【後編】ESG経営とデータサイエンス~BrainPad DX Conference 2022~特別ゲスト対談

[執筆者]
DOORS編集部

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ESGとデータサイエンス

草野 ここからは、ESGとデータサイエンスがどう絡んでいくのかをぜひ聞ければと思います。ブレインパッドは、「データ活用の促進を通じて持続可能な未来を作る」が創業来のミッションです。

そのため、データサイエンスの力で環境改善とか環境に配慮した仕事を行うことを掲げてきました。しかし、これまでに依頼を引き受けた仕事を振り返ると、利益を上げたい、コスト下げたい、といった収益の最大化・最適化が多いです。

伊藤忠さんとのプロジェクトも、もともと収益化が一つの目標です。しかし、食品廃棄ロスをサプライチェーンにおいて在庫最適化すれば、結局廃棄ロスが減って環境にもいいと。今はデータサイエンスを使うことで、環境配慮と収益機会をバランスとるといった仕事ができるという手ごたえがあります。そして、データサイエンス周りで夫馬さん、吉沢さんの中でいい事例があればぜひ教えていただきたいと思います。

夫馬氏 海外では、以前からDXとサステナビリティは「一体のこと」として議論されてきました。これまでの日本では、DXはマーケティングや社内の効率化・業務の効率化に使われる方が多かったといえます。

12年かけてアメリカやヨーロッパの大手の会社は、サプライヤーに向けてどう使っていくか、グループ会社のデータをどう集計して、そこからインサイト出すためにAIをどのように使うのかといった点を主軸に動いていました。ここで差が出るなと思ったのは、ちょうど5年くらい前にコインチェックの事件があったときですね。まだ仮想通貨と呼ばれていた頃です。日本ではブロックチェーンをどこに使うかという話題で盛り上がっていました。

対して、海外の企業の本丸はサプライチェーンでした。日本には当時、サステナビリティやESGという概念がほぼなかったため、誰もそこに着目していなかった状態ですね。ギャップが生まれてきていることから、日本企業にとっては先行できるチャンスになっています。

そして、「サステナビリティの動きとデータマネジメント」は非常に密接です。例えば、総合商社は、二酸化炭素排出量は、サプライチェーンで管理しなければならないイメージがあります。関わる会社も多く、そもそも自社の排出量すら計算できない状況が続いていました。出資先の環境データなど、あるわけないじゃないかと。出せと言われてもそもそもデータがないよってことが山ほどあります。

ESGを商機に変えていくためには、「データマネジメント・DXをステップ」にしなければ絵は描けません。そういう意味で日本企業にとっては、ESGはまだまだシナジーが多いため、チャンスが多い領域だと感じています。

草野 実態把握すらままならないというと、実際に、コロナの感染者数を保健所間ではFAXでやり取りしていたという衝撃の事実もありましたね。実際、それで正しい情報が国のトップまでなかなか上がらなかったり、間違っていましたということになったりして、批判を浴びていました。

まず、何よりITを使用して現状把握ができているかどうかということで、スタート地点からもう変わっているということですよね。

夫馬氏 おっしゃる通りですね。

吉沢氏 例を挙げると、さきほど事例で出てきたzeroboardという会社では、企業の排出量をそれぞれの会社でクラウドベースを使用して集計しています。

系列の会社が実際パーツを作ったり、自動車メーカーが子会社に鉄板を作らせたりしている場合、作っているときに昔からの機材を使用して、多くの二酸化炭素を出しながら作っているのか、最新の設備投資によって炭素排出を抑えているのかによって、グループ全体の排出量に影響しますよね。

この表の上側を見ると、子会社がどれだけ努力したかという個別の努力要素をDX側が係数としてとらえ、測定して反映する仕組みを持っていないことになります。この場合は、どれだけ頑張っても業界標準値を引っ張ってくるため、努力に意味がなくなってしまいます。

対して、下のようにDXを使用して、子会社で使っているツールが炭素を減少させた場合、外部からの検査も仕組み上で反映され、オーサライズされているため、この削減量を子会社から親会社に持ってくることが可能です。

こうなって初めて、設備投資の経済的な意味が表現されます。DXが整備されてないと、良い設備を入れても意味がないといえるほど大事なものです。人間なら動脈です。ここを抑えておかないと、努力してもESGに対する取り組みが競争力に結びついてきません。

