「異常検知・外観検査DX」における機械学習導入のポイント

こんにちは、アナリティクス本部AIソリューションサービス部の齋藤です。

私は2013年ごろから、機械学習を用いた自然言語系のプロジェクトに3年ほど携わり、近年は同じく機械学習を用いた画像系プロジェクトに携わっております。

そこで培った知見をもとに、現在ではプリセールス活動や後進の育成を行っています。

本稿では、DXプロジェクトの一つである、機械学習とりわけ画像認識技術を用いた、異常検知・外観検知ソリューションの導入について述べます。主な対象は製造業になります。

異常検知・外観検査ソリューションの取り巻く状況

まずは異常検知・外観検査DXの状況について簡単に触れておきます。

近年、機械学習技術の発展により、画像系への応用技術が盛んに研究・開発されています。現在では、この分野に対し、多くのデータ分析会社やシステム開発会社が参入し、技術開発をしています。
その結果、様々な異常検知アルゴリズムや外観検査ソリューションが提供されています。まさにレッドオーシャン状態です。

一方で別の見方をすると、選択肢が多くあるということで、これはこれでいいことです。目的と照らし合わせ、自社のDXパートナーを選定いただきたいと思います。

弊社としても、以下のような導入事例があり、お客様のビジネス変革の伴走支援をさせていただいております。

【参考】
河川のコンクリート護岸劣化検知(八千代エンジニヤリング株式会社様)
AIが導く“伝統工芸品の技術伝承”(株式会社晃祐堂)

DXプロジェクト

目的

ここから本題に入ります。どんなプロジェクトでも同じですが、目的をはっきりさせる必要があります。と同時にやらないこともはっきりさせる必要があります。

DXの名のもとに、無理して機械学習技術を導入する必要はありません。製造業においては、プロジェクトの目的や期待する効果は以下のようなものが考えられます。

  • 製品品質(検査品質)を向上させる
  • 属人化による品質のばらつきを抑え統一する
  • 時間を短縮する(生産性を向上させる)
  • 人はより付加価値を生む業務を行う

これ以外にも、

  • そもそも人がいない、定着しないので効率化したい
  • 企業イメージを向上させたい
  • 育成できない・育成に時間がかかるので別の業務を任せたい

といった理由もあると思います。

目的達成のために、業務をどう定義しなおすか、プロセスをどう変えるかという発想がDXプロジェクトには求められます。
「99%の精度じゃなきゃ使えない」という思考は、人が行っていた作業を「機械に置き換える」という発想からくるもので、これはDXとは呼べません。忘れがちですが、現場の説得や根回しといった、ステークホルダーとのコミュニケーションもとても大切です。

現場のベテランを味方につけるといいと思います。

アプローチ

目的が固まってきたら、具体的なアプローチを考えます。DXプロジェクトでは、デジタル技術を用いて業務を効率化・改善していくことになります。
目的と照らし合わせ、非デジタルであるが大切・有意義な業務は何でしょうか?

例:

  • 人手による検品
  • 経験、属人化した業務
  • 繰り返し作業

このような業務は機械学習技術の適用が見込まれます。

繰り返しになりますが、単に「ツール導入による作業の置き換え」ではなく、「異常検知・外観検査技術の導入による業務改善」という枠組みで考える必要があります。

評価

続いて、評価方法やROIについて考察していきます。
まず、データの定義・意味づけを行います。

異常を検知したいのに異常なデータがなければ評価できません。そのようなデータが無ければ、収集し、アノテーションを行います。ここで注意が必要です。

頑張ってデータを収集し、アノテーションしたとしても、機械学習で異常を検知できるとは限りません。機械学習技術は統計学をベースにしています。

データとして、全く規則性のない完全にランダムな異常は検知できません。まずは基礎集計を行い、機械学習技術が適用可能か確認する必要があります。

導入のメリットと費用対効果

具体的な要素技術を適用する前に、もう一つ検討しておくことがあります。
費用対効果です。

機械学習技術は、これまでの技術では達成が困難であった目的や課題に対しても効果が期待でき、それなりに実績があります。とても魅力的な技術ではありますが、一度導入すれば終わりというものではありません。

導入すると、システムは現実世界のデータと相互作用することになります。振る舞いが変化することもあります。このような場合はメンテナンスが必要になります。
それなりに専門知識も必要であり、自社で実施できないのであれば、外部に委託することになります。また、場合によっては人の介入が必要になることもあります。

したがって、導入には中長期的なロードマップを策定する必要があります。外部に委託した場合は、様々なコストを考えると、ゆくゆくは内製化という方針もあると思います。

「内製化して、早く安く」と考えるのではなく、業務をどう変えるかに焦点を当ててください。そうでないと、成果は期待できないことがあります。

技術適用

ここまで企画が固まると、いよいよ技術適用になります。
不良のデータが、正常なデータと同じくらい潤沢にあれば、教師あり学習が適用できます。しかし、多くの場合、不良はごくまれにしか発生せず、不良データは少なくなりがちです。

このような場合は教師なし学習を考えます。
様々なアルゴリズムを用い、試行錯誤を行い、精度向上を目指します。ただし、精度だけを見て一喜一憂は時期尚早です。精度99%となっても、過学習が疑われれば役に立ちません。実現場で使えない、違和感があるようなら導入の意味がありません。

まとめと大事なポイント

機械学習技術を用いたDXプロジェクトには、つまずきポイントがたくさんあります。
とくに目的設定や企画段階でのつまずくと、成果は期待できません。くれぐれも、「この問題に機械学習の○○技術が適用できそう・・・」という発想のもと、データを取り始めるといった行動は控えてください。

また、データが不十分だったり、規則性がなかったりすると効果が出るとは限りません。その意味でも、異常検知DX実施の決断力やリスク許容度が求められます。これには、多少コスト高でも外部に委託し、DXの真の目的である「事業成長のためコア業務への集中」という判断へつながります。

WRITER執筆者プロフィール

株式会社ブレインパッド

アナリティクス本部
AIソリューションサービス部長
齋藤 彰儀

バックグラウンドは統計学とソフトウェア工学。ソフトウェアエンジニアとしてキャリアをスタートし、様々な業務アプリケーションの開発に携わる。
2013年より機械学習エンジニアとして、自然言語処理や画像処理のアルゴリズム、およびそれらを組み込んだシステムの開発に従事。現在は組織マネジメントを務め、プリセールス・MLシステム導入支援活動や後進の育成を行っている。

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