マーケターが「本来の仕事」をするためのCDPを目指して

DWHやDMPの延長としてCDPを捉えると成果が出ない

プロダクトビジネス本部プロダクトデザイン部の宗岡里樹です。

同部は、プロダクトの管理およびデザインを行う部署です。マーケティング活動の効率化・成果向上を目的としたサービスをワンストップで提供するRtoasterを主に担当しています。

DXという言葉が普及してきた今、DXに必須なプラットフォームとして、「データ基盤」が注目されるようになりました。そんな流れの中で、CDP(Customer Data Platform)もデータを統合するツールとして、DXに関連して話題に上ることが多くなりました。

ただ「データ基盤」にも様々な種類があり、それぞれ目的が異なります。そのあたりがしっかり理解されていれば問題はないのですが、実際にお客様と話をしていると混乱・混同が見られるようです。

CDPとは何か、その目的は何かを理解しないまま導入を推進してしまうと、結果として、既にあるDWH(データウェアハウス)やDMP(Data Management Platform)の延長としてCDPを使ってしまうことになりがちです。そうなるとCDP本来の効能が発揮されず、結局効果がなかったということも少なくありません。

そこで本記事では、まずデータ基盤とは何かを説明し、これまでのDWHやDMPと比較することでCDPの目的を明らかにし、最後にCDPを使ったデータ活用の方法を紹介します。これによって、読者に「本当の意味でのCDPによるデータ活用」のイメージを持ってもらえるのではないかと考えています。

いわゆる”データ基盤”とは何か

データ基盤にもいくつかの種類があると述べましたが、データ分析の基盤として主なものはデータレイク、DWH、データマートの3つ(*1)ではないでしょうか。これらについてはご存知の方も多いと思いますが、ごく簡単におさらいしておきましょう。

データレイクは、購買ログ、ID、POSデータなどを、いわゆる生データ(ローデータ)のまま保管しているものです。これらはデータ分析をする人たちが分析する際に都度に必要とするデータで、Amazon S3やGoogle Cloud Storage、Azure Blob Storageなど、大容量データの保存に適したオブジェクトストレージに保管されることがほとんどです。

DWHは、統合された全社データを、会社から見て価値のある角度で切り取ってまとめたものです。具体的には、顧客、商品、受注などがその「角度」となります。主に業務や経営の「可視化」に使われるものと考えてよいでしょう。

データマートは、DWHの中から、部門別、商品別、地域別など可視化の目的に合わせて抽出されたデータです。部門での分析ではデータマートが使用されることが普通です。

CDPは、これらのデータ基盤とは使用目的が異なります。顧客を軸としてデータを理解するために作られているデータ基盤(プラットフォーム)です。

「CDPとDWH」の違いがわからない

データ基盤やデータ構造などに詳しい人には意外かもしれませんが、一般的にはCDPとDWHの違いがわからないという人が多いようです。

DWHは、専門的な用語で言えば「サブジェクト指向」という考え方で作られています。サブジェクトとは前述した「会社から見て価値のある角度」のことです。データの構造で言えば、商品サブジェクトで切り取られたデータは、商品に関するデータが1行(レコード)ごとに並んでいる形になります。可視化するときは、可視化のテーマに応じてサブジェクトを選択して可視化することになります。

CDPは、顧客というサブジェクトに特化したDWH(の一種)と考えてもよいかもしれません(ただしDWHの顧客データとは項目にかなり違いがあります)。ただDWHが全社データを統合しているという性質上、情報システム部門が構築・管理することが普通であるのに対して、CDPは顧客を軸としたデータ理解が必要になるユーザー部門(マーケティング、営業、経営企画など)が自由に使うことができます。

ユーザー部門がDWHのデータを使って分析したいときは、情報システム部門に依頼して、専用のデータマートを作成してもらうことになります。これはユーザー部門から見ればタイムラグが発生することになりますし、情報システム部門にとっては工数が発生することになります。

顧客を軸とした分析は、見たい軸を変えながら、迅速かつ頻繁に実施することが普通です。したがって、できればユーザー部門で自由に使えるデータ基盤が欲しいところです。そのニーズに応えたのがCDPということなのです。

「CDPとDMP」の違いがわからない

顧客を軸としたデータ理解で活用されるデータ基盤はCDPだけではありません。DMP(Data Management Platform)もそのようなデータ基盤です。

CDPとDMPの違いは、個人を特定できるかどうかです。

DMPでは個人を特定することができませんでした。そこでユーザーの塊を群(クラスタ)として捉えた施策を打つのが一般的でした。代表的な施策がA/Bテストです。あるクラスタを抽出して、そのうち半分にAという施策、残り半分にBという施策をそれぞれ実施して、結果が良いほうを採用するものです。

A/Bテストでもかなりの結果向上が見られたのですが、個人単位で見れば採用されなかった施策のほうが効果がある人もいるはずです。CDPでは個人が特定可能になるので、もっと「高度なパーソナライズ」ができ、高い確率で効果のある施策が採れるようになります。

個人の特定が可能になるということは、今までバラバラに接客していた店舗、Web、スマホアプリを統合できるということでもあります。これは従来のデータ基盤ではなかなか難しいと言われていたオムニチャネル、O2O(Online to Offline)、OMO(Online Merges with Offline)などが比較的容易になるということです。

