【前編】DX人材とは?~必要な役割やスキル、人材育成やチーム組成のあるべき姿を解説~

[執筆者]
DOORS編集部

デジタル技術によって、ビジネスモデルや業務プロセスを変革する取り組み「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が注目されています。一方で、既存業務から離れてDXを推進する人材の必要性と、その育成方法の難しさも議論されるようになりました。

本記事では、DXを推進するのに必要な役割やスキルを解説した上で、人材育成やチーム組成のあるべき姿を考えていきます。

DX推進の現状と政府の危機意識

コロナ禍を受けて、営業や開発、マーケティングなど、業務の各所にデジタル技術を導入する動きが強まっています。それに伴い、「DX」という言葉を目にする機会も増えたのではないでしょうか。まずは、企業のDX推進の現状と政府の取り組みについてまとめます。

新たなバズワード「DX」の現状と企業の取組内容

2020年に情報処理推進機構(IPA)が実施した調査によると、アンケート回答企業のうち約4割がDX推進に取り組んでいるという結果でした。過半数の企業がDXに取り組んでいないことになります。また、従業員1,001名以上の企業のDX推進率8割近くであるのに対して、100名以下の企業だと3割に達していないなど、企業規模によって取り組みに大きな差が見られます。

企業規模以外に、企業文化・風土がDX推進の有無に影響しているという指摘もあります。DXに取り組んでいる企業では、取り組んでいない企業よりも「今後目指すべきビジョンや方向性が明確であり、従業員に周知されている」に「よく当てはまる」「ある程度当てはまる」と回答した割合が高いという結果が出ました。「多様な価値観を受け入れる/重んじる」、「果敢にリスクをとり、新しいことにチャレンジすることが尊重される(変革や挑戦を好む)」についても同様の傾向で、企業としてのビジョンが全社的に共有され、前向きで寛容な文化がDXを後押ししている可能性があります。

「DXレポート」に見る政府の危機感と課題

政府、特に経済産業省では、2010年代の末からDXの必要性とその推進を阻む構造的な課題を繰り返し指摘し、DX推進を後押しするための施策を次々と打ち出してきました。

まず、2018年に「DXレポート」を公表しました。ここでは、DXの必要性を多くの経営者が認識しているにもかかわらず、その推進を阻む課題がシステム・組織など多くの面から指摘されています。たとえば、既存システムが老朽化・肥大化して運用・保守にかかる費用が高騰しているために、戦略的なIT投資に資金・人材を振り向けることが困難になっています。こうした状態を放置していると、2025年以降に、最大で年間12兆円もの経済損失が発生する可能性があるとされています。

その後、2020年には「DXレポート2」が出されました。新型コロナウイルスの感染拡大によってDXの必要性がますます経営者に強く認識されるようになった一方で、取り組みを始めている企業とそうでない企業の二極化が進行していることが明らかになりました。より人材や組織連携に強く焦点を当てた内容となっており、DXを推進する人材の育成や、経営層・事業部門・IT部門が共通理解をもって改革を進めるべきであると主張しています。

デジタル庁創設とDX推進の見通し

こうした経済産業省の危機感は、2021年のデジタル庁創設につながっているのでしょう。2020年に成立した菅内閣は主要政策に「デジタル社会の実現」を掲げており、行政のデジタル化やオンライン教育の拡大、サプライチェーンの整備などの改革を進めると表明しました。そして、これらの改革を進める司令塔としてデジタル庁の創設を発表し、2021年9月1日に稼働を開始しています。

また、経済産業省ではDX推進のためのベンチマークとなる「DX推進指標」の策定、2020年以降の「DX推進銘柄」の選定など、企業がDXを進めやすい環境の整備を進めるとともに、その推進を評価し促すための試みを次々と進めています。これらの施策の詳細については、以下の記事を参考にしてください。

DX成功に欠かせないIT人材の不足と「DX人材」の定義

DX推進には、必要なスキルとノウハウを持つ人材が欠かせません。その一方で、先に挙げたDX関連のレポートでも、必ずと言ってよいほど人材不足が大きな問題として指摘されています。人材不足はどれくらい深刻なのかを整理するとともに、どんな人材がDX推進に求められるのかについて見ていきましょう。

IT人材の不足は今後も深刻化する一方

複数の調査において、IT人材は現時点ですら不足していることが分かっています。たとえば2018年の経済産業省の発表内容によると、2018年時点でIT人材の供給が103万人に対し、需要は125万人と推定され、22万人が不足状況にあります。

こうした需給ギャップは今後も埋まらず、むしろ深刻化する一方であると予測されています。前提とするシナリオによってギャップの幅には差がありますが、2030年時点で約16万人から最大で約79万人もIT人材が不足すると考えられているのです。この需給ギャップを解消するには、毎年3.54%もの労働生産性上昇を実現する必要があります。

IT人材全体の不足感が構造的に継続するのであれば、IT人材の一部であるDX人材を確保するためには企業の意識的な取り組みが欠かせないと言えるでしょう。

DX人材の定義

DX人材について単一の定義があるわけではありませんが、DXに必要な人材として経済産業省の「DXガイドライン」では以下のように述べています。

- DX 推進部門におけるデジタル技術やデータ活用に精通した人材
- 各事業部門において、業務内容に精通しつつ、デジタルで何ができるかを理解 し、DX の取組をリードする人材、その実行を担っていく人材

