人工知能学会2026参加レポート:AI活用の最新技術トレンド

公開日
2026.06.24
更新日
2026.06.24

2026年6月8日(月)~12日(金)の5日間、Gメッセ群馬(群馬県高崎市)およびオンラインのハイブリッド形式にて、2026年度 人工知能学会全国大会(第40回)(以下、JSAI2026) が開催されました。JSAIは一般社団法人 人工知能学会が主催する、国内最大規模のAI分野の学術大会です。

今大会は“第40回という記念すべき節目”にあたり、会期3日目の6月10日には40周年記念式典も執り行われました。基礎研究から社会実装まで、大学・公的研究機関の研究者から、AI・IT企業のエンジニア・ビジネスパーソンまで、幅広い層が全国から一堂に会する場です。今年は5,246名の参加者、1,397件の発表とどちらも過去最多となり大変な盛り上がりとなりました。

ブレインパッドは、このJSAI2026に「プラチナスポンサー」として協賛・出展いたしました。 本記事では、スポンサーブースでの取り組みや、現地で参加メンバーが注目した研究・セッションについてレポートします。

JSAI2026 開催概要

  • 名称:2026年度 人工知能学会全国大会(第40回)
  • 日程:2026年6月8日(月)~6月12日(金)
  • 会場:Gメッセ群馬(群馬県高崎市)+オンライン(ハイブリッド開催)
  • 主催:一般社団法人 人工知能学会
  • 後援:文部科学省、群馬県、共愛学園前橋国際大学
  • 公式サイト:https://conf.ai-gakkai.or.jp/jsai2026/
本記事の執筆者
  • データサイエンティスト
    平井 直知
    Naoaki Hirai
    会社
    株式会社ブレインパッド
    所属
    アナリティクスコンサルティングユニット
    役職
    リードデータサイエンティスト
    大学院修士課程を修了後、データサイエンティストとしてブレインパッドに入社。入社後は、需要予測による発注業務の自動化、LLMによるコンテンツ生成に従事。現在はプロジェクトマネージャーとして、データ利活用を軸としたマーケティング施策の立案から効果検証・改善までの伴走支援に従事。
  • データサイエンティスト
    羽田 充宏
    Atsuhiro Hada
    会社
    株式会社ブレインパッド
    所属
    アナリティクスコンサルティングユニット
    情報数理学を専門に修士課程修了後、2023年ブレインパッドに新卒入社。 入社後は生産計画Webアプリケーション開発や広告配信ロジック最適化など主に数理最適化を用いた案件に従事。
  • データサイエンティスト
    中西 映人
    Akito Nakanishi
    会社
    株式会社ブレインパッド
    所属
    アナリティクスコンサルティングユニット
    大学院修士課程修了後、ブレインパッドにデータサイエンティストとして入社。メーカー向けCRM強化のためのデータ集計・分析業務に従事した後、生成AIを活用したユーザー分析にもとづく広告効果シミュレーションの開発に取り組んでいる。

プラチナスポンサーとしての出展

JSAIは、アカデミアや企業の枠を超えて研究者や学生、データサイエンティストなど多様な人々が集まり、人工知能について幅広いトピックを議論する国内最大級の学会であり、当社の事業内容とも深い親和性を持っています。

そして、こうした場への貢献は当社のパーパスである「データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる」をまさに体現する取り組みであると考え、このたびプラチナスポンサーとして「JSAI2026」に協賛することとしました。

ブレインパッドのブースでは、当社の取り組みやプロダクトをご紹介する資料・ポスターを掲示しました。

  • ブレインパッドの対象領域
  • サイト内検索AI:Rtoaster GenAI
  • 現場変革AIエージェント:COROKO
  • 小売向けの店舗内画像検索システムの事例(プロフェッショナルサービスでの提供事例)

ほかにも、技術発信の取り組みであるOpenBrainPadの活動をまとめたリーフレットでのご案内や昨年当社メンバーが執筆した書籍『先輩データサイエンティストからの指南書(2025; 技術評論社)』をご紹介させていただきました。

プロダクトやサービスの具体的な実例から事業の全体像、技術コミュニティへの発信など、ブレインパッドの幅広い取り組みを多面的にお伝えする機会となりました。

展示ブースの様子1
展示ブースの様子2

現地で注目した研究・セッション

ブース運営のかたわら、参加メンバーは各セッションにも足を運び、最新の研究動向をキャッチアップしてきました。ここでは、メンバーが特に印象に残った研究をご紹介します。

