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2026年9月9日(水)〜11日(金)の3日間、京都大学吉田キャンパスにて、日本オペレーションズ・リサーチ学会(OR学会)2026年秋季研究発表会が開催されました。研究発表会のテーマは「産学連携」です。
ブレインパッドは、2026年9月10日のお知らせでもご案内したとおり、本大会に研究発表・ORキャリアセッションの両方で参加しました。本記事では、参加したデータサイエンティスト有志が、自社の発表内容に加えて、現地で特に印象に残った発表やセッションについてレポートします。

日本オペレーションズ・リサーチ学会は、数理最適化・待ち行列・意思決定分析・シミュレーションなど、広い意味での「意思決定の科学」を扱う学会です。春と秋の年2回、研究発表会が開催されており、今回の秋季研究発表会は京都大学吉田キャンパスを会場に、シンポジウム、研究発表、特別講演、表彰式、企業事例交流会、ORキャリアセッション、交流会といった多彩なプログラムで構成されました。
OR学会の大きな特徴は、大学等の研究者による理論研究の発表と、企業による実問題への適用事例の発表が同じ場に並ぶことです。今大会のテーマが「産学連携」であったことからも、その姿勢がうかがえます。実際に、アカデミアの最新研究を追いかけながら、同時に「現場にどう使ってもらうか」という実務者ならではの悩みを共有できる場になっていました。
OR学会の直近の研究発表会では毎回、学生・大学教員をはじめとしたOR研究を行う方と、実社会で活用を行う企業との交流を目的としたORキャリアセッションが開催されています。2年ぶりにブレインパッドもキャリアセッションで発表させていただきました。
キャリアセッションは、前半に参加企業が4分のフラッシュプレゼンテーションを行い、その後に個別交流セッションとして各社のブースで意見交換を行う流れでした。私もフラッシュプレゼンテーションに登壇し、以下の資料で発表させていただきました。4分用のLT資料ではありますが、具体的な案件紹介や会社文化、最適化に対する取り組み内容などをまとめておりますので、興味がある方はぜひご覧いただければと思います。
今回はORに取り組む15社が参加しており、参加者数がキャリアセッション史上最大規模ということで、非常に盛り上がっていたように感じました。私自身も、他社のフラッシュプレゼンテーションで事例紹介などをお聞きすることができ、大変楽しかったです。
個別交流セッションでは、30人ほどの学生・教員の方と意見交換をさせていただきました。修士1年で就職活動中の方はもちろん、学部4年生やさらに下の学年の方など、幅広い方にブースへお越しいただきました。今回の出展を通じて、ブレインパッドにおけるORの取り組みを多くの方に知っていただけて嬉しく思うと同時に、このような産学の交流イベントを開催していただけて非常にありがたく思いました。
ブース運営と発表のかたわら、参加メンバーは各セッションにも足を運び、最新の研究動向をキャッチアップしてきました。ここでは、メンバーが特に印象に残った研究をご紹介します。
私はORの実社会への適用に興味があったため、企業事例交流会などを中心に発表を聞かせていただきました。私自身、昨年の企業事例交流会で発表させていただきましたが、今回の企業事例交流会でも「実際の現場で使ってもらうためには」という視点で、各社の工夫や困りごとを色々と聞くことができ、大変勉強になりました。
各社のお話を聞く中で、作ったモデルをオペレーションに組み込むためのUI/UXであったり、最適化で出てきた結果をどう人手修正しやすくさせるかなど、定式化やモデリング上の難しさを超えた先の部分で色々と試行錯誤されていることが強く伝わってきました。そういった現場適用のために思いを巡らせることが非常に大事であると、改めて感じました。
また、2日目の「スケジューリング(2)」のセッションでも、生成AIを用いたシフト作成システムや、制約プログラミングソルバーによる実問題への適用例など、興味深い発表ばかりでした。その中から、NII黒岩先生の発表についてご紹介したいと思います。
制約プログラミングによる過疎地域における多品種配送・集荷サービスの最適化 黒岩 稜(国立情報学研究所)
こちらの発表は、過疎地域において、高齢者など自身で運転が困難な方に対して弁当の配送や荷物の配送・集荷を行うサービスを考えた際の配送計画問題に、制約プログラミングソルバー(CP-SAT)を用いてアプローチしたという内容でした。
特性の異なる複数の車両やドライバーの割り当て、各顧客の時間制約、さらには弁当などを想定した積み込み拠点から配送先までの制限時間といった複雑な条件の下で、達成された要求の優先度の合計値を最大化する問題を考えています(オリエンテーリング問題のような設定です)。詳しい設定や定式化などは、ぜひ元論文をご参照ください。
かなり複雑な問題設定のように思えましたが、CP-SATのグローバル制約などをうまく使うことで、ある程度大きなインスタンスにもスケールし、MILPソルバーよりも一貫して良い求解性能を達成しているとのことでした。発表をお聞きする中で、制約プログラミングでの定式化の考え方など、勉強になる部分が多かったです。特に、優先順位ごとに要求を絞ったうえで逐次問題を解き、得られた解を後段の問題の初期解とするウォームスタートが重要だという事実は、興味深いものでした。
