【後編】「FaaS構想」を推進するアサヒの人材育成~BrainPad DX Conference 2022~テーマ別 企業DX対談

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パートナリングのあり方

草野 「全国規模に展開している企業」で一斉に同じ研修が受けられる点は、コロナ禍においてのポジティブな側面だったということですね。

様々な企業とのお付き合いがあると思いますが、その中でブレインパッドをパートナーとして選定いただいた経緯や理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?

野村氏 パートナーと組むときに私が見ているのは、「私たちに完全に合わせる企業」か「きちんと向き合い、時には厳しいことをいい、時には私たちのやりたいことを形に変えてくれる企業」かという2点です。

「私たちに完全に合わせる」というのは譲歩するのではなく、きちんと向き合ったうえで合わせてくれるかどうか、という意味です。そのようなことができる企業は実はなかなか少ないと思います。また、付き合いが長くなると「この企業はこういう流れで経営陣にお伺いを立てていくので、このステップを踏まないとだめだよね」と思われることも少なくありません。

しかし、企業は次々と担当者が変わっています。そのため、「私と次の担当者ではやり方が違う・前任者と私とではやり方が違う」というケースはよく発生します。担当者が変わっているにも関わらず、その変化に対応してくれないことも少なくありません。

このような観点からみると、ブレインパッドはちょうどいい距離感でちゃんと向き合ってくれる点を評価していますね。これは、新しいものを生み出すときの非常に大事なポイントです。アサヒとしてもコンセプトを打ち出したとしても、「100%正しいかどうかはわからない中でやっている以上、何かしらを言ってもらいたい。合っているのであれば、ドライブをかけてほしい」と常々思っています。

そのような関係でいたいという点からすると、完全にクライアントに合わされると逆に怖さがありますね。ブレインパッドには、「尊重するがしっかり言う」視点があり、これからもこのような向き合い方で行っていただけるだろうと思った点が、パートナーを組ませていただいた最大のポイントです。

草野 今回のプロジェクトで、「これでいいか」ではなくて、「こうした方がいいのではないですか?」ということを含め、ある種お客様に対してチャレンジ提案をしたところはありましたか?

奥園 最初のプランの中には、ビジネスアナリストの方に機械学習まで覚えさせたい、という目的も含まれていました。さすがにそれはハードルが高いのではないかと伝えましたね。

ビジネスの現場では、「まずは集計・可視化を行い、そのあとに予測」という順番があります。そのため、ブレインパッドとしては「機械学習は後で取り組んだ方が良いのではないか」「機械学習を使いビジネスをどう動かすかという思考を持った方が良いのではないか」という提案をさせていただき、納得いただきました。方向性は同じであるものの、調整方法の1つという考え方ですね。

「アサヒ」のこれからとFaaS構想

草野 今回の研修を学ばれた方がこれから活躍することになると思います。アサヒグループホールディングス(以下、アサヒグループHD)も、社名がアサヒグループジャパンに変わりました。社名変更の経緯やその先に目指すもの、着手された構想やこれからの構想についてお聞きしてもよろしいでしょうか?

野村氏 実は、アサヒグループHDそのものがなくなった訳ではありません。それまでアサヒグループHDの中にあった日本事業を任されているチームが独立し、法人化したという形式です。

アサヒグループHDがホールディングス化したのは2011年で、その頃は多少海外のビジネスも行っていましたが、97〜98%は国内ビジネスを占めていました。しかし、10年の間に海外における売り上げが約半分近くまで伸び、利益では国内よりも海外の利益が出るようになったといえます。

また、海外と国内を比較した場合、例えば人口動態1つにしても、世界的にはこれからも人口が増えていきます。一方、国内は縮小していくため、この全く違うビジネスを同じチームで行うのは難しいと考えるようになりました。

そして、国内は厳しい環境となっていくことがわかっています。その中で、ビジネスとどのように向き合っていくのかしっかり考えるチームとして作ったのがアサヒグループジャパンです。アサヒビール・アサヒ飲料・アサヒグループ食品という3つの大きな事業体とそれ以外の企業を含め、それらを束ねた「リージョナルヘッドクオーター」を作りました。

HD全体としては、ヨーロッパ・オセアニア・日本などを束ねています。HDの中に、アサヒグループジャパンがあります。それまではHDの中にValue Creation室がありましたが、アサヒグループジャパンになったタイミングで変更しました。これまでのValue Creation室は残したまま、全事業にデータ活用を浸透させるデータ活用推進組織を新たに作っています。

データをどう活用するかという視点は、新規ビジネス・すべてのビジネスに必要です。データ活用は、新規事業だけでなく、サプライチェーンや人事戦略など様々なところに影響を及ぼすためです。

草野 もともとValue Creation室の中にあった分析を担う部隊が独立したということですね。新規事業のためだけにデータ分析を使うわけではなく、既存事業にもデータ分析の活用が進むように新しく組織も分けたのでしょうか?

野村氏 様々な部署でデータ活用が必要だと応募をかけ、それに対し多くの人が手を挙げました。すぐに活用できるわけではないとしても、これだけのメンバーに影響するようなデータ活用の可能性があることから、そのような目線を持つ組織に変えなければなりません。

一方で、既存のシステムを破壊的に変えるソリューションが起きる可能性はいつでも考えておく、あるいは自分たちが起こす必要があります。そのため、新たなビジネスを生み出すチームは今まで通りしっかり残している形式です。

草野 新しい部署の名前は決まりましたか?

野村氏 DX統括部です。外から見ると「デジタル」しか見えないかもですが、このDには「デジタル」・「データ」・「ダイナミック」という意味合いが込められています。

データを活用することによりトランスフォーメーションを起こし、それが結果として「ベーシックなデジタルトランスフォーメーションと一体になるのではないか」と考えています。

草野 新しい体制では、「Food as a Service」というコンセプトを掲げられています。このサービスのイメージを伺ってもよろしいでしょうか?

