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      ブレインパッドでは、職種や職位に関わらず気軽に新しい技術に挑戦できる場として日々様々な取り組みが開催されていますが、そのひとつに社内コンペがあります。第2回となる今回のテーマは、近年注目を集める「オルタナティブデータ※1を活用した金融機関向けのアプリ開発」。
※1:従来の財務諸表や市場データといった伝統的な金融データに対して、それ以外の非伝統的なデータソースから得られるデータの総称
金融データプロバイダーの株式会社QUICK(以下:QUICK)と、AIデータクラウドをリードするSnowflake合同会社(以下:Snowflake)にご協力いただき、金融機関が抱えるリアルな課題を解決するアプリケーションの開発に挑みました。
ブレインパッドは、日本のビジネス市場におけるオルタナティブデータ活用の裾野を広げるため、近年注目を集めるSnowflakeのマーケットプレイスに着目しております。Snowflakeでは、そのデータエコシステムによってセキュアかつシームレスなデータ共有ができる観点から、特にデータの取り扱いが厳しい金融業界で導入が進んでおり、ブレインパッドとしても基盤構築だけでなく、Snowflakeのマーケットプレイスを用いた外部データ活用を支援しています。
【参考】 
オルタナティブデータ活用の新時代:Snowflakeマーケットプレイスが切り開く可能性
本イベントは、Snowflake Summit 2025での上記の記事をきっかけとしたQUICKとの会話により生まれました。Snowflake Summit 2025は2025年6月2日から5日にかけてサンフランシスコのMoscone Centerで開催された、Snowflakeが年次で主催する最大のユーザーカンファレンスです。ブレインパッドも現地からの速報レポートをお届けしています。
【参考】 
ブレインパッドが現地から速報!Snowflake Summit 2025:Enterprise AI 最新動向:Day0
多くの高品質な金融データを持つQUICKが、ブレインパッドのオルタナティブデータ活用に関する記事に興味を抱き、堅牢なAIデータプラットフォームであるSnowflake上で、金融データ活用の裾野を広げていきたいという思いで合意し、その第1弾として本取り組みが開始されました。
【参考】 
ブレインパッド、SnowflakeとQUICKの協力のもと、金融業界に向けオルタナティブデータの活用支援に着手
今回のコンペは、「QUICKより提供いただいた金融データを活用し、Snowflake上で分析アプリを開発する」というテーマで実施しました。
2ヶ月間弱かつ業務時間外という限られた開発期間の中で、参加者は高い熱意をもって挑みました。9月11日から12日の「SNOWFLAKE WORLD TOUR TOKYO」では1チームの成果物を公開するなど、社外も巻き込んだ活動になりました。  
  そして10月1日、最終発表会を開催。各チームが開発したアプリケーションを披露し、創意工夫あふれる成果を競い合いました。
本コンペでは、単なるアイデアソンに留まらない、より実践的な価値創出を目指して以下のルールを設定しました。
【コンペルール】
特に重視したのは、参加者が主体的に開発に取り組む「自己研鑽」という点です。これにより、業務の枠を超えた自由な発想が生まれやすくなります。
【運営指定ツール】
アプリの想定ユーザーを金融機関の担当者として、以下のいずれかの開発を課題としました。
最終発表会では、審査員の方々に以下の5つの観点で各チームの成果物を評価いただき、各企業賞とグランプリを決定しました。
| 審査観点 | 内容 | 
|---|---|
| 完成度 | デモがスムーズに行えるレベルで完成しているか。UIやUXが直感的で顧客にとって使いやすいものであるか。 | 
| 技術性 | Snowflakeの各種機能、QUICKのデータを有効に活用しているか。 | 
| 新規性 | オルタナティブデータの使い方や課題へのアプローチ方法に、これまでにない独創性や革新性があるか。「その手があったか」と思わせるような新しい視点を提供できているか。QUICKのデータが持つ独自の価値や特性を深く理解し、それを独創的な分析の切り口に繋げられているか。 | 
| 事業性・顧客価値 | ターゲット顧客にとって、明確で具体的な価値を提供できているか。ビジネス拡大を見据えた価値提供が検討できているか。 | 
| 発展性・インパクト | この取り組みが、単体のツール開発に終わらず、ブレインパッドやQUICKの新たなソリューションの柱となったり、金融業界のデータ活用のあり方を変えたりするような、大きな将来性や影響力(インパクト)を秘めているか。 | 
