【Snowflake World Tour Tokyo 2026 登壇・出展レポート】日本政策投資銀行と挑む「考える力を奪わないAI」

公開日
2026.09.18
更新日
2026.09.18

2026年9月10日〜11日にわたりグランドプリンスホテル新高輪にて開催された、AIデータクラウドの国内最大イベント「Snowflake World Tour Tokyo 2026」。ブレインパッドは上位スポンサーである「Black Diamond」として協賛し、ブレイクアウトセッションへの登壇およびブース出展にてSnowflakeで実現するBrainpadのデータ活用民主化支援をお伝えしました。

本記事では、株式会社日本政策投資銀行(以下、DBJ)様と共同で登壇したブレイクアウトセッションの模様を中心に、当日のイベントレポートをお届けします。

Snowflake World Tour Tokyo 2026 概要

  • 名称
    • Snowflake World Tour Tokyo 2026
  • 開催日程
    • 9月10日(木)/9月11日(金)
  • 会場
    • グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミール(東京都港区高輪3-13-1)
  • 参加費用
    • 無料(事前登録制)
  • 主催
    • Snowflake合同会社

本記事の執筆者
  • セールス
    小林 真悠子
    Mayuko Kobayashi
    会社
    株式会社ブレインパッド
    所属
    ビジネスディベロップメント&イネーブルメントユニット
    役職
    アライアンスセールス
    シンクタンク系SIにてアプリケーションエンジニアを経験。流通小売り業界向けシステム開発を担当後、2024年にブレインパッドに入社。アライアンスセールスとして、クラウド各社との協業による提供価値向上に従事。
本記事の登場人物
  • 小笠原 悠祐
    Ogasawara Yusuke
    会社
    株式会社日本政策投資銀行
    所属
    情報企画部
    役職
    デジタル戦略室長
    2003年にDBJ入行。本店営業(小売、鉄道、金融法人)、支店営業(東北、九州)、官公庁出向(財務省、JRTT)の他、審査、業務プロセス管理、資金調達、広報等に従事。再生エネルギー担当としてロンドン勤務を経て、2025年より現職。
  • データサイエンティスト
    木村 真也
    Masaya Kimura
    会社
    株式会社ブレインパッド
    所属
    金融事業部
    アナリティクスコンサルティングユニット
    役職
    リードデータサイエンティスト/グループリーダー
    ブレインパッドにデータサイエンティストとして入社後、金融・食品業界におけるDX推進組織の立ち上げに携わる。DX推進組織のビジョンやアクションプランの策定といった上流支援に加え、課題整理、分析、運用化までのデータ活用支援も担当。顧客のデータ活用人材の育成や社内コンペの主催など、データ/AI活用の民主化に向けた取り組みも実施。

セッション概要:日本政策投資銀行と挑む「考える力を奪わないAI」―与信審査ノウハウの形式知化

本セッションでは、DBJ様と一緒に取り組んでいる「銀行のコア業務である与信審査における暗黙知(コンテキスト)の抽出・継承」をテーマに、現場でのリアルなAI活用の現在地について講演とディスカッションが行われました。

  • タイトル
    • 日本政策投資銀行と挑む「考える力を奪わないAI」―与信審査ノウハウの形式知化
      Snowflakeで実現する、現場と育てるAI
  • 登壇者
    • 小笠原 悠祐 氏(株式会社日本政策投資銀行 情報企画部 デジタル戦略室長)
    • 木村 真也(株式会社ブレインパッド 金融事業部 アナリティクスコンサルティングユニット リードデータサイエンティスト)
  • 日時
    • 2026年9月10日(木)13:10〜13:40
  • セッション概要
    • 人が考える力を維持・向上させる“思考を促すAI”の現在地を共有します。
      日本政策投資銀行の与信判断におけるAI活用を進めるうえで、暗黙知を構造化しSnowflakeに蓄積。
      ブレインパッドの知見を交え、PoC段階からセキュリティ要件を満たしながら限定的なアプリの展開など、アプリ基盤としての活用も進めています。
      上司AIや営業高度化など他基盤の取り組みも含め、スピード感を持ったAI活用の現在地を語ります。
  • セッショントラック
    • Build & Use AI Agents (AIエージェントの構築と活用)
  • レベル
    • Introductory (初級)
  • ユースケース
    • AIエージェント/AI & ML/アプリケーション開発/ガバナンス & セキュリティ
  • 機能
    • Snowflake CoCo/Snowflake CoWork/Snowflake Cortex AI Functions/Snowpark Container Services/Streamlit in Snowflake
  • インダストリー
    • 金融・金融サービス

