DXを進める大手企業の事例から見る「データ活用人材の育成」~BrainPad DX Conference 2022~実践セミナー

3月23日に開催した「DOORS-BrainPad DX Conference2022」。
3000人を超える視聴申し込みをいただいた本イベントの内容をお届けいたします。

今回は、

株式会社ブレインパッド データ活用人材育成サービス部長 兼 データ活用人材育成サービス統括 奥園 朋実

による、『「DXを進める大手企業の事例から見る「データ活用人材の育成」』と題したテーマについて解説していきます。

DX推進を行う際、データ活用の方向性は明確に定める必要があります。とくに人材に関しては、各企業が多くの時間をかけて、戦略から目的までを立案しなければ上手く育成することが困難になってしまいます。そこで、今回のセミナーでは、DX推進の状況にふれたうえで、ブレインパッドの人材育成サポートについて詳しくみていきましょう。

DX推進におけるデータ活用の重要性

DXを進める際には、上記5つの領域を検討することが重要です。

1つ目はビジョンです。どのように進めていくかという戦略部分を意味します。例えば、顧客視点で価値創出するというビジョンを社内外で共有できているか、人材や予算・人事評価の見直しなどの施策が実施できているかといった課題が主なものとなります。

2つ目は、権限や役割をしっかり与えて推進していく体制づくりに関するものです。例えば、経営者やリーダーが率先して動いているか、DXを推進する際の体制・必要な権限などがよく課題となります。

3つ目はDXを推進する人材や周辺部門を示しています。DXを推進する人材のスキルや能力、社内・部門の関係性など、人材育成なども課題として挙げられる項目ですね。

データ活用を目的とする場合、4つ目の既存業務システムを意味するSoRはどういったものか、対策は行っているのか、データの有無・管理の状況なども検討する必要があります。

5つ目の顧客とのつながりを意味するSoEもシステム基盤と大切です。例えば、データ活用は実際の業務に役立っているのか、AIやloTは自社で構築できるのかといった課題がよく話題となります。

また、DX時代に学ぶべきこととして、テクノロジー・ビジネスモデル・社会情勢の3点が挙げられています。この3点を学習し、世界の変化や最新の技術をキャッチアップし、自社のビジネスに紐づけ活用していくことが求められつつあるといえるでしょう。

それぞれの要素の内容についてより詳しくみていきます。

まず、テクノロジーには、AI・フィンテック・ブロックチェーン、自動運転、ゲノムテクノロジーなどが含まれます。最新技術が多い印象です。

次に、マネタイズに関係するビジネスモデルには、サブスク・フリーミアム・シェアリングエコノミー、DC2なども含まれます。自社の事業内容なども含めて仕組み化を検討する場合、学習内容が役立つといえます。

そして、社会情勢は採用難やコロナウイルス、スタートアップ提携・リモートワークなどの項目が該当します。社会の変化とトレンドを把握することに役立つでしょう。

データ分析分野においては、 「現実社会で起こっていることをデータ化・分析・活用し、生産性や効率性を引き上げ新しい価値を創造する」ことで、データによるビジネスモデルの変革が重要だとされています。

実際、図表のようにデータによるビジネスモデルの変革は進んでいる状況です。取得できるデータの種類が増加しており、センサーの出荷予測も2030年には100兆に届くと想定されます。ハードウェアの計算処理キャパシティも今後増加していくでしょう。

そのため、現実社会で起こっている人の動きや物の流れをデータ化し、データの世界で再現することも可能です。また、ディープラーニングが2012年に登場したことで、50年間行われていた犬とクッキーの画像を見分けるテストでは、人間を既に超える結果を出しています。

図表からすれば、現実世界の情報はアプリやカメラなどによってデータに置き換えられます。そのうえで、分析・活用し様々なサービスにつなげ、リアルな世界に還元され、新しい顧客体験の創出などにつながっていく循環を作り出すことが可能です。

そのため、現実世界で起こっていることをデータの世界で映し出し、分析することで新しい企業としてもこれまでにないアクションにつなげることが可能です。データ活用の革新がより必要な環境となってきています。

小売や物流・倉庫などの特定の産業だけでなく、図表のように医療や物流など幅広い産業が革新の対象となっています。そのため、データ活用はほとんどの業界で影響力をもつといえるでしょう。

ここでは、データ活用でできることに着目してみましょう。攻めのデータ活用では顧客体験の向上や新規ビジネスモデルの創出ができることから、収益性向上・付加価値創出・差別化につながります。活用シーンで分けると、顧客分析や需要予測、マーケティングなどで活用できるでしょう。

