【インタビュー】130名超のデータサイエンティスト集団の人材マネジメント方法に迫る -前編

DX熱が高まる中で浮き彫りになるのが、人材マネジメントをどうするかという問題です。

特に、データサイエンティストに代表される専門人材は採用するにも、社内で育て上げるにも難しいのが実状。

そこで今回、ブレインパッド社内で130名を超えるデータサイエンティストの育成や案件のアサインメント含めたマネジメント全般を担当している池田裕章に、どのような考えと方法で人材マネジメントをし、データサイエンティストを「採用」「育成」「活性化」「組織化」しているのかについてのポイントを聞いてみました。

DX時代に求められるデータサイエンティストの3つのスキル軸とは

DOORS データサイエンティストには、どのようなスキルセットが必要なのでしょうか?

池田 データサイエンティストには、大きく3つのスキル軸があると考えます。

①基礎スキル
 分析、ビジネス、エンジニアリングに関する広い知識や技術

②専門スキル
 それぞれの技術分野における高度な専門性

③プロジェクト推進スキル
 経営や現場、ベンダーなど様々なステークホルダーを適切に調整しながらプロジェクトを管理し遂行する能力

DOORS それでは、それぞれのスキルについて順番に詳しく聞いていきたいと思います。

基礎スキル 〜基礎で「実践」を学ぶ~

DOORS まず1つ目の基礎スキルから。具体的にはどんなことができればいいのでしょうか。

池田 技術的なことでいえば、統計や機械学習の基礎知識、SQLやPythonなどのコーディングです。また分析の進め方や結果を専門でない方々にもわかりやすく説明する必要がありますので、ドキュメンテーションやプレゼンテーションのスキルも重要です。社会人ですから、ビジネスマナーももちろん必要となります。

お客様から、「専門的な能力が高いので、分析結果に対する満足度が高い」という声をいただく一方、「その分、専門性が高過ぎるため、分析結果の説明がわかりにくい」というご指摘をいただくこともあるので、データ分析実務を言語解釈するドキュメンテーションやプレゼンテーションのスキルアップは、特に重要だと考えています。

DOORS 「分析結果の説明がわかりにくい」というのは”あるある”ですね。実際にビジネスで活用してもらうために、プレゼンスキル向上は確かに重要になりますね。そうしたスキル向上のために、具体的にはどのような取り組みをしているのですか?

池田 弊社では新卒採用を始めてから10年以上経っています。その間、お客様に価値を与えられるような一人前のデータサイエンティストに最短距離で育ってもらうための教材やノウハウを社内独自で作成。毎年それをブラッシュアップして使っています。

DOORS ちょうどこの記事が掲載予定の4月は新卒社員が入ってくる時期です。データサイエンティストの「根っこを育てる」新人研修の期間やカリキュラムはどういったものですか?

池田 期間は3カ月です。最初の1カ月はビジネスマナーなどビジネスパーソンとしての基本的な知識を学びます。技術研修は残りの2カ月で、そのうち1カ月はプログラミングや基礎的な統計・機械学習の手法の学習が中心です。最後の1カ月が実践研修です。実際にお客様の現場にあるような課題を設定し、プロジェクトチームを組んで、解決してもらいます。

座学ではできたことが、実際にやってみるとできないということが往々にしてあるもので、それを体験し、解決することで得られるものがとても大きいのです。

DOORS 基礎スキルにおいて実践研修を行うのが興味深いです。ところで技術的な基礎を身につけた証明として、公的資格あるいはベンダー認定資格を活用している企業も多いのですが、ブレインパッドではどうなのでしょうか?

池田 ITに関して言えば、基本情報技術者試験程度の知識はあったほうがいいと考えますが、それよりもPythonやSQLを使いこなせるほうが短期的には重要です。あえて挙げるとしたら、統計検定や日本ディープラーニング協会のE資格などは実務の観点でも有用だと思います。

専門スキル ~技術共有・技術継承・学習モチベーション維持~

DOORS では、2番目の専門スキルについて教えてください。

池田 専門スキルについては、案件個別の状況に応じて必要になるアプローチに関する知識など、特定の領域の分析を実施する上で必要になる技術スキルと考えています。例えば、需要予測であれば個別の事業構造を考慮した上での予測精度向上に有効な特徴量の作り方や最適化であれば実務観点での制約条件を考慮した定式化やソルバーの計算時間を減らすための調整ノウハウなど、ビジネス課題を実務的に解くことを考えた際に必要となるスキルのことで、具体的な定義があるものというよりは各事業・技術領域に特化して必要になる知識や経験と考えています。これは短期間に習得可能というものではないですが、スキル向上という観点でいえば、技術共有、技術継承、学習モチベーション維持が重要ではないかと考えます。

DOORS 各プロジェクトを複数人で行っているからこそ、技術共有、技術継承、学習モチベーション維持に繋がるのでしょうか。

池田 はい。分析に関する実務は、個々人で作業するよりも複数人で相談・検討したほうが良い視点が生まれるので、2〜3人単位でプロジェクトを組むようにしています。また技術継承の話とも重なりますが、実際の案件では意識的にベテランと若手を組み合わせるようにしています。

また、最近はB2B(BrainPad to BrainPad)という取り組みがあります。これはG2G(Google to Google)にあやかったもので、発表したいことがある人が自由にオンラインで参加者を募って実施する社内の自発的な勉強会です。会社側からは、「グループごとに半年に1回は何か共有してください」という働きかけはしていますが、それに限らず多くの勉強会が社内で主体的に実施されています。

DOORS 確かに、積極的に共有、発信するデータサイエンティストが多いように思います。ただ、これはブレインパッドの社風もあるので、他の企業では難しいのでは?

