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DX人材とは?必要な役割やスキル・適正、育成事例を解説

執筆者
公開日
2023.09.07
更新日
2024.02.21

こんにちは。データ活用によるDX推進を支援する「株式会社ブレインパッド」の高田です。当DX情報メディア「DOORS」の編集長を務めています。

本記事では、DX推進に必要な「DX人材」を解説します。

現在は、デジタル技術によってビジネスモデルや業務プロセスを変革する取り組み「DX(デジタルトランスフォーメーション)」と、DX推進を促すためのDXスキルの習得、「リスキリング」が注目されています。

その一方で、「既存業務から離れてDXを推進する人材」育成の必要性と、その育成方法の難しさも議論されるようになっています。

本記事を通して少しでもDX人材創出のヒントをつかんでいただけると幸いです。

本記事の執筆者
  • マーケター
    高田 洋平
    yohei takada
    会社
    株式会社ブレインパッド
    所属
    セールス&マーケティングユニット
    役職
    DXメディア「DOORS」編集長
    大学卒業後、大手地方新聞社やビジネス系出版社を経て2020年、ブレインパッドに入社。マスコミ業界で培った企画・編集力を、同社のコンテンツマーケティングにおいて活かす。当メディアの編集長として、構想段階からローンチ、現在に至るまで運営を担っている。主に、多くの読者の方に理解いただけるようなDXのニュース、トレンド記事の執筆やその他お役立ち資料の編集を担当。

DX人材とは?

DX人材とは、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するために欠かせないスキルや考え方を持つ人材のことです。

DXを推進するためには、最新のデジタル技術を自社の事業に取り入れて、新たな価値を生み出すための能力が必要になります。このような能力を持った人材を社内に置くことが、DX推進を成功させるためのポイントです。

DX人材の定義と意味

DX人材の定義は経済産業省の「デジタルガバナンス・コード2.0(旧:DXガイドライン)」を参考にすると

  • テクノロジーやデータに関する幅広い・深い知識を持つ専門的人材
  • DXによる事業グロースのポテンシャルを理解した上で、プロジェクトを統括できる事業部門側の人材

と捉えることができそうです。

参考:デジタルガバナンス・コード (METI/経済産業省)

DX人材が求められている背景

DX人材が求められている背景

DX人材が求められている背景には、企業や組織が「2025年の崖」に早急に対応しなければならないという問題があります。

2025年の崖とは、「レガシーシステムと呼ばれる古いシステムを使い続けた結果、データ活用や社内連携が進まないことによって、将来的に多大な損失をもたらす」という問題を総称した考え方です。

この課題を解決するために、企業や組織においてはDXを推進するためのDX人材の需要が高まっています。しかし、DX人材として活躍できる人材は限られているのが現状であり、このような背景がDX需要の高まりをさらに押し上げる原因となっています。

※2025年の崖については以下の記事で詳しく解説しているので、理解を深めたい方はあわせてご覧ください。

【関連記事】DXを実現できないと転落する「2025年の崖」とは?政府の恐れる巨額の経済損失

DX人材の不足は今後も深刻化する一方

DX人材の不足は、今後も深刻化する一方であると考えられています。

企業や組織のデジタル化は進み、近年では多くの現場でシステムを活用した業務を行うことが当たり前となりました。しかし、デジタル化の機運が高まった頃に導入されたレガシーシステムが放置されていることによって、企業や組織では各部門のデータが孤立し、データ活用がままならない現場も数多く存在します。

働き方改革や人手不足によって、今後はさらにDX推進の動きが加速し、業務効率化を進める企業が増加すると想定されることから、DX人材はさらに枯渇する可能性が高いと予想されます。

DX人材が担う7つの職種とは?

DX人材が担う7つの職種とは?