印象的だった研究1:逆混合整数計画法: 制約条件学習からの目的関数学習(担当:羽田)

【参考】
逆混合整数計画法: 制約条件学習からの目的関数学習

私は業務で数理最適化を扱う機会が多いため、数理最適化セッションを中心に聴講しました。モデリングからヒューリスティックアルゴリズム、汎用ソルバーやライブラリ開発などの多様な話題に触れることができ、非常に勉強になりました。

今回はその中から「逆最適化」に関する発表をご紹介します。
一般的な最適化問題では「与えられた制約条件のもとで目的関数を最小(最大)にする解を見つける」ことを目指します。
一方で今回の発表は、「与えられた解を再現するように、制約条件のパラメータや目的関数の重みを推定する」という逆の問題設定を扱うものでした。
これが解けるようになると、例えば熟練の計画担当者が作った計画を入力して、同じような結果を出力する最適化モデルを自動で作成することが可能になります。しかも、少ない学習データ数でも現場適用ができているとのことで、大きな可能性を感じました。

最適化案件では、担当者へのヒアリングを通して制約条件や目的関数を洗い出してモデルを設計すると思います。しかし、数回のヒアリングだけでは暗黙的な制約条件を聞き出せなかったり、特定の工場特有のルールが後から発覚することが往々にしてあると思います。そんなときに逆最適化を活用すれば、実績データから必要そうな制約を予め抽出してモデルに組み込むことができそうです。
また複数の目的関数を重み付きで最適化する際、その重み調整に頭を悩ませることは多いですが、逆最適化によって現場が考える「良さ(ベストなバランス)」を自動で導き出せるのは非常に強力だと感じました。

今回の知見を活かし、私自身も実務のプロジェクトに逆最適化の考えを取り込めないかを検討してみます。

関連記事
数理最適化の新時代到来 ~最適化→予測でDXは加速する~

印象的だった研究2:マルチモーダル生成AIモデルを用いた金融非構造化データからの情報抽出 (担当: 中西)

【参考】
マルチモーダル生成AIモデルを用いた金融非構造化データからの情報抽出

テキストを入出力とする大規模言語モデル(LLM)の進展とともに、画像や音声といった多様な形式を生成AIで扱うケースも増えています。スライド理解から音声入力まで、ClaudeやGeminiのような商用モデル1つで完結できる場面も増え、特別な技術知識がなくても触れられる分野になってきました。

今回は「非構造データからの情報抽出」セッションから研究を紹介します。生成AIの処理フローを「入力→モデル→出力」と整理したとき、本研究では最初の「入力部分の工夫」を対象としています。「モデルの理解を深める」「出力の信頼性を高める」という部分については、以前の記事をご参照ください。

有価証券報告書からの表情報抽出は,複雑なレイアウトや結合セル,多階層ヘッダの存在により困難な課題である.本研究では,視覚言語モデル(VLM)を用いた表構造化において,テキスト処理と画像処理の二軸から体系的に最適化する手法を提案する.

「表」は数値や文字で主に構成されているため、テキストベースで情報を抽出するほうが安定する、と直感的には思われがちです。しかし本研究では、表構造自体を画像として視覚的に捉え、テキストを補助情報として用いるほうが精度が高いという、直感に反する結果が示されています。
具体的には、HTML上の表からセルの値を抽出するタスクにおいて、セル単位の抽出精度はテキストベースLLM(Qwen3)の78.1%に対し、VLMによる画像処理では88.2%と、10.1ポイントの改善が得られました。
また、実験では「高解像度化」よりも「罫線の除去」のほうが高い精度が得られており、罫線の多さがセル境界の認識を妨げている可能性が示唆されます。さらに、有価証券報告書のドメイン知識や表構造に関する注記を補助テキストとして与えた場合にも精度改善が確認されており、入力情報の充実がVLMの性能向上に寄与することが示されています。

