【後編】ユナイテッドアローズが考える「データの価値」 ~BrainPad DX Conference 2022~テーマ別 企業DX対談

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データ活用の可能性

関口 藤原さんのお話から、ブランドが競争の源泉だと感じるため、これからのユナイテッドアローズも楽しみだなと思っています。SPAという業界では、生産体制を持っていない中でもパートナーたちとデータをつなぐ場合、企業間を超えなければならない部分もありますよね。

このあたりは難しく、さまざまな業界で苦労されていることをブレインパッドでも把握しています。何か秘策はありますか?

藤原氏 効率化されていない点は、みんな思っていることです。とはいえ、町工場みたいなところもあるため、データをつなぐところを100%やるのはなかなかハードルが高いといえます。そのため、まず第一歩が重要です。

我々が作るかどうかは別として、ある大きな生産管理の仕組みを入れたら、パートナーまでそのシステムを使っていただくといった考え方が大切だと思います。

関口 最近は、バーティカルSaaSが増えてきていますよね。アパレルのサプライチェーン向けバーティカルSaaSがあると少し状況は変わってきますか?

藤原氏 実際出始めだからこそ、お取引先様に「この仕組みを使ってもらえますか」というお願いをしやすいため、お互いにスピーディーにできますよね。

かつ、「コストも下がります」という話があれば、お互いWin-Winで使って貰えるでしょう。ただ、ユナイテッドアローズからのお願いに対して、他社からお願いするプラットフォームが違っていれば、2つやらないといけないことが増えるため、効率化できなくなります。だから、どうしてもこの業界全体でどうやって生産するかといった仕組みを検討することが非常に重要です。

関口 そういえば、ユナイテッドアローズさんは、最近、ゴルフブランドを立ち上げてますよね。ゴルフ業界でもアパレルに関しては、インスタなども相当使われていますよね。「SNSの活用」などは今後どのように活用していく予定でしょうか?

ユナイテッドアローズゴルフ

藤原氏 レーベルとかいわゆるブランドができたら、SNSのそれぞれのアカウントを作ります。認知が取れている会社であるためレーベルを出し、インスタアカウントを開設するとババっとフォロワーが増えるわけです。ソーシャルメディアのやり方は2つだと仮定しています。

1つは自分たちが何を発信するかという点です。

もう1つは、UGC(※)をどうやって読むか、どうやって発話してもらうかという点です。そして、「お客様に良さを体験してもらう場を作る」といった考え方がより大切だなと思っています。

※マスメディアのようにプロがコンテンツを作るメディアの対比として使われ、代表例として食べログなどのクチコミサイトなどが挙げられる。

関口 SNSの活用は重要ですね。近藤さん、SNS活用は大事だと言われていますが、実際どう感じますか?

近藤 「分析の見方がわからない」というマーケターから相談いただきますね。データで示唆を出す前のタイミングで「読み解き方」がわからないっていうお話をされてます。

ソーシャルに限らずオウンドメディアのデータも含めて、「データ活用のプロセス」で悩まれている方が多いという印象です。マーケターのコミュニケーションのアプローチとしてMA系ツールが増え、多用的になったものの、自分のやりたいことの軸を作るのが難しくなりました。

また、やり方として新たな取り組みをしなければならない時に、「探索の仕方がわからない」「他社さんがやっている内容を模倣する」となってしまうと、仮説が曖昧な為、そこでつくられる施策はどの会社からでも同様の形に見えてしまいます。そのため、消費者からしてみると、「なんだか微妙だ」という感想が多くなるという印象です。

関口 データ分析を行う中で気付いたのは、藤原さんが先ほどから話していた「仮説」が実は出せないんじゃないかと。ブレインパッドとしても仮説をもたれている方とデータ分析を一緒に行うことが効率的で、意味があるなと感じます。

仮説を作るのが上手な人とできない人には、どこに差が出るのでしょうか?

