生成AIにおけるRAGとは?検索拡張生成の仕組みから活用例や注意点を解説

公開日
2026.01.21
更新日
2026.01.21

生成AIは膨大なデータから学習し、質問に対して瞬時に回答を生成する優れた技術です。しかし、学習データの更新には時間とコストがかかるため、最新情報への対応が難しく、根拠のない誤情報を生成する「ハルシネーション(誤情報)」というリスクも抱えています。

このような課題を解決する技術として注目されているのが、RAG(検索拡張生成)です。RAGは、生成AIに検索機能を組み合わせることで、必要なときに最新情報を参照しながら回答を導きます。実務で使うと、その「正確さ」と「更新のしやすさ」に驚く人も少なくありません。

当記事では、RAGの基本的な仕組みから具体的な活用事例、導入時の注意点まで詳しく解説します。生成AIをより安心して、効果的に活用するための知見を提供していますので、ぜひ参考にしてください。

目次

RAG(検索拡張生成)とは?

生成AIの次なる進化を支える技術として、RAGが注目を集めています。従来の生成AIが抱えていた「情報の鮮度・根拠不足」という課題を克服し、正確な応答を実現する技術です。

ここでは、RAGの基本概念と仕組みをわかりやすく解説します。

RAGとは何か

RAG(Retrieval-Augmented Generation)とは、大規模言語モデル(LLM)に外部の検索機能を組み合わせることで、より正確で信頼性の高い回答を生成する技術です。Meta(旧Facebook)が2020年に論文として発表したアーキテクチャに由来します。

従来の生成AIは、学習済みデータの中から答えを導くため、情報が古くなったり、根拠が曖昧になったりする課題がありました。しかし、RAGは質問を受けるたびに関連する情報をリアルタイムで検索し、その内容をもとに生成処理を行います。

例えば、社内データベースやWeb上の最新資料を参照しながら回答できるため、常に「今の情報」を反映できます。追加学習(ファインチューニング)を行わずに独自情報を活用できる点も特徴です。※1

このような仕組みによって、企業は常に知識の鮮度を保ちつつ、AIを現場で信頼できる実務パートナーとして運用できるようになります。

※1 実運用では、RAGを補強するために微調整(リトレーニングやプロンプト調整)を併用するケースもあります。また、外部文書を頻繁に更新したり拡張したりする際には「再構築」「再インデックス化」が必要です。

RAGと従来の生成AIとの違い

RAGは、従来の生成AIが抱えていた「情報の鮮度」「根拠の信頼性」といった課題を根本から解決する技術です。最大の特徴は、知識を固定せず、必要なときに外部情報を取りに行ける点にあります。

従来の生成AIは過去に学習したデータの範囲内で回答を行うため、情報更新には再学習(リトレーニング)が必要でした。これに対し、RAGは外部データベースや社内文書をリアルタイムで参照し、常に最新かつ正確な情報を反映できます。

以下は、RAGと従来の生成AIを比較した表です。

項目従来の生成AI(LLM単体)RAG(検索拡張生成)
知識の範囲学習済みデータのみに限定外部データベースをリアルタイムに検索して利用可能
情報の鮮度更新には再学習が必要最新情報を即時に反映可能
精度の課題ハルシネーション※2の発生リスクが高い検索結果を根拠として参照し、誤情報リスクを低減※3
独自情報の反映ファインチューニングやプロンプト設計が必要追加学習なしで社内文書や顧客データを迅速に反映
更新コスト再学習に時間・リソースが必要理論上は新しい情報源を追加するだけで対応可能
回答プロセス「質問 → 生成」「質問 → 検索 → 生成」
適用領域静的な知識ベース型の応答動的な情報活用・意思決定支援・業務最適化

※2 事実に基づかない情報を自信を持って生成してしまう現象。
※3 RAG導入後もハルシネーションは完全に排除されるわけではない。

AI活用のアプローチにはいくつかの方向性があります。それぞれの特徴を理解することで、RAGの優位性が明確になります。RAG・ファインチューニング・プロンプト最適化の位置づけを以下の表にまとめました。

手法特徴メリット課題
ファインチューニングモデルに新しい知識を再学習させて性能を向上させる方法専門知識を深く反映できるコストと時間が大きく、更新頻度が低い
プロンプト最適化質問文の構成を工夫し、AIの出力を改善する方法手軽で即効果が得られる回答品質はプロンプト設計者のスキルに依存
RAG(検索拡張生成)外部情報を検索して回答に反映する仕組み最新情報や独自情報を即時反映できる検索品質とデータ設計の整備が必要

