物流業界でのDX浸透度は?デジタル化と構造改革で生産性向上へ

あらゆる業界でデジタル技術の導入によるビジネスモデルや製品・サービスの変革、すなわちDXの取り組みが加速しています。物流業界でも、構造的な課題が新型コロナウイルスの感染拡大によって先鋭化したとの認識の下で、DXによって課題解決を目指す動きが少なくありません。

そこで今回は、国土交通省の資料(「最近の物流政策について」)を参考に、物流業界における構造課題とDXの動きについて見ていきます。

物流業界における課題

物流業界では、以前から構造的な課題があったことに加えて、コロナ禍で大きな影響を受けています。まずは、DXで解決すべき物流業界の現状課題を見ていきましょう。

人手不足と低賃金長時間労働

物流業界では労働力不足の状態が続いており、しかも近年は問題が深刻化しつつあります。厚生労働省の「労働力経済動向調査」によると、労働者が「不足」と回答した事業所の割合は、「過剰」と回答した事業所の割合より高い状態が10年以上続いています。全産業の合計値よりも運輸業・郵便業の値は20ポイントほど高く、他の産業と比べても問題は深刻です。

また、近年は不足感が顕著になっています。全日本トラック協会の調べでは、2013年時点ではトラックドライバーが「不足」、「やや不足」と感じている企業が半数未満であったのに対し、2018年は70%、2019年は67%と増加しています。

労働力不足の要因の一つは、その働き方にあるでしょう。国土交通省のまとめによると、トラック運送事業の労働時間は全産業平均より2割ほど長く、賃金は全産業平均より約1~2割低いことが明らかになっています。

労働力不足に加え、就業者の高齢化も顕著です。道路貨物運送業の若年層(10代・20代)の割合は全産業平均より低い一方、40代以上の割合は全産業平均より高くなっています。労働力の確保や業務の省力化など、上記のような課題への対応が物流業界では急務なのです。

EC市場の成長による宅配便の増加

物流業界をめぐる近年のトピックとして、EC(電子商取引)市場の拡大を避けては通れません。経済産業省の「電子商取引実態調査」によると、2007年に約5.3兆円だった市場規模は年々拡大を続け、2019年には全体で19.3兆円規模、物販系分野に限っても10.0兆円規模に達しました。この5年に絞っても約1.5倍に拡大しており、右肩上がりの傾向は止まる気配を見せません。

これに伴い、宅配便取り扱い実績もこの5年で約2割(7.1億個)増加と、大きく伸びています。本来、需要の拡大は喜ぶべきことですが、物流業界では労働力不足の傾向に拍車をかける課題なのです。

新型コロナウイルスとサプライチェーン

新型コロナウイルス感染症の拡大は、2020年の交通産業に甚大な影響をもたらしました。工場での生産減などを反映して素材や部品の需要が減少するとともに、海外からの輸入も減少した結果、企業間の物流は低調でした。特に、7~9月は国内貨物(トラック・鉄道貨物・内航海運)および国際貨物(輸出・輸入)のいずれも前年同月比マイナスを記録。7月、8月に至っては鉄道貨物および国際貨物は10%以上のマイナスでした。

こうした状況を受けて、複数の貨物自動車運送事業者から事業廃止・休止の届出が出されています。金融機関による融資や持続化給付金、雇用調整助成金の活用も多く、苦境にあえぐ物流業者の実態があらためて浮き彫りになりました。

一方、外出自粛に伴う通販需要などの拡大もあって、宅配便の取扱量には増加傾向が見られました。事業者は、感染予防に配慮しながら宅配便増加へ対応することも迫られています。

物流DXによる課題解決

労働力不足や需要増加などといった構造的課題への対応策の一つに、「物流DX」が挙げられます。まずは物流DXの概要と、国土交通省の支援について見てみましょう。

物流DXとは何か

資料では、物流DXを「機械化・デジタル化を通じて物流のこれまでのあり方を変革すること」と定義しています。単に機械やデジタル技術を導入するだけではなく、「これまでのあり方を変革する」というのがポイントです。物流DXによって、他産業に対する物流の優位性を高めるとともに、日本の産業の国際競争力強化をもたらすことに狙いがあります。

具体的には、以下の2つの目標が掲げられています。

・既存のオペレーション改善・働き方改革を実現

・物流システムの規格化などを通じ、物流産業のビジネスモデルそのものを革新

物流業界でもAIやIoT、ドローンなどの活用が進んでいます。これらの技術で業務効率化を果たし、労働力不足や長時間労働の緩和を目指す取り組みです。また、付加価値の高いサービスや製品、ビジネスモデルを創出することによる賃金の上昇も期待されています。

