデータの爆発的な増加と、プラットフォームの変遷についてです。2014年にIDC社が提唱した”第3のプラットフォーム”という概念です。SMAC(Social、Mobile、Analytics、Cloud)と言われるテクノロジーが、主要ITのプラットフォームとなると提唱され、この提言は数年後そのまま現実となりました。ビジネスでは莫大なデータが発生し、クラウドとAIを活用してデータを学習し、その結果からSNSやモバイル経由で消費者へのアプローチが行われ、そのフィードバックを得てさらに「AIの高度化」が進みました。

このような状況で、2020年には59ZB(590億TB)のデータが世界中で生成され、80%~90%はテキスト、画像、動画、音声などの「非構造データ」と言われています。このような莫大なデータを活用するためのプラットフォームを、オンプレミスでの自社開発で行うのは実質上不可能に近く、SaaSの有効活用が現実的な選択肢となりました。

このような状況において、DXを促進したい企業にとっては、データ・AIを活用するうえで「SaaSサービス」がテクノロジーの中心となる形になりました。

モノからサービスへの変化

そして三つ目に、商品・サービスを提供する企業が、「SaaS・サブスクリプション型のビジネスに転換する」ことで大きな変革をもたらしました。今までは「モノ」に価値がありましたが、サービス化による「コト」の消費への変化とともに、SaaSのような「使うことによるベネフィット」に対価が払われることになりました。莫大な費用をつぎ込んで開発された仕組みを、安い手ごろな値段で提供することで、価値の最大化をもたらし顧客を惹きつけました。さらにSaaSは顧客と継続的に繋がることができるため、その利用状況を把握し、パーソナライズやカスタマーサクセスが顧客に合ったサポートとして提供されることで、より長く使ってもらうという対話が可能になりました。

「高いものを高く売る」のではなく、「高いものを安く売り、そして”長く”使ってもらう」ことが最も重要なことになったのです。

今では巨大なSaaSベンダーとして名を馳せているAdobe社も、以前はPhotoshopなど高価な売切りソフトの販売をメインとしていました。しかしながら10年ほど前にSaaS型サブスクリプションモデルに切り替え、大きな成功をしています。またSalesforceも「製品を売る時代は終わった」としてSaaSに注力した結果、ビジネスが拡大し、業界で最大手であったSiebelは市場から姿を消すことになりました。

そして今ではデータベースそのものがターゲットとなりSaaSのみならずDaaS への移行が進むのは間違いありません。

不確実・不透明な時に求められるDXのアプローチとは

筆者が、統計解析のソフトウェアを売っていた20年ほど前、お客様を連れてアメリカの本社や、ユーザー訪問に行くことが何度かありました。その際に「データマイニング」の先端企業であった、カード会社、通販・小売業の「データマイナー」と言われる分析のスペシャリストの話を聞くという機会が必ず組み込まれていました。その際に、同行した日本のお客様からは「決定木モデルが実務で使えるかどうか、どのように判断しているか?」と聞けば、「テストマーケして確かめる」との答え。「分析をする前に、どのような変数が実務で効果があるかどのように確かめるのか?」と聞けば、「候補になる変数で分析してみて、後はテストマーケして確かめるしかないね」といった答えを受けました。同行したお客様とは「なんでもテストマーケしろって言われても、あまり役に立たないですね。ノウハウはないんですかね。アメリカ人は適当なのかな」と会話をしたのを覚えています。

今になって考えてみれば、我々の考えがずれており、これらは「現在のDXやアジャイル開発」につながるような、非常に本質を突いた回答だったのだと思います。医薬統計でも被験者に実際に投与して効果を確かめるしかありません。またマーケティング分野でも、DWHにある大量のPOSデータなどを分析して、予測モデルやアソシエーションルールの発見は行われていました。ただ、相関は見つけても因果は不明なので、試してみることで分析結果を確信することができました。要はどんなに頑張っても手元にあるデータだけでは先は読めず、試してみる必要があったのです。

