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【座談会】DX人材育成のプロが語る~組織にデータサイエンスを根付かせるためには~ 前編

公開日
2021.05.20
更新日
2024.02.21

人材不足。

昨年、電通デジタルが様々な業種の3,200社に行ったDXに関する調査において、「DXの推進する上での障壁は何か?」という質問に対して、「デジタルやテクノロジーに関するスキルや人材の不足」が1位になりました。

特に、主要業務となるデータ活用ノウハウを保有する「高度IT活用人材」といわれるデータサイエンティストの育成は急務でもあり、様々な企業が採用、育成、定着に頭を悩ませています。

今回、実際のビジネスシーンを想定した演習を通じて、成果に繋がる研修をこれまで5万人以上に提供しているブレインパッドのデータ活用人材育成サービス部の講師3名に、データサイエンス力を組織に根付かせる方法やどんな点を意識して日々「DX人材育成」に向き合っているかについて話を聞きました。

リスキリングの意義などをより深く知りたい方はこちらもご覧ください。
なぜ今「リスキリング」が必要なのか?DX時代に生き残るための、人材育成の考え方と3つのステップ

DX人材育成講師から見た、DXブーム

DOORS編集部(以下、編集部) ここ最近、DXが流行る前と比べて受講者の特徴やニーズの変化はありますか?

ブレインパッド・摂待 太崇(以下、摂待) データサイエンスの専門家だけでなく、ビジネスサイドでDXを推進する人材、エンジニアリングサイドで推進する人材などが求められるようになってきていることから、受講者の「幅」が広がっていると感じています。

ブレインパッド・小俣 修一(以下、小俣) 5、6年前までは、機械学習講座を開催しても、参加者は「技術そのもの」が大好きな方が多かったのです。ただ、まさにDXが注目され始めた頃から、技術を学びたいというより「実務に使いたい」という方が受講する姿勢が変化しているように感じます。

ブレインパッド・下村 麻由美(以下、下村) トップダウンでDX組織立ち上げの指示を受けたものの、何から手を付ければ良いのか分からない方も多いようです。DXという「バズワードが一人歩き」していると感じることがありますね。

編集部 右往左往した状態で受講する方も多いのですね。受講前、受講後とどんな変化が起こるのでしょうか。一例を教えてください。

下村 「データを整理する」「基礎集計をする」「集計結果に基づいて意思決定をする」ことをそれぞれ研修で体験したので、「(自社の)DXにおいて、具体的に何をすればいいか道筋が見えた」と仰っていました。自社で言われているDXは、”輪郭のハッキリしないふんわりしているもの”なのか、逆に意外とDXが明確になっているのか、「自社の現在地」のイメージがつくようです。

小俣 受講後、データ活用の具体的な業務が分かることで、DXを何となく解釈できたと、捉え方が変わった方もいますね。

編集部 抽象化していたDX観が、具体化したDX観に変わるということですね。

どのような点を受講者に「伝える」か

1. 現場で実際に陥りがちな罠

編集部 どういった点を意識して受講者に伝えていますか?

摂待 最近はデータ分析関連の本で書店の棚1つが埋まるほどになっていて、誰もがデータ分析そのものを学習する環境が整ってきたと思います。

ただ、実業務でデータ活用プロジェクトを推進するためには、チーム内のコミュニケーションや課題設定、データ収集や加工など、知識だけでは解決できない様々な問題が発生します。 私自身、データ活用人材育成に携わる前は、データサイエンティストとして現場にいました。そこで感じ、学び受けた経験を伝えられるように常に意識しています。

株式会社ブレインパッド
アナリティクス本部 データ活用人材育成サービス部
副部長 摂待 太崇

下村 私の場合、ブレインパッドに入社して、データサイエンティストとして5年間受託分析に携わってきた経験から、現場で実際に陥りがちな罠をお伝えすることを心がけています。

編集部 陥りがちな罠。例えば?