この評価軸は、単なる技術力だけでなく、顧客への提供価値やビジネスとしての将来性までを多角的に評価することを目的としています。

最終発表会には全9チームが登壇。会場は、各チームの気合いの入ったプレゼンテーションと、審査員を務めるQUICK、Snowflake、そして当社の役員からのコメントで大いに盛り上がりました。
発表されたテーマは、M&Aのマッチングから法人営業の高度化まで多岐にわたり、アプローチも様々。機械学習モデルで企業間の相性を予測するチーム、独自の財務スコアを開発するチーム、そして生成AIを駆使して営業トークまで自動生成するチームなど、ブレインパッドのデータサイエンティストたちの多様な専門性が光るイベントとなりました。
ここで、当日に発表された各チームの個性豊かなソリューションの概要をご紹介します。
| チーム | ターゲットユーザー | 解決する課題 | アプローチ・コンセプト | 
|---|---|---|---|
| A | 銀行の法人営業、M&A専門家 | M&A案件発掘の経験不足と、専門部署のリソース不足という2つの構造的ジレンマ | AIが戦略と候補企業を提示し、初期分析を自動化。業務フローに沿ったUIでM&Aプロセス全体を支援 | 
| B | 銀行の法人営業担当者 | 複数商談候補の中から、短時間で的確に企業の資金需要を把握することの難しさ | AIが財務データと戦略(ニュース等)をクロス推論し、資金需要を評価。最適なサービスと商談での質問事項までを生成 | 
| C | 銀行員のM&A提案業務担当者 | 広い業界知識の習得や、多数の企業からの候補選定に時間がかかる | 上場企業に独自の基準で「買い手企業点数」を付け、ロングリストのショートリスト化に挑戦。AIが点数の根拠を説明 | 
| D | 銀行の法人融資渉外担当者 | 金融・経済の動向から営業機会を見つけ出し、顧客理解を深めることの難しさ | QUICKの経済ニュースからSnowflakeのAI SQLを用いて営業仮説を自動生成し、具体的なアプローチ先候補を抽出 | 
| E | 銀行員のM&A提案業務担当者 | M&Aにおける買い手企業候補の煩雑なリストアップ作業と、提案のスピード・質 | 6種類の独自財務スコアで企業を評価し候補を抽出。生成AIが”なぜその企業が良いか”の根拠を説明するレポートを作成 | 
| F | M&A仲介業務担当者(買い手側支援) | 候補企業探索に時間がかかる | 「成熟市場で売上が頭打ちの企業」など曖昧な要件も自然言語検索で対応。AIによる“あいまい検索”で候補抽出を効率化 | 
| H | 企業マッチングの提案担当者 | 担当者の経験や勘に頼りがちで、定量的指標が不足している | 過去のM&A成立・不成立データを基に予測モデルを構築し、企業間の成立可能性(マッチ率)を定量的に算出する | 
| I | 金融機関のM&A、事業承継担当者 | 企業情報・ニュース・財務情報が分断されており、情報収集と横断的な分析が困難 | 生成AIで企業の買収意向をスコア化 。複数企業の財務比較 、M&A候補レポート生成の3機能で業務を統合的に支援 | 
| J | 金融企業の法人営業担当者 | 情報収集の時間、最適な提案商品の不明確さ、提案ストーリー構築の難しさ | 財務・経営情報から生成AIで課題を自動抽出し、顧客の自社ソリューションとマッチング。提案メッセージまでを含めた営業ストーリーを自動生成 | 

全9チームのレベルの高い発表後、審査員によるディスカッションも白熱。最終発表後の審査会では、Snowflakeの上原氏が「揉めに揉めた」と語るほど、甲乙つけがたいハイレベルな議論が繰り広げられました。本審査では、各社が個別に選定したQUICK賞・Snowflake賞・BrainPad賞のほか、5つの評価軸で判定したグランプリの計4チームを選出しました。
厳正な審査の結果、栄えあるグランプリに輝いたのはチームAの企業マッチングシステム「Tsugumi」でした。M&A業務における法人営業の「気づけない」壁と、専門部署の「手が足りない」壁という、二重の構造的課題を解決する統合支援アプリが高く評価されました。
グランプリ:チームA「Tsugumi」概要:
銀行のM&Aフロー全体を支援し、業務を劇的に高度化・効率化する統合支援アプリ。AIがM&Aの戦略立案から候補企業提案、初期分析までを自動化することで、法人営業担当者の案件化能力を向上させ、M&A専門家はより本質的な業務に集中できる未来を実現します。 
 一般的なM&Aアプリと異なり、AIによる具体的な戦略と候補企業までの提示機能や、業務フローに沿った画面設定・ 遷移によって、法人営業担当でも素早くかつ高度な提案を可能にします。