野村氏 アサヒは酒類・飲料・食品などを「食品業界」メインで扱っています。そのうえで、現在は「Food as a Service」を掲げ、食を中心とし、何か価値を提供できないかと考えている状況です。

これまでは、メーカーとしてプロダクトを提供し、お客様に様々な楽しみ方をしていただくということをやっていました。しかし、デジタル化し、様々な形でデータを活用できるとなると、「プロダクトは主役・脇役どちらにもなれるものであり、主役を違うものに変えた方が良いことがあるかもしれない」と感じています。例えば、食を楽しんでいただくためのステージを作りつつ、そこに寄り添うものの中にお酒がある、ということも提案したいと思っていますね。

また、コロナなどで、「自分たちの体に対するケアの考え方」についても、大きく変わってきている状況にあります。その点では「健康」や「ウェルネス」をベースに、私たちが提供しているお酒・食事・飲料・サプリメントが「どのように皆様の健康を維持するためのツールになるか」について、ソリューション的に提案したいと考えています。

食を中心に私たちのプロダクトもありつつ、もっと違う新しい価値の提案ができないかと考えています。これはValue Creation室のコアとなる考え方です。その考え方を実現するために、「厳密に管理しつつ、お客様のデータを取り入れることで価値につなげ、新しい価値を提案できるか」という意識で取り組んでいきたいですね。

草野 企業を経営していると、社内コミュニケーションの機会について考えることは多いかと思います。一例ですが、リモートワークでくすぶっていた人間が同じプロジェクトを行った人たちと飲みに行き「頑張る気になりました!」と言ったケースもありますね。

人間は、膝を詰めて話す機会があるかないかで変わるため、食べ物やお酒、飲料は大事な要素だなと改めて実感しています。私も「新しい時代に対する食品分野の新しい位置づけがきっとある」と思っていることから、一消費者としても新しいサービスが出ることに期待しています。

では、DXの取り組みを進めるにあたって、「DX統括部」が統括しながら、データ活用やトランスフォーメーションを推進しているという動きになってきているのでしょうか?

野村氏 事業会社の3社はお客様と最も近いところで事業を行っており、各社ごとに様々な仕組みを作ろうとしています。また、顧客接点という意味では、顧客データを総合的に扱うCDPも持っていますが、事業を跨いで顧客データをどのように活かすかという点がなかなかできていませんでした。

現在はDX統括部の中のデータチームが各社のCDPをマージし、より活用できるような体制を作っています。顧客データだけでなく、各社のチームデータを1つにすることで「どこでどういうことが起こっているのか」がより見えてきました。

一般的にはコストというのは削るものだと思われています。しかし、投資に近い感覚で「コストをかけることで売上が伸びる」場合はかけるべきです。また、システム投資を行い、全体を束ねることで企業として伸びることもありますよね。そういった考え方を、今回の研修や経営側からのメッセージで持ってもらうことが非常に大事だと考えています。

そして、意識改革を社内で起こすためには、1つのプラットフォームの中に様々なものが入っており、そこからどうやってデータを引き出し、分析・活用しやすいような形にするのか、という点が大事なポイントです。この変革を今、まさに進めています。

草野 企業を強くし、「トランスフォームする・同じファクトを見るために、グループの中でできるだけデータを統合する方向で動いている」と感じました。並行してそのデータを利活用できる人材を研修教育で育てているということですね。全方位的に、手堅く進められていると感じます。

ブレインパッドはどう映る?

草野 パートナーとして選んでいただけたことは嬉しいのですが、アサヒからブレインパッドはどう映っているのでしょうか?

野村氏 クライアントへの向き合い方として、非常に刺激を受けています。「プロジェクトとして、前に進むためにやらなければならない」ことを率先して行っていただいているという印象です。

アサヒが足りないところや考え方がずれているところに向き合い、ただ否定するわけではなく、「よりベストな選択肢」や代替案を出していただいています。自分たちの想いだけで走ってしまわないように、上手くアクセルとブレーキを使い分けられる良きパートナーであると思っています。

今までは特にマーケティングのチームがお世話になっていますが、今後はおそらく様々な領域や全社的な底上げの部分でお力をいただくことになると思います。難しさも出てくると想定されますが、常にチャレンジしてそこに対して向き合っていくため、これからも共に課題解決していける関係で付き合っていきたいと感じますね。

奥園 我々も単純にお仕事をいただくという意識ではなく、共にアサヒのビジネスを課題解決していきたいと思っています。

草野 本質的なトランスフォーメーションの議論が進めば進むほど、答えのある世界ではなくなっていくものです。「お客様にとって、初めてトライするものに伴走する」という流れになっていくため、場合によっては1つ1つのプロジェクトが必ずしも「成功」とはいえないケースもでてくるでしょう。

DXの本質は「ビジネスのトランスフォーメーション」です。実現していくためには、「人自体を変えていく、人をトランスフォーメーションしないと成り立たない」といえます。

簡単な答えを求めるのではなく、組織の根幹に着手し、その結果として前進していくことが大切です。まだ始まったばかりではありますが、きっと大きく成功すると予想しております。ブレインパッドもそこに貢献できる企業でありたいと思います。

WRITER執筆者プロフィール

株式会社ブレインパッド

DOORS編集部

ブレインパッドのマーケティング本部が中心となり、主にDXにまつわるティップス記事を執筆。
また、ビジネス総合誌で実績十分のライター、AI、ディープラーニングへの知見が深いライターなど、外部クリエイターの協力も得て、様々な記事を制作中。

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