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経産省・東証が選定する「DX銘柄2020」の注目企業の成功事例を紹介

公開日
2021.01.08
更新日
2024.02.17

DXの実現を目指す企業は多いものの、成功させることは容易ではありません。実現のためには、デジタル技術によってビジネスモデルをどう変革するのか経営戦略として示すとともに、経営者がリーダーシップを執ってプロジェクトの推進に努める必要があります。

そこで今回は、経済産業省と東京証券取引所がDXに取り組む企業として選定した「DX銘柄2020」の中から、注目すべき企業事例を取り上げてご紹介します。経営戦略のあり方、DXの内容や推進のあり方について参考にしていただければ幸いです。

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グランプリ選定!DXのリーダー的存在として全体最適の経営へ(株式会社小松製作所)

今回DX銘柄として選定された企業は35社にのぼりますが、その中でもグランプリに選定された2社のうちの一つが小松製作所(コマツ)です。コマツは日本の製造業を代表する企業であることはもちろんですが、「日本の製造業のデジタル化の魁(さきがけ)的企業」としても高く評価されてきました。

その理由の一つが、工場内や離れた拠点の機械を一括管理しインターネット上で稼働状況を閲覧できる「コムトラックス」です。世界中の建設機械の稼働データを把握できるため、盗難防止になるのはもちろん部品交換や燃料消費状況の提案も可能になります。コマツにとっても、市場の先行きを見通すうえでの判断材料を手に入れることができました。

2019年度から3ヵ年の中期経営計画では「ダントツバリュー」を掲げ、顧客価値創造を通じたESG課題の解決と収益向上を目指しています。その中核となるのが、安全で生産性の高いスマートな未来の現場をコマツと顧客が実現していく「スマートコントラクション」です。2015年にコンセプトが発表されると、ドローンによる高精度3次元測量、3D設計データ作成などさまざまなサービスが順次提供されるようになりました。

今回のDX銘柄選定に当たっては、コマツが長年日本の製造業のDXを牽引する存在であり続けていること、そして外部環境の変化に即応する強靭でフレキシブルな収益構造とESG課題の解決の両立を高いレベルで実現していることに対して高い評価がありました。部分的なデジタル化や業務改善にとどまらず、顧客、代理店、パートナー、地域社会、コマツの現場を「ダントツ」でつなぐことで、全体最適の経営を実現しているとされています。


DXが成長エンジン。テクノロジーを経営戦略の中核に据えてDXを推進(アサヒグループホールディングス株式会社)

デジタル技術の導入や、それによる業務改善・効率化だけではDXとは呼べません。デジタル技術やデータ活用によって、製品・サービスやビジネスモデルの変革につなげることが必要です。その意味で、DXは単なるIT化ではなく、経営戦略の中核に位置づけて経営層が強くコミットすべき経営変革の手段に他なりません。

アサヒグループが今回DX銘柄に選定された理由は、DXを経営戦略の中核に明確な形で位置づけていることです。アサヒグループの属する酒類・飲料・食品業界でも、IoTによる付加価値の提供、AI活用によるサプライチェーンの効率化、あるいはアルコール代替品など、技術革新による新たなビジネスモデルの可能性が示されています。アサヒグループでは、イノベーションを先導して市場における優位性の確立や新規市場創出を目指し、DXに取り組んでいます。

今回だけではなく、過去5年間にわたって「攻めのIT経営銘柄」に選定され続けており、テクノロジーによるビジネスの変革に取り組む姿勢はDX銘柄評価委員会からも高く評価されています。

アサヒグループでは、グループ経営理念「Asahi Group Philosophy」に基づき、各事業会社の“稼ぐ力の強化”“新たな成長の源泉獲得”“イノベーション文化醸成”のための成長エンジンとしてDXを位置づけています。2019年にはDX戦略を「ADX戦略モデル」として体系化し、10個の戦略テーマを中心にした「ADX戦略マップ」を計画的に実行しています。

例えば、商品パッケージデザイン案を生成するためのAI技術や、架空の商品棚を再現するVR商品パッケージ開発支援システムを開発したり、国内各社で保有する顧客データをグループ横断で活用できるようにしたりといったプロジェクトが動いています。

新会社設立で3,000億円のDXビジネス創出を目指す(富士通株式会社)

富士通は日本を代表する電機メーカーであり、ITベンダーでもあります。意外なことに、今回のDX銘柄の中に電機メーカーやITベンダーは少なく、富士通とNTTデータしかノミネートされていません。富士通は特にDXへ力を入れる姿勢を強調しており、社内改革のためのDX推進はもちろん、顧客のDXを支援するビジネスにも取り組もうとしています。

富士通は、特にDXを支えるテクノロジー関連のソリューションを持つことを強みとしています。具体的には、サイバーセキュリティ・クラウド・データ・IoT・5G・AI・コンピューティングの7領域において、顧客のDXビジネスを実現するためのデジタルテクノロジーを生み出すとしています。

顧客のDX支援のために、2020年には新会社「Ridgelinez(リッジラインズ)株式会社」を設立しています。約300人体制で事業を開始し、3年後を目処に600人ほどの体制へ拡大するとともに、2~3年後には200億前後まで売上を持っていきたいと語られています。そして富士通グループのビジネスへの波及効果を含めて、連結ベースで3000億円のDXビジネス創出を目指しています。

【関連】DXは5G登場によりどう加速していく?新通信網の特徴とDXを通じたビジネスへのインパクト

MaaSの推進で利便性向上。新たなモビリティサービスの実現へ(東日本旅客鉄道株式会社)

