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内製志向の強いプロトコーポレーションが「アドバイザリー支援」を選んだ理由とは

公開日
2023.11.30
更新日
2024.03.08

株式会社プロトコーポレーションは国内最大級の中古車検索サービス「グーネット」を提供しています。同社は内製志向が強く、グーネットも社内で開発・運用をしていますが、そもそもなぜ同社は内製にこだわるのでしょうか。そこには内製のための内製ではない、確固たる理由がありました。

またAI/ML(Machine Learning = 機械学習)の内製化にあたって、データ分析の伴走支援ではなく、「アドバイザリー支援」を選択したのはなぜなのでしょうか。プロトコーポレーション ITソリューション4部の大田様と五十嵐様およびブレインパッドの担当者に話を聞きました。

■登場者

  • 大田 真平氏
    株式会社プロトコーポレーション
    ITソリューション4部
  • 五十嵐 弾氏
    株式会社プロトコーポレーション
    ITソリューション4部
  • 小俣 修一
    株式会社ブレインパッド
    トランスフォーメーションユニット
  • 澤村 優佑
    株式会社ブレインパッド
    セールス&マーケティングユニット

※所属部署・肩書は取材当時のものです。

写真左から、株式会社プロトコーポレーション・大田真平氏、五十嵐弾氏、
株式会社ブレインパッド・小俣修一、澤村優佑

お客様に一番近いから自分たちでやらないといけない

DOORS編集部(以下、DOORS) まずプロトコーポレーション様側から、それぞれのミッションや役割について簡単にご説明ください。

株式会社プロトコーポレーション・大田 真平氏(以下、大田氏) ITソリューション4部で、顧客体験の向上に関する責任者をしています。また販売店様のDX推進への貢献や社内のデータ活用推進のミッションも担っており、データ分析、AI開発およびデータ基盤構築ができるメンバーを配下にそろえています。

株式会社プロトコーポレーション・大田 真平氏

株式会社プロトコーポレーション・五十嵐 弾氏(以下、五十嵐氏) AI関連のチームのリーダーを任されています。チームのミッションは、商品やサービスにつながるAI開発の企画および開発、導入推進です。今年で入社4年目になりますが、学生時代にはデータ分析やAIには関わっておらず、入社してから学び始めました。

株式会社プロトコーポレーション・五十嵐 弾氏

DOORS ブレインパッド側の関係者も簡単に自己紹介をお願いします。

株式会社ブレインパッド・小俣 修一(以下、小俣) 「データ活用人材育成サービス」のグループリーダーを務めている小俣です。普段はデータ分析やデータサイエンスの入門研修などに携わっています。プロトコーポレーション様のアドバイザリー支援を始めてからは2年半以上になります。

株式会社ブレインパッド・小俣 修一

プロトコーポレーション様のプロジェクトに対しては、五十嵐様のチームの業務アドバイザーに近い形で参画しています。今週はこんなことをやったという振り返りと次週は何をやるかという計画策定をずっと繰り返しています。

株式会社ブレインパッド・澤村 優佑(以下、澤村) 営業担当の澤村です。データ活用を進めるにあたって課題をお持ちの企業様に対して、解決のご提案をさせていただいています。

株式会社ブレインパッド・澤村 優佑

DOORS グーネットは非常に有名なサービスですので、改めてお伺いするのもはばかられますが、プロトコーポレーション様の言葉でご紹介いただければと存じます。

大田氏 グーネットと言えば中古車が一番なじみ深いと思いますが、カーライフ全般をサポートするポータルサイトとして業界最大であり、車検や買取査定といった中古車の購入以外のサービスも展開しています。クライアントは、自動車ディーラー様や中古車販売店様、整備工場様などです。その方々に情報登録していただき、グーネットを介して、ユーザーに情報提供する形になります。中古車の領域でいえば、販売店様に対してはユーザーのニーズとマッチングさせることで販売機会を拡大し、ユーザーに対しては便利かつ安心して購買するためのサポートをしています。

DOORS プロトコーポレーション様は内製志向が非常に強いと伺っています。その理由は何なのでしょうか。

大田氏 グループ会社にプロトソリューションという会社があり、データ入力や元データ作成に携わっています。またプロトコーポレーション自体も雑誌出版からスタートした経緯から、データ収集を自分たちでやってきました。そういった原点があり、そこからシステム開発やウェブサイト構築へと発展してきたので、お客様に提供するサービスは最初から最後まで自分たちで手がけることが自然なのです。今後新しい事業や業務が出てきても引き続き同じようにやり続けることでしょう。もちろん何を作るにしても外部委託は検討するのですが、その際も内部と外部のコラボレーションで進められないかと考えるところが当社の特徴ではないでしょうか。