また「テストマーケと言っても、分析結果に基づいて、IT部門がプログラムを開発してデータ抽出し、マーケがDMを制作していたら、ものすごい時間がかかる。テストどころではない」と言ったら、「最近はキャンペーンマネジメントというのがあって、データ抽出、ターゲティング、施策実行のリスト生成まで一人で出来るんだよ。短時間で」とも言われました。これは「現在のMA」につながります。このようにデータ、システムの連携ができておらず、経済産業省が「DXの阻害要因がブラックボックス化したレガシーシステムである」と主張しているのも理解できます。

さて、VUCAとOODAに話を戻したいと思います。

VUCAは2010年以降、国と国との正規軍の戦いではなく、ゲリラや武装集団といった、はっきりとした組織を持たない相手に対抗するために考えられた概念です。これは「Volatility(変動)」「Uncertainty(不確実)」「Complexity(複雑)」「Ambiguity(曖昧)」という頭文字をピックアップして作られ、ビジネスに置き換えれば、市場は変動的であり、不確実な事象が多く、テクノロジー・社会・消費者・データなどが複雑に絡み合っており、過去の成功パターンは通じず、ニーズも目標も曖昧になっているという事です。よって絶えず変化を求められることを意味しています。

このような状況の中で、必要となる考え方が”OODAループ”となります。VUCA時代においては、PDCAのような「計画」「実行」「チェック」「改善」では、「計画」「実行」という段階で状況が変わってしまい、その計画自体が陳腐化してしまうという欠点が指摘されました。新たな分析システムの開発のために計画3か月、開発6か月、テスト2か月、その実務での結果を確認するのが12か月目ぐらいには状況が激変してしまいます。特にマーケティング領域では顕著になりました。1年前にこのコロナの状況を予測して計画を立てていた人はいなかったはずです。

このように絶えず変化する環境で使われる、OODAループと言われる「Observe(観察)」、「Orient(情勢への適応)」、「Decide(意思決定)」、「Act(行動)」の頭文字をとったサイクルで回していく必要が出てきました。まずデータ分析を行い、その結果を判断して意思決定と実行案を決定し、アクションしながら考察を得ていくというものです。このようなサイクルを短期間に回していきながら、変化に対応をした意思決定をして行く必要があります。これを実行するためにも、高度にITを使った戦術実行が必要になります。

導入効果がはっきりしてゴールも明確な場合は、PDCAサイクルとウォーターフォール型でよく、不確実で成果が見えずらいものはOODAループとアジャイルで素早く行いながら変化に追随していく必要があります。PDCAサイクルの「P」に「OO」の部分が組み込まれていれば良いという意見もあるので、そのようなプロセスで理解をしても良いのかもしれません。

OODAループは朝鮮戦争で空軍パイロットであったジョン・ボイド氏が考案したものです。当時、F-86はMiG-15との空戦において優秀な結果を収めましたが、F-86の機体のコックピットの視界が広かったため、いち早く敵機を発見して「観察」と「情勢への適応」を一歩先に行えたのが理由と言われています。

そして先日のニュースで、「米軍のベテランパイロットが、AIに空戦で完敗した」との記事がありました。ベテランパイロットはAIとの模擬空戦で5戦全敗だったとのことですが、コメントで「AIは『OODAループ』が”ナノ秒レベル”で、人間よりも格段に速い。その差も出たように感じた」 と語っていました。AIの出現によって、ここまでサイクルは高速化してしまっているのです。

DXでは、「アジャイル」「スクラム」「マイクロサービス」「API」といった手法を駆使して、短期間で開発とフィードバックを繰り返し、低コストで回していかなければなりません。1プロジェクトは短ければ数週間で1サイクル終わらせ、すぐにアジャストをする必要が出てきます。DX推進のためには、今後、このような手法や考え方をマスターして、外部の力を借りて自社内に浸透させることが企業にとっては重要になります。このコロナ禍において、企業自身による変化への迅速な対応の重要性が、より確かなものとなったと認識しています。

そして、それを実現するためのキーになるのがSaaSのテクノロジーとなってきます。

(参考)

この記事の続きはこちら
【後編】DX×SaaS~DX時代におけるITプラットフォーム~



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