池田 それは否定できませんが、データサイエンティストという職種は「勉強しないと変化についていけない」という面があります。本人にも危機感はあるでしょう。だから会社側で情報共有や勉強会の機会を作るということは非常に重要だと考えていますし、勉強会などを主体的に実施する人にポジティブな評価を与えることも必要になります。

DOORS これまでの話はあくまでブレインパッド社内ですが、こうした専門技術は社外、世界で日々進化しているものですよね。「客観的に」自分たちの専門技術スキルを知るようなことはしていますか?

池田 Kaggle(世界中の統計家やデータ分析家が課題に対して最適モデルを競い合うコンペ、およびその運営会社)を活用して、スキルアップを図る取り組みもしています。技術習得にもなるし、参加者のモチベーションも上がるのでお薦めの取り組みです。

DOORS ハイレベルですね。ただ、日々の業務もある中でKaggleに参加するとなるとハードルが高いという人も出てくるのでは?

池田 コンペに参加するとなると確かにハードルが上がりますし、業務と両立するというのは中々難しいです。ただ上位入賞者の手法が公開されているので、使われている手法やアプローチの考え方を学ぶだけでも大きな価値があります。コンペは精度を競うという性質上、現実的な制約や要件と異なる部分が多いので、そのまますぐに実務に使えるというものではないですが、、知っておくといざ使う必要があるときに役に立ちますし、データハンドリングや可視化の手法、効率的なモデルの構築の仕方、便利なパッケージの使い方など参考になる点も多いです。

DOORS B2B、Kaggle、いずれも相当な学習モチベーションがないといけないように思います。

池田 まず前提として組織全体が積極的にスキルアップを奨励しているという雰囲気を作るのが大切だと思います。会社側が公式に勉強のために時間を使うことを推奨し、主体的に情報共有や勉強会をしようとすることをポジティブに評価することで、所属するメンバーの多くが学習することの大切さを認識するようになると思います。そうすると勉強することが自然と言う空気ができますし、その状況でB2BやKaggleに関する取り組みなど学習が可能な機会を用意することで、個人や組織のスキルアップに貢献するような環境を作っています。それらがメンバーの学習モチベーションの維持に繋がると考えています。

DOORS ブレインパッドのような分析やデータサイエンスによる問題解決を専門としている企業にとっては、こうした技術的スキルの飽くなき向上は必要不可欠と考えますが、そうではない、いわばクライアント企業ではどうでしょうか。

池田 技術スキルが高いに越したことはありませんが、やはり「事業ドメインに関する専門性」のほうが重要ではないでしょうか。私たちももちろんクライアントの業界・業務知識の習得に努めていますが、クライアント企業の中のことはその会社の方にしかわかりません。その意味で、「自社のビジネスの構造を把握していること」が事業会社でのデータサイエンティストにはより求められていると思います。

DOORS ビジネスの構造とは?

池田 どういった因果関係の連鎖が最終的に売上につながっているのか、その中でコントロール可能なことは何で、それをどう動かすとどう変化するのかということです。ビジネスの構造がわかっていると、分析をビジネスに適用する際に、どのデータを見ればよいかが的確にわかります。課題解決のためには、どこの部署と話をすればよいかも判断できます。技術スキルが高くてもこの感覚がないと、成果に結びつかない無意味な分析をたくさん行ってしまうことになり、社内データサイエンティストとして自社のビジネスの成長に貢献できなくなるので、最も重視すべきものだと思います。

お話を伺った方

株式会社ブレインパッド
アナリティクス本部
アナリティクスサービス部 副部長
池田裕章

2011年にブレインパッドに入社。主にアドテクやデジタルマーケティングに関連する分析や機械学習を用いたシステム開発に関連するプロジェクトにおける分析パートのリーディングなどを担当。現在は受託分析部門の副部長としてマネジメント業務に従事。100名を超えるデータサイエンティストの育成やアサインを担う。

WRITER執筆者プロフィール

株式会社ブレインパッド

DOORS編集部

ブレインパッドのマーケティング本部が中心となり、主にDXにまつわるティップス記事を執筆。また、ビジネス総合誌で実績十分のライター、AI、ディープラーニングへの知見が深いライターなど、外部クリエイターの協力も得て、様々な記事を制作中。

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