DOORS 納得の行くものを提供するために内製にこだわるということでしょうか。

大田氏 それもありますが、われわれがお客様に一番近いから自分たちでやらないといけないというところがあるのだと思います。

DOORS AI/ML開発に積極的に取り組んでいる理由・背景について教えてください。

大田氏 1番大きな背景は、労働人口不足です。中古車業界の会社数は、整備工場様だけでもコンビニエンストアより数が多いうえに、アナログな業務も多いのが実態です。われわれがAIを開発する1つの目的として業界のデジタル化に寄与したいと考えているので、積極的に取り組んでいるのです。

DOORS とは言うものの、AI/ML開発ではさまざまな課題やハードルがあったと想像します。

大田氏 ステークホルダーにAI/MLを理解してもらうことが一番難しいと感じました。概要を話してもなかなか伝わりません。“魔法の箱”だと思っている方もまだまだいらっしゃいます。一般的なシステム開発であれば、これを実現したいというニーズに対して、こうすればできると明確に回答できます。しかしML開発ですと必ずしも必要な精度が達成できる保証がないので、開発可否の判断が難しいところがあります。ニーズに応えられるだけの精度を担保することが技術力の要(かなめ)だと思っています。

DOORS ある程度事前に高い精度が見込めるものであれば、自信を持って開発しようと言えるのでしょうけれど、中には「精度を出すのは難しそうだが、これはやらないといけない」という案件もあると思うのです。そのときは、どうやって周囲を説得するのでしょうか。

大田氏 まずはプロトタイプを作って、実際に動くものを見せることにしています。その上で、「今はこのぐらいの精度ですが、今後努力次第でこのぐらいの精度は出せるでしょう。しかしその先に行こうとすると足りないかもしれません。さてどうしましょうか」といった折衝を重ねながら、良いものに仕上げていくプロセスを踏むことが肝心です。

DOORS 動くものを見せるのがポイントだということですね。AI/ML開発や運用の内製化へのこだわりはありますか。

大田氏 実際には、何でもかんでも内製するといったこだわりがあるわけではありません。しかしいつでも内部だけで開発できる状態にしておくべきだとは考えています。その理由は、AIに携わっていない方が概要だけでAIを理解するのは難しいからです。先ほど述べたプロトタイプも、毎回外部に作ってもらっていたら気がついたら半年たっていたということになりかねません。1カ月足らずでプロトタイプを作って、動くものを見せてフィードバックしてもらい、すぐにアップデートするぐらいのスピード感が必要です。そのためには内部で開発することが最善だと考えているのです。

五十嵐氏 わたしも動くものを見せることを非常に大切にしています。ものがないとどうしても伝わらないところがあり、いかに早くものを作れるかが重要なのです。現場や経営層、あるいはクライアント様からこういうものが欲しいと言われれば、素早く作ってまず見せます。あるいは、こちらからもおもしろそうなものやみんなが使ってくれそうなものを実際に作って、それを見せながらサービス担当や営業担当に提案していくようにしています。

DOORS 完成品を作ることにこだわるのではなく、動くものを早く見せることにこだわっているということですね。

五十嵐氏 はい。内部の考え、仕組み、システムなどを外部の方に理解してもらうのはハードルが高く、時間がかかります。これらのことから内部で開発を行うケースが非常に多いです。


目に見えないタスクが思っていたよりも多い

DOORS 続きまして、アドバイザリー支援に関して伺っていきたいと思います。今回、ML開発やMLOpsの内製化に向けてブレインパッドの「統計解析講座」、「機械学習講座」、「ディープラーニング講座」を2018年12月に受講されています。どんな感触だったか教えてください。

【関連】MLOpsの現状とこれから~機械学習の継続的な精度向上と様々な課題~

大田氏 配下のメンバーたちに受講してもらいました。昨今、ツールがあればAI開発も意外とすぐに簡単にできるという世界観もありますが、アップデートをしようとする際に背景的な技術を知らずにはできないと考えています。そこでメンバーにはまず基本となる知識を身につけてほしいと思いました。ブレインパッドの講座は、まさにわたしが考える“基礎”知識が学べるものであり、非常に有意義なものだと評価しています。成果も実際の業務に現れました。

