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米国サンフランシスコで開催中の「Snowflake Summit 2026」。いよいよDay1を迎え、13時からの各個別のブレイクアウトセッションでSnowflake Summitが始まりました。17時からのOpening Keynoteでは、CEOのSridhar Ramaswamy氏、AnthropicのDaniela Amodei氏らが登壇。「Making AI Real for Business」をテーマに、Snowflakeの戦略と提携企業との対談が発表され、会場は熱狂に包まれました。本記事では、現地の様子とあわせて、ブレインパッドの視点から、データ活用の最前線となるOpening Keynoteの注目トピックの速報をお届けします。

Summitの開始に合わせ、会場であるMoscone Centerは陽気な音楽と楽しげな人々であふれていました。個別セッションの待機列は長く、登録していないセッション会場には入れない程でした。さらに、Keynoteのメイン会場には、開始1時間以上前から席を確保するために多くの参加者が詰めかけ、その数は昨年を大きく上回る規模となりました。

Keynoteの広大な会場も開始20分前にはすでに満席となり、会場に入りきれない人が続出するほどの盛況ぶりです。
現地の速報によると、今年のSummitの参加者は現時点で推定2万人を超えているとのこと。「Agentic AI」の実装や、エンタープライズのデータ活用に対する世界中のビジネスリーダーやエンジニアからの並々ならぬ注目の高さがうかがえました。
Keynoteでは、Snowflakeが提唱する「Agentic Enterprise(AIエージェントが自律的に活動する企業)」のビジョンとその実現に向けた具体的なソリューションが紹介されました。データ、AIモデル、アプリケーションを統合し、ガバナンスを維持しながらビジネス成果を直結させるための「Agentic Control Plane」の重要性が強調され、Accenture、Sanofi、Anthropicのリーダーを交え、AIを単なる実験から実用的なビジネス変革へと移行させるための戦略的アプローチと、信頼に基づくパートナーシップの価値が語られました。
今年のテーマは「Making AI Real for Business」です。Sridhar Ramaswamy氏は「AIは単なる未来の”可能性”ではない。実際の成果を生み出している」と切り出し、企業がAIを自律的に本番運用していく姿を「Agentic Enterprise」と呼びました。

その実現に必要な要素として、4つのコンポーネントが提示されました。第一に、Sridhar氏が最も価値が高いと改めて協調した企業自身の「Enterprise Data and Context」。第二に、AnthropicのClaude(Opus)、Gemini、GPTといった、データの上で推論し行動できる「AI Models」。第三に、SAP・Salesforce・ServiceNow・Workdayなど、日々の業務を動かす「Software and Applications」。最後に、それらを束ねる「Agentic Control Plane」です。Agentic Control Planeは、データ、モデル、アプリを統括し、すべての意思決定と行動がガバナンスと信頼に基づいていることを保証する司令塔となります。
Snowflakeは「Data・Model・Application・Control Plane」の4つのコンポーネントすべてを横断し、協調的なアクションを実現するプラットフォームとしての立ち位置を明確にしました。
Sridhar氏は、エージェントを各部門に立ち上げても、互いを認識せず孤立していては意味がない、と指摘。財務部門のエージェントが下した判断が、サプライチェーン部門の判断と矛盾しないように横断して調整し、すべての判断と行動がガバナンスされ、信頼でき、自社の文脈に根ざした状態にする、それを担うのがSnowflake IntelligenceとCortexと強調しました。4つのコンポーネントを一枚に束ねる「制御の層」を中心に据えたことが、今年のKeynoteの骨格でした。

