DXプロジェクトを成功に導くエンジニアのスキルセットとは?

従来のIT導入で必要とされたスキルセットは、DXでも有効か?

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、レガシーシステムの刷新や、紙文書のデジタル化など、従来のいわゆる「IT導入」とは異なるものです。

オペレーションや接点チャネルのデジタル化により得られる多種多様で膨大なデータと、AI・クラウド・IoT・5Gなどの先端デジタル技術を活用することで、製品やサービス、ビジネスモデル、組織・企業のあり方まで「ビジネスの広範囲にわたり大きなインパクトをもたらす取り組み」──ブレインパッドでは、DXをそのように考えています。

ところが現状では、「DX=従来のIT導入の延長線上にあるもの」として捉えられがちです。そのせいで、DX推進のキーパーソンであるエンジニアも、従来のIT導入で必要とされたスキルセットがあれば十分だと考えている方が多いように思います。

しかし、それは少し違うのではないか?というのが、数多くのDXプロジェクトにエンジニアとして携わってきた私の実感です。確かに、データソースとなる各種システムの構築や、社内・社外に散在するデータを蓄積・分析するためのデータ分析基盤構築では、ウォーターフォールモデルなど一般的なシステム構築の開発手法が有効です。

一方で、蓄積されたデータを機械学習のアルゴリズムで分析し、その結果から、例えば「最適な発注数量を即座に予測し、受発注システムに自動発注の指示を出す」などのアクションまで一気通貫で行う場合、一般的なシステム構築の開発手法では進めづらい部分が多々あります。

特に、機械学習の実装では、モデルの予測精度が思ったように出ないケースがあるため、まずは簡易的なシステムを開発し、予測精度の向上とともに画面実装など周辺をブラッシュアップするアジャイル的な開発アプローチが有効になります。また、AIの特性や運用を考慮したエンジニアリング力も当然求められることになります。

このように、開発手法も、スケジューリングも、エンジニアに求められるスキルセットも、従来のIT導入とは異なるのがDXです。

数多くのプロジェクト経験から、DXチームのエンジニアが持ち合わせておくべきスキルセットを考える

そこで本記事では、これまで数多くのDXプロジェクトに携わってきた経験をふまえて、企業内のDXチーム内のエンジニア──基盤エンジニア、MLエンジニア、アプリ開発エンジニアなどといったみなさん──が、「持ち合わせておくべきスキルセット」について解説をします。

DXプロジェクトのマネジメントに携わるみなさまにとって、本記事が社内エンジニアや、外部パートナーをプロジェクトにアサインする際の技術的の基準の一つになれば幸いです。

また本記事は、DXプロジェクトに関わるエンジニア諸氏が、今後自分が身に付けるべきスキルセットの参考として読んでいただくことも可能です。ぜひ、自身のスキルアップ、キャリアアップにお役立ていただければと思います。

DX推進に必要なエンジニアスキル1:パブリッククラウドを使いこなせる力

DXのシステム基盤を構築する上でクラウドは必要不可欠なものです。DXエンジニアはクラウド、特にPaaSを中心としたサービスを使いこなせる力を持ち合わせて欲しいと思います。

その理由は、DXプロジェクトはユーザー要件がしっかりと固まっていない状態からスタートすることが多いからです。小さなパイロット版の開発から始め、徐々にプロダクトに育てていくアジャイル的な開発スタイルが多くなるため、必要なリソースを必要な時に必要なだけ利用できるPaaSが開発環境としてフィットします。

本記事冒頭でも述べましたが、とりわけ、機械学習をシステムに実装するケースではモデルの予測精度向上と並行しながら少しずつ開発を進める必要があるため、PaaSを当たり前のように使いこなせる力がエンジニアには求められます。

近年、PaaSのメジャー3サービス、Amazon Web Service、Microsoft Azure、Google Cloud Platformは、それぞれ特色のあるサービスを打ち出してきています。各サービスの最新動向をチェックしつつ、プロジェクト要件にあわせて各サービスを適材適所で利用するマルチクラウド的な設計を行うことで、DXの推進はさらに加速していきます。

DX推進に必要なエンジニアスキル2:AI特性を理解してシステム実装する力

DXの推進に欠かせないAIですが、これをシステム基盤に組み込むには、「AIの特性を理解して実装できる力」が必要です。これは、従来のIT開発では求められなかったスキルセットと言えるでしょう。

例えば、機械学習のアルゴリズムごとにデータの前処理が必要になることや、エラー処理のスピードを考慮してエラーハンドルにぶら下げるログを書き直すこともあります。AIの特性によって、適切なフロントエンド処理やバックエンド処理が必要となるのです。

