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DX先進企業は何をやっている?戦略・デジタル技術・体制・人材のヒアリング調査から見る成功のカギ

公開日
2022.01.31
更新日
2024.02.17

DX推進を検討する際に、他社の事例を参考にすることも多いでしょう。企業のDX支援を積極的に進めてきた経済産業省や情報処理推進機構(IPA)も、先進的な企業を調査することで推進時の課題や成果などを取り組みに反映させようとしています。

今回は、その一環としてIPAによる『DX 先進企業へのヒアリング調査 概要報告書』の内容をご紹介します。DXを実現させた企業が何を意識しどのように推進してきたのか、成功理由の一端をうかがい知ることができます。ぜひDX推進の参考にしていただければと思います。

▼DXの定義や意味をより深く知りたい方はこちらもご覧ください
DX=IT活用」ではない!正しく理解したいDX(デジタル・トランスフォーメーション)とは?意義と推進のポイント

DX先進事例をどのように生かす?調査背景と国内状況

他社の事例をコピーしても、DX推進が成功するとは限りません。自社の課題や方向性を定め、必要な技術・人材・組織が揃わなければ全社的な変革が難しいからです。ここでは、今回の調査報告書の背景となる経産省およびIPAの取り組みや問題意識についてまとめます。

経産省が繰り返し指摘する国内企業のDXの遅れ

経産省は、2018年以降さまざまな側面から企業のDX促進に力を注いできました。その背景には、「日本企業のDX推進が遅々として進まず、このままだと膨大な国力損失につながる」という強い危機感があります。

その危機感があらわになったのは、2018年に公表された『DXレポート』です。ここでは、既存システムが肥大化・複雑化するあまり企業の「重し」となり、業務改革の妨げとなっている現状が明らかになりました。

その結果、2025年には、毎年12兆円もの経済損失が発生すると予測されています。経産省はこれを「2025年の崖」と呼び、これを回避するためにも日本企業の早急なDX推進が必要であるとされました。

【関連記事】DXを実現できないと転落する「2025年の崖」とは?政府の恐れる巨額の経済損失

技術・人材・制度面の「実行部隊」としてのIPAの取り組み

情報処理推進機構(IPA)は、経産省所管でIT国家戦略を支援することをミッションとした機関です。DX施策においても、各種調査の実施や資料作成・啓蒙などの「実行部隊」として経産省をサポートしています。

IPAによるDX推進事業は、DX認定制度やDX銘柄の選定、DX推進指標の収集・分析など多岐にわたっています。これらについては別の記事でご説明していますので、そちらをご覧ください。

【関連記事】
DXを推進するためのアクションプランは?経産省「DX推進指標」を参考に
DX銘柄2021が発表!企業の顔ぶれと傾向に変化はあったのか?
DXを推進するためのアクションプランは?経産省「DX推進指標」を参考に

IPAの取り組みは経産省より実践的であり、実際にDXに取り組む企業が参考にできるものばかりです。DX推進プロジェクトの初期段階で、内容をインプットしておくことをおすすめします。

【参考】IPA情報処理推進機構「デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進」

企業がDXを実践するための手引書作成

次の見出しから今回ご紹介する企業へのヒアリング結果をご紹介しますが、IPAではその結果を取り込む形で『DX実践手引書 ITシステム構築編』を公開しています。DXを推進するための「あるべき姿」、それを実現するための「方法論」を記載し、肥大した現行システムから新システムへの移行方法にまで言及されています。

その名の通り実践的な内容であり、こちらに基づいてITシステムの要件定義・設計を進めることが可能です。DXを支えるのにふさわしいITシステムの構築は、この手引書の理解から始まるといえそうです。


DX実現の大前提となるビジョンの共有と体制づくり

今回のヒアリング調査報告書では、調査で得られた知見のなかでも「デジタル技術によって自らのビジネスをどう変革するか」のビジョンを明確にし、プロジェクト推進のために必要な体制づくりをすることの重要性を強調しています。まずはビジョン・体制についてご説明します。

「このまま変革しないとどうなるか」の危機感を共有

報告書によると、DXの実践に成功しているほとんどの企業の経営者は、デジタル技術による変革のインパクトについてビジョンを発信しています。いかにデジタル技術が重要か、自社にどのようなインパクトをもたらすのかを理解し、決して単純な技術導入にとどまらないことが全社的に理解されている必要があるのです。