パートナーを代表して、Accentureの会長兼CEOがビデオメッセージで登場し、「すべてのクライアントが、AIの野心からどう実際の成果へ移るかを問う」と語りました。
続いて登壇した同社の幹部は、具体的な数字を次々と示しました。あるヨーロッパの公益事業会社では、アナリストの問い合わせが数週間から数秒に短縮され、プロジェクトの着手から実行までが数か月から12週間に、コンピュート時間は85%削減されたといいます。クライアントの85%が抱える課題はAIではなくデータであり、断片化したシステムから「単一の真実(single source of truth)」を作り上げたことで、ある米国の製造業では会議の冒頭30分が「どのデータが正しいか」の議論で潰れる状態から脱した、とも語られました。
締めくくりとして「すべてのプロジェクトを、収益や費用といったライン項目に紐づけ、ビジネス成果に結びつかない仕事はするな」とメッセージを残し、今年のテーマ「REAL(成果)」を最もストレートに言い表した場面でした。
Sridhar氏は、企業が日々使うGoogle Drive・Gmail・Zoom・Jira・Slack・GitHub・Microsoft 365といったアプリケーションを、AIモデルから「見える」状態にすると語りました。その鍵が、Anthropicが提唱した MCP(Model Context Protocol)と、これを企業向けに束ねる Natomaの買収です。

Snowflakeは5月27日に、AIエージェント向けのMCPプラットフォームであるNatomaの買収意向を発表しています。検証済みのMCPサーバ群を通じてSnowflake IntelligenceやCortex Codeを社内システムへ安全に接続し、MCPゲートウェイで一元的にガバナンスをかける。Sridhar氏はこれを「ガバナンスの境界を、データからAIの行動・ワークフローへと広げるもの」と表現しました。
Sanofiの執行副社長兼最高デジタル責任者Emmanuel Fragnaud氏との対談は、Sridhar氏の「語るだけでなく見せろ。私はチームと毎週金曜にデモデーをやっている」という言葉を受け、ライブデータでの実演へと進みました。

披露されたのは、社内AI「コンシェルジュ」のデモでした。Fragnaud氏が製薬会社の営業担当に扮し、これから初めて担当医師を訪問するという設定で、コンシェルジュに事前訪問プランの作成を依頼します。コンシェルジュは、その医師が消化器領域(好酸球性食道炎)で戦略的に重要であること、注意を要する患者がいること、さらにその医師が1月に新たに一人の患者へ治療を開始しており、治療を一歩進める余地がありそうなこと、までを踏まえたプランを返しました。最後に「メールで送って」という依頼を受けて、その場でプランをメール送信しました。
一見シンプルなデモに見えましたが、その裏では、必要なすべてのデータにアクセスできること、そしてコンテキストを十二分に理解していることがあって、ようやく成立しているコンシェルジュなのだと実感しました。Fragnaud氏自身も「コンシェルジュのほうが、私より多くの専門用語を知っていた」と漏らし、会場の笑いを誘っていました。
一方で、コンシェルジュの応答が多少ずれた角度から返ってくる瞬間もありました。これまでAIのハルシネーションといえば、生成文の「文字面」の正しさを気にするものでした。しかしコンシェルジュは、立てたプランをそのままメールで送り、営業担当はそれを手に医師のもとへ向かいます。つまりこれからは、誤りのリスクが「アポイントを取る」「実際に訪問する」といった現実の行動にそのまま乗っていくということです。Natoma買収も含め、エージェントを本番の業務に組み込むほど、この「行動の正しさ」をどう検証し、どこに人の承認を挟むかが重みを増していく、と改めて認識しました。
Keynote終盤は、Anthropic共同創業者兼社長のDaniela Amodei氏との対談でした。Amodei氏は、5年前には日常業務で生成AIを使う企業はほとんどなかったのに、今やあらゆる業界・あらゆる主要企業がAIを人材戦略やコーディング戦略の根幹に据えている、と振り返りました。背景にはこの1年のモデル性能の急速な向上があり、スケーリング則のもとで進歩はこの先も続く見込みだ、と。だからこそ顧客への助言は「今日できることの上に作りつつ、最も大きな未来像を描いて、それに向けて作り始めること」だと語りました。