藤原氏 その時に思いつかないだけで、私は「みんな仮説を持っている」と思います。仮説を立てましょうというミーティングでは案がなかったとしても、食事しながら話すと意見は出てきます。つまり、日頃の業務で話している中で少しの種が本当は出ているものの、それを拾っていないということですね。

関口 仮説を出そうとなると、よりいいことを言おうとするのはわかります。私達が一般ユーザーとして普通に思う「これは買わないね、行かないよね、これだったら欲しい」という感情の動きを大事にしようねってことですね。

藤原氏 実は私もそういうところに種が転がっていると思っています。性質として、職人っぽい人ほど持っていると予想しています。それぞれ意見は持っているとしても、出さなかったり、出す場所がなかったりするだけです。また、「それをやる場所がないし、吸い上げてくれる人がいない」ため、マーケターが現場に行くというのもそういうところを把握するためですね。

現場に行き、お客様の動きをウォッチすることも大切です。例えば、「Aさんという本職の示唆と全然違う業務のBさんの示唆を得て、AとBという示唆があるから、つまりCだよね」っていう解釈ができるかどうかという点が大事だと思っています。

チーム作り、人材育成

関口 ここから少し人の話や組織の話に触れていきます。今後どういうチームを作っていくのかといったことをお聞きしてもよろしいでしょうか?

藤原氏 今はスピードが重要です。2025年問題があるため、もうベンダーさえも受け入れていただけない状況が来るからです。そのため、我々も早くチームを作らなければならないため、専門のチームをまず作る予定です。

業務とお客様をよく知っている社内の人は、どのフェーズで混ぜていくかが重要ですよね。また、デジタル専門の人しかできない領域に関しては、育てるよりも外部に頼ることが大切だと思っています。そこに、社内人材も混ぜていき、デジタル人材をさらに多く作っていくようにする予定です。人員は絶賛募集中ですね。

関口 人材育成という観点からはどうでしょうか?社内にいる場合でも、デジタルの素養がある人材もいると思います。

藤原氏 それもありますね。元々の素養やスキルがある人としては、そのため、タレントマネジメントシステムをもとに、今人事と話をしています。それから、意思がある人ですね。そういう人たちを引っ張り上げるのが重要かなと思っています。やりたいことを問う意思がちゃんと合体している人は成長が早いと思いますね。

関口 今日見ていらっしゃる方々も今の話に共感すると思います。会社の中に眠っていても、引っ張り上げる仕組みと見つける仕組みがないという話です。タレントマネジメントする人事もデータ化して拾い上げることをどんどん進めていかなければならないですね。

藤原氏 それも1つのデジタル化だと思います。従業員のデータベースを作れば、デジタル目線だけじゃなく、経営企画だったり、財務経理だったりでも有用です。

関口 自分のやりたいこととやっている仕事が一致すると会社のエンゲージメントも高くなるのでいい施策になりますね。今だと、どういう人材やスキルが皆さんの中で特に必要だと感じていますか?

藤原氏 全体をちゃんと俯瞰し、推進してくれるデータマネジメントができるプロジェクトマネージャーがいるかどうかは大切ですね。

関口 ブレインパッドとしてもお客様とお話をしていて、その話になることが多くなってきました。プロジェクトマネージャーは「作り上げるものが結局お客さまにどういう体験やサービスを生むものなのかをデザインするセンスがないと、いいものができない」ですよね。そのため、現場やビジネスをちゃんとわかっている人をもう育てるしかないという感じになるため、今までのイメージとはちょっと違うかもしれません。

藤原氏 だからこそ、プロジェクトマネージャーの枠だけでなく、「お客様のためにどういうことができるから、このプロジェクトはどうやって推進しなければいけない」と考えられる人が重要ですね。

CDOとしてのコミット

関口 ここからは、プロのマーケティング、ITも含めて理解いただいている方に入ってもらいたいと困っている企業へ向けて、藤原さんが選ぶ会社のこだわりをお聞きしたいと思います。

藤原氏 「圧倒的な権限」ですね。ただし、権限をもらうことに対する責任もあるため、駄目だったらクビとなる可能性もあります。しっかり動けるビジョンを作り、共感してもらえば応援してもらえるかどうかは、権限の有無だからです。私の立場だけでなく、レイヤー、マネジメントクラスやプレーヤークラスでもプロ人材は、自由に動ける環境をどうやって作るかということが非常に重要です。

よくあるのは、「既存の人のポジションがなくなるのでは?」と思われないような、環境作りや権限の話になってくる点も含めて、それぞれのポジションにあった権限をどうやってしっかり渡すのかという点が大切です。

関口 日本の経済を盛り上げていきたい場合、ベンチャーなどがどんどん元気になっていくことも重要と感じています。一方で、日本を代表する大きな会社が進化することも重要です。ただ、最近は優秀な人たちがベンチャーだけに行ってしまっているイメージです。マーケティング業界はどうなのでしょうか?