グランプリを受賞したチームA「Tsugumi」に対しては、技術面とビジネス面の両方から称賛の声が上がりました。
「アプリケーションの完成度が高くお客に刺さる。Cortex SearchやStreamlitのUIもリッチだった」 Snowflake合同会社 第二セールスエンジニアリング本部 本部長 玉置 誠 氏
「提案の方針を選べることで人間とAI、双方向の良さを取り入れられている。業種の複数選択やM&A相手の企業像を入力するなど、色々触ってみたいと思わせるソリューション」 株式会社ブレインパッド エグゼクティブデータサイエンティスト 中道 亮介
その他の各チームの取り組みや成果物についても、審査員からはこの取り組みの価値を象徴する、以下のようなコメントが寄せられました。
「3社ですぐ売りにいって、すぐお金を払ってもらって課題解決できるソリューション」 Snowflake合同会社 インダストリー事業開発本部 金融インダストリー統括部長 上原 玄之 氏
(チームJ「営業ストーリー生成ダッシュボード」へのコメントより)
「財務データに真摯に向き合って欠損値の扱いを丁寧にやっていたところが、処理としてど真ん中と思い評価した」 株式会社QUICK データソリューション事業本部 部長 データソリューションG 兼 ナレッジコンテンツ本部 西村 真一 氏
(チームE「M&A買い手企業候補 営業リスト作成補助ツール」へのコメントより)
「昨今の生成AIブームの中、生成AIモデルではなく、ロジスティック回帰の予測モデルを使って取り組んでいた点がデータ分析を主軸にするブレインパッドの良さが出ていた」 株式会社ブレインパッド 常務執行役員 CSO 安良岡 史行
(チームH「企業間のM&A成立可能性(マッチ率)判定ツール」へのコメントより)
「QUICKの大量なデータをまんべんなく使い、データからインサイトを得る経緯がよく整理されている。データを基にした現状分析と未来予測は実業務でのニーズがかなりあるので、データに厚みを持たせ、データを掛け合わせることで一層面白くなる」 株式会社QUICK データソリューション事業本部 副本部長 兼 ナレッジコンテンツ本部 兼 フロント営業本部 高松 純子 氏
(チームB「銀行・法人営業向け資金需要リサーチアプリ」へのコメントより)
受賞した4チームの成果物については、以下よりダウンロードいただけます。
「すぐにビジネスになる」という事業性と、「データと真摯に向き合う」という技術的な誠実さ。この両輪を高速で回転させられることこそ、ブレインパッドの最大の強みです。
QUICKの西村氏からは「2ヶ月でここまでのソリューションができ上がったことは全チーム素晴らしく、ブレインパッドの層の厚さを感じた」との総評もいただき、コンペ全体のレベルの高さが改めて示される形となりました。
最終発表会と表彰式の興奮が冷めやらぬまま、会場は和やかな懇親会へと移りました。
各チームの健闘を称え合う声や、発表内容について技術的な詳細を深掘りする議論が活発に行われる中、自然と会話は「この成果を、どう未来のビジネスに繋げるか」というテーマへと発展していきました。
参加した社員と、審査員としてご参加いただいたQUICK様、Snowflake様の間では、具体的なユースケースの事業化に向けたアイデアや、さらなるデータ活用の可能性について熱心な意見交換が行われました。
今回のコンペは、単なるひとつのイベントとして幕を閉じたのではありません。3社の強固なパートナーシップを再確認し、今後の協業をさらに加速させていくための、新たなキックオフの場となりました。この熱量を一過性のものとせず、社会のデータ活用を促進するために、ブレインパッドでは挑戦を続けていきます。
今回のコンペは、データそのもの×AIデータクラウド×データ分析力の3社のエコシステムがもたらす価値を具体的に示すとともに、ブレインパッドがお客様の課題に対して、いかに迅速かつ実践的なソリューションを提供できるかを証明する場となりました。
ご紹介したソリューションは、ほんの一例です。
ブレインパッドでは、ビジネス課題を理解し、データから新たな価値を共創する事例を作り続けています。本取り組みにご興味をお持ちになった方はぜひ資料をダウンロードしてください。
今回のコンペを通じて、QUICKの高品質な金融データとSnowflakeのAI機能が金融データ分析やアプリ開発において大きな可能性を持つことを実感しました。  
  今後も最新のテクノロジーを積極的に取り入れ、オルタナティブデータ活用の裾野を広げ、価値創出に貢献してまいります。

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