特に印象に残ったのが「信頼は加速装置である(trust is an accelerant)」という言葉です。Amodei氏は、安全性の作業はブレーキではなく、顧客との信頼を築いて速く進むための土台だと述べました。AnthropicとSnowflakeが共有するのはこの姿勢であり、両社はモデルのプレビュー段階から密に連携しているとのことです。
Anthropic自身も5年前は約15人、現在は約3,500人へと拡大しており、その急成長を支えたのは価値観と文化への徹底したこだわりだった、という率直な語りも、変化の渦中にいる参加者の共感を呼んでいました。
SnowflakeによるNatoma買収の話を受けて、まず最初に感じたことが「データの構造化の重要性」でした。
あらゆるツールと安全に、シームレスに繋がる世界観こそがAIエージェントの真髄であり、エージェントが自律的に動ける範囲を拡げる鍵となります。Snowflakeという信頼できるデータ基盤の上で、メールやSlackなどのコンテキスト情報が企業のセキュリティポリシーに従って統合される。その圧倒的な可能性に、とてもワクワクしました。
一方で、この世界を実現するためには、企業内のデータに対する意識や管理体制をさらに引き上げる必要があるとも感じています。
ただの時系列データを溜めるのではなく、データ同士の関連性を意識し、かつ統制の取れた「現場を巻き込んだデータの構造化(AI-Ready化)」の重要性が、今後さらに高まっていくはずです。
ここでは、具体的なイメージとして「法人営業」の現場を例に挙げて考えてみます。
通常、法人営業が顧客企業と商談する際には、以下のような情報がグラデーションのように関連し合っています。
しかし現実のビジネス現場では、これらのデータは以下のようにバラバラに保持(散逸)されているケースが多いのではないでしょうか。
これでは、AIが自律的に動くための「信頼できるコンテキスト」が組織に蓄積されません。
今回のNatoma買収(MCPプラットフォームの統合)により、Snowflake上のデータやAIエージェントが各ツールと安全に繋がることで、このデータ保持やアクションのあり方は以下のように進化すると考えられます。
あらゆるデータがエージェントで繋がり、一元的なガバナンスのもとで自律化・自動化が進む一方で、課題として残るのが「人間の介在価値と、データ入力の泥臭さ」です。例えば、上記の例の「商談資料」作成やブラッシュアップには、現場の営業が多くのカスタマイズ(手作業)を加える可能性が高く、どうしても「人間によるデータ格納・更新」の必要性が残ります。
ここで重要になるのが、現場の営業メンバーに「なぜデータを正しく格納・管理する必要があるのか」を理解してもらうこと、あるいはデータを安全に格納することが個人や組織のメリットになるようなインセンティブ設計です。
「ガバナンスを伴わないインテリジェンスはリスクを生み出す」と言われるように、これからの時代はデータだけでなく、AIのアクションにまでポリシーと統制を効かせることが不可欠です。
「データの構造化」や「AI-Ready化」が極めて重要なのは間違いありません。しかし、それをただの技術論や効率化で終わらせず、「安全かつ現場を巻き込めるように、企業・組織レベルでどうデザインしていくか」。これこそが、AIエージェントを真に社会実装するための最大の鍵になると強く実感したセッションでした。
私たちブレインパッドは、午後からのセッション参加に先立ち、午前中はSnowflake本社を訪問しました。本社オフィスの見学やランチツアーにご招待いただき、Snowflakeのカルチャーや勢いを肌で感じてさらに士気を高めた上で、午後のMoscone Centerでのセッションへと乗り込みました。
Snowflake本社はカリフォルニア州のMenro Parkに位置し、Summit会場であるMoscone Centerから車で45分程でした。
8階建ての複数の建物から成り立っており、広大な自然の中で社員が快適に伸び伸びと働ける環境がそろっていました。
最先端のAIを取り扱うSnowflake社員も大自然の中で、ディスカッションに花を咲かせ、健康的で美味しいランチを食べることで、数々の進化を生み出しているようです。緩急のバランスを大事に再び仕事に励もうと思いました。


昨年と比較して今年は「本番で、信頼できる形で、成果を出す」へと一段踏み込んだ印象です。Agentic Control Planeから始まり、ガバナンスを行動にまで広げるNatoma、基盤の先で実際に動くSanofiのコンシェルジュ、そして「信頼は加速装置」というメッセージ。いずれも、AIを”REAL”にするという今年のテーマに収斂していました。
明日のPlatform Keynoteでは、製品レベルの新発表が控えています。本番運用を支える具体的な機能がどう示されるのか、楽しみに待ちたいと思います。
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