下村 一例ですが、SQLでやりがちな構文エラーをあえて入れておいて、エラーメッセージを見ながら、解説を行います。あるいはデータに異常値や外れ値を入れておき、データクレンジングの大切さを体感してもらいます。

小俣 下村さんと同じく、陥りがちな罠を意識しています。不備のあるデータで分析してもらい、現実の業務ではこのようになりがちということを感じていただくようにします。書籍で勉強してもなかなか理解できないことといえます。

編集部 「総合演習」でこのような実践経験を積めるのですね。

下村 はい。分析のテーマ決めから分析結果報告まで一連の流れを体験してもらうのが「総合演習」です。私たちから演習用データを提供することも多いのですが、ご希望に応じて、その企業様の実際のデータを使って分析していただくこともあります。ただ蓋を開けてみると、分析に使うには整理されていないデータであることがよくあります。

編集部  データが整理されていない、きれいではないからデータ分析が進まないというのは実際のプロジェクトを担当する方からも良く聞きます・・・。

下村 まさに先ほど申し上げた、現場で陥りがちな罠の一つです。この場合、演習用のデータを提供するよりも、あえてそのデータで進めていただきます。当然分析そのものはうまくいきませんが、分析までのデータの準備の大切さを知り、問題意識を持っていただくにはベストな方法と考えます。

株式会社ブレインパッド
アナリティクス本部 データ活用人材育成サービス部
下村 麻由美

摂待 演習には、成功体験を提供することで自信を持っていただくことに加え、失敗経験も含め、両輪から得られる「気付き」も大切にしています。

編集部 なるほど。成功体験と失敗体験のバランスは大切ですね。

2. 企業の目的や状況に応じた適切な分析アプローチを知る

編集部 さて、講座では当然ですが専門用語が多く出てくると思います。元々最低限の知識がある方は分かるとしても、そうでない方への説明が難しそうですね。

小俣 はい。プログラミングができる方ばかりでなく、営業やマーケティング部門の方、管理職などビジネスサイドの方の受講も増えているので、それぞれに得意・不得意、知識のあるなしがあるので、一人ひとりに合わせた説明を意識しています。

摂待 データサイエンティストや統計家、機械学習の専門家のコミュニティでは、アルゴリズムについて説明する際に、言葉よりも数式で説明したほうが厳密に伝わりやすいケースがあります。
しかしそれが一般企業の方々に通用するかといえば、もちろん否です。
より多くの方に伝わる言葉で話さなければなりません。その際に重要なことは、「最終的には何を伝えたいのか」ということを常に振り返ることです。

編集部 「最終的には何を伝えたいのか」とは?

摂待 自社の立ち位置が分かること、つまり「自社がどのレベルにあるかを把握し、そのレベルにあった分析がまずできるようになること」が、最終的に伝えたいことの一つです。

多くの企業で機械学習や統計技術を活用したプロジェクトが当たり前になりつつありますが、一律的な手法(例えばディープラーニング)を用いれば、必ず最適な結果が得られる訳ではありません。その企業の目的や状況に応じた適切な分析アプローチがあります。

具体的には、

  • 基礎集計や可視化ができるようになる説明的分析
  • 機械学習モデル等を活用して予測ができる予測的分析
  • 予測を元に行動を最適化できる指示的分析   

の3つがあります。

自社がどのレベルにあるかを把握し、そのレベルに合った分析がまずできるようになることが大切です。そこから少しずつレベルアップをしながら、自社の目的に適った分析プロセスに進化させていくことが重要だと考えています。
そのために自社の現在地がどこで、そしてどこに向かっているのかをしっかりと認識した上でデータ分析を行っていくようにお伝えしています。

編集部 「現場で実際に陥りがちな罠」、「企業の目的や状況に応じた適切な分析アプローチを知る」こと、これらを受講者に伝えることで、これまで受講者からどんなポジティブな反応がありましたか?