さらに、機械学習の予測モデルは普遍的なものではありません。再学習や新しいモデルにデプロイする必要があるので、あらかじめ予測モデルを「独立した部品」として設計しておくとその後の運用がスムーズになります。このように、AIならではの特性を考慮したシステム設計・実装がDXのシステム基盤構築では求められます。

ちなみにブレインパッドでは、AI開発チームの人員を、

1:モデル構築を専門に行う機械学習エンジニア
2:運用を見越した上でのAI実装を専門に行う開発エンジニア

の2つの役割で構成しています。 AIの特性を理解したエンジニアを配置することで、AIの開発から、DXシステム基盤の設計・構築がスムーズに行える体制を整えています。

DX推進に必要なエンジニアスキル3:データ特性を理解して設計・構築する力

DXにおけるデータの重要性が説かれて久しいですが、どんなに綺麗なデータマートを整備しても、そこにあるデータが売上向上やコスト削減に結び付く施策に活用できなければ意味がありません。

施策を行うには、どんなデータが必要なのか?
今あるデータから、どんな施策を行えるのか?

このように、施策を念頭においてデータにアプローチしていく姿勢がDXチームのエンジニアには求められます。

具体的には、データのカラムだけでなく、その中身のビジネス的な意味や、活用方法にまで考えを巡らせていく姿勢です。

──データフィールドには、施策に活かせる情報が揃っているか?データの粒度、データ収集の頻度はふさわしいものか?異なるデータを連携させる場合、システムの設計はどうあるべきなのか?データクレンジングは必要か?その処理はいつ、どこで、どのように行うべきか?──

DXプロジェクトでは、データに対してこのような姿勢で臨んでいく必要があります。DXのシステム基盤は、すでに出来上がった箱に必要なデータを流し込めば稼働するパッケージシステムとは大きく異なります。エンジニアといえども、「ビジネス的な視点からデータ特性を理解して、システムを設計・構築する力」が求められるのです。

DX推進に必要なエンジニアスキル4:データガバナンスを考慮する力

DXプロジェクトでは、データ分析・活用に至る前段階において、データに関する様々な障壁が発生することがあります。

例えば、データソースによってデータの保持期限が異なる、部門によってコード体系が異なる、業務によってイレギュラーな入力や欠損がある、顧客データの利用同意が取られていない、紙帳票が多くデータ化にコストがかかる、等──
データ活用の阻害要因は枚挙に暇がありません。

そこで、DXプロジェクトでは、データを正しく利活用するための「データガバナンス体制の構築」が必要となります。そして、このデータガバナンスが有効に機能しているかどうかをモニタリングしコントロールするためには、DXのシステム基盤にそのような仕組みを設け、適切な運用が行われているかを継続的にチェックしていく必要があります。

近年ではこうした運用の観点に、セキュリティの観点も考慮してシステム開発を行う「DevSecOps」という開発手法が提唱されています。これは、DXに関わるエンジニアに限った話ではありませんが、いまやエンジニアは稼働後の運用やセキュリティも考慮したシステムの設計・構築を行うことが当たり前のように求められているのです。

DXの本格推進フェーズに向けて、計画的にDXエンジニアを確保すべき

ここまで、DXチームのエンジニアに求められる主に「技術面のハードスキル」について解説しました。DXプロジェクトにおいては、ユーザーのビジネス要件を具現化し、システムに落とし込んでいくような「ソフトスキル」も求められるのですが、それについてはまた別の機会に解説したいと思います。

さて、IT技術者の内製化比率の低い日本企業においては、企業内にそもそもエンジニアがいない、あるいは、数えるほどしかいないというケースが多いと思います。そのため、DXプロジェクトの推進初期段階では、本記事で述べたようなスキルセットを持つエンジニアを、外部パートナーや外部ベンダーに求めることが現実的だと思います。

しかし、DXを本格的に推進するフェーズに入るタイミングでは、本記事でご紹介したスキルセットを持つエンジニアを「自社内にも」確保できていることが理想的です。そのためにも、DXプロジェクトを推進する中で、外部パートナーの知見やスキルについて、社内に移管すべき部分を見定めて、計画的に社内に移管し、適切に自社人材も育成していくことがDXをさらに発展・加速させていくのではないかと思います。

みなさまのDXプロジェクトが成功することを祈っております。

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WRITER執筆者プロフィール

株式会社ブレインパッド

データエンジニアリング本部長
安良岡 史行

システム開発会社を経て2006年にブレインパッドに入社。大手証券会社・保険会社・人材紹介会社等のデータ分析プロジェクトや新規サービス開発に従事。その後、データ分析基盤開発プロジェクトのプロジェクトマネジメントを数多く経験し、現在、データエンジニアリング本部の本部長を務める。

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