RAGは検索対象を動的に切り替えられるため、精度の向上だけでなく、日々の運用コスト削減にも直結します。つまり、「正確さ」と「メンテナンス性」を両立できる点が、従来の生成AIとの差別化要因です。

生成AIが「知識を蓄えるAI」だとすれば、RAGは「知識を取りに行くAI」と表現できるでしょう。この違いを理解すると、RAGの価値がより鮮明になります。


RAGが注目される背景

生成AIが急速に普及する一方で、誤情報や更新遅れといった課題も顕在化しています。こうした課題を克服し、実用レベルでの信頼性を確保するために生まれたのがRAGです。

ここでは、RAG登場の背景と、その技術的・社会的な意義を整理します。

生成AIが抱える課題

生成AIは大量の過去データを基に学習しているため、最新情報の反映が困難です。学習データの更新には膨大なコストと時間がかかり、日々変化するビジネス環境や社会情勢に追従できないためです。

加えて、実用化を阻む以下のような課題も抱えています。

  • ハルシネーション
    根拠のない誤情報を自信を持って生成するリスクが存在します。誤った内容を正確であるかのように出力してしまいます。
  • データバイアス
    学習データの偏りにより、特定の情報や視点に偏った回答を生成する可能性があります。公平性や客観性の観点から問題視されています。
  • 倫理的・法的課題
    プライバシー保護や著作権侵害のリスクなどを孕んでいます。企業が活用する際には、法令遵守の観点から慎重な判断が求められます。
  • ブラックボックス問題
    なぜその回答を生成したのか、判断根拠や動作過程が不透明であるケースがあります。説明責任や監査の観点から、企業利用の懸念材料となっています。

このような課題が、企業や個人が生成AIを活用する際の大きな障壁となっています。

RAGの誕生によって解決される課題

RAGは、生成AIに外部検索機能を組み合わせることで、最新かつ信頼できる情報をリアルタイムに参照し、応答を生成する仕組みです。RAGの導入により、以下の課題が解決されます。

  • 情報鮮度の向上
    生成AI単体では対応困難だった最新情報の反映を、外部データベースの検索により効果的に実現できます。
  • ハルシネーションの抑制
    検索結果を根拠として回答を構築するため、誤情報生成のリスクを大幅に軽減できます。
  • 企業固有ニーズへの対応
    特定の業務・組織の固有データを検索対象に加えられるため、企業独自の要件に柔軟に対応可能です。

結果として、生成AIの実用性・信頼性の向上に大きく貢献し、ビジネス活用の拡大を後押しする技術となっています。企業が安心して生成AIを導入できる環境を整える重要な役割を担っています。

ただし、RAGも万能ではなく、検索精度や参照データの品質に依存するため、運用段階でのチューニングとデータガバナンスは必須です。

【関連記事】
生成AI/LLM技術最新トレンド|①Googleの AI Overview ハルシネーション防止策


RAGを使用する3つのメリット

RAGは、生成AIの「正確性」「柔軟性」「スピード」を飛躍的に高める技術です。特に企業が持つ独自データや最新情報を活用する場面で、その価値が最大化されます。

ここでは、導入により得られる3つの代表的なメリットを紹介します。

1. より正確で根拠のある応答が可能になる

生成AIは、ハルシネーションという課題を抱えています。学習済みの情報だけで回答を作成するため、厳密な根拠がないまま誤った内容を返すことがあるためです。

RAGは、質問内容に関連する外部の信頼できる情報をリアルタイムに検索・取得し、その根拠をもとに回答を生成します。この仕組みにより、ハルシネーションの発生を大幅に抑制できます。

ただし、参照するデータ自体が古かったり誤っていたりする場合は影響を受けるため、データの品質管理と定期的な更新が重要です。

【関連記事】
生成AI/LLM技術最新トレンド|②LLMに自身のハルシネーションを修正させる

2. 多言語対応の埋め込み技術で最新情報を高速反映できる

従来の生成AIモデルを更新するには、大量のデータ準備と高コストなファインチューニング※4が必要でした。ファインチューニングには時間と労力がかかり、最新情報を即座に反映させることは困難です。

一方、RAGは文書やデータベースを埋め込みベクトル化※5して検索対象に追加するため、モデル自体を再学習させずに最新情報を素早く反映できます。また、多言語対応の埋め込み技術を活用すれば、異なる言語間でも意味ベースの検索が可能になり、海外の最新情報を即時に取り込めます。

