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【座談会】DX人材育成のプロが語る~組織にデータサイエンスを根付かせるためには~ 後編

公開日
2021.05.20
更新日
2024.02.21

前編はこちら

リスキリングの意義などをより深く知りたい方はこちらもご覧ください。
なぜ今「リスキリング」が必要なのか?DX時代に生き残るための、人材育成の考え方と3つのステップ

講師は、「理系」「データサイエンス畑」出身?

編集部 データ活用人材の育成を支援する皆さんは、これまでどんな経歴をお持ちなのでしょうか。やはり、理系であったり、データサイエンス畑出身なのでしょうか。

摂待 総合調査会社、シンクタンク、インターネットリサーチ会社にて官公庁・民間企業向けの社会調査・マーケットリサーチの企画・分析業務に従事していて、2012年にブレインパッドに入社しました。 業界の中では数少ない文系出身ながら、社会人になってから一貫してデータ分析の仕事に関わってきました。

株式会社ブレインパッド
アナリティクス本部 データ活用人材育成サービス部
副部長 摂待 太崇

下村 大学では獣医学部に在席し、動物行動管理学の研究をしていました。獣医学部と聞くと理系人間と思われる方が多いでしょうが、個人的には文系的素養が高いと思っています。前職ではOLAPシステムの導入と運用支援に従事し、2015年にブレインパッドに入社しました。

小俣 20代は大学で音声認識の研究をして、人工知能に関する素養はそのときに身につけました。30代に入ってからは情報系専門学校の教員として、統計学、人工知能、機械学習などを教えていました。

編集部 文系、獣医学部、専門学校の教員と、多様なバックボーンですね。データサイエンス畑出身でない方もいますが、なぜ、データ分析が生業のブレインパッドにジョインしたのでしょうか?

下村 大学時代にデータを扱った研究活動をしていたので、社会人になっても続けたいと思っていました。そのような縁でIT系の企業に入社して、はじめは分析的機能も盛り込まれたOLAPツールを担当させてもらったのですが、今のようなデータ分析業務自体に直接関わる機会はありませんでした。 また「パッケージソフトの導入エンジニア」という立場からでは、データサイエンスの根幹に介入出来ないというジレンマを抱えていました。データサイエンスを核としたサービスを提供できる人材として成長したいという思いから、ブレインパッドに転職しました。

株式会社ブレインパッド
アナリティクス本部 データ活用人材育成サービス部
下村 麻由美

小俣 現実のデータを使って、業務として機械学習を実施しようとするとわからないことだらけだという話を色々なところから聞くようになりました。だったらこれからの時代、企業内のデータ活用人材育成のニーズがあるのではないかと思っていたときに、人づてにブレインパッドで人材育成サービス要員を必要としていると聞き、応募したのです。


組織にデータサイエンスが根付くポイント

編集部 そんな多様で興味深いバックボーンを持つ皆さんですが、ブレインパッドに入社し、様々な分析やデータ活用プロジェクトに従事し、そして講師として多くの受講者と対面する中で得た知見、経験を基に最後、これを聞かせてください。

組織にデータサイエンスが根付き、データ活用やDXが促進するために必要なことは何でしょうか。

摂待 マネージャー、現場スタッフと階層に応じて求められるレベルは違いますが、将来的にデータ活用に関する知識は全ての社員に求められてくると考えています。

従来のIT投資と比較して、データ分析、DXへの投資は、人材育成も含めて結果が出るまでに時間がかかります。よって全社員に統一的な知識やリテラシーが備わっていないと、組織的にDXを推進することは難しいです。

下村 河本薫さんの『会社を変える分析の力』(講談社)という書籍によれば、企業内のデータ活用促進に必要な3つの力があるとあります。

  1. ビジネス課題を「見つける力」
  2. 分析問題を「解く力」
  3. 分析結果を「使わせる力」

これらすべてをトップレベルで兼ね備えた人材はなかなかいないでしょう。

データ分析というと、2.の「解く力」に目が行きがちですが、実際に総合演習でチーム分けをしてもらうと、解く力に突出したチームよりも、3つの力のそれぞれ長けた人材がまんべんなく含まれていて、適切に役割分担されているチームが、最も良い発表をすることが多いのです。

社内にデータ分析を根付かせるためには、この3つの力を意識して、適材適所にバランス良く人材を配置することが重要ではないでしょうか。

編集部 「解く力」ばかりイメージしていましたが、それ以外の力も必要なのですね。

小俣 どの会社にもビジネス課題は必ずありますが、それを解決するのにデータ分析を使おうという気運がなければ、データ活用は始まらないのです。 中には、研修に社長や取締役が参加される会社もあります。これは非常にありがたいことで、社長や取締役が自分の目で、「こういうビジネス課題はデータ分析を使ってこのように解けるのか」ということがわかると、その会社にはデータ分析が定着することが多いのです。
トップが理解した上で、ビジネス課題を見つけるのはこの人、解くことができる人はこの人、できあがった施策を社内に展開するのはこの人と適材適所に配置できれば、データ分析がその会社に根付くのは時間の問題です。

経営層への啓蒙が大切と言われますが、本当にそうだと思います。

株式会社ブレインパッド
アナリティクス本部 データ活用人材育成サービス部
小俣 修一

編集部 多様な職種、人材が関わる必要があるということですね。そもそも、データ活用人材に向き、不向きはあるのでしょうか?

