DOORS

ベストなDXへの入り口が
見つかるメディア

【レポート】生成AIで変わる働き方を議論する「Work Wonders Conference」SESSION3:こんな使い方あったんだ「生成AI活用ショーケース」

公開日
2024.01.19
更新日
2024.02.26

2023年11月22日、ブレインパッドはインクルージョン・ジャパンと共同で、生成AIのビジネス活用や働き方の未来を議論する「Work Wonders Conference」を開催した。会場には満員の300人を超える来場者が詰めかけ、生成AIを活かす組織や業務プロセスの変革についての熱い議論に耳を傾けた。本レポートでは3部構成で行われた議論のエッセンスを、DOORS編集部が各部にわたって要約し、ビジネスにおける生成AIの可能性に迫る。

SESSION3ではワークワンダーズ株式会社代表取締役CEOの安達裕哉氏が、国内外で実施に行われている生成AIに関する活用事例を紹介した。安達氏はカンファレンスに先立って生成AIを使い込んでいる50-60社を訪問、先進的な活用事例を取材してきたという。中には多くのメディアで解説されている「ChatGPTはこう使える、これが得意」を超越した、衝撃的な使い方も…。

【本イベントのレポート記事】

生成AIの何がスゴイのか

2023年は生成AIが爆発的なブームとなった。だが知名度の割には実際に使いこなしている人がまだそう多くないのは、SESSION2のアンケート結果からも明らかだ。ビジネスシーンの利用率は5%程度に過ぎない。生成AIの未来に期待を寄せる積極推進派が前のめりになるほど「生成AIの何がそんなにすごいわけ」「すでに導入してあるシステムと何が違うの」といった冷めた反応が返ってくるのも現実だ。

「従来から利用されてきたソフトウェアは目的が決まっていました。仕様、使うデータ、欲しい答え……etc. いわば人間が判った上で使う、もっと言えば『こういう答えが欲しい』に忠実に応えてくれるものでした。それに対してChatGPTを始めとする生成AIは、その常識を突き崩そうとしています。課題を投げればかなり多岐に渡った解決案を提示してくれます。場合によっては我々が定義しきれない問いに対しても踏み込んで答えをくれる。そんな汎用性の高さに対する期待がブームの根底にあると思います」(安達氏)

例えばプログラミングでは、従来は言語を理解していなければコードは書けなかった。ところがChatGPTに「こんなことをやりたいのでコードを書いてくれ」と投げれば、なんとか書いてくれるのだ。現状では生成されるコードに間違いが多いので、一発で稼働させるのは難しいが「ミスを修正してください➨修正しました」というやり取りを何度か繰り返すことで、基本的なコードが完成するという。

「本職のSEはこれで生産性が5-10倍に跳ね上がったと言っていました。ただ設計ができないと使いこなすのは難しく、今のところは専門家が業務を効率化する用途に限られるかもしれません」(安達)

文書の要約や翻訳はお手のもの、コンテンツ作成や市場リサーチ、メール返信(腰が低くて相手を怒らせない文章が書ける)、ブレインストーミングの壁打ち(出てきたアイデアをカテゴライズするのに力を発揮する)など「生成AIでなければできない」仕事も数多い。ただ、ここまではビジネス誌でも特集されている内容です。

「実は生成AIの最も強力な使い方は、人の能力や思考によって滞っていたり生産性が低くなっている業務の制約を、取り払えるところにあるのです。ベストセラー『ザ・ゴール』の著者エリヤフ・ゴールドラットは「業務の改善はボトルネックに行うと最大の効果を発揮する」と述べています」(安達)

例えば「採用できない、応募がない、なかなか人が育たない」「新人にきめ細かく教えたいが教育する人も時間も足りていない」という企業は少なくないはずだ。しかし、AIが採用面接を行って、入社後はAIがメンターとなって新人教育をしているケースというのが実際に出てきているという。