ただしCDPが登場したことで、DMPが不要になったわけではありません。まだ「顧客」登録されていないユーザーに対してユーザー登録・購買・契約などに導いていく「Web接客ツール」と呼ばれるマーケティングの効率化ツールがあります。顧客登録されていない段階では個人が特定されていませんから、こちらでDMPが使われることがあります。

CDPを使った本当のデータ活用

CDPによる「高度なパーソナライズ」を、もう少し詳しく見ていきましょう。現在のマーケティングでは、優良な顧客体験(CX)を提供することが重視されています。高度なパーソナライズとは、それぞれの個人にとって最適なCXを提供することにほかなりません。

すでに述べた通り、従来のクラスタ単位でのマーケティングは、似たような人の集合に対して施策を実施するため、個人単位で見れば、必ずしもその施策が効果を発揮するわけではありませんでした。例えば施策が響かなくても、たまたま購入予定だったり、友人から紹介されたりして購入した人もいます。逆に施策が響いても、今は必要がなかったり、施策の直前に購入していたりというケースもあります。

例えば、DMPを活用すれば、「直近3日以内にゴルフの記事を5回以上見た人たち」というクラスタを抽出し、「A.新作ゴルフクラブ」と「B.飛距離が伸びるゴルフクラブ」をそれぞれ勧める施策を実施するようなことができます。これでBのほうが効果があるとわかれば、今後もこのクラスタには施策Bを打ち続けることになります(もちろん売れなくなれば見直しますが)。

しかしこのクラスタには、新作が欲しかった人ももちろん含まれますし、テレビでゴルフを見るのは好きだが自分ではやらないという人も含まれます(当然クラブは買いません)。上司に誘われたのでこれから始めようと考えている人もいます。このような人は、新作とか飛距離などにはまだ興味がないかもしれません。

つまり施策単位でA/Bテストをして評価しても、個人単位ではどういう人なのか、施策に対してどのような感じ方をしたのかなどが捨象されてしまい、真の意味でのパーソナライズは実現できません。

またDMPでは、閲覧・行動から年齢・性別などを推測して広告を打つ場合があります。「30代・女性」などのクラスタに割り振られる場合があります。しかし、これらはあくまでも推定であるため、閲覧内容が変わると2週間後には同一人物も「60代・男性」のクラスタに振られてしまう場合があります。DMPでは、このような不安定な側面もありました。

CDPを活用すれば顧客単位で、属性や行動、購買金額、購買点数、購買頻度、過去に実施した施策などを並べて見ることができます。それによって、その人が本当に欲しい顧客体験を提供するという真のパーソナライズを実現(※2)できるのです。

顧客の行動変容をフィードバックすることも可能なので、いつまでも同じ施策を続けるということもなくなります。MA(Marketing Automation)ツールなどと組み合わせて、そのタイミングで最適な施策を実行することもできます。また個人が特定されることで、カスタマージャーニー全体を横断した統一的な分析が可能になり、より深い顧客理解が可能になります。

ブレインパッドが提供するCDP製品「Rtoaster insight+」。Webやアプリ(action+)からinsight+へのフィードバックの矢印があることに注目したい。これにより真のカスタマイズによる最適施策の実現が可能になる。

まずは繋がるデータだけでよい

そもそも論になりますが、マーケターの仕事とは何でしょうか。それは「顧客を理解し、顧客軸で自社を理解する」ことです。これができてはじめて、施策を実施すべき相手としなくてよい相手が明確になり、効果的・効率的なマーケティングが可能になるわけです。

マーケターは、DWHでは情報システム部門に依頼しなければ、またDMPではクラスタレベルでしか「自分の仕事」ができませんでした。それがCDPの登場で、自分の手で、自分の好きなときに、顧客個人単位のレベルで自分の仕事ができるようになったのです。

またRtoasterに言及するとaction+で「ユーザー視点」を獲得することができていましたが、insight+でさらに施策がどれだけ顧客に影響を与えたかという「企業視点」も得られるようになりました。この2つの視点を両輪として回すことで、さらに精度の高い施策評価と対策が可能になったと言えます。

とはいえ、顧客個人単位に落とし込めるデータは、取り組みはじめはごくわずかであることも申し添えておく必要があるでしょう。名寄せや企業(グループ)レベルでの統合IDへの移行など、顧客データの個人化のためにすべき作業は多々あります。

それであきらめるのではなく、最初は個人単位に繋げられるデータだけで構いませんので、CDPにインポートして、個人単位での属性・行動・KPIなどを見ることから始めればよいと考えます。本当の顧客理解や真のパーソナライズは、この小さな一歩から始まるのです。

参考

※1.「Data Lake, Data Mart, and Data Warehouse」の内容を参照
※2. 「5  Reasons Why a CDP is Core to a Retailer’s CX Strategy in the New Normal」の”Personalization at Scale” を参照

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DXのデータ活用基盤としての3大クラウド-AWS、Azure、GCPの比較
https://www.brainpad.co.jp/doors/news_trend/dx_3big_clouds/

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WRITER執筆者プロフィール

株式会社ブレインパッド

プロダクトビジネス本部
プロダクトデザイン部
宗岡 里樹

Web系の広告配信会社にて、バックエンドエンジニアを担当し、2018年にブレインパッド入社。プロダクトマネージャーとして、広告関連プロダクトのグロースに従事した後、Rtoaster insight+の立ち上げからグロースまで担当。現在はRtoaster全体の方針策定にも従事している。

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