このような技術により、単なる情報更新の高速化にとどまらず、国境を越えた知識活用が現実のものとなっています。業務に必要な情報をいとも簡単に更新できる点が、RAGを活用する大きな利点です。

※4 特定のタスクや情報に適応させるためモデルに追加学習させる技術
※5 テキストを数値の配列に変換し、意味の類似性を計算可能にする技術

3. ハイブリッド検索により幅広い情報を統合的に活用できる

従来の生成AIは、大規模言語モデル(LLM)の事前学習データのみを使って回答を生成します。学習データは膨大な公開情報を含みますが、一定時点までの情報に限定されるため、最新の動向や企業独自の情報には対応できません。

RAGであれば、事前学習済みモデルに加えて、外部情報を検索フェーズでリアルタイムに取得し、取り込みを行います。「探索(Retrieval)」と「生成(Generation)」を組み合わせたハイブリッドな仕組みにより、最新の情報を幅広く統合的に活用した回答が可能です。

このような構造によって、RAGは「単一モデルの限界」を超え、社内外の知識を横断的に結びつける実践的な情報基盤へと進化しています。独自の社内データや専門的な業界情報も活用可能になるため、企業や専門分野向けのカスタマイズが容易になり、より実務に即した回答を生成できるようになります。

RAGが動作する仕組み

RAGは「検索(Retrieval)」と「生成(Generation)」を融合したハイブリッド構造を持ちます。質問に応じて外部情報を検索し、文脈を理解した上で最適な回答を生成する流れが特徴です。

以下では、その一連のプロセスを8つのステップに分けて解説します。

1. 参照データの準備

RAGを活用するうえで最初に行うのが、回答の基盤となる参照データの準備です。企業内のマニュアル・FAQ・議事録・ナレッジベース・外部のWeb情報・データベースなど、多様な情報源から必要なデータを収集します。

精度の高い回答を実現するためには、分野や用途に合わせて情報を厳選することが重要です。文書をどの単位で分割するか(チャンク化戦略)も検索精度を左右します。

また、テキスト・数値データ・表形式データなど、形式の異なる情報を統一的に扱える柔軟性も求められます。データ量が増えると重複や古い情報が混在するため、定期的な更新と品質管理も必要となります。

2. 密ベクトルへの変換とベクトルDBへの格納

収集したデータはそのままでは検索しにくいため、意味的特徴を保持したまま数値ベクトルに変換する「ベクトル化(Embedding)」を行います。ベクトル化とは、文章の意味を多次元の数値として表現する技術で、似た意味の文を近い位置に配置できる点が特徴です。

変換後のデータは、類似検索に特化した「ベクトルデータベース(Vector DB)」に格納されます。代表的なベクトルデータベースには、Pinecone・FAISS・Milvus・Weaviateなどが挙げられ、高速かつ精密な検索が可能です。

単語の一致ではなく意味的な近さで関連情報を見つけられるため、言い換えや曖昧な表現にも対応できます。

3. ユーザークエリの解析と疎検索(BM25)による初期候補抽出

ユーザーからの質問(クエリ)は、まず自然言語処理で解析され、形態素解析やトークナイズなどによって意味単位に分解されます。続いて、BM25などの疎検索アルゴリズムを用いて、質問文に含まれるキーワードと類似性の高い文書を広く抽出します。

疎検索は高速で多くの候補を得られる一方、文脈理解が弱いため、次の工程で実施されるのが抽出したデータの精査です。ここで抽出された文書群は、検索範囲を絞り込むための「一次フィルター」として機能し、以降の深い意味解析の土台となります。

4. 再ランキングで高精度な関連情報を抽出

初期候補として得られた文書を、再ランキングモデルによって精査します。再ランキングとは、機械学習や深層学習の手法を用いて文書の関連度をスコア化し、最も適切な情報を上位に並べ替える工程です。

この工程では、単なるキーワード一致ではなく、質問文の意図や文脈を理解したうえで再評価を行うことで、検索結果の精度が飛躍的に向上します。セマンティック検索(意味的検索)を組み合わせることで、表現の違いによるズレを吸収し、信頼性の高い情報のみを抽出することが可能となります。

再ランキングの手法としては、文書全体を入力して精密に関連度を評価するcross-encoder方式と、軽量で高速なbi-encoder方式が挙げられます。運用では両者を組み合わせ、一次スコア算出をbi-encoderで行い、上位候補のみをcross-encoderで再評価する構成が一般的です。

