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物流2024年問題とは?社会や運送業界への影響と対策法をわかりやすく解説

公開日
2023.10.23
更新日
2024.02.22

2024年問題とは「働き方改革関連法によって、自動車運転業務における時間外労働時間の上限が960時間に設定されることで生じる課題群」を指します

本記事ではこの2024年問題によって、消費者の日常生活や物流業界・運輸送業界の企業にどのような問題が生じることになるのかを掘り下げ、わかりやすく解説します。

あわせて「2024年問題の対応策」についても紹介するので、物流業界における業務改善の担当者やDX推進担当者の方々は特に参考になるはずです。

「物流2024年問題」とは?

2024年問題とは「働き方改革関連法によって、自動車運転が伴う業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることで生じる課題群」を指します

働き方改革関連法は2024年4月1日から適用されるため「2024年問題」と呼ばれるようになりました。

この「自動車運転」業務が指すものは主に、物流業界における「トラックドライバーの運転業務」が挙げられます。

働き方改革関連法における二つの法律改正

「働き方改革関連法」は、以下二つの法律改正を指します。

  1. 「自動車運転業務を対象とした時間外労働の上限規制(年960時間、休日労働を除く)の適用」
  2. 「労働者の拘束時間、休息時間、連続運転時間などについての新たな基準を設ける改正改善基準告示」

これらの変更により、トラックドライバーの稼働時間が短縮され、すでに深刻な人手不足がさらに悪化すると予測されています。

1.自動車運転業務を対象とした時間外労働の上限規制(年960時間)の適用

時間外労働の上限が年960時間までに制限されます。2024年3月まで、自動車運転者において時間外労働の上限規制は適用猶予されていますが、2024年4月以降、この猶予がなくなるのです。

さらに2023年7月現在、自動車運転者以外の一般労働者では、時間外労働の上限規制は年720時間となっています。将来的には自動車運転者もこの規制にのっとるといわれているため、時間外労働をさらに減らすための取り組みが必要です。

2.改正改善基準告示

さまざまな改正基準が告示されています。下に、その概要の一部を紹介します。

拘束時間:年間の総拘束時間が3,300時間、かつ、1カ月の拘束時間が284時間を超えないものとする。1日の拘束時間は15時間まで。(例外規定あり)

休息時間:継続9時間を下回らないものとする(例外規定あり)

連続運転時間:連続運転時間は4時間を超えないものとする(例外規定あり)

【参考】第2回 持続可能な物流の実現に向けた検討会 資料1 改善基準告示の見直しについて|厚生労働省 労働基準局 監督課

これによって、2024年(令和6年)4月からはトラックドライバーの稼働時間が短縮されると期待されています。

トラックドライバーの現状や長時間労働常態化の実態

トラックドライバーの現状を把握するために、求人倍率と年間所得額、年間労働時間について見ていきます。

有効求人倍率は2021年以降2倍前後が続いており、2022年6月時点では2.01倍となっています。これは全職業平均の1.09倍より高く、「人手不足」が続いていることが分かります

一方、年間所得額は総じて全産業平均より低くなっています

2021年で見ると、全産業の平均年間所得額が489万円であるのに対し、大型トラックドライバーは463万円、中小型トラックドライバーは431万円です。

また、年間労働時間は全産業平均と比較して400時間前後長くなっています

2021年時点で全産業平均年間労働時間が2,112時間である一方、大型トラックドライバーで2,544時間、中小型トラックドライバーで2,484時間です。

このようにもともとトラック運送業界は、長時間労働の常態化が注目されていました。

2021年に厚生労働省労働基準局監督課が実施した「自動車運転者の労働時間等に係る実態調査結果」によると、改正基準の上限ラインとなる年間総拘束時間3,300時間を超える企業が21.7%となっています。

また、年960時間(月80時間)の時間外労働を行った場合の拘束時間の目安となる月275時間以上となるのが、全体の33.7%を占めています。2020年の調査結果より改善傾向にあるものの、かなりの割合で法律が定める範囲に収まらない企業が存在することがわかっています。