DOORS 研修後、ブレインパッドにその次のステップを相談されました。なぜブレインパッドとまた一緒にやろうと思ったのか、当時の状況と併せて教えていただけますか。

大田氏 内部で開発するためには、まだスキルセットが不足していました。しかし外部に委託するのは時間的にもコスト的にも課題があると感じていたのです。そこで内部要員のトップラインの知識を引き上げることに注力をして、まずは作れるようにしようと考えました。そのための支援先を探すにあたって、最初に相談するならブレインパッドしかないと決めていたのです。理由は、講座の内容がとても良かったと参加メンバーたちが評価していたことと、データ分析業界ではトップクラスの実績があったからです。

そこにタイミングよく澤村さんから電話があったので、基礎研修に続くスキルアップの取り組みについて相談したのです。

DOORS それを受けて、澤村さんはどういう提案をしたのでしょうか。

澤村 当時のブレインパッドの主な支援の方法は、データ分析官のリーダーとメンバーでプロジェクト体制を組んで、特定の課題を分析するというものでした。しかしこの形態ですと大がかりになり、コストがかかります。またお客様から見たら、特定課題以外のご相談をしにくい感じもあります。

また分析結果については、手法を含めて報告書にまとめて説明します。しかし説明を受けたお客様が本当に理解できているのか、内製化志向があるお客様が自分たちで手を動かせるようになったのかなどに関して、当時のわたしは疑問を感じていたのです。

プロトコーポレーション様の課題はできるだけコストをかけずに内製化したいということでした。そこで、両社で合意した工数内で、特に領域を定めずに協議しながら支援内容を定めていき、当社のアドバイザーとお客様との距離を近づけながら、お客様の課題解決を支援する――という“アドバイザリー支援”を提案させていただいたのです。お客様の課題解決に貢献しつつ、ブレインパッドの価値も発揮できる提案ができたのではないかと思っています。

DOORS アドバイザリー支援のご提案を、プロトコーポレーション様側はどのように捉えられたのでしょうか。

大田氏 「わたしたちのニーズにまさにマッチするのはこれだ!」と、率直に魅力を感じました。当時はアウトプットも決まっていませんでしたので、分析官にプロジェクトに張り付いてもらうという支援方法は、わたしたちのニーズとは合いません。また自社のデータは自分たちが一番把握できているので、作りたいものが決まったときにはすぐに開発のスタートを切れます。しかしメンバーとして外部の分析官を抱えていると説明する時間と理解してもらう時間が必要になります。また技術力が大きなポイントになりますが、技術力に関してブレインパッドは国内有数のAIの知見を有する企業だと思っていたので不安もありませんでした。もろもろトータルして考えるとわたしたちにとってベストな提案であり、これからが楽しみだと感じました。

DOORS 研修だけでは何が不足だったのですか。

大田氏 研修だけでも基礎知識はかなり身についたのは事実ですが、実際にデータを使って手を動かしてみようとすると、「この場合はどうしたらいいんだろう?」ということが次々と出てくるのです。目に見えないタスクが思っていたよりも多いので、実務の中で直接伝えてもらわないとわからないことだらけです。直接のスキルトランスファーが必要で、それにはアドバイザリー支援がピッタリだったということなのです。

会社によって支援のニーズはさまざまと思います。先にブレインパッドに手を動かしてもらってからやり方を教えてもらうほうがニーズに合う会社も多いでしょう。しかしわたしたちは、先に自分たちで手を動かして、わからないところを助けてもらう形の支援が欲しかったのです。

約2年半で、「何をしたらいいか」から性能劣化をモニタリングするところまで進化

DOORS プロジェクトの経緯を伺います。プロジェクトを(1)模索期(2021年1月~2021年3月)、(2)発展期(2021年4月~2022年3月)、(3)応用・運用期(2022年4月~)と分けたとすると、それぞれでどのようなことを行ったのでしょうか。

五十嵐氏 (1)、(2)が開発のスキルを上げていく段階、(3)が運用、特にMLOpsの知見を得ていく段階と大きく分かれます。

(1)模索期では、自然言語や音声のデータは持っていたのですが、それらの活用に関する知見がなく取り組みを開始できなかったので、まず自然言語関連のモデル開発に着手することにしました。基礎的なところを小俣さんからレクチャーしてもらい、その後実際の案件で自ら手を動かしながら、週1回フィードバックをもらう形で進めました。