DX人材となりうる職種は、主に次の7つです。

  • プロジェクトマネージャー
  • ビジネスデザイナー
  • テックリード(エンジニアリングマネージャー、アーキテクト)
  • データサイエンティスト
  • 先端技術エンジニア
  • UI/UXデザイナー
  • エンジニア/プログラマ
DX人材が担う7つの職種

育成のゴールを明確にするために、DX人材をさらに掘り下げる形で、活躍できる業種や必要なスキルとマインドセットについて説明します。

プロジェクトマネージャー

プロジェクトマネージャーとは、DXやデジタルビジネスの実現を主導するリーダー格の人材を指します。DXを達成しようとする組織の先頭に立ち、DX推進に対するさまざまな施策について最終決定の権限を持ち、旗振り役となってけん引する仕事です。

プロダクトマネージャーが中心となってDX推進を進めるため、現状の組織課題に対する深い理解と、解決へのコミットメントが必要になる立場です。

求められる能力:決断力、組織内外との高いコミュニケーション能力

ビジネスデザイナー

ビジネスデザイナーとは、組織のDX戦略に沿って、企画の立案や推進の役割を担う仕事です実際に運用するビジネスモデルやビジネスプロセスを策定するのは、ビジネスデザイナーの役割となります。

DX推進を成功させるためには、自社だけでなく、関係各社との調整が必要になる場面もあります。

求められる能力:ステークホルダーを正確に把握して利害関係の調整を行う能力、プロジェクトを円滑に進めるためのファシリテーション能力、折衝能力

テックリード(エンジニアリングマネージャー、アーキテクト)

テックリードは、自社のビジネスに対して「具体的にどのようにデジタル技術を導入し、DX推進を実現させるのか」を考え、それを実現するための「システム設計」や「要件定義」を行う仕事です。エンジニアリングマネージャーやアーキテクトなどと呼ばれることもあります。

DXを推進する際は、業務効率化や生産性の向上を実現するだけでなく、新たなビジネスが自社に利益をもたらすことも重要です。

求められる能力:デジタル技術への精通、経営的視点も必要になります。

データサイエンティスト

データサイエンティストとは、デジタル技術やデータ分析に精通し、社内外からビッグデータの収集・分析や解析を行う仕事です。統計解析や機械学習を扱う技術的なスキルと知識はもちろん、ビジネスへの高い理解度も求められます。

DX推進において、組織内に蓄積されたデータの有効活用は欠かせない施策の一つです。スキルの高いデータサイエンティストが存在するかどうかは、DX推進の成功を大きく左右します。

【関連記事】
【社員が解説】データサイエンティストとは?仕事内容やAI・DX時代に必要なスキル

先端技術エンジニア

先端技術エンジニアは、AI(人工知能)、機械学習、ディープラーニング、ブロックチェーンなどの最先端のデジタル技術を使って開発を行う仕事です。

近年ではAIの発展が目覚ましく、ビジネスにおいてもさまざまな分野で活用され始めています。このような流れの中で、他社への競争力を維持したままDX推進を成功させるためには、先端技術エンジニアの活躍が必要不可欠です。

求められる能力:最新情報へのキャッチアップ力、自らのスキルアップ力

UI/UXデザイナー

UI/UXデザイナーは、システムやサービスのユーザー向けインターフェースをデザインする仕事です。

システムやサービスを利用するユーザーが最も頻繁に触れるのは、Webサイトやシステムなどのインターフェースの部分です。そのため、インターフェースの設計が良くないとユーザーにストレスを与えてしまい、顧客満足度低下の原因になります。

求められる能力:ユーザーの視点に立って、使いやすい画面設計を行うスキル

エンジニア/プログラマ

エンジニア/プログラマは、ビジネスデザイナーやテックリードが考案したDX施策をもとに、実際にシステムの実装やインフラの構築を行う仕事です。

DX推進における開発現場では、一般的な開発とは異なり、現場にすでに使用中のデジタルシステムが存在するケースが多いといえます。

求められる能力:ソフトウェアだけでなくハードウェアも含めた幅広い知識、現場に即したシステムを構築するための対応力

DX人材に必要なスキルや能力は?

上に挙げた職種の例を見てみると、DX人材には多種多様なスキルが必要です。そこで、DX人材に必要なスキルを正しく理解し、DX推進を実現できる人材を育成・採用することが大切です。

ここでは、DX人材に欠かせない「ハードスキル」「ソフトスキル」と、DX人材が持つべき6つの適正について解説します。

ハードスキル

テクノロジーを理解し使いこなす「ハードスキル」の観点からは、基礎的なIT知識やAIなどの先端技術に関する素養が求められます。また、新サービスの設計や新しい業務プロセスの定義といったビジネスと技術をまたがる取り組みを推進できるよう、分野横断的な知識も必要です。

ソフトスキル

社内外における調整力やコミュニケーション能力を始めとした「ソフトスキル」の観点からは、プロジェクトマネジメントスキル、リーダーシップのほか、異なるスキルを持った人材と協業できるコミュニケーション能力や、あるべき姿・解決するべき課題を見出す問題発見力が欠かせません。

DX人材が持つべき6つの適正

ここまで、DX人材が担う7つの職種、DX人材に必要なスキルや能力について解説しました。では、DX人材はどのような適正を持つべきなのでしょうか?

IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)では、以下の6点をDX人材が持つべき適性であると定義づけています。

適正概要
不確実な未来への想像力取り組むべき領域を自ら定め、新分野への取り組みを厭わず、ありたい未来を描き、挑戦する姿勢・課題設定力
臨機応変/柔軟な対応力計画通りのマネジメントではなく、外部の状況変化や状況を踏まえ、目標を見失わずに、都度ピボットしながら進めていく姿勢・当初の計画にこだわりすぎない
社外や異種の巻き込み力対立する周囲のメンバーを巻き込むだけでなく、外部の「他者」との交わりを多く持ち、自分の成長や変化の糧にできる受容力
失敗したときの姿勢/思考一時的な失敗は、成功に向けた過程であり、失敗を恐れず、立ち止まらず、糧にして前に進めることができる姿勢
モチベーション/意味づけする力自ら解決したい・取り組みたい課題を明確にし、自らの言葉で話すことができ、前向きに取り組みたいと感じられる姿勢・主体性・好奇心
いざというときの自身の突破力解決や困難な状況に陥ったときでも、諦めずに、さまざまな方法を模索し、壁を突破するためにリーダーシップを発揮する姿勢・責任感

引用:デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた 企業とIT人材の実態調査

DX人材は既存の業務を継続するのではなく、これまでとは異なる前提・環境で、あるべき姿を実現する態度が求められます。不確実性を受け入れる想像力や前向きさ、柔軟さや実行力など、高いソフトスキルがあって初めてプロジェクトを成功へ導けます。

そのため、DX人材の採用や育成の際にはデジタルリテラシーに加え、上記6つの適正を持っているかどうかも確認する必要があります。

DX人材を確保する3つの方法

DX人材を確保する3つの方法

DX人材の確保には主に3つの方法があります。以下で詳しく解説します。

1.DX人材の新規採用

DX人材の獲得競争は激化しているため、自社にとって最適な人材を速やかに採用するためには、新卒採用を検討することも一つの方法です。

その際、次の2つのポイントを押さえて採用活動を行うことが大切です。

  • 採用ターゲットを明確にする
  • 自社へ魅力づけを行う

どれだけ優秀なスキルを持っていたとしても、自社の課題に対して適切なアプローチができるDX人材でなければ、効率的なDX推進を行うことはできません。そのため、DX人材に求める役割やスキルを明確にしておき、自社に合った人材を採用しましょう。

また、自社へ魅力づけを行うことも大切です。競争が激化している影響で、自社が就職先として魅力的な企業であることをアピールできないと、応募者や内定受諾者が集まらないためです。

2.DX人材の社内育成

DX人材として活躍できる可能性を持っている人材を社内で見つけ出すこともできるかもしれません。キーワードは「リスキリング」です。

社内でのDX人材育成には、新規採用にはないメリットがあります。それは「自社ビジネスに精通している人材ゆえに、DX推進する上でより強力な人材となりうる」点です。

社内でDX人材を育成できれば、競争が激化している市場で採用活動を行うことなく、自社の理念に沿った人材を確保できるのです。

DX人材の育成を行うのであれば、ハンズオン講座や社外講師による講演といった座学のほかに、実際の業務を通じてDX推進のための知識・スキルやマインドセットを学ぶOJT(On the Job Training)などの方法を通してリスキリングを行うのが効果的です。

※DX人材の社内育成やDX内製化、リスキリングについては以下の記事でも詳しく解説されています。社内DXに力を入れたい場合はあわせてご覧ください。

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3.外部リソースの活用

社内育成や、新卒採用以外には、外部リソースを活用するという手段もあります。外部リソースを活用することで、経験や知見が豊富な専門性の高い人材を、解決したい課題に合わせて効率よく補えるメリットがあります。

また、DX推進においては、求められるスキルが短期間で変化するケースは往々にしてあります。このような場面でも、外部リソースの活用は有効です。求められるスキルが変化したタイミングで、そのスキルの専門性が高い人材を新たに招き入れることができるため、効率的にDXを推進できるのです。

