NRF APAC2025レポート:海外リテールのAI・データ活用状況

公開日
2025.06.18
更新日
2025.06.18
NRF APAC2025レポート 海外リテールのAI・データ活用状況

6月3から5日の3日間にかけて世界最大級の小売イベントNRFのAPAC版であるNRF 2025: Retail’s Big Show Asia Pacific(NRF 2025 APAC)がシンガポールのサンズ エキスポ&コンベンションセンターで開催されました。今年で2回目となる本イベントですが、公式サイトによると昨年から規模は2倍となり、1,900以上のブランド、10,000人以上の参加者、300社が出展するExpoとなっております。

今年のテーマは「Retail Unlimited」となっており、リテールにおける重要テーマであるカスタマーエクスペリエンス・デジタルトランスフォーメーションからAI活用に関して幅広いテーマでのイベントが開催されていました。

今回は日本企業の皆様に、現地視察から見えたAPAC地域における先進事例を共有いたします。

本記事の執筆者
  • 児玉 誠一郎
    セールス
    児玉 誠一郎
    SEIICHIRO KODAMA
    会社
    株式会社ブレインパッド
    所属
    戦略投資推進室
    役職
    マネージャー
    2017年にブレインパッドに新卒入社。自社製品Rtoasterのコンサルタントとして幅広い業界を支援。コンサルティング部門に異動後、デジタルマーケティング領域でのプロジェクトマネージャーに従事。現在は海外事業を推進、東南アジアを中心に活動中。

出展企業から見える全体の傾向

今回ブースを3日間回った印象として、全体としてAIを全面に押している一方、その見せ方は二極化していると感じました。

外資系テックベンダー、スタートアップはAIをテクノロジーとして全面に押し出して展示している印象でした。共通して展示されていたソリューションは「AIチャット」「バーチャル試着」「バーチャル接客」でした。

下の画像は店舗に設置するバーチャル接客システムで、百貨店のような客単価の高い店舗での使用を想定しており、商品の説明を多言語で、かつ対話形式で提供してくれるとのことでした。
特に驚いたのは、日本語で説明を求めた際の対応です。日本人ネイティブのような話し方ではなく、海外の方が話す日本語に近いスピードや話し方の特徴を捉えていたことで、改めてAIの進化を強く実感させられました。

リテール企業に関してはカメラや画像を活用したより実践的なテクノロジーが多い印象でした。シンガポールの大手小売Fair priceのブースでは画像認証を活用した販売機を出展していました。
購入の流れとしてはまず端末で支払いを実施、その後販売機のロックが解除され、欲しい商品を取ると、上部にあるカメラと内部にある在庫情報を踏まえて支払いが行われるという設計でした。
リテール企業ならではの店舗におけるAI活用のケースとして実際に体験することができました。

NRF APAC2025の様子

現地リテール企業で進むAI活用

FairPrice:Generative AIを活用したマーケティングと業務効率化の実例

シンガポール最大手の小売業者FairPriceは、AIを単なるトレンドとしてではなく、「顧客体験の変革」と「業務効率化」の両軸で活用しています。
特に注目すべきは、Generative AI(生成AI)を用いたマーケティング施策の高度化と業務コスト削減の取り組みです。具体的にはCRM施策やSNS投稿のクリエイティブ制作に生成AIを利用し、従来のクリエイティブ同様の効果を出しつつ、制作時間の削減に大幅に貢献したとコメントしていました。


Fair priceは240万人の会員を有しており、早い段階から顧客データ基盤の構築を進めてきたとのことです。その目的は、完璧なデータを追及することではなく、実践的に活用できることだと説明されていました。印象的な発言として、“There is no such thing as clean data. There’s just cleaner data.”クリーンなデータなんて存在しない。あるのは、よりクリーンなデータだけだ。)とコメントしていました。この言葉は、AIを導入する際に完璧なデータ整備が整ってから始めようとしがちな企業に対する、実践的で勇気づけられるメッセージでした。

Gill Capital (H&M):AIによるパーソナライズ接客

H&Mなどのブランドを運営するGill Capitalのセッションでは、AIを接客にどう活かすか、そしてその背景にある組織のマインドセットの重要性が強調されました。

彼らが実践するのは、自然言語でのチャットによるパーソナライズド接客です。例えば「明日、オフィスで着られる涼しい服がほしい」といった曖昧な要望に対し、AIが在庫やスタイルを加味して即座にレコメンドを行います。これは検索よりもスムーズで、まるで“気が利く販売員”のような体験を提供していました。

こうした技術導入を成功させるには、「AI=現場を支援する存在」という人間中心のマインドが不可欠であると言及されていました。AIをサイドプロジェクトにせず、小さく始めて、成果を見てから素早くスケールする柔軟さが重要だとも述べられていました。

ブレインパッドでも、2024年12月に、生成AIと業界最高峰のレコメンド技術を融合し、ユーザーの商品検索・パーソナライズを実現する機能をリリースしています。

【関連記事】
Rtoaster GenAI |生成AIで新しい顧客体験を実現


NRF APACから感じたこと

今回のイベントに参加して感じたのは、AIの活用がAPACでも進んでおり、より実践的な事例が多く見られたという点です。私自身が普段東南アジアを中心に活動する中で大切にしている、失敗を恐れずに実践する姿勢と、その事例を惜しみなく共有してくれる点が、このイベントからも強く感じられました。

今回のイベントではネットワークというワードが強調されていた通り、会場では活発に意見交換している様子が見られました。私自身も新規事業の企画案をセッションに登壇された方に壁打ちしていただくなど、海外ならではのオープンマインドな雰囲気が感じ取れました。

米国小売の最新事例は?

2025年1月にニューヨークで開催されたNRF 2025についても、ブレインパッド社員が参加し、AIの活用をはじめとした最新の潮流を詳細レポートとしてまとめています。

世界最大級の小売の祭典で注目されたトピックや出展内容について、ぜひ資料をご確認ください。


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