営業を掛ける際に、どこから訪問すればいいかわからない場合。昔であればベテラン社員に聞けば勘と経験を頼りにアドバイスしてくれたかもしれない。しかし、今どきはAIに投げれば感情や好き嫌いなど抜きに成約可能性の高い順(あるいは効率的に回れる順)を教えてくれる。

SESSION1で提示された4つのシナリオにあった「トップダウン完全遂行経営」すでに一部では実現していたし、「超客観マネジメント経営」も決して遠い未来の可能性ではなさそうだ。

「これまでAI脅威論で言われたのは、職位の低い人の仕事が代替されるシナリオでした。ですが多くの経営者をインタビューして見えてきたのは、状況を判断し間違いのない決断を求められる管理職・経営層が生成AIに代替される未来でした」(安達)


AI上司が若手を指導する会社

今回の取材で安達氏が最も衝撃を受けたのは「生成AIの中に疑似人格を設定」して使っているケースだったという。例えば旭鉄鋼株式会社(愛知県碧南市)は年間数千件というカイゼンを生成AIによって積み重ねて業績を急拡大させた。どうやって実現したのか、その経緯が面白い。

カイゼンは現場で働く従業員全員の創意工夫が共有されてこそ結実するので、従来は各自がアイデアを規定の9カテゴリのいずれに分類されるかを判断し、エクセルに入力するという方法が採られていた。しかし、入力する書き方に個々人の習熟度やクセが出やすく、横展開に生かしきていない悩みを抱えていたという。

「そこで社長がこれまでエクセルに蓄積していた何万というノウハウをChatGPTに入れて、会話形式でインプット/アウトプットができるようにしたのです。例えば従業員が『電力削減の事例を教えて』と聞けば、ChatGPTが膨大なカイゼンのアイデアリストから、その従業員の担当する部門や業務に最適な事例を提示してくれるという具合です。旭鉄工所の事例は若手が育たない/教えられるベテランがいないメーカーにとって解決策の1つになり得るのではないでしょうか」(安達)

生成AI技術を活用したサービスを提供しているALGOMATIC(東京都中央区)は、タスク管理グループウェア(notion)をChatGPTと連携させ、ツッコんだり相談にのるBotを作りました。 目標が達成できなかったスタッフに「〇〇さん、今日目標達成できなかったのね…。ちょっとがっかりだわ。目標は〇なんだから!」などとツンデレ言葉で問い掛けてきて、リアクションを求めます。

「遊び心のあるギミックに思わずニヤリとしますが、考えてみれば従来であればこれはマネジャーなど上役がやっていたことです。タスクがわかっているのなら上役がわざわざ達成されたかどうかを見に行く必要もありません。相談も受けてくれるなら最高じゃないですか。実際に同社のエンジニアはつねにデスクトップの端にChatGPTのウィンドウを開いていて、何かというと会話をしているそうなのです。これはAI上司/AI先輩そのものでしょう」(安達)

UXのコンサルティング企業BeBit(ビービット)のコンサルタントは、初めて担当するクライアントに応対するとき、ChatGPTに「その業界の人になりきって相手をしてもらう」ことでシミュレーションをするのだという。

「従来はコンサルタントが経験のない業界を担当する場合、①その業界を担当したことのある先輩を探す、②過去の事例(記録)をあさる、③クライアントに直接聞くなどの手段を取っていたそうです。しかしChatGPTを相手にすれば、いつでも何時間でも想定問答に付き合ってくれます。そのコンサルタントの方は『この情報があるだけでヒアリングの精度が圧倒的に上がるんだ』とおしゃっていました」(安達)

あるいはこのコンサルタントの方はGoogleでSEO対策をするときに「このワードで検索する人は 何を知りたがっているのですか?」と検索意図(Search Intent)を尋ねている。検索意図を突き止めるのは検索上位に表示させるために重要な要素であるのは多くの人が知っているが、実際にそれを突き止める方法はどこにも書いていない。