小俣 最初の3カ月は「何をやりましょうか」といったところからのスタートでした。その時点で「画像解析は経験があるが、自然言語はさっぱり手付かず。しかし自然言語のデータが大量にあるので、自然言語を先にやりたい」とのことでした。そこでコンピューターで自然言語を扱うときの基本的な考え方をレクチャーするところから始まり、現在のデータを調べて整理するのが、(1)模索期の大部分でした。

DOORS では次の1年間、(2)発展期では何をされたのでしょうか。

五十嵐氏 自然言語のモデル開発に着手し、実際にサイトに組み込むところまで進めました。具体的には、エンドユーザー様からの問い合わせをMLでカテゴライズするというものです。

自然言語がひとまず終わったところで、音声データ解析のモデル開発に入りました。最初のテーマは、当社が運営するバイク情報メディア「グーバイク」に関連するバイクのエンジン音の分類です。取りあえず作ってみて、具体的なサービスにつながればよいというスタンスでした。

弊社のサービスでは販売店様が動画をアップロードすることができます。動画にはもちろんエンジン音が入っていますが、それ以外に人の声も入っていますし、雑音も入っています。それらを分類してエンジン音だけ抽出して、ユーザー様がエンジン音でバイクを検索できるようになったらおもしろいのではという発想です。

小俣 エンジン音か背景音かを自動で分類できないとサービスを始めることすらできません。そこで背景音、エンジン音にラベルをつけるところから着手しました。手作業で音を分類するのは大変ですので自動で分類したいですが、自動分類モデルを作るためには正解ラベルを作る必要がありますからね。

エンジン音に関連したサービスについて検討していた際に、エンジン音にこだわってバイクを選ぶユーザーがいらっしゃることを伺いました。エンジン音をさらに分類しようした際に、流石はプロトコーポレーション様だと感じたのはエンジン音にこだわりを持つ社員の方がいたことです。その方の知見とエンジン音のデータを比較して、分析精度の高さを検証できました。こうしてエンジン音を基準にバイクをレコメンドする下地ができました。

提供できていないサービスもいくつかあるのですが、(2)発展期では、手付かずだった自然言語と音声を分析できるだけのスキルが身についたと言っていいでしょう。

DOORS では、(3)応用・運用期についてお願いします。

五十嵐氏 運用が1つの大きな壁だと感じていました。MLの精度は時間の経過とともに劣化していくのですが、何も対策を打てていなかったからです。対策としてMLOpsという概念を知ったのですが、まったく知見がなかったので、まず小俣さんから概要をレクチャーしてもらいました。その後、いつものように実際の案件を通じて身につけていくことになります。

2つの案件がありました。1つは、「グーネットピット」という当社のサービスがあるのですが、そこでは整備工場様が書いた作業記録を載せる機能がありまして、その記録を要約するモデルを作りました。

小俣 人によっては短い記事の場合もありますが、中には何百文字、何千文字と書く人もいます。以前は文頭の100文字程度までを載せた一覧を作り、そこからリンク先の記事に飛ぶという運用をしていましたが、それだと最初の100文字に挨拶やお店の宣伝だけを書く人も出てきます。ユーザーの便宜を図るために、きちっとした要約文を載せることにしたのですが、人手で要約していては大変なのでMLモデルでやることにしたのです。

五十嵐氏 リリース前に小俣さんに協力してもらって、運用するにあたってどういう項目をモニタリングすれば精度の劣化が検知できるかを検討しました。

もう1つは、車の画像から車種を当てるモデルを開発する案件です。国産車・輸入車を含め様々な車種がありますが、それらを分類するモデルを作りました。気になった車を見つけたけれど、車種がわからないといったことがよくあると思います。その際に写真を撮っていれば、メーカーと車種が検索できたらおもしろいのではという発想で作りました。これについても、運用に際してどんなモニタリングをするのか相談に乗ってもらいました。

小俣 要約モデルにしても画像検索モデルにしても、2022年の4月、5月当時では、かなり新しい知見で作られていて、性能も思いのほか良いものができていました。ただ作ったのはいいですが、性能劣化への対策がわからず運用に至らなかったのです。

何が難しいかというと、性能が劣化しているかどうかを確かめるための正解データがないのです。そこで正解データがなくても特定の指標をモニタリングすることで性能劣化を検知する考え方をお伝えして、実際にどの指標をモニタリングするかを一緒に考えました。