対して、守りのデータ活用では、業務オペレーション改善・業務効率の向上ができることから、業務上のリスク低減・コスト削減・オートメーション化につながります。活用シーンでは、リモート監視・稼働リソースの軽減、人材コストの削減などが考えられます。そのため、「データを活用できるシーンは多様である」といえるでしょう。

また、かつては検証段階だったものが実装されつつあることから、ディープラーニングによる自動化によって、さきほどの画像の診断やコンクリートの護岸ブロックの劣化の判断なども可能となってきています。

今までの事例はあくまで過去のデータの統計であるため、「傾向を示すもの」でしかありません。そのため、データによって解明できていない現象は、予測・再現できず、ゼロからの発明は難しいでしょう。

そのうえで、データ活用人材は「技術が進化しても、人が考えるべきこと・関与すべきこと・判断すべきことは変わらないことを把握し、データ活用の方向性を決めるという役割を果たす必要がある」ということになります。

データ活用人材の育成状況

データ活用人材に関しては、経済産業省も試算しています。2020年の段階で4.5万人、2030年においては14.5万人ほど不足すると予想されており、あらゆる業界に影響するため、緊急性の高い課題の1つとなっているのが現状です。理由の1つとして、市場成長率に対してカバーできる人材の育成が追いついていないためでもあります。

また、日本の労働人口が減少し続ける傾向であることから考えると、人材育成も含めた社内体制作りは早急に対策を実施する必要があるといえるでしょう。

ここからは、データ活用の育成ニーズと状況について見ていきましょう。大きく分けて3つのポイントがあります。

1つ目の人材育成の環境は、先進諸国と比較しても遅れ気味であるという点です。大企業であればここ数年で育成が進んでいるケースもあるものの、専門的であるため、自己学習が進みにくいといえます。そのため、データ活用人材に関しては企業としてきっかけや動機付け、仕組みづくりを行わなければ学びにくい環境であるということになります。

2つ目は、専門性の高さから、自社による内製化が難しい点です。外部パートナーの選定から社内の育成プランの策定が大切になっていきます。例えば、外部を選定する場合も実績からこれまでの支援内容も含めて自社の育成方針に合わせてくれるのか、一方的な意見の押し付け合いにならないかなどの要素を検討しなければなりません。

3つ目は、どのような人材を育てるのかという点です。最近では、データサイエンティストなどのデータのスペシャリストだけでなく、DXを把握できるビジネスパーソンが必要となってきています。その理由として、DXを上手く活用できない、全社でのデータ活用が上手くいかないといった問題が起きることが懸念されるためです。

また、データ活用に必要なスキルも「課題と背景を理解したうえで解決できるビジネス力」・「情報処理から統計学などの知恵を活用し使用するデータサイエンス」・「データサイエンスを意味のある形に変化させるデータエンジニアリング」に分けられます。

一人の人材が全てのスキルを身につけることは難しいことから、「必要なスキルを把握し、組織として対応できればよい」という考え方が大切です。

スキル面に焦点を当てると、マッキンゼーが出している資料では、さらに細かく分けられています。ビジネスとアナリティクスが重なる部分では、「ビジネス課題をどのようにアナリティクスで考えられるのか」といった橋渡しができる人材、同様にビジネスとテクノロジーの橋渡しができる人材なども求められている傾向です。

また、データサイエンティストまでは不要であるものの、「ワークマンのエクセル経営がやりたい」という課題に対しては、全体的に仕組みを可視化できるスキルが必要となります。そのため、企業としてはどのスキルが必要なのか、どこまで広げていきたいのかなどの目的に沿った総合的な計画を示すマスタープランが大切になるといえます。

リテラシーやスキルにおいて、現在のフェーズは第3波のデータ分析の民主化と呼ばれる時代に入っている状況です。統計学者やデータサイエンティストなどの専門家だけでなく、 ビジネスユーザー自身がある程度データ分析ができる時代に入っているため、リテラシーとスキルが求められている状況です。

それぞれの波がどういったものか簡単にふれると、第1の波は「インフラ・基盤構築」でインターネットを介して人をつなぐことが主な目的でした。第2の波は「インフラ・基盤構築からの発展」であり、スマホをはじめとしたデジタル端末が世界中に広がり新しい経済を作りました。

企業が求める役割と育成の方向性

上記は経済産業省が様々な企業にヒアリングをかけた際に必要な役割をまとめたものになります。データ分析を行う人材を基本として、データ分析を事業に合わせて活用できる人材・データを使いつつ、ビジネス戦略的な戦略を立てられる人材・リテラシーを持ったマネージャー的人材が必要とされている状況です。