EC勝ち組企業の販売戦略が丸裸に

生成AIは「分析がうまい」のもさまざまなケースで見受けられる。例えばAmazonで人気のモバイルバッテリーブランド「Anker Japan」の戦略を丸裸にした人がいる。やり方はこうだ。「セラースプライト」というサイトからAmazonに出品している全ストアの価格情報やカテゴリ情報を取得する。そのデータをChatGPTに放り込み「出品日をもとに、商品カテゴリごとの価格推移を可視化して」と問いかける。これだけでAnker Japanが販売している全カテゴリの平均価格の推移を見ることができる。

「AnkerJapanは最初は安い商品を大量に、かつアイテムを絞って出品していた。売上が伸びるに従って高価格帯の商品を挑戦的な価格で売っていったのがわかります。似たようなアイテムを扱っている会社はこれを見ればAnkerJapanが成功した商品展開のノウハウをそっくりそのまま真似ることができるのです。これだけ複雑な内容をポンとリクエストするだけで、即座に返答してくれる。ものすごいことです」(安達)

立川市のセンサーメーカーのシステムには前任者が仕様を残していない/コメントも存在しないコードがたくさん残っており、下手に変更できず頭を抱えていたそう。従来であれば恐る恐る変更を加え、解析をして…という作業を繰り返すしかなかった。どの会社にもそうした負の遺産があるのではないだろうか。

メーカーは知財の宝庫と言われるが、それぞれの発明を特定する「特許の請求項」は独特の書式といい難解な文体といい、出願した本人ですら「何が書いてあるのかわからない」というほど。しかし、知財は持っているだけでコストがかかる。とある自動車部品メーカーの知財担当は、特許の詳細を記した「特許の請求項」をすべて読み込ませ要約させたうえで「捨てるべき知財」を特定して大幅なコスト削減に成功した。

使う人はクリエイティブでなくていい

生成AIというと「文章や図を作るもの」と思われがちだが、利用する人がクリエイティブである必要はない。例えば社内でセミナーをやろうという場合「セミナーのアウトラインを作成するプロンプト」を共有しているので、そこに必要事項を打ち込めばものの数分で生成する。その上でカスタマイズすれば部署全体の生産性を高められる。

「私はウェブマーケティングの会社も経営しているのですが、毎月100~200本の記事を製作してアップロードしています。それらの記事はもうライターではなく、ChatGPTが書いています。SEO記事であれば人間が書くよりもはるかに速く、大半のライターが書くより質の高い記事が出来上がるのです。具体的なステップはこうです。まずキーワードを入力すると記事のタイトル候補が提示されますから、その中から1つを選びます。すると章立てが提案されるので選ぶと、その章立てに沿った記事が作成されます。内容を確認したり、いらない部分を削除して、三度ChatGPTに掛けると記事の完成です。私が近い将来ライターの仕事がなくなると確信するのは、ChatGPTが書き上げり記事のスピードとクオリティを知っているからです」

出来上がった原稿にはたびたび言い回しのおかしな部分や冗長な部分が残っていたりもするし、最終的なファクトチェックは人がやらないといけない。しかし、ChatGPTは登場してわずか1年でこのレベルに達しているのだ。生成AIはわれわれの想像をはるかに超えるスピードで進化している。

【関連記事】



このページをシェアする

あなたにおすすめの記事

Recommended Articles

株式会社ブレインパッドについて

2004年の創業以来、「データ活用を通じて持続可能な未来をつくる」をミッションに掲げ、データの可能性をまっすぐに信じてきたブレインパッドは、データ活用を核としたDX実践経験により、あらゆる社会課題や業界、企業の課題解決に貢献してきました。 そのため、「DXの核心はデータ活用」にあり、日々蓄積されるデータをうまく活用し、データドリブン経営に舵を切ることであると私達は考えています。

メールマガジン

Mail Magazine