私自身も、発表にあったオリエンテーリング問題のような形の問題に実務で遭遇することがよくあるため、制約プログラミングによるアプローチやウォームスタートによる効率化が行えないか考えてみようと思いました。
今大会の発表の中では、東京ガス株式会社様の「ガス会社におけるフィールドオペレーション高度化と現場装着の取り組み」が非常に勉強になりました。数理最適化の結果を現場に装着するには、我々も他企業様も苦労されている点であると改めて実感しました。
特に、拠点ごとに利用するモチベーションが異なる点や、拠点ごとの意見を聞きすぎると開発が膨らむという点は、身に染みて感じるところでした。最適化結果と人の経験則は似て非なるところがあるため、数理最適化アルゴリズムとユーザーの意思決定体験をどう両立させるかには、今後発展の余地があると考えています。
また、質疑応答であった「保守運用体制についてどう考えているか」は目から鱗の質問でした。システム部門に引き継いだとして、法改正などの要因で制約条件を追加する必要が生じた場合に引き継がれた部門で対応できるのか、解が出なかったときの理由の説明はどうするのかというのは、非常に悩ましい問いです。制約条件の追加やモデルのデバッグには、一般的なITとは別の専門知識が必要なため、引き継いでいくことは言うは易しと感じます。
エンタープライズの基盤として数理最適化を運用していくには、まだまだ工夫が必要です。そういった文脈での発表が行われるのはOR学会の魅力であり、まさに産学連携を体現している学会だといえます。
なお、今回私自身も生産関連のセッションで「機械学習と数理最適化の融合による、配合レシピ最適化システム開発事例」というテーマで発表させていただきました。今後も継続して参加・発表していきたいと思います。
近頃の生成AIの急速な進歩を背景に、最適化と生成AIを組み合わせた発表が2つありました。講義室に立ち見が発生するほどたくさんの聴講者がおり、この領域への関心の強さがうかがえました。
1つ目は、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社様「生成AIと数理最適化を融合した対話型シフト作成支援システムの開発」です。こちらは、人間が「こういった条件で最適化したい」とLLMと対話することで、LLMが既存の数理モデルの制約条件やパラメーターを変更し、ユーザーの要望に合った解を出す仕組みを開発したという内容です。最終的な最適化は事前に作成した最適化ソルバーに任せ、LLMはユーザーの要望に合うよう条件を変更するに留めている点が特徴です。
モデルの設計を大きく超えるような新しいパラメーターの追加などはできないよう、LLMに制限を設けており、あくまでメインは最適化ソルバー、LLMは補助という思想が伝わってきました。
2つ目は、トヨタ自動車株式会社様「大規模言語モデルを用いた配送計画修正支援における情報保持方式の一考察」です。こちらは、ソルバーで出した配送計画に人間が修正指示を与え、LLMが修正解を出すという仕組みにおいて、LLMに与える情報内容によって修正解の精度が変わるかという内容です。RAGを用いて修正指示に関連する配送条件のみを与えることで、コンテキスト長も抑えられ、精度も上がるとのことでした。
ソルバーが出した結果に対して、LLMの修正で精度が上がるという点自体に驚かされました。本発表ではRAGにベクトル検索を用いていましたが、望ましい解が得られなかったときに再度情報を取りに行くAgentic Searchのような手法が使えるのかもしれません。今後の発展に期待が膨らむ、刺激的な発表でした。
両社とも、ソルバーをLLMに置き換えようとするわけではなく、人間の細かい要望を反映させる補助的な役割でLLMを用いている点が象徴的でした。まだまだこの領域は発展途上で、できることも多いと感じたので、引き続きキャッチアップしようと思います。
今回強く印象に残ったのは、企業事例交流会で、企業がORを実社会に適用するうえでの「泥臭い部分」が数多く語られていたことです。共感できる内容であると同時に、学びの多い時間でした。企業ブースにも5社が出展しており、例年よりも賑やかな印象を受けました。
また、発表しているのは事業会社だけではなく、受託という形でお客様と一緒に取り組んだ内容を話している会社も意外に多くありました。ブレインパッドとしても、取り組んだ内容を引き続き外部発信していきたいと考えています。
本記事では、OR学会2026年秋季研究発表会への参加についてレポートしました。
ブレインパッドの出展ブースにお立ち寄りいただいた皆さま、発表をご清聴いただいた皆さま、貴重な議論をご一緒いただいた皆さまに、心より御礼申し上げます。
引き続きOR学会をはじめとした場や機会を通じて産学双方の発展に貢献していきたいと考えています。次回以降の学会・研究発表会でも、またお会いできることを楽しみにしています。
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