5. コンテキスト生成と情報統合

再ランキングによって得られた高精度な情報をもとに、回答生成の基礎となる「コンテキスト(文脈情報)」を構築します。複数の資料や文書から関連部分を抽出し、矛盾のない形で統合するプロセスです。

例えば、以下のような形式で処理が行われます。

  • 複数のFAQ回答を組み合わせて一つの説明文を作成
  • 異なる部署の文書を補完的にまとめる

コンテキストの質は最終回答の精度に直結するため、内容の一貫性と整合性を意識した構成が求められます。この段階で、生成AIに「何を参照して答えるか」の土台が整います。

情報源が増えるほど、同一トピックでも微妙に異なる記述が存在し、AIが誤って矛盾した内容を合成するリスクが生じます。そのため、矛盾検出や信頼度スコアリングによる自動統合ロジックが必要です。

特に複数文書の整合性確保には、異なるソース間の主張の衝突を自動で抑制するため、矛盾検出モデルやスコア加重による信頼度評価を組み合わせると効果的です。

6. LLMへのプロンプト入力

構築したコンテキストをもとに、質問文と補助情報を組み合わせた「プロンプト」を大規模言語モデル(LLM)に入力します。AI活用におけるプロンプトとは、AIに対して「どのように考え、どんな形で答えるか」を指示する指令書のことです。

プロンプト設計では、質問との関連性を明確にし、不要な情報を排除する工夫が必要です。高品質なコンテキストを与えることで、回答の精度と自然さが向上します。

LLMはプロンプトを受けて最も適切な表現を生成し、人間の思考に近い応答を構築します。

7. 回答の生成

LLMは入力されたプロンプトをもとに、自然言語で回答を生成します。従来の生成AIが学習済み知識のみを参照して回答するのに対し、RAGではリアルタイムに取得したデータをもとに生成を行うため、情報の正確性と信頼性が大幅に高まります。

生成過程においては、ハルシネーションの抑制や文体の整合性維持が重視されます。必要に応じて複数の回答候補を比較し、最も適切なものを選択するプロセスを取り入れる場合もあります。

このような仕組みにより、RAGは「知識を更新し続ける生成AI」として機能します。

8. 最終出力の整形

生成された回答は、そのままでは実務利用に適さない場合があります。そのため、最終出力の段階で文体や構成を整え、読みやすく自然な表現に仕上げます。主な整形処理は以下の通りです。

  • 文体・トーンの調整
    ブランドや媒体の文体に合わせて表現を統一し、読みやすさを確保します。
  • 専門用語への注釈追加
    読者が理解しやすいように、専門用語や略語には簡潔な説明を添えます。
  • 重複・冗長表現の削除
    同義の言い回しや繰り返しを整理し、すっきりとした文章構造にします。
  • 文末表現の統一
    語尾のゆれをなくし、全体のトーンを安定させます。
  • フィードバック反映
    ユーザーや運用担当者からの意見を取り入れ、回答精度を継続的に改善します。

このような工程を丁寧に重ねることで、AI生成の文章でも、人の目で仕上げたような高品質な応答を安定的に提供できるようになります。

RAGの活用事例

RAGはすでに多くの日本企業で実用化され、業務効率化や顧客対応の高度化に貢献しています。社内情報検索・チャットボット・意思決定支援など、応用範囲は急速に拡大中です。

ここでは、代表的な企業事例を通じてその効果と導入成果を紹介します。

情報収集の効率化を実現した業務改善事例

LINEヤフーは、RAG技術を活用した独自の社内情報検索ツール「SeekAI」を全社で導入しました。

マニュアル・議事録・業務資料など社内に分散する膨大な情報を瞬時に検索し、AIが文脈を踏まえて最適な回答を提示するツールで、部署や職種ごとに回答精度を最適化しており、担当者は迷うことなく必要な情報にアクセスできるようになりました。

導入の結果、問い合わせ対応や資料作成にかかる時間を大幅に削減。特に広告事業のサポート業務では、約98%という高い正答率を達成しました。年間では、約70〜80万時間に相当する業務削減が見込まれています。

※引用元:LINEヤフー、RAG技術を活用した独自業務効率化ツール「SeekAI」を全従業員に本格導入。膨大な社内文書データベースから部門ごとに最適な回答を表示し、確認・問い合わせ時間を大幅に削減|LINEヤフー

ユーザー体験の向上につなげたチャットボット活用事例

東京メトロは、鉄道業界で初めてRAGを活用した生成AIチャットボットを導入しました。

乗客の運行情報や遅延経路、乗り換え案内などの質問に対し、リアルタイムで最新情報を検索・生成して回答します。従来のFAQ型チャットボットでは対応が難しかった複雑な問い合わせにも対応できる点が特徴です。