必要な場面で短期的にDX人材の力を借りられるため、長期にわたって雇用し続ける必要がなく、コストの効率化にもつながります。

DX人材の育成事例

ここまで、DX人材を確保する3つの方法をご紹介しました。では、実際に2.DX人材の社内育成に成功した事例をご紹介します。

事例1:アサヒグループジャパン株式会社様

アサヒグループジャパン株式会社様は、DX=BX(Business Transformation)であるという考え方に基づいて、2つの人材育成プログラムを立ち上げられました。

1つ目は「クリエイティブ・ビジネス企画」と呼ばれる、新たな発想でアイデアを生み出すための人材を育成するコースです。

2つ目はデータから新たな価値を創出する「ビジネス・アナリスト」コースを立ち上げたところ、両者を合わせて536⼈の受講希望者が殺到しました。この数値は、同社の想定の2.5倍以上にのぼりました。

この2つの人材育成プログラムのうち、ビジネス・アナリスト育成プログラムの設計・実施には、ブレインパッドをパートナーとして迎えています。「VC基礎研修」「コアスキル集中研修」「専門スキル研修」の3つの研修を策定し、受講者が段階的に専門性を高められる仕組みを構築しました。

「DXの人材育成」と言っても、一体どういうイメージを持ったら良いのか分からない方も多いと思います。そんな場合は、実際にDX育成プロジェクトに取り掛かっている事例を参考にされると良いです。

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事例2:りそなホールディングス様

りそなホールディングス様では、「りそなグループアプリ」のローンチに際し、貯まった顧客データを分析することでニーズを探り、よりよいサービスに結びつけていく必要性から、「データサイエンス室」を設置されました。

スモールスタートによるデータ基盤環境構築も視野にPDCAを回し、社内での理解も得ながらデータ活用を組織全体に根付かせることに成功しました。

室内のDX人材がBIツール「Tableau」を使用することにより、データ分析・活用のリテラシーが全社的に向上し、ビジネスの精度・確度は飛躍的に高まりました。

【関連記事】りそなホールディングスの「データ分析組織」の現在地

事例3:NTTコムウェア株式会社様

2018年に「データサイエンス推進室」を新設し、データサイエンスを知る人材の育成に乗り出したNTTコムウェア様は、データ分析の技術的なテクニックだけでなく、課題の設定方法や仮説の立て方などといった考え方から学べる研修におより、データ活用の知識習得に励む社員が増加しています。

社内スキル認定制度における「データサイエンティスト」の取得者が増加しており、データサイエンス領域の人材拡充、サービス開発の支援力強化を進められています。

【関連記事】【ブレインパッドが支援したDXの成功事例4選を紹介!④】AIとデータの力で自社を変革するための具体的な方法とは?

事例4:SOMPOホールディングス様

SOMPOホールディングス様では、国内の同グループに在籍する約6万3000人の社員全員を対象として、DX人材化への戦略的な育成計画を立案。DXマインドの醸成や、データ活用スキルを身につけるための各種研修カリキュラムを整備されました。

グループのDXを担う人材を役割やスキルレベルに応じて「DX企画人材」「DX専門人材」「DX活用人材」の3つに分類し、「AI、ビッグデータ、CXアジャイル、デザイン思考」を社員全員が備えるべきデジタルの素養と位置付け、習得するための各種育成施策を展開されています。

【関連記事】6万3000人をDX人材に!SOMPOグループが注力するDX研修。その内容は

まとめ

IT人材の不足は容易に解消せず、しかもいまだにDX推進を開始していない企業が多く残っている以上、今後もDXに関わる人材の獲得競争は今後も激化する可能性が高いと予想されます。

DX推進に必要な人材のタイプ、必要なスキル、不足する人材の質と量を明確にすることで、より効果的な外部パートナー選びが可能となります。

DX人材の育成にお困りの際は、ぜひブレインパッドへご相談ください。

「DX人材」の関連記事もあわせてご覧ください。

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2004年の創業以来、「データ活用を通じて持続可能な未来をつくる」をミッションに掲げ、データの可能性をまっすぐに信じてきたブレインパッドは、データ活用を核としたDX実践経験により、あらゆる社会課題や業界、企業の課題解決に貢献してきました。 そのため、「DXの核心はデータ活用」にあり、日々蓄積されるデータをうまく活用し、データドリブン経営に舵を切ることであると私達は考えています。

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