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【レポート】生成AIで変わる働き方を議論する「Work Wonders Conference」SESSION1:生成AIで経営が変わる「未来の組織と経営」

公開日
2024.01.19
更新日
2024.02.20

2023年11月22日、ブレインパッドはインクルージョン・ジャパンと共同で、生成AIのビジネス活用や働き方の未来を議論する「Work Wonders Conference」を開催した。会場には満員の300人を超える来場者が詰めかけ、生成AIを活かす組織や業務プロセスの変革についての熱い議論に耳を傾けた。本レポートでは3部構成で行われた議論のエッセンスを、DOORS編集部が各部にわたって要約し、ビジネスにおける生成AIの可能性に迫る。

Session 1はインクルージョン・ジャパン取締役の吉沢康弘氏と、ブレインパッドCEOの関口朋宏が登壇。上場企業184社と2,724名を対象に生成AIのビジネス利用状況に関する独自のアンケート調査を実施、この結果を踏まえ「未来の組織と経営」についてのトークが展開された。

【本イベントのレポート記事】

シナリオ・プランニングが示した4つの未来

冒頭に、長期的な戦略を立案する際に用いられる「シナリオ・プランニング」という手法を用いて「生成AIを導入することによってどのような未来が起こりうるか」を予測した4つのシナリオが紹介された。

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【A】社員の誰もがAIを使いこなす「皆AI活用ボトムアップ」経営

老舗企業が生成AIを活用し情報要約や資料作成などで業務を効率化、雑務が減り社員は取引先や社員間の関係構築などに集中できるようになった。既存社員の雇用を最優先として外注や新入社員は減ったが、討議や合意形成で人の役割は残った。

【B】少数精鋭のAI活用特命組織による「フラッグシップ」経営

大手小売企業は「出島組織」を編成。彼らが中心となって、生成AI技術を活用して業務の大幅な刷新を推進。一方で経営陣は社員の雇用維持を重視し、本流組織は維持。2030年に出島組織が本流組織を上回り業界トップの地位を築いた。

【C】経営者の意思をAIで加速する「トップダウン完全遂行」経営

製造業界大手のオーナー・Tは生成AIを用いて自らの意思をコピー。Tの意思や思考が細部にまで行き届くシステムを構築した。これによりPDCAのサイクルが加速し競合他社に先駆けたが、Tの感性で推進した新製品投入が失敗。多様な人間の判断と効率化の挟間で頭を悩ませることに…。

【D】経営者自らをAIに差し替える「超客観マネジメント」経営

大手商社の若手経営者・Sは生成AIに経営判断や意思決定を委譲。従来業務に関わるスタッフは極限まで減少、経営は生成AIのアイデアに基づき現場でビジネスをリードする役割に。だが生成AIの判断で挑戦した事業が大損失を生む。批判を受けながらもSはAIによる経営を続行。数年後に生成AIが予測した市場が急成長、Sの商社は業界トップに返り咲いた。

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このように4つのシナリオが提示されると「どのシナリオが実現するか」に関心が向きがちだが、いずれのシナリオにも優劣はなく「どれも実現しうる」と吉沢氏は説明する。

「重要な分岐が起きた場合にどんな事象が起こるのかを想定しておくと、何が起きても新しい成果に結びつけることができます。2019年に某鉄道会社が『2040年の駅』をテーマにシナリオ・プランニングで未来予測をしていました。その中でビジネスパーソンがオフィスに出社しなくなるシナリオが挙げられ『もしそうなったら鉄道会社は何をすべきか』という議論をしていたのです。奇しくも翌年に新型コロナウィルスでシナリオは実現してしまったのですが、その鉄道会社は対策の初動が的確でかつものすごく速かったのです」(吉沢氏)


生成AIは社員を支援するのか、代替するのか

議論は4つのシナリオの深掘りに進んでいく。各シナリオは「生成AIが社員を支援するのか/代替するのか」(縦軸)「社員の大半が生成AIを利用するのか/一部社員が使い倒すのか」(横軸)の4象限に配置された。

【A】は生成AIが社員の業務をサポートし、負担軽減・効率化が進む最もマイルドなシナリオだ(業務のやり方や進め方自体は変わらない)。おそらく現状で最も多くの職場にあてはまるパターンだろう。

【B】は社内から選抜された特命チームが生成AIを使い倒し、既存業務とは異なる新しい業務を作っていく。出島で行われるので従来業務の部門部署には影響せず、人も切らない。これもマイルドなシナリオだ。

【C】は優れた経営者の知識や判断をAIに移植することで「経営者AI」(クローン)を作るというもの。既存業務の判断・意思決定をしている経営者の判断パターンをクローン・代替するというニュアンス。知識や経験を基に経営者に提案・進言したり、経営者の意思を業務に落とし込んで現場に伝える管理職はいらなくなる。