物流分野の機械化

物流業界における機械化の事例として、資料では3点挙げられています。

1つ目が、幹線輸送の自動化・機械化です。自動運航船、トラック隊列走行および自動化といった技術によって、輸送を効率化できます。運転負担の軽減や安全性の向上など、現場の作業者の労働負荷軽減にもつながる技術です。

2つ目の実例が、ラストワンマイル配送の効率化です。物流の最終拠点からエンドユーザーまでの「ラストワンマイル(最後の区間)」を、ドローンの活用で効率化する取り組みもその一つです。コロナ禍を受けて非接触・非対面方式の物流システム構築が叫ばれる中、過疎地域を中心に実用化が始まりつつあります。増加する宅配便配送の自動化・効率化に向けた動きでもあります。

3つ目が、庫内作業(ピッキング、デパレ/パレタイズ、横持ち・縦持ちなど)の自動化・機械化です。特に、倉庫内の荷物の運搬を行う、自動配送ロボットの導入が進んでいます。

物流分野のデジタル化

デジタル化の事例についても、資料に記載されています。

一例が、各種手続きの電子化です。運送状やその収受の電子化、特殊車両(特車)通行手続きの迅速化などがこれに含まれます。運送状電子化はe-AWBとも呼ばれ、他の先進諸国に比べて日本では導入が遅れていると指摘されています。また、前述のトラック隊列走行や連結トラックの実用化に向けて特車通行許可基準の緩和と手続きの迅速化に取り組んでいます。

また、国土交通省は「SIPスマート物流サービス」の構築にも力を入れています。物流と商流を可視化し、会社や業界の垣根を越える形でデータを蓄積・解析・共有するデータ基盤の構築を指すものです。生産データから入出庫データ、トラック動態データと積載率、店舗在庫データ、購買データといった各フェーズのデータを共有し、サプライチェーン全体の生産性向上を目指す取り組みです。欠品防止やフードロス削減などの効果も期待されています。

国土交通省の取り組む物流DXの取り組み

国土交通省では、社会実験や計画策定などの形で物流DXの流れを加速させようとしています。現在進行中、もしくは近い将来開始される各種事業についてご紹介します。

ドローンを活用した物流の実用化支援

長崎県五島市で、過疎地の離島物流をドローンで実施する実験を実施します。現在は本土の配送先から港まで自動車、本土と島の港同士を船で1日3往復することで生活物資を配送しています。

しかし、人口減などの影響で船の便数を維持が難しくなっており、配送手段の確保が喫緊の課題です。また、物資を受け取るための負荷を軽減する必要もあります。

このため、本土から離島の集落の戸口付近まで直接ドローンで物資を配送する事業の実装を検討しています。物資の注文方法や受け取り方法の検討、安全な飛行の実施、ドローン配送に適した貨物を集約することによる稼働率の向上などが課題です。

AI・IoTを活用した輸送効率化事業に対する補助金

デジタル技術を活用して、運輸部門の省エネに取り組む事業です。サプライチェーン全体の効率化、トラック事業者と荷主などの連携による省エネ、内航船の運航効率化、使用過程者の省エネ性能維持に向けた推進事業など、さまざまな運送手段における省エネを実践する企業に補助金を給付する取り組みです。

2021年度から2023年度までの3年間の事業で、2030年までに運輸部門のエネルギー消費量を原油換算で年間約156万kl削減することなどを目標としています。

食品流通の合理化に向けた取り組み

最後に、食品流通の取り組みです。現在、97%の食品流通がトラックで行われており、特に生鮮食品の輸送において課題を抱えています。理由としては、手による荷役作業が多い、待ち時間が長い、運行管理が難しい、小ロットかつ多頻度の輸送が多い、長距離輸送が多いことなどが挙げられます。これらの課題により、輸送費の引き上げや取り扱いの敬遠のような事例も出てきています。

今後、関係者による検討会を設置して、具体的な方策の検討に入る予定です。現段階ではパレット化による手荷役の軽減、中継輸送による長時間労働の軽減、トラック予約受付システムによる待ち時間の削減などが考えられています。

まとめ

構造的な課題を抱える物流業界にとって、デジタル技術の進化は課題解決および業務変革の大きなチャンスと言えます。他業界の活用事例も参考にしつつ、個別の課題ごとに解決策の検討・実践へ入る必要があります。単独の会社や業界といった枠を超えて、サプライチェーン全体でデータや課題、取組を共有することが重要です。

(参考)
国土交通省「最近の物流政策について」

WRITER執筆者プロフィール

株式会社ブレインパッド

DOORS編集部

ブレインパッドのマーケティング本部が中心となり、主にDXにまつわるティップス記事を執筆。また、ビジネス総合誌で実績十分のライター、AI、ディープラーニングへの知見が深いライターなど、外部クリエイターの協力も得て、様々な記事を制作中。

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