1. AI活用における「効率化」と「人の成長」の両立

セッションの冒頭、DBJの小笠原氏より、同行におけるAI活用のコンセプトが語られました。

一般的にAI活用は業務の効率化(時間の創出)に目が向けられがちですが、DBJ様は「AIに任せることで、人が判断する機会や考える力が失われてしまうのではないか」という強い問題意識を持っていました。

そこで着目したのが、AIによる生産性向上(自動化・高度化)と、職員の活躍・成長を両立させることです。教育の世界で知られるブルームの「2σ問題(1対1の個別指導を受けた生徒は、一斉授業の生徒より平均で2標準偏差高い成果を示す)」を引き合いに、「すべての職員が必要なときに優秀な上司や先輩と壁打ちできる、AIチューター環境を作れないか」という発想に至ったと語られました。


2. 従来のAIアプローチが陥る「稟議書読み込み」の罠

企業のコア業務である与信審査(融資判断)において、ベテランのノウハウをAIに移植しようとしたDBJ様。当初、デジタル戦略室長の小笠原氏は「過去の稟議書や審査資料を大量にAIに読み込ませれば、判断の仕方が見えてくるのではないか」と仮説を立てました。

しかし、ここに大きな罠がありました。資料に残っているのは「現状・結果」と「最終的な結論」が中心であり、「なぜその数字に着目したのか」「どの段階で違和感を持って別ルートを探りに行ったのか」といった、結論に至る”リアルな思考プロセス”までは蓄積されていなかったのです。

次にベテラン職員への直接ヒアリングを試みるも、当人にとってはあまりに自然な思考であるため、出てくるのは審査要領などの一般的なチェックポイント(形式知)が大半を占めてしまい、「暗黙知(コンテキスト)は、やみくもに聞いても出てこない」という壁に直面しました。

3. 暗黙知(コンテキスト)を「Why・How・What」の3層に分解する独自メソッド

この壁を突破するために導入されたのが、ブレインパッドのコンサルティングによる「暗黙知(コンテキスト)の構造化アプローチ」です。漠然としたノウハウを以下の3層に分解し、それぞれに適した抽出方法を定義しました。

  • Why(思想・価値観): 「自分たちはどういう金融機関でありたいか」といった上位の理念。抽象度が高いため、ヒアリングではなく経営会議やレビュー会などの音声から抽出します。
  • How(思考プロセス・例外時の対応): 「まずダウンサイドのシナリオから論点を洗い出す」など、特有のプロセス。暗黙知の比重が高く、深くて厚いノウハウ。
  • What(知識・情報): 「この業界ではこの指標を見る」といった知識。多くは共有知であり、LLMの事前知識でも一定カバー可能。

DBJ様が最も重視し、次世代へ継承すべきテーマとして設定したのが、この「How(思考プロセス)」でした。組織にとって重要な「How」を抽出するため、 資料ではなく「具体的な案件を題材にした会話」に着目、上司と部下が打ち合わせをする中で自然に出る「なぜそう言えるのか?」「この数字だけで大丈夫か?」という生きた問答から、着眼点や問いの立て方を抽出していきました。

セッションでは、実際のディスカッション音声からどのように暗黙知(コンテキスト)が抽出されたか、その生の事例も公開しました。上司と部下の自然な議論から着眼点や問いの立て方を抽出し、それを「SENP-AI(Senior Experience Navigates Path – AI)」という上司の暗黙知(コンテキスト)を搭載したAIチューターとして実装しています。

4. Snowflakeで実現する「暗黙知(コンテキスト)を育てる基盤」

抽出した暗黙知(コンテキスト)は、一度構築して終わりではありません。ビジネス環境の変化とともに陳腐化するため、常に更新し続ける仕組みが必要です。ブレインパッドの木村は、Snowflakeを単なるデータ基盤ではなく「暗黙知(コンテキスト)を育てていく基盤」として位置づけ、以下の2つの工夫を実装していると解説しました。