さらにビジョンを描く際には、危機感の共有から始まるとされています。今のままでは自らの組織がどうなってしまうのかを冷静に分析し、その危機を変革へのチャンスととらえることがビジョン策定には欠かせません。そのうえで自社の強みを見つめ直すことが、デジタル技術を活用した生き残り戦略を見出すためには重要であると述べています。

デジタル技術の重要性の理解

多くの企業では、デジタル技術の導入と全社的な業務変革のために担当者や担当部門を拡充する必要があります。報告書に記載されている事例のなかにも、もともとIT担当者が一人しかおらず、基幹システムのトラブルが多発していたことから「お荷物」と思われていたというケースが挙げられています。

この会社のケースでは、IT担当者が経営責任者とデジタル技術の重要性や自社へのインパクトを深く話し合い、デジタル技術の活用方法について合意できたことで、IT部門を数十人規模にまで拡大できました。どの企業でもこのケースのように進められるわけではありませんが、経営層がデジタル技術の重要性と変革の必要性を理解することはDXの最初の一歩といえそうです。

検討順序はWhatが最初でHowが次

ビジョンを検討する際は、「何をすべきか」=Whatを最初に明確化した後に「どのようにすべきか」=Howを議論する順番とする意識が求められます。

「とりあえずAIで何かやる」「データ管理用のパッケージを入れてみる」というのは、議論をHowから始める典型例といえます。これではうまくいかないため、あくまで「デジタルを活用して何をすべきか」を第一に問うべきです。

DX推進を実現したデジタル技術・プロジェクト推進方法・人材育成のあり方

成功事例のヒアリング内容は、DX推進を計画している企業にとって参考になるものです。ここでは、デジタル技術・プロジェクト推進方法・人材育成の3点から知見をご紹介します。

デジタル技術によるアイデア創出とデータ活用

デジタル技術の導入・開発に関して、アイデア創出とデータ活用に言及した事例がピックアップされています。

アイデア創出とは、普段の業務から生まれたアイデア・意見を拾い上げ、変革の種として生かすことを指しています。現場社員からアイデアがあがってくる仕掛けをつくり、それらを活用するまでのプロセスを構築することで、DXのきっかけとする企業も存在します。

またデータ活用については、特に「他社が持っていないデータ」の収集・蓄積・分析がカギとなるようです。自社のビジネスの過程で得られるデータを収集し、サービス価値向上につなげる事例が報告書には挙げられています。データ活用の専用チームを設置するのも、ヒアリング事例に見られる共通点です。

不確定要素を考慮したスモールスタート

DX推進に際しては、特定のチームや部門内にとどまらず、全社的に展開され業務やビジネスモデルの変革につなげることが必要不可欠です。この途中では、必ず既存事業への適用プロセスを経ることになります。

ヒアリング事例の多くは、スモールスタート→横展開という流れをたどっています。なかには、一人のエンジニアによる実験的な研究が「おもしろいことができそうだ」と認知され、仲間が増えて実用性が見えてきた結果として予算規模が拡大し、大きなデジタル事業につながった事例も存在します。

適切なスピード感と権限付与

人材・体制の重要性に言及したヒアリング事例も数多くありました。DXプロジェクトに資金とリソースを投じるにあたっては、経営、事業、技術の責任者が投資判断をくだせる場を設けることが重要とされています。デジタル技術の普及・発展のスピードは目覚ましく、長々と稟議書を回している時間的余裕がないためです。

また、プロジェクトに対する経営層の「信頼」と「権限付与」の大切さも主張されています。DX推進には不確定要素も多く、場合によっては失敗に終わる可能性すらあります。個々の取り組みに細かく経営層が口を出したり、失敗を責めたりしていてはチャレンジにはつながりません。

まずは小さくスタートさせてみて、結果から学び、次の施策に生かす姿勢がDX推進には必要です。報告書のなかでも、チャレンジしたうえでの失敗を許容する文化を持つ企業が多く挙げられています。

まとめ

今回ご紹介した成功事例のヒアリング内容からは、企業がDXを実現するのに必要な要素が浮き彫りになっています。どれも突飛なものではありませんが、変革への強い意識を全社的に持つことのできた企業だけがDXを実現できると考えられます。

ヒアリング内容は、『DX実践手引書』をはじめIPAや経産省の取り組みにも反映されることが想定されます。今後の取り組みも適宜追いかけ、国の意向や先進企業の方向性を参考にするとよいでしょう。

参考



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