要約モデルで言えば、要約文がおかしければモデルの精度が劣化していることになります。そこで要約文の質を数値化する指標を考えました。指標そのものについては専門的になりすぎるので割愛しますが、指標を見つけられたのでサービスもリリースできたというわけです。

実際の運用に際しては、指標を見られるダッシュボードを開発して、週に一度確認しています。ただ本当にその指標で良いかを確認しながら作ったので、ダッシュボードができあがったのはリリース直前になりました。リリース直後も、人手で要約文を作って比較することで指標の妥当性を確認したので、作業的にはかなり大変でした。このように戦々恐々としながら運用を開始したのですが、最終的には思った以上にうまく運んで安堵しました。

DOORS アドバイザリー支援がプロトコーポレーション様にフィットした理由として、今後何をしていこうかといったところから相談できる、目に見えないさまざまなハードルを解消するのに役立つなどがありました。それ以外にもありますか。

五十嵐氏 AI/ML関連の技術は、はやりすたりがけっこう早く、すぐに新しい技術が出てきます。知識のアップデートを図らなければなりません。ブレインパッドから定期的に最新知識をレクチャーしてもらうことで、アップデートできたことは非常に良かったと感じています。

DOORS さまざまな会社でアドバイザリー支援をしてきた小俣さんから見て、プロトコーポレーション様の強みや他社にないと感じたことがあったら教えてください。

小俣 作業を外部に依頼する発想があまりないですね。基本的な部分を自分たちでできないと継続できないことを強く実感されているのでしょう。ただどうしても必要なことは専門の会社にということで、ブレインパッドからもAI/MLに関する最新の知見をお伝えしてきましたが、反応がとても早いのです。

支援を始めた頃は、コンピューターやAIの基礎はできていましたが、どうやって業務に使えばよいかわからないというレベルでした。それが今は業務で使いこなしています。ただ実際に業務で使うとなると、これまで述べてきた運用する際の難しさがあります。そこで対応するための考え方や意識すべきポイントなどについてアドバイスをするわけですが、それだけで実際に運用できているのはすばらしいことだと思います。

顧客体験をITで実現するという発想が強いことのメリット

DOORS ITソリューション4部というのは、IT部門の中にAI/MLを担当しているチームがあり、いわゆるDMO(Data Management Office)とは違うという捉え方でよいのでしょうか。

大田氏 そうですね。AIや分析に特化している部門ではありません。

DOORS データ分析やAIは、ITの一分野と捉えているということでしょうか。

大田氏 ITの1つとして捉えながらも、重点注力分野だという考えが基本にあります。冒頭で「顧客体験の向上に関する業務を担う」と自己紹介しましたが、AI開発のみならず、プロモーションなども担っています。

DOORS 良しあしの話ではないのですが、ITに専門特化したIT部門とは何か決定的な違いがあると感じます。

小俣 顧客体験をITで実現するという発想が非常に強いので、この機能はお客様の何に役に立つのですかという問いかけをよくいただきます。システムとして良くなるという話とお客様にとって良くなるという両方の話ができるということです。そのおかげで、「ここをこう変えてもお客様には影響ないから後回しでかまいませんよね」といった話が通じます。あるいは逆に、「こんな風にするとお客様に対して良くない」といったことに対してはシビアな反応が返ってきます。

IT部門がコンピューターシステムだけに専門特化していると、こういった話はまず通じないのです。「お客様は気にしないかもしれないが、性能が落ちるからだめだ」といったことになりがちですが、プロトコーポレーション様ではそのような本末転倒な議論になることはありません。逆にお客様に影響ある部分にはとても厳しい。こういうプロトコーポレーション様のスタンスが、アドバイザリー支援がうまくいった本当の理由ではないかという気がします。

大田氏 わたしたちの世代だと、IT部門の人間でも月1回ないし半年に1回はクライアント様やユーザー様の声を直接聞く機会をしっかりと設けていました。現在ではコロナ禍等もあって機会が減りましたが、それでも経営層や上司からクライアント様やユーザー様の声をしっかり聞いた上での意見かという質問をよくされます。それに対して答えられないとその企画はだめだという風土があります。そうした日々のやり取りの中で、顧客重視の考え方が社員全体にたたき込まれているのでしょう。