下村 私は自分自身を「文系的な素養が高い人間だ」と先ほど申し上げましたが、文系・理系での向き・不向きはないと考えています。3つの力で言えば、あくまで感覚的に申し上げますが、解く力は理系的で、見つける力と使わせる力は文系的だと言えるのではないでしょうか。

小俣 総合演習では、「データを用いて最もビジネスを良くするにはどうしたらいいか」という大きなテーマがあります。このテーマを達成するには、先ほど挙がった「3つの力」のすべてが必要ですが、3つの力を1人ですべて持ち合わせている人はまずいません。3つの力のどれかを持ち合わせている方がほとんどですから、チーム全体で3つの力を整えれば良いのです。それぞれ得意・不得意のある話ですから、データ活用人材として不向きな人はいないということになります。

結局は、組織にデータサイエンスが根付かないとDXは成功しない。
そのためには文系、理系問わず様々な方が「データ活用」に向けて意識を高めないといけないと言える。

編集部 自分は「理系だから」、「データ活用に向いていない」との理由で、敬遠する必要はないと感じました。私も講座を受講してみたくなりました(笑)。
DX推進において最大の課題とも言われる「人材育成」。単に知識を教えるのではなく、組織にデータサイエンスを根付かせることを目的に、皆さんが日頃何を意識しているかが聞けて良かったです。
ありがとうございました。

▼DXの定義や意味をより深く知りたい方はこちらもご覧ください
「DX=IT活用」ではない!正しく理解したいDX(デジタル・トランスフォーメーション)とは?意義と推進のポイント

DX人材に関しては下記の記事も是非ご覧ください。

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お話を伺った方

摂待 太崇
株式会社ブレインパッド
アナリティクス本部 データ活用人材育成サービス部 副部長

大学卒業後、総合調査会社、シンクタンク、インターネットリサーチ会社にて官公庁・民間企業向けの社会調査・マーケットリサーチの企画・分析業務に従事。

2012年にブレインパッド入社後は、データサイエンティストとして様々な業種・領域のデータ分析ならびにデータ利活用支援プロジェクトに従事。
その側らでクライアント企業内でのデータサイエンティスト部門の立ち上げや業務支援など人材育成・研修など、現場スタッフ育成業務の経験も持つ。 一般社団法人ウェブ解析士協会認定 上級ウェブ解析士、GAIQ、AdWords 認定資格を保有。

下村 麻由美
株式会社ブレインパッド
アナリティクス本部 データ活用人材育成サービス部

大学卒業後、多次元データベースをエンジンとしたOLAPシステムの導入・運用支援に従事。
2015年にブレインパッド入社後は、データサイエンティストとして、化粧品、EC通販、食料品メーカー、アパレルメーカーなど幅広い業種・領域のデータ分析ならびにデータ利活用支援プロジェクトに従事。
また前職で培った「仕組み化」の経験を活かし、データ活用高度化をエンジニア目線で設計から実装まで先導。 現在は、データ活用人材育成サービス部の専任講師として、主にデータエンジニア領域およびAIエンジニアを育成するためのプログラムの企画・提供業務に従事。

小俣 修一
株式会社ブレインパッド
アナリティクス本部 データ活用人材育成サービス部

大学院在学中は音声認識の研究に従事し、機械学習技術を用いた発音判定方法について論文を発表する。その後、情報系専門学校の教員として「統計学」「信号処理」「人工知能基礎」「機械学習」などの科目を新規開発し、多くの学生や教職員から好評を得る。また、人工知能ゼミを主催し学生の機械学習システム制作を指導、企業向け展示会や学内行事などで展示発表も行う。



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株式会社ブレインパッドについて

2004年の創業以来、「データ活用を通じて持続可能な未来をつくる」をミッションに掲げ、データの可能性をまっすぐに信じてきたブレインパッドは、データ活用を核としたDX実践経験により、あらゆる社会課題や業界、企業の課題解決に貢献してきました。 そのため、「DXの核心はデータ活用」にあり、日々蓄積されるデータをうまく活用し、データドリブン経営に舵を切ることであると私達は考えています。

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