それぞれの役割を細かく分けて解説しますね。事業マネージャーはデータ分析のプロジェクトを率先して引っ張り、ビジネス視点から仮説を立てて、計画・発注。また、発注したものに対して、分析結果が最初の仮設にあっているかを見極める役割です。

事業策定・設計ができる人材は、データ分析の目的を考え計画を立てます。事業マネージャーと相互に協力しながら、事業に反映できるデータ活用の方法や施策を考える役割といえます。

また、結果を活用し、ビジネス企画や改善に活かす人材は企画の意図を把握し、他の人材の橋渡しを行う役割が主です。データサイエンティストをマネジメントすることもあるでしょう。

さらに、ブレインパッドでは以下のように人材育成を3つの方向性に分けています。

1つ目は、DXを理解しているビジネスパーソン(DX推進者)です。データ活用のリテラシーを高めるほど、DXの推進を行えるようになります。経営者視点からどのようにDXを活用すればいいのかを判断し、チームや部署を運営する能力が必要です。

2つ目は、一般職の方々です。大手企業に多いパターンであり、現場で働く人々のリテラシーが高まることで、タスクの効率化がより進みます。データサイエンティストほどの専門性はないものの、データが何を意味しているのかを把握し、効率的に自分のタスクを実行できる能力が大切になります。

3つ目は、データ分析の実務を行う人材です。AIエンジニアやデータサイエンティストのリテラシーを高めると専門性の引き上げにつながります。また、ビジネス課題に対して適切なソリューションを提案するためにもデータ分析がどのように役立つのかなどの実践力が問われます。

人材の育成のステップも大きく分けて3つに分けられます。細かくみていきましょう。

最初のステップは、データ活用の重要性を知ってもらうことからスタートします。なぜデータ活用が必要なのか、データ活用によってどのような改善につながるのか、世間的な潮流を知るなどマインドセットやモチベーションを構築することが目的です。

次のステップは、基礎知識の習得です。比較的大企業に多いケースとして、数百・数千人を対象に自主学習を通じて、 統計データやデータ分析の知識を入れるという流れが多くなっています。

最終ステップは集合研修に入っていきます。DX 推進者と一般スタッフの人材に関しては30人ほどの複数のクラスに分け、座学・実習を通じてアウトプットを出せる研修を行うという形式です。データ分析の専門家の場合は、ステップ2から統計学・機械学習などの専門スキルを学び、企業の課題に特化した研修の実施などを行っていきます。

とくに2年目以降は、より顧客に合わせたカスタマイズが可能となっていますね。

支援事例

ここからは具体的な支援事例についてみていきましょう。

某メガバンク様

1社目の事例は某メガバンク様です。全行員に向けに実施した「データ分析の民主化」に向けた人材育成支援をサポートしました。

人材育成の目的と方針は、一般社員がデータ活用できる下地を作り上げ、全社的なリテラシーアップを目指すというものでした。課題内容も明確であり、データサイエンティスト協会が定める基準に基づいた学習項目を選定したうえで、リテラシー向上と基礎スキルの習得支援となっていました。

より詳細な内容をみていきましょう。

金融業は、業界的にDXが進んでいる状況にあります。クライアントの中でも部署を横断する部署もできていました。課題として、「データサイエンティストの育成も行う。しかし、窓口を担当する人々もリテラシーを上げておかなければ全社的なデータ活用は不可能である」という相談を受けたため、研修は上記のようなe-learningの学習からスタートしました。

e-learningは、難易度は統計検定2から3級相当レベルで作成しています。難解な単語をかみ砕き、視覚的にも配慮することでモチベーションの維持を図っています。実際の分析プロセスに沿った内容で構成し、「しっかりと学ぶ」ことを目的としました。

その後は、学習の習熟度を図るため、現場に即した問題と解説を用意し、理解度テストを実施。最後に、e-learningの学習内容をアウトプットできる対面研修を実施することで、現場で使用できる知識の定着が可能となっています。

アサヒグループジャパン様

2社目は、アサヒグループジャパン様の事例について解説していきます。このケースでは、グループ全体で DX を推進するビジネス・アナリスト人材の育成支援をサポートしました。

対象となる人材は推薦公募の536名、目的は「データサイエンティストではなく、各事業会社が抱える課題を深く理解したうえで、分析・仮説を立案できるビジネス・アナリストを育成すること」というものでした。ビジネス・アナリストはデータサイエンティストとデータエンジニアの橋渡し役を担う人材のことです。