草野 今回のカンファレンス全体のテーマとして「データが巡る経営を」と銘打っています。DXを動脈と例えられていましたが、企業の中だけではなくて、グループ全体でデータが巡ってないと太刀打ちできない時代になってきていますね。場合によっては、せっかくの努力が評価されない時代がもう始まっているといえますね。

夫馬氏 今までの話を踏まえて、先ほど話にあった自動車メーカーと部品メーカーでは、確かにESGを意識した動きは始まっています。しかし、ここにきて大量のエクセルが会社間に飛び交っている状態です。頭が痛くなるような非効率がここから発生していくという点に危機感を持って見ていました。

関川氏 伊藤忠グループとしても、対象を足し算していくと対象会社が数千社くらいになるため、大変な作業が待っています。開示義務を満たすだけの作業であれば、力業でやればいいものの、先のアクションにつなげようとすると、もう一歩踏み込んだデータマネジメントといいますか、データの整備が必要ですね。

先ほど、サステナビリティとデータは表裏一体という話があり、まさしくそうだと思いました。サプライチェーン最適化でコスト削減しよう、収益改善しようという事業活動の本業とサステナビリティで排出量の話やデータ整備はどっちを目的にしても問題はないかと。

実際、データ整備は目的が決まれば、入口の部分が動きやすい部分もあります。伊藤忠の場合は、利益重視であるため、サプライチェーン最適化のためにサプライチェーン整備を行うと結果的にそれがScope3の足し算に使えることもあるかと想定されます。サステナビリティと収益改善の活動の両立は、データの世界でできる話ですね。

草野 できますね。ただ、何でもデータをためるとコストがかかることから、効率よく貯める必要があります。しかし、効率よくと考えたとき、利益最大化だけを目的に持っていると、排出量などに対応するデータを落としてしまう可能性があります。そのため、データベースを設計する時点から両方の視点を含み、バランスよく設計しておかなければ、後からあれだけ投資したのにやり直しということになりかねません。

どういうルールを作っているのか、何が進行しているのか視野を広くもつべきですね。少なくとも自社が所属する業界やその周辺をみて、データのマネジメントとかやっていかないと機会を損失することになると思いました。

吉沢氏 実は、みんなそう思うからこそ、グローバルルールではすでに規定されている状態です。日本だけの変な考え方でさらにルールを作ってしまうと、意味がなくなってしまいます。今の論点は非常に大事で、例えば、とある子会社があるとして、その子会社が複数の自動車メーカーと取引をしている状況だったとしましょう。

子会社は両方に同じデータを出します。ここで重要なところは、取引量までばれてしまうような開示の仕方をしてしまうと競争優位が失われてしまう点です。そのため、守らなければならないといえます。オープンデータとして環境データを素早くとってくる必要があります。二律背反の状態です。しかし、どういうルールで組み合わせるかは、グローバルで全部決まっています。

また、そのルールはCOP26で今回更新されました。2年に1回などのペースで更新されていくことから、反映していかなければ世界のバリューチェーンから外れてしまいます。そのため、お互い国内で説明するのではなく、キャッチアップしにいく必要があるといえます。

そういった部分をzeroboardとか海外プレイヤーがSaaSなどで解決することで、ルールを一律で更新できるため、ここに強みが出てきます。

夫馬氏 吉沢さんがおっしゃる通りで、海外の方が12年早いため、パッと思いつくような課題に対して、海外は先んじて経験しています。そのため、会社を横断して、業界を横断して行っている状況です。

そして、ルールはもうできているため、日本の企業も動いているとすれば、先行している企業から先にできているものを学び、既にあるルールは反映しなければ、なんで同じ失敗をしているのかという風に評価されてしまいます。ルールを作った理由は、各社がバラバラの定義や仕組みを作った場合、非効率となるからですね。

また、諸外国からは「日本はまた同じ失敗を繰り返している」と思われてしまうでしょう。悔しいとしても、学んで抜いていく姿勢が大切ですね。

草野 すごいチャンスが僕らみたいな会社にもあるということがわかりました。チャンスはたくさん眠っていて、目を向けて行動するかしないかで全然違う状況が生まれるということを改めて強く感じます。

※DXの定義や意味をより深く知りたい方はこちらもご覧下さい
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WRITER執筆者プロフィール

株式会社ブレインパッド

DOORS編集部

ブレインパッドのマーケティング本部が中心となり、主にDXにまつわるティップス記事を執筆。
また、ビジネス総合誌で実績十分のライター、AI、ディープラーニングへの知見が深いライターなど、外部クリエイターの協力も得て、様々な記事を制作中。

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