導入によりオペレーターの対応負荷を軽減し、回答スピードや顧客満足度が向上しました。問い合わせのピーク時にも安定して対応できる体制が整っています。

※引用元:鉄道会社初!生成 AI 搭載のチャットボットが、お客様のお問合せに対応します!合わせて、お客様センターの業務にも生成AIを活用します!|東京地下鉄株式会社

データ横断活用による意思決定支援の高度化事例

出光興産は、RAGを中核とした生成AIシステムを導入し、社内外に散在するデータを統合的に活用する環境を構築しました。製品開発や市場戦略に関わる技術文書・特許情報・研究レポートをAIが自動で横断分析し、経営層や開発担当者が意思決定に活用できるレポートを生成する仕組みです。

同システムの導入により、競合製品の動向や市場トレンドをもとに新製品の方向性を素早く検討できるようになり、企画段階での判断精度が向上しました。また、顧客からの不具合報告にも関連文書を即時検索することで、対応スピードも大幅に短縮しています。

※引用元:ウルシステムズ、出光興産の生成AI活用を支援 RAGの活用により分析レポートの作成や技術サポートを大幅に効率化|PR TIMES

RAGを活用する際の注意点

RAGは高精度な情報活用を可能にする一方で、データ管理や運用設計には注意が必要です。

成果を左右するのは、以下の3要素です。

  • 検索精度を支えるデータ品質
  • 開発効率を高めるフレームワーク選定
  • 信頼性を担保するセキュリティ対策

ここでは、上記3要素の詳細について詳しく解説します。

データ準備と前処理が重要

RAGの回答精度は、検索に用いるデータの鮮度・正確性・構造化の質に大きく依存します。高精度な回答を生成するには、検索用データベースの検索精度向上が必須であり、データの品質が最終的なアウトプットを左右するといえます。

文書のクリーニング・ノイズ除去・データの粒度調整といった適切な前処理を行わないと、ハルシネーションのリスクが高まるため注意が必要です。データの形式統一や重複排除を実施すれば、検索効率と回答の一貫性が向上し、余計な再チューニングやプロンプト修正の工数も削減できます。

大量のデータや機密情報を扱う場合は、効率化を図るため内製や外部委託の最適な体制構築も検討する必要があります。

【関連記事】
生成AI/LLM技術最新トレンド|③ハルシネーション発生率をRAGの1/10に抑えるファインチューニングベースの手法の提案

目的別にフレームワークを選定

RAG開発には、オープンソースや商用を含め複数のフレームワークがあり、用途に応じて選ぶ必要があります。フレームワークとは、開発を効率化するための枠組みやツール群のことです。

代表的なフレームワークには、以下が挙げられます。

  • Haystack
    情報検索とLLM統合に強みを持つフレームワーク。
  • LangChain
    柔軟なベクトル検索を備えたフレームワーク。

フレームワーク選定では、データ量やリアルタイム検索の必要性・対応言語・運用環境など複数の要素を考慮することが重要です。導入後の運用性や拡張性も踏まえて選択し、段階的な検証を経てから導入することが成功の鍵となります。

自社のビジネス要件に最適なフレームワークを見極めることで、開発効率と運用品質の両立が可能となります。

セキュリティリスクの認識

RAGでは社内文書や顧客情報など機密性の高いデータを扱うため、情報漏洩や誤った情報公開のリスクに最大限の注意が必要です。外部の生成AIサービスやクラウドと連携する際、機密データが意図せず外部に送信される可能性があるためです。

外部クラウド連携時はアクセス制御や通信暗号化を徹底し、プライバシー保護やコンプライアンス遵守に万全を期すべきでしょう。モデルへの入力プロンプトや検索結果に含まれる機密情報のフィルタリング、モニタリング体制も必須です。

信頼性だけでなく、ビジネス上の社会的信用を担保するためにも、適切なセキュリティ対策は必ず行っておきましょう。

RAGの精度を高めるための方法

RAGの性能は「検索の精度」と「データ構造の質」に直結します。ベクトル検索や再ランキングなどの高度な技術をどう活かすかが成功の鍵です。RAGの性能評価では、「再現率(Recall)」「正確性(Precision)」「忠実性(Faithfulness)」といった指標が重視されます。