DOORS “顧客に近いからこそ内製する”というお話が先ほどありました。顧客との距離を大切にされる組織風土があって、顧客の役に立つかどうかが意思決定の基準になっていて、実際にそれで組織が回っているところがプロトコーポレーション様の強みではないかと思います。

大田氏 ありがとうございます。

範囲を企画に広げていくと、また別の支援が必要になる

DOORS 最後の質問になります。今後プロトコーポレーション様が進めていきたいAI/MLサービスや今後のパートナーリングのあり方などをお聞かせください。

大田氏 現時点では、一部のモデルしかMLOpsの運用に乗っていないのですが、他のモデルもしっかり運用に載せていきたいと考えています。

関連して、開発の質を上げていきたい。2、3年前までは開発の数をけっこう求めていたのですが、現時点ではビジネスインパクトをしっかり出せるものを開発したいと考えています。したがって企画が非常に大切になると考えていまして、今後は運用に関してはもちろん、企画に関する部分もブレインパッドに支援してもらえたらと思っています。

DOORS 今の話を受けて、ブレインパッドはどのような支援を考えていますか。

小俣 まだできていないことがかなりあります。特に運用に関しては、本当に細かいところまでプロトコーポレーション様でできるようにと徐々に進めている段階です。プロトコーポレーション様から具体的な運用方法の案が出て、わたしがそれに対して細かいアドバイスをするようになったら、次のステップに入ったと言えると思っています。

企画に関して言えば、MLだと性能劣化や確率的な振る舞いという従来のシステムではあまり考えなくてよかった要素を踏まえた上でビジネスインパクトを計算しないといけません。このようなMLの企画ならではの話を今後できるようになるといいなと考えています。

DOORS 差し支えない範囲でよいのですが、今後こういうサービスをやっていきたいという具体的なテーマはあるのですか?

大田氏 当社は中古車やバイク、整備工場などのさまざまなサービスを持っています。ITソリューション4部はどのサービスにも横断的に関わっていく立場ですので、事業方針に沿った形で考えることが基本です。具体的なサービスも事業部から出てくるものがベースとなり、われわれはどちらかと言えばテックベースでより良い提案がどんどんできるようになりたいと思っています。

DOORS 担当営業として、澤村さんから今後提案していきたいテーマなどはありますか。

澤村 先ほど企画という言葉が出てきました。そうなると、小俣がしているご支援とはまた違う、ビジネスサイドでより価値を出すためのご支援も必要になってきます。それにもブレインパッドは対応できますし、その際にも大がかりに人を貼り付ける形ではなく、アドバイザリー支援と同様のご提案ができるのではないかと考えているところです。

DOORS 昨今、生成AIやLLMが注目されています。それらの捉え方や活用方針があれば聞かせていただけますか。

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大田氏 これだけ話題になっているので、検討対象にはもちろん入ってはいますが、直近で活用する具体案はまだありません。倫理感に関する基準が必要で、現時点では基準が弱すぎるというのがわれわれの評価です。

自分たちでファインチューニングしていくのもまだ先のことだと思っていますが、実は五十嵐にはすでにいろいろと試してもらっています。経営層や現場が明日からLLMをやると言いだしたら、その瞬間にフルスロットルで踏める状態を作っておきたいからです。ただし、ゴーサインを出す判断基準はあくまでクライアント様やユーザー様の役に立つかであり、LLMを使うために無理して案件を作るという判断はあり得ません。

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DOORS 最後に大田様からまとめの言葉をいただきたいと思います。

大田氏 2年半前は「出だしから苦労ばかりだな」と感じていたのですが、ブレインパッドにわれわれにフィットするカスタマイズをしてもらい、当初想定していたよりもかなり広い範囲の相談ができるようになりました。今や切っても切れない関係になったと思っています。特に最新技術のキャッチアップに関しては、AIに一番強い会社だと評価していますので、今後もさまざまな知見をいただきたいと思っております。Win-Winの関係を今後も築いていきたいというのが、わたしとしての今後の展望であり、ブレインパッドへの期待でもあります。

DOORS 今日はみなさん、お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。



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2004年の創業以来、「データ活用を通じて持続可能な未来をつくる」をミッションに掲げ、データの可能性をまっすぐに信じてきたブレインパッドは、データ活用を核としたDX実践経験により、あらゆる社会課題や業界、企業の課題解決に貢献してきました。 そのため、「DXの核心はデータ活用」にあり、日々蓄積されるデータをうまく活用し、データドリブン経営に舵を切ることであると私達は考えています。

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