近藤 確かに今、スタートアップも元気で、外資も積極的に採用している関係から優秀な人は多いですね。

関口 私は少しもったいないような気がしています。権限の話に関連してでも構わないですが、プロを取りたいという方々に対して何かアドバイスはありますか?

藤原氏 例えば、あるAさんがリストにいるとして、「この人が仮に来てもいいですよとなったときに、これぐらいの権限渡すとどれぐらい動けますか?」という確認と合意が大切だと思います。

関口 大きな会社になると、人間関係が重要で、プロパーで長く勤められている方とうまくいかなかったりすることもありますよね。外からって大変ではないでしょうか?

藤原氏 大変です。しかし、会社としてもある程度のコストをかけて取っているため、「その人がすぐやめたらもったいないでしょう」という話かと。ちゃんと働ける環境を渡して結果を出してもらうことが上の人の責任だと思います。

関口 藤原さんも部下を応援する環境を作るという意識ですが、経営の方々もそのポジションの人をどう応援するかは大切ですよね。その中で決めたものに対して僕はこういう形で応援するからねという言葉は結構大事かなと。

藤原氏 だからこそ、環境を与えて、責任もその分ちゃんと与えることが大切になってきます。僕が入る前も経営の方たちも結果にコミットしているし、「ぜひこういう形で進めたいというビジョン」もありました。そのため、環境がないと何をしたら良いか、どこを目指せば良いか分からないと感じますね。

関口 本当にそういう経営のコミットだと、必ずDXの話になります。プロの人材を引き入れて、彼らのパフォーマンスを上げるための環境をとにかく作ってあげることと、ビジョンを明示できるかどうかが大切ですよね。

藤原氏 ユナイテッドアローズは基本的に「経営戦略で全社員のベース戦略としてDXを提供する」としています。代表の方から店頭のスタッフまで含めて、ずっと言い続けていることであるため、その意味ではやりやすいと感じています。

パートナー選びの視点

関口 プロも含めて、社内にマーケティングに強い人材を作っていかなければならないという点は意識しなければなりません。しかし、スピードを考えるとパートナーさんともつき合っていかなければならないかと。藤原さんの目線では、どういう方々をパートナーとして選んでいきたいか、外の方たちに求めるものはありますか?

藤原氏 マーケティングツールは、基本的にゼロにしたい派です。なぜなら、顧客ブランドを作りロイヤリティさえ上がれば本当はいらないからです。しかし、「必要なマーケティングツールを入れていかなければならない」となった場合、ベンダーに求めることは、自社の中のものを飛び越えて、パートナーシップを取りたいという意思があるかどうかという点です。

また、その行動を取れるかどうかだと思いますね。反対に良くないのは、丸投げの御用聞きです。発注側も良くないし、ベンダーも丸投げ御用聞きでは、ナレッジも何も貯まらないため、結局最後にはコストだけで比べられることになります。そのため、大切なのは、我々の先にいるエンドユーザーさん、お客様を常に見ているかどうかです。

関口 パートナーとの関係性作りは大きなテーマであるものの、どうしても日本は丸投げしやすい体質でそれに慣れていますよね。そのあり方も変わらなければならない、そうでなければ、「皆さんを本当の意味でお助けすることはできない」ので、重要な意見ですね。

WRITER執筆者プロフィール

株式会社ブレインパッド

DOORS編集部

ブレインパッドのマーケティング本部が中心となり、主にDXにまつわるティップス記事を執筆。また、ビジネス総合誌で実績十分のライター、AI、ディープラーニングへの知見が深いライターなど、外部クリエイターの協力も得て、様々な記事を制作中。

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