ここでは、検索手法とテキストベクトル化の最適化による精度向上策を解説します。

検索手法

RAGで用いられる検索方法は、主に「ベクトル検索」と「キーワード検索」を組み合わせたハイブリッド検索が主流です。それぞれの特性は以下の通りです。

  • ベクトル検索
    テキストの意味的類似性に基づき検索を行うため、表現の揺らぎや類義語にも強い特性があります。一方で、固有名詞や専門用語の完全一致には弱い欠点があります。
  • キーワード検索
    単語の完全一致を重視するため、専門用語などの正確な抽出に優れています。

ベクトル検索とキーワード検索を併用することで、両者の長所を活かすことが可能となり、検索の網羅性と精度が向上します。また、ハイブリッド検索で得られた上位候補に対し、高精度な再ランキング処理を行うことで、最も関連度の高い情報を上位に配置し、回答の信頼性を高めています。

テキストデータのベクトル化

テキストデータのベクトル化とは、文章や文書を数値ベクトルに変換し、意味的特徴を保持した上で類似検索できるようにする技術です。代表的な埋め込み技術にはBERTやOpenAIのEmbeddings APIなどがあり、文脈や語義を考慮した高精度なベクトルを生成できます。

ベクトル化時の留意点として、対象テキストの粒度を適切に設定する必要があります。大きすぎると情報がぼやけ、小さすぎると文脈が切れるため最適化が不可欠です。また、データが増加すると検索負荷も上がるため、高速なベクトル検索エンジンの導入やメタデータ活用などで検索効率と精度のバランスをとる運用設計も重要です。

テキストをベクトル化する作業は、単なる変換処理のように見えますが、実際は検索精度や運用コストを左右する重要な土台です。「どのような粒度でデータを扱うか」という判断が、結果の質を大きく変える重要なステップとなります。

生成AIにおけるRAGのまとめ

RAG(検索拡張生成)は、生成AIが抱えていた情報の鮮度や正確性の課題を解決し、ビジネス活用の可能性を大きく広げる技術です。外部データベースをリアルタイムに検索して回答を生成する仕組みにより、ハルシネーションのリスクを抑えながら、企業独自の情報や最新データを即座に活用できます。

RAGを導入する際は、データの質や前処理・フレームワーク選定・セキュリティ対策といった要素が成功の鍵を握ります。適切な準備と運用設計を行うことで、生成AIの信頼性と実用性を飛躍的に高められるでしょう。

RAGは、単なる生成AIの補助技術ではなく、「信頼できる知識活用基盤(Knowledge Infrastructure)」として今後の企業DXを支える中核技術です。生成AIを業務に取り入れる次のステップとして、RAGの活用をぜひ検討してみてください。

Q1. PDFやスキャンデータでもRAGを活用できますか?

A. はい、可能です。PDFやスキャンした画像データからテキストを抽出するには、OCR(光学文字認識)※6を利用します。

OCRにより画像内の文字情報を解析し、機械判読可能なテキストに変換することで、RAGの検索対象として活用できます。Google Cloud Vision APIなど多数のサービスが提供されており、精度は高く実用的なレベルに達しています。

ただし、スキャン品質や文字の歪みにより誤認識が発生することもあるため、前処理や修正工程も重要です。

※6 画像内の文字を読み取りテキストデータに変換する技術

Q2. 社内ファイルサーバやクラウドストレージとRAGを連携させる方法は?

A. 主な連携方法として、API連携、ファイルシステムクローラー、ETLパイプライン構築の3つがあります。

API連携を用いればシステム間でファイルを自動的に取り込み可能で、リアルタイム性が高いのが特徴です。ETL(Extract-Transform-Load)※7パイプラインを構築すれば、大量データの自動化処理により検索精度を保ちながら連携できます。

連携方式は利用環境やデータ更新頻度に合わせて選定し、運用コストと検索精度のバランスを調整することが重要です。

※7 データの抽出・変換・格納を行う処理

Q3. 日本語のRAGは英語モデルより精度が低いって本当ですか?

A. かつては事実でしたが、現在は大きく改善されています。

過去の日本語RAGは英語に比べて言語資源やデータ量の制約により精度が劣る面がありました。しかし近年、日本語特化のベクトル埋め込みモデル※8の開発や多言語対応モデルの進化により精度は大幅に向上しています。

リランキングモデル※9などの検索後処理も精度向上に寄与しており、英語モデルと遜色ないレベルに迫っています。

※8 単語や文章を数値化し意味的な類似性を計算可能にする技術
※9 検索結果を日本語の文脈に合わせて再評価し並び替える技術


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