  1. Streamlit in Snowflakeによる「ユーザーログの資産化」:AIをアプリとして現場に展開する際、ユーザー(特にベテラン職員)がAIの回答に対してどのような操作をしたか、どのようなフィードバック(正解ラベル)を与えたかというログを裏側に蓄積する設計としています。使えば使うほど、暗黙知(コンテキスト)を更新するための良質なデータが溜まるループを設計しています。
  2. プラットフォームに依存しないスキル管理:金融機関特有の制約や、Microsoft Copilotなど他ツールの併用を見据え、抽出した暗黙知(コンテキスト)をSnowflake内だけに閉じ込めず、Gitなどを用いたバージョン管理によって「更新性のあるポータブルな形」で保持しています。これにより、プラットフォームに依存せず、将来的な技術環境の変化にも耐えうる資産化を目指しています。

5. 人とAIの役割分担は「組織に残したい能力」で決める

株式会社日本政策投資銀行・小笠原 悠祐氏
株式会社ブレインパッド・木村 真也

最後に、どこまでをAIに代替させるかという役割分担について議論が交わされました。今後のAIの発展も考慮すると、企業情報の収集から融資稟議書の自動生成までをAIに行わせることも可能かもしれません。しかし、小笠原氏は「企業や業界を解釈・評価し、与信判断までのストーリーを組み立てる力こそが、DBJの価値提供を支えるコアコンピタンスである」と強調しました。

「AIに何ができるか」ではなく、「組織として何を人に残し、何を鍛え続けるか」を起点に設計し、AIを単なる作業代行ツールではなく、人が考えた仮説に対する「論点提示・壁打ち相手」として育てていくという力強いメッセージでセッションは締めくくられました。

見逃し配信・資料ダウンロードのご案内

本記事でご紹介したDBJ様との合同セッションの 講演スライド資料・配信動画 は、以下の特設ページよりお申し込み後にダウンロード・ご視聴いただけます。

暗黙知(コンテキスト)の抽出・活用に、ぜひお役立てください。

動画配信
動画の視聴をご希望の方は、Snowflakeイベントページよりオンデマンド配信をご覧ください。
※2026年9月24日(木)よりご視聴いただけます
※10月末までの配信を予定しております

ブース出展も大盛況のうちに終了

ブレインパッドの展示ブースにも、連日多くのお客様にお立ち寄りいただきました。ブースでは、具体的な事例を交えSnowflakeで実現するBrainpadのデータ活用民主化支援をご紹介。本セッションでご紹介した「暗黙知(コンテキスト)の抽出と育成基盤としてのSnowflake活用」についても、より技術的な詳細や、自社への適用について熱心に質問される方の姿が多く見られ、現場主導の生成AI活用に対する関心の高さが伺えました。

ブレインパッドは国内でも有数のSnowflake AIデータクラウドサービスパートナー「Premier」認定を保有し、15社を超えるお客様のSnowflake導入・活用を支援しております。日本初の対象業界を問わない総合データ分析サービス企業として、金融・製造・鉄道・不動産など幅広い業界での支援実績を基に、お客様のデータ活用を一貫してご支援いたします。

  • Snowflakeを導入したものの活用ユースケースが決まらない
  • 活用を見据えたデータ設計のベストプラクティスを知りたい
  • AIの本番導入を加速したい
  • SnowflakeのPJを通じて有識者を育成したい

上記のようなデータ活用のあらゆるフェーズにおけるお悩みも、専門家チームがアナリティクスとエンジニアリングを駆使して現場に即したデータ活用を実装します。

今後も、Snowflakeをはじめとする最新のテクノロジーを活用し、お客様のデータ活用とAIによる価値創造を支援してまいります。セッション内容の詳細や、Snowflakeの導入・活用についてのご相談、事例に関するご質問がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

当日のブースの様子


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2004年の創業以来、「データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる」をミッションに掲げ、データの可能性をまっすぐに信じてきたブレインパッドは、データ活用を核としたDX実践経験により、あらゆる社会課題や業界、企業の課題解決に貢献してきました。 そのため、「DXの核心はデータ活用」にあり、日々蓄積されるデータをうまく活用し、データドリブン経営に舵を切ることであると私達は考えています。

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