トラック運送業界のこのような実態は働き方改革関連の議論でも認識されており、規制適用が猶予されてきた経緯があります。時間外労働の上限規制については、大企業では2019年から、中小企業では2020年からすでに施行されています。トラックやバス、タクシーを含む自動車運転業務では問題の是正には時間がかかると判断され、上限規制の適用が5年間猶予されていました。

しかし、規制適用の2024年が近づき、業界をはじめ荷主や消費者には、2024年問題を自分事ととして捉え、対策することが求められます。考えられる対策については、後の「2024年問題の対応策・解決策」でご説明します。

物流の2024年問題が社会や日常生活に与える影響

ここからは、2024年問題が社会や日常生活に与える影響について解説します。

2024年問題の影響は、必ずしもトラック運送業界だけにとどまるものではありません。運送を利用する荷主、さらには一般消費者も含め社会や日常生活に幅広く影響することが予想されているのです。

主に、以下4つの影響があると言えます。

影響1.運送業・物流業の売上・利益減少

2024年問題によって、トラック運送業や物流業における売上や利益の減少につながります。法改正によってドライバーの稼働時間が制限されるため、運送業者の輸送能力は必然的に低下するからです。

また時間外割増賃金率の引き上げにより、人件費が増加し、利益率がさらに圧迫される可能性があります。

このように、2024年問題は運送業界・物流業界に深刻な影響を及ぼしかねないと危惧されています。

影響2.トラックドライバーの労働時間&収入減少と人手不足の深刻化

運送業界や物流業界に属する企業はもちろん、そこで働くトラックドライバーにとっても収入の減少が予想されます。稼働時間が制限されるため、長時間労働による収入収入確保が難しくなるからです。

また、トラックドライバーの待遇低下は「既存のドライバーの離職」や「新たな人材の確保の難化」につながることにもなるので、人手不足がますます深刻化する可能性があります。

影響3.荷主の商品配送コスト上昇と利益の圧迫

2024年問題は荷主にも影響します。

トラック運送業界の稼働時間減少と人手不足により輸送能力が低下すると、業界の売上確保のために運送料金が値上げされると考えられます。そうなると荷主の商品配送コストが増加し、利益率が圧迫されます。

また、運送能力の低下は配送遅延を引き起こす可能性もあり、これによって顧客満足度の低下やビジネスチャンスの損失につながることも考えられます。

影響4.宅配サービスの利便性低下

2024年問題は、最終的に配送サービスを利用する一般消費者にも影響します。

トラック運送業界の輸送能力が低下すると、配送時間が長くなったり、配送の遅延が発生したりするかもしれません。その結果、消費者は商品を迅速に受け取ることが難しくなるでしょう。

私たちはよくamazonなどで翌日配送を利用していますが、これは運送企業やドライバーさんの努力があってこそ成り立つシステムです。2024年問題が加速することで、こういった迅速な配送が成り立たなくなってしまうかもしれません。

また、運送業者が配送コストを軽減するために、一部の地域への配送を制限したり、配送日数を減らしたりすることもありえます。これらの変化によって、サービスの利便性が低下する可能性が生じるのです。

2024年問題を遵守しないとどうなる?罰則の内容

時間外労働時間の上限規制を遵守しないと、労働基準法の罰則規定に基づき6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるとされています。また、改正改善基準告示は法律ではなく罰則規定はないものの、違反した場合は当局からの指導が行われるとされています。

参考:改善基準告示(令和6年4月1日適用) に関するQ&A

このような規定は、運送業者が法律を遵守し、労働者の健康と安全を確保するためのものです。違反が発覚すると、社会的信用の失墜をはじめ事業に大きなリスクを及ぼす可能性もあります。

したがって運送業者や荷主は、法律や規定を遵守して適切な労働環境を確保することが求められるのです。

2024年問題の対応策・解決策

2024年問題を解決するには、トラックドライバーが長時間労働をする構造的な要因に対応することが求められます。ここでは、DXやデータ活用をはじめ対応策についてご説明します。