創出されたアイディアやテクノロジーに対して、具体的なデータに具現化できる人材の育成を進めるという課題感でした。

具体的なカリキュラムは大きく分けて3つに分かれています。 まずはVC(ビジュアルコミュニケーション)研修はセミナーの受講からスタートし、e-learningを実施しつつ、基礎知識の習得を図りました。

次のコアスキル集中研修からは、集合研修を行っていきます。スタート段階では、エクセルの集計・可視化を行い、次第にグループでデータ分析の流れを実施する形式になります。データサイクルの流れを体感できるようになることが目的です。

最後のAIビジネスプランナー研修では、AIと機械学習がどのようにビジネスに活用されているのかを知ったうえで、自社のビジネス課題への応用や新しい価値創造のプランニングを実施していくという内容です。

また、この内容は初級クラスで1年間の期間を設けた研修であり、来年の中級研修の内容・期間は現在話し合いを進めています。

大手金融企業様

3社目は、大手金融企業の事例についてみていきましょう。グループ企業内における基礎・ハイレベルどちらも含むDX人材の育成をサポートしました。対象は、基礎レベルの一般スタッフが数百名、 ハイレベルはグループ各社の分析担当者数十名です。

人材育成の目的と方針は、グループ内企業で「一気通貫のDX・デジタル施策の計画・具体化できる人材育成プログラムを作り、経年でDX人材育成を加速させること」でした。では具体的にどのような人材育成プログラムをサポートしたのか解説していきます。

基礎レベル人材では、「ビジネス部門と分析部門の橋渡しやプロジェクトの課題抽出・解決を狙えるレベル」となることを想定したプログラムとしました。データ活用セミナーの受講からスタートし、e-learningで学習を行い、確認テストを実施。その後は、社内セミナーの講師ができるように内製化もサポートしています。

ハイレベル人材に関しては、「分析の基礎から応用スキルを習得し、自社のプロジェクトをリードできるレベル」となることを想定したプログラムとしました。データベースを操作するための言語であるSQLを習得し、統計解析・多変量解析を習得していきます。

さらに機械学習を習得後、クライアントの業務内データを活用し、模擬的なデータ活用プロジェクトを循環させる総合演習を行います。現在3年目の研修プログラム内容を紹介しました。

島津製作所様

4社目は島津製作所様です。「開発・ 工場・管理系スタッフのDX推進に向けたデータ活用人材の育成」をサポートしました。

対象人数は数百名、目的と方針は「ビジネスDXと業務DXの推進、自社のビジネスを理解したうえで、データ活用の専門知識を持つ人材を育成する」ことでした。とくに、専門知識や専門スキルの醸成は短期間では難しいことから、比較的長めの育成プログラムとなっています。

内容としては、データ活用に対するセミナーからスタートし、次第にまずはe-learningを実施することで基礎知識の習得を図っていきました。ここまでは、アサヒグループジャパンと似た流れです。

次のコアスキル集中研修からは、集合研修を行っていきます。スタート段階では、エクセルの集計・可視化を行い、次第にグループでデータ分析の流れを実施する形式になります。データサイクルの流れを体感できるようになることが目的です。

しかし、途中から対象者が分かれ、 ビジネス・アナリスト用の研修とデータサイエンティストとして専門性を高めるスキル研修となります。人材によって受けられる研修内容が異なる点が特徴です。

ここからは、私の見解を交えてデータ活用人材を上手く育成する方法についてお話しいたします。 最終的に部門は異なるものの、スタート時はDX推進部が戦略・データ基盤の方針を作ることが大切です。その後、「社内でどういった人材育成するのか」といった方針もDX推進部の役割といえます。

それぞれの役割について少しふれると、DX推進部門は、戦略から研修のローンチ、必要スキルまで策定します。対して人事部は、育成対象者の選定やフランの策定、研修内のブラッシュアップなどか主な役割となるでしょう。企業によっては、部門を超えた連携も必要となるケースもよくあります。

その段階まで策定したあとは、研修を実施する際にはたらきかける人事部の動きが重要になります。例えば、オペレーションやブラッシュアップなどが代表的です。

また、他事業部との協力体制や経営側の意思がはっきりしているほど人材育成が上手くいく傾向にあります。

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WRITER執筆者プロフィール

株式会社ブレインパッド

DOORS編集部

ブレインパッドのマーケティング本部が中心となり、主にDXにまつわるティップス記事を執筆。
また、ビジネス総合誌で実績十分のライター、AI、ディープラーニングへの知見が深いライターなど、外部クリエイターの協力も得て、様々な記事を制作中。

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