【D】は経営判断のすべてを生成AIに任せ「AI経営者」としようというもの。新規事業への挑戦や、不確実性への判断にAIの知見を取り込むというニュアンス。「経営とは何であるか/経営者は何のためにいるのかの本質が問われる。企業経営者は絶対に考えるべきイチ押しのシナリオです」(関口氏)

ここで抑えておきたいのは「今すぐという観点で考えず、視点を5~10年先に置いてみる」ことだと吉沢氏は提案する。今の延長線上で考えればCやDは極端過ぎるが、5~10年先で考えればどのシナリオも議論の俎上に載り得る。

生成AIと経営者の対話: 6人の経営者の洞察

その上で、日本を代表する経営者・経営陣6名に4つのシナリオを示しての匿名インタビューが紹介された。

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以下、経営者インタビューコメント(要約・抜粋)

●この20年はスマホが世界を牽引した。次の10年の成長は生成AIが牽引する。

「20年ではなく10年なのが興味深い。10年経った後に何が起こるかを考えるのはもっと面白い」(関口氏)

「この2-3年経済が停滞しているのはスマホがサチった(飽和した)からという説がある。それに代わるものが数年出なかったが生成AIがきたので一気にマーケットが伸びるのでは」(吉沢氏)

●AIで作ったものの価値が低いのは今だけ。あっという間に評価は逆転する。

「昔は時間誤差が少ないからスイス製の手巻式腕時計に価値があったがクオーツが出てその優位性は奪われた。初期には『クオーツなんか』という偏見もあったがすぐに信頼され普及した。それと同じことがこれから生成AIで起こる」(吉沢氏)

「目分量経営」がなくなることで経営のレベルは絶対に上がる。

「目分量経営をしている人に限って、データドリブン経営が必要だと言う。末端のデータが取れていればデータドリブン経営などすぐにも実行可能なはずなのに。これから数字を見る能力は経営者の必須要件になる」(関口氏)

●想像の範囲では「仕事がなくなるかも」となるが、何とかなるから心配するな。

「経営者にインタビューしても『人が余っている』という話は聞かない。足りないのをいかにするかで生成AIが使われる。既存業務が効率化したら人員は新規事業に投入される。新規事業がなければ企業は成長しないのだから、生成AIで仕事が失われることにはならないというのは本当だと思う」(関口氏)

●過去問を解いてパターン認知することで回答を出せるようになった人たちは生成AIに対するリスキリングがキツそうだ。

「これまで勤勉さで人生を勝ち抜いてきた人ほど、生成AIを使いたがらないと聞いた。パターン認識で回答を出せるようになることがその人の勝ち筋なのに、生成AIがそれを難なくやってしまうから」(吉沢氏)

「これは役員しか見られない」とやった瞬間に、中途半端なAIになるだろう。

「情報の非対称性こそが権力の裏付けなので無意識に『この話は役員まで』とするのだが、生成AIを使うなら読み込ませるデータを限定するのは精度を落とすし、アウトプットを役員しか見られないのも意味がない。逃げ口上に使われる『コンプライアンス的に…』には決まって具体的な根拠がない」(吉沢氏)

経営陣そのものが昔から「自分の身を守る」のに必死になっている。

「経営者はリスクを取るのが役目なのに、既存事業の報告を受けることに多くの時間を費やしている人が多い。既存事業が回っているなら生成AIに任せ、経営者本人は新規事業にリソースを全振りしたほうがいい」(関口氏)

●経験を頼りにした経営陣の年功序列は壊れる。

「生成AIによって経験は年長者の特権ではなくなる。ポンコツな役員ほど『経営はAIでは代替えできない』というがそんなことはないだろう」(吉沢氏)

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経営者・経営陣から聞かれたコメントは、そのほとんどがマトリクスの下側「社員を代替できるように生成AI導入を進めた場合のシナリオ」に集中していた。

「私は経営者と実名でのインタビューも多くしていますが、その場合には既存業務の効率化や特命チームによる生成AI導入(マトリクスの上側)の話題に終始することがほとんどです。ところがこのように匿名だと『代替』の話で盛り上がるのが興味深い」(吉沢氏)

生成AIで仕事が代替できるという話になると、すぐに「人を減らすのか、リストラがしたいのか」というセンシティヴな話題に発展しがちだ。しかし、経営者の本当の関心のありかを深掘りしていくと「生成AIでどんな新しい未来が開けるか、どんなビジネスが生まれ、企業を成長させていけるか」にあることがわかった。

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