DXやデータ活用による業務改革・業務時間削減

DXやデータ活用によって、稼働時間を減らしても輸送効率・業務効率の改善が図れます。2024年問題に対して、最も推奨したい対応策です。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、企業がデジタル技術を活用してビジネスプロセスやサービスを変革することを指します。データ活用は、ビッグデータやAIなどの技術を利用して、膨大なデータを分析し、意思決定やビジネス戦略の策定に役立てることです。

【関連記事】【図解】DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?意味・定義や事例を解説

運送業界や物流業界におけるDXやデータ活用の事例として、配送ルートの最適化が挙げられます。

配送ルートを検討する際に、データを用いて車両や配送順、経路などを計算し、可能な限り効率的なルートを作成することが必要です。経験者による勘や直感ではなく、客観的なデータを用いて最適なルートを計算することで、配送業務を効率化できます。

配送ルート最適化の具体的な事例として、ソフトバンク株式会社様が開発されたLP用ガス容器の配送最適化アプリケーションサービス「Routify」によるDX推進が挙げられます。

【参考】ブレインパッド、LPガス業界のDXを実現するソフトバンクの新サービス開発を支援

【関連記事】

この事例にも用いられていますが、物流業界におけるDX・業務改革の文脈ではよく、データサイエンティストによる「数理最適化」という技術が用いられます。数理最適化について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

【関連記事】
数理最適化とは?機械学習・AIとの違いやビジネス活用事例をわかりやすく解説
【社員が解説】データサイエンティストとは?仕事内容やAI・DX時代に必要なスキル

他にも、物流業界×DX・データ活用の文脈でブレインパッドでは「数理最適化」「需要予測」などに関連するさまざまな記事をご用意しています。2024年問題への解決策を模索されている方は、ぜひお読みいただけると幸いです。

【関連記事】

荷主と消費者に対する配慮の要請

厚生労働省では、労働基準監督署から荷主に次のような配慮を要請しています。

  • 長時間の恒常的な荷待ち時間を発生させないよう努めること。 
  • 運送業務の発注担当者に改善基準告示を周知すること。

【参考】改善基準告示の改正に伴い「荷主特別対策チーム」を編成しました

以上のように、トラック運送業者だけではなく、荷主や消費者が協力することで持続可能なサプライチェーンを構築する必要があります。

トラック運送業者による労務環境改善

長時間労働回避のためには、運送業者自らの取り組みも欠かせません。

業界団体である全日本トラック協会の資料によると、ドライバー不足や若年労働者不足への対応として以下が挙げられています。

  • ドライバーの待遇改善
  • 給与体系の見直し(全産業平均並の賃金の実現)
  • 週休2日制の導入、有給休暇の取得促進
  • キャリアパスの明示
  • 女性、高齢者に働きやすい職場づくり

働きやすい職場づくりに努めるとともに、労働者の意欲向上につながるような労務環境改善施策を確実に進めることが求められます。

【参考】第2回 持続可能な物流の実現に向けた検討会 トラック運送業界の2024年問題について|公益社団法人 全日本トラック協会

物流2024年問題の解決アプローチは「DX」

トラック運送業界では「2024年問題」が大きな課題になっていますが、この原因は現状の低賃金・長時間労働です。現在の状況を放置しておけば、人手不足がますます深刻化し、より難しい問題となるでしょう。

そこで解決策として、業務効率性を高めるためのテクノロジーおよびデータの活用です。DX推進によってサプライチェーンの生産性をアップさせることで、トラックドライバーが長時間労働しなくても輸送能力を低下させることなく便利な配送サービスを実現することができます。

ブレインパッドは、長年物流業界におけるDXおよびデータ活用による事業支援に取り組んでまいりました。2024年問題への対応を迫られる関係者の方は、ぜひ一度弊社にお問い合わせいただければ幸いです。

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