本研究は、既存のテキストベースLLMで扱いにくかった表構造データにおいて、VLMによる処理が有効であることを示しています。業務への応用例として決算資料や仕様書PDFからの情報抽出が考えられ、これまで活用が難しかった非構造データを業務に組み込む可能性を広げる研究と言えます。
入力データの形式や与え方を柔軟に設計することは、モデルの性能を引き出す上で依然として重要な要素です。「何をどう入力するか」という問いへの向き合い方が、生成AI活用の質を左右し続けるのだと感じます。

印象的だった研究3:多様性を確保しつつ因果構造を考慮可能な反実仮想説明法の提案(担当:平井)

反実仮想説明とは、機械学習モデルがある入力に対して望ましくない予測をしたときに、「どの特徴量をどのように変えれば、望ましい予測に変わるか」を提示する説明手法です。例えば、ある人が疾患リスクの高いグループに分類されたとします。このとき、通常の説明手法であれば、「BMIが予測に強く影響している」「血圧の寄与が大きい」といった形で、モデルが何を見て判断したのかを示します。これはモデルの判断根拠を理解するうえで有用です。一方で、現場で本当に知りたいのは、「何をどう変えれば低リスクと判定されるのか」です。反実仮想説明は、この問いに答えようとします。つまり、モデルの判断を説明するだけでなく、望ましい結果に近づくための具体的な改善案を提示する技術です。

モデルの予測結果を、単なる判断材料にとどめず、具体的な改善アクションにつなげるにはどうすればよいのか。反実仮想説明は、その問いに向き合う技術として、以前から興味を持っていたテーマでした。

さて、前置きが長くなりました。JSAI2026でも、反実仮想説明に関する複数の研究が発表されていました。その中でも特に興味深かったのが、「多様性を確保しつつ因果構造を考慮可能な反実仮想説明法の提案」という研究です。

【参考】
多様性を確保しつつ因果構造を考慮可能な反実仮想説明法の提案

反実仮想説明には様々な手法が挙げられていますが、代表的な手法の一つであるDiCEには、特徴量同士の因果関係を明示的に考慮しないという欠点があります。現実世界では、ある特徴量だけを単独で変えられるとは限りません。例えば、運動習慣を改善すれば、BMIや血圧にも影響が出るかもしれません。ゆえに、本当は「運動習慣を+1改善する」で良いにも関わらず、反実仮想説明は「運動習慣を+1改善して、BMIも+1改善する」といった改善案を提示してしまうことがあります。これは合理的ではありません。

本研究では、因果グラフの考え方を用いて、ある変数への介入が他の変数へどのように波及するかを改善案に反映します。これにより、単にモデルの予測を反転させるだけでなく、「その改善アクションを現実で実行したときに、他の変数もどう連動して変わるのか」まで考慮した説明を目指しています。
詳細は割愛しますが、アルゴリズムが興味深かったです。提案手法では、因果グラフの制約を満たすため、各変数をいったん独立な潜在変数に変換します。その潜在変数空間で従来の反実仮想説明を適用し、得られた結果を再び元の説明変数空間に戻すことで、因果構造に沿った反実仮想プロファイルを生成します。因果構造を考慮するために、あえて一度「独立な世界」に写してから探索するという発想が、非常に自然で納得感のあるものでした。

最後に、反実仮想説明において現実的な改善案を探すというのが重要な研究テーマであることを学会を通して知りました。このように新たな研究のテーマに出会えることも学会参加の良い点だと改めて感じました。


さいごに

本記事では、JSAI2026へのプラチナスポンサーとしての出展および参加についてレポートしました。ブースにお立ち寄りいただいた皆さま、貴重な議論をご一緒いただいた皆さまに、心より御礼申し上げます。

来年の 人工知能学会全国大会(JSAI2027)は、長崎での開催が予定されています。ブレインパッドとしても、引き続きスポンサーとしての協賛・出展を視野に入れ、来年もこの場で皆さまとお会いできることを楽しみにしています。


本記事でご紹介した
製品・サービス
  • Rtoaster GenAI
    生成AI(LLM)と業界最高峰のレコメンド技術を融合、検索×パーソナライズの新しい顧客体験を、短期間で実装します。
  • COROKO
    「COROKO(コロコ)」は、現場作業の暗黙知を形式知化するAIエージェントです。 普段の作業動画を撮影するだけで、AIがマニュアルや報告書を自動生成します。蓄積されたノウハウを組織全体で一元集約・管理でき、深刻化する人材不足の解消や技術継承に貢献します。
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