要するに、テクノロジーやデータに関する広く深い知識を持つ人材に加えて、事業部門側にもDXを理解しプロジェクトを統括できる人材が求められていることが分かります。IT部門やシステム担当者に丸投げするだけでは、DX推進はおぼつかないという考え方がここでも貫かれています。

IPAも、「DX推進は、ビジネスとITの連携が不可欠である」と述べ、連携を実現させるような人材の重要性が増していると考えています。

DX人材とは?業種、スキル、マインドセット

IT人材が構造的に不足する中で、企業はDX人材の育成に意識的である必要があります。育成のゴールを明確にするために、ここではDX人材についてさらに掘り下げる形で、活躍できる業種、必要なスキルとマインドセットについて説明します。

IPAの定義する6つの職種

2019年に公表された資料で、IPAは以下の6つの職種を呼称例として挙げています。

  • プロデューサー(プログラムマネージャー)
    DXやデジタルビジネスの実現を主導するリーダー格の人材(CDO含む)

  • ビジネスデザイナー(含むマーケティング)
    DXやデジタルビジネスの企画・立案・推進等を担う人材

  • アーキテクト
    DXやデジタルビジネスに関するシステムを設計できる人材

  • データサイエンティスト/AIエンジニア
    DXに関するデジタル技術(AI・IoT等)やデータ解析に精通した人材

  • UXデザイナー
    DXやデジタルビジネスに関するシステムのユーザー向けデザインを担当する人材

  • エンジニア/プログラマ
    上記以外にデジタルシステムの実装やインフラ構築等を担う人材

また、2020年の資料では以下のような7種類の職種を挙げています。

  • プロダクトマネージャー
    DXやデジタルビジネスの実現を主導するリーダー格の人材

  • ビジネスデザイナー
    DXやデジタルビジネスの企画・立案・推進等を担う人材

  • テックリード(エンジニアリングマネージャー、アーキテクト)
    DXやデジタルビジネスに関するシステムの設計から実装ができる人材

  • データサイエンティスト
    事業・業務に精通したデータ解析・分析ができる人材

  • 先端技術エンジニア
    機械学習、ブロックチェーンなどの先進的なデジタル技術を担う人材

  • UI/UXデザイナー
    DXやデジタルビジネスに関するシステムのユーザー向けデザインを担当する人材

  • エンジニア/プログラマ
    システムの実装やインフラ構築・保守等を担う人材

職種の数や名称、役割の説明に異なる点はあるものの、おおむね同様の内容であると言ってよいでしょう。ビジネス要件に基づいてDX推進プロジェクトを引っ張っていく役割、ビジネスとシステムをつなぐ形で全体像を設計する役割、さらにそれを具体化する形で設計や実装、インフラ構築・保守などを担う役割がDXには求められています。

これらの職種はいずれも重要な役割を担いますが、特にプロデューサー(プロダクトマネージャー)やビジネスデザイナーは重要です。IPAの調査でも、これらの職種を重要であると考える企業が特に多いという結果が出ています。

DX人材に欠かせないスキルとマインドセット

上に挙げた職種の例を見てみると、DX人材に必要なスキルが理解できるのではないでしょうか。DX人材には、テクノロジーを理解し使いこなす「ハードスキル」と、社内外における調整力やコミュニケーション能力を始めとした「ソフトスキル」の両面が求められます。

ハードスキルの観点からは、基礎的なIT知識やAIなどの先端技術に関する素養が求められます。また、新サービスの設計や新しい業務プロセスの定義といったビジネスと技術をまたがる取り組みを推進できるよう、分野横断的な知識も必要です。

ソフトスキルの観点からは、異なるスキルを持った人材と協業できるコミュニケーション能力や、あるべき姿・解決するべき課題を見出す問題発見力が欠かせません。この点に関連して、IPAは以下の6点をDX人材が持つべき適性であると定義づけています。

  • 不確実な未来への想像力
  • 臨機応変/柔軟な対応力
  • 社外や異種の巻き込み力
  • 失敗したときの姿勢/思考
  • モチベーション/意味づけする力
  • いざというときの自身の突破力

DX人材は既存の業務を継続するのではなく、これまでとは異なる前提・環境で、あるべき姿を実現する態度が求められます。不確実性を歓迎できる想像力や前向きさ、柔軟さや実行力など、高いソフトスキルがあって初めてプロジェクトを成功へ導くことができるのです。

後編では、こうしたDX人材育成に求められるポイントを解説します。

参考

経済産業省「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」
デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会「DXレポート2(中間取りまとめ)
デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会WG1(事務局・経済産業省)「デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会WG1 全体報告書」
経済産業省「IT人材育成の状況等について」
情報処理推進機構「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」

WRITER執筆者プロフィール

株式会社ブレインパッド

DOORS編集部

ブレインパッドのマーケティング本部が中心となり、主にDXにまつわるティップス記事を執筆。また、ビジネス総合誌で実績十分のライター、AI、ディープラーニングへの知見が深いライターなど、外部クリエイターの協力も得て、様々な記事を制作中。

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