DXは、交通インフラ事業の姿も大きく変えようとしています。近年では、交通・輸送事業をサービスとして捉えなおす「MaaS:Mobility as a Service」の取組が各社で進んでいます。JR東日本の場合は、「運輸事業/非運輸事業」から「輸送サービス/生活サービス&IT・Suicaサービス」へとビジネスモデルを捉えなおして、これからの社会やテクノロジーの変化に対応した価値を提供できる会社になろうとしています。

特に生活サービスおよびIT・Suicaサービスについては、グループ経営ビジョン「変革2027」の中でも成長余力の大きい事業であるとされ、経営資源の重点投入が謳われています。

その一環として、2020年6月に「MaaS・Suica推進本部」が設置されました。これは、「移動のシームレス化」「多様なサービスのワンストップ化」「データを活用した新サービスの導入」の実現に向け、Suica・MaaS・データマーケティングを三位一体で推進することを目的とした部署です。移動のための検索・手配・決済をオールインワンで提供する「モビリティ・リンケージ・プラットフォーム」や「決済プラットフォーム」の二つのプラットフォームを拡大するのに加えて、データマーケティングの推進もミッションです。

このうちモビリティ・リンケージ・プラットフォームは、MaaSの取組の一つであり「シームレスな移動」「総移動時間の短縮」「ストレスフリーな移動」の実現を目指したものです。タクシーやシェアサイクルなど複数のサービスを統合したアプリケーションをリリースするなどの実績があり、引き続き暮らしや異動の利便性を上げる試みに着手していく予定です。

オンラインとオフラインの融合とビッグデータの活用(Zホールディングス株式会社)

Zホールディングス(旧ヤフー株式会社)は、インターネット検索サービス「Yahoo! JAPAN」を提供する企業であり、傘下に金融業や通信販売業など、さまざまなサービスを抱えています。インターネットの普及に伴って変化するユーザーのニーズに応えられる「ライフエンジン」となることを目指して、サービスの拡充・向上を続けています。

Zホールディングスの強みは、日本最大級のインターネットサービスを持つことで豊富なデータを蓄積している点にあります。そのため、2018年度にはマルチビッグデータを活用した事業モデルを展開する「データドリブンカンパニー」となることを掲げ、他の企業や自治体、研究所のデータとZホールディングスのビッグデータやAI技術を組み合わせ、さらに多くのデータを集めるエコシステムの構築を目指しています。

例えば、オンラインとオフラインの融合を掲げてて、飲食店の空席管理やテイクアウト対応における課題を解決するべく、「リアルタイム空席情報」、「モバイルオーダー」を提供しています。

オンラインとオフラインの融合とビッグデータの活用(株式会社りそなホールディングス)

銀行業として唯一、「DX銘柄2020」に選定されたりそなホールディングス。
主なDXの取り組みとして、「新たな個人向けビジネスモデル」と「店頭業務改革」が挙げられます。
前者では、グループアプリにより「銀行のアプリは使いにくい」というイメージを払拭すると同時に、これまで接点を持てなかったお客さまに対するコミュニケーションの起点としての役割を担い、新たなビジネスモデルの構築を進めています。
後者では、お客さまの利便性向上とローコスト運営の両立を実現するためにセミセルフ端末「クイックナビ」を導入。社員端末とATM等を連携させることで、キャッシュカードがあれば伝票レス・印鑑レスでお取引いただける店頭体制を構築しています。こうした店頭業務改革により、窓口の「17時まで営業」を実現しています。

まとめ

DX銘柄として取り上げられたのは、ほとんどが日本を代表する大企業と言えます。大企業ならではの強みを活かした取組も多く、そのまま参考とするのは難しいかもしれません。しかし、従来のビジネスモデルをテクノロジーや社会の変化に適応させた形でIT化し、新たな価値を創出することがDXであるという点は、企業規模や業種によって変わるものではありません。改めて自社のビジネスモデルや強み・弱みを明確に把握し、テクノロジーによる変革をビジョンとして設定することがDXの第一歩です。ぜひ各社の資料を参考にしていただければと思います。

DXの成功事例については、こちらの記事も是非ご覧ください。
【関連】ブレインパッドが支援したDXの成功事例5選を紹介!【①】~業種・職種を超えて変革を起こすデータ活用の力~
【関連】ブレインパッドが支援したDXの成功事例5選を紹介!【②】~食の安心・安全貢献、ビジネスモデルの変革、伝統技術の継承など~

【関連】製造業でDXを推進するには?経産省経産省が発信する「観点と企業事例」から読み解く


(参考)
・経済産業省「DX銘柄/攻めのIT経営銘柄」
・日本証券取引所「「デジタルトランスフォーメーション銘柄2020」の公表について」
・コマツ「コマツのデジタルトランスフォーメーション戦略」
・アサヒグループホールディングス「「DX銘柄2020」に選定!ADX戦略と関連システム事例を紹介」
・「DX銘柄2020 アサヒグループの取り組み」
・富士通「デジタルトランスフォーメーション」
・東日本旅客鉄道株式会社「JR東日本グループ経営ビジョン「変革2027」」
・「生活サービス事業の DX を加速します~「JRE MALL ふるさと納税」やデジタル地域通貨の販売で地方創生に貢献します」
・Zホールディングス「価値創造のしくみ」
・株式会社りそなホールディングス「「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄) 2020」の選定について」



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