下村 研修後にアンケートを実施しているのですが、その中で「今回受講した研修が業務で活用できる」「この研修を次年度は後輩に受講させたい」という2つの項目に対して、全員から最高評価をいただいたのは大変嬉しく、印象に残っています。

小俣 「考え方が変わりました」「今まではDXをぼんやりと捉えていましたが、業務で具体的にこういうことをやればいいとわかりました」といった感想が多いと嬉しいですね。また、下村さんの話と似ていますが、「来年は後輩に受講させたい」「先輩が受講してよかったというので、私も参加しました」といった言葉が聞けるときもあり、講師冥利に尽きます。

株式会社ブレインパッド
アナリティクス本部 データ活用人材育成サービス部
小俣 修一

摂待 データサインティストとして受託分析に従事していたときに、「データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる」という当社のミッションについて自分なりに思いを馳せ、一生の間に何社のお役に立てるのだろうかと考えたことがあります。
そう考えると、自分で手を動かすよりも、自分が教えた方が活躍されるほうがより多くの会社のお役に立てることになります。ですから、受講者様の中から大きなプロジェクトを成功させたというような話を伺うと非常に大きな喜びを感じます。

編集部 そうしたポジティブな反応がかえってくるのはありがたいですね。受講者がその後、自社でのDX推進に関わり活躍で増えることを手助けするのも、立派なDX推進支援と言えますね。

お話を伺った方

摂待 太崇
株式会社ブレインパッド
アナリティクス本部 データ活用人材育成サービス部 副部長

大学卒業後、総合調査会社、シンクタンク、インターネットリサーチ会社にて官公庁・民間企業向けの社会調査・マーケットリサーチの企画・分析業務に従事。

2012年にブレインパッド入社後は、データサイエンティストとして様々な業種・領域のデータ分析ならびにデータ利活用支援プロジェクトに従事。
その側らでクライアント企業内でのデータサイエンティスト部門の立ち上げや業務支援など人材育成・研修など、現場スタッフ育成業務の経験も持つ。 一般社団法人ウェブ解析士協会認定 上級ウェブ解析士、GAIQ、AdWords 認定資格を保有。

下村 麻由美
株式会社ブレインパッド
アナリティクス本部 データ活用人材育成サービス部

大学卒業後、多次元データベースをエンジンとしたOLAPシステムの導入・運用支援に従事。
2015年にブレインパッド入社後は、データサイエンティストとして、化粧品、EC通販、食料品メーカー、アパレルメーカーなど幅広い業種・領域のデータ分析ならびにデータ利活用支援プロジェクトに従事。
また前職で培った「仕組み化」の経験を活かし、データ活用高度化をエンジニア目線で設計から実装まで先導。 現在は、データ活用人材育成サービス部の専任講師として、主にデータエンジニア領域およびAIエンジニアを育成するためのプログラムの企画・提供業務に従事。

小俣 修一
株式会社ブレインパッド
アナリティクス本部 データ活用人材育成サービス部

大学院在学中は音声認識の研究に従事し、機械学習技術を用いた発音判定方法について論文を発表する。その後、情報系専門学校の教員として「統計学」「信号処理」「人工知能基礎」「機械学習」などの科目を新規開発し、多くの学生や教職員から好評を得る。また、人工知能ゼミを主催し学生の機械学習システム制作を指導、企業向け展示会や学内行事などで展示発表も行う。

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【座談会】DX人材育成のプロが語る~組織にデータサイエンスを根付かせるためには~ 後編

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2004年の創業以来、「データ活用を通じて持続可能な未来をつくる」をミッションに掲げ、データの可能性をまっすぐに信じてきたブレインパッドは、データ活用を核としたDX実践経験により、あらゆる社会課題や業界、企業の課題解決に貢献してきました。 そのため、「DXの核心はデータ活用」にあり、日々蓄積されるデータをうまく活用し、データドリブン経営に舵を切ることであると私達は考えています。

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