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【DX事例】社会インフラ課題をデータ活用で解決する、ソフトバンクの新サービス・「Routify」開発秘話~DOORS -BrainPad DX Conference- 2023 テーマ別 企業DX対談~

公開日
2023.06.19
更新日
2024.03.08

本記事では、LP用ガス容器の配送最適化アプリケーションサービス「Routify」によってDX推進をなされた「ソフトバンク様」のDX事例にまつわる、開発秘話や成功要因についてご紹介いたします。
アプリケーションによるDX推進や輸配送領域におけるDXについて興味がある方は、ぜひご覧ください。

※本対談は、2023年6月5日から6月16日にかけて開催された日本最大級DXオンラインイベント「DOORS-BrainPad DX Conference- 2023」で配信されたものです。他にも収録されたコンテンツがあるので、読んでみてください。

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▼本対談の登壇者一覧

※所属部署・役職は収録当時のものです。

Routifyとは

左からブレインパッド荻原、ブレインパッド内池、ソフトバンク円田氏、ソフトバンク川俣氏

ブレインパッド・萩原 匡勝(以下、荻原) 本日はソフトバンク様から、ソフトバンクの新サービス「”Routify”の開発秘話」というテーマでお話をうかがっていく予定です。

ソフトバンク様はLP用ガス容器の配送を最適化するサービス「Routify」を2022年の6月に開始しました。そしてブレインパッドは、本プロジェクトの開発パートナーとして配送最適化システムや業務アプリケーションの開発などをご支援させていただいている状況です。

本日はRoutifyにおける取り組みの全貌、どういった意思決定で進んでいったのかといった点から新しい可能性をどう開いていくのかという事例の一つとして、お話しさせていただきたいと思います。

また、ソフトバンクからデータユーティリゼーション円田さんおよびプロジェクトマネージャー川本さんにお越しいただいております。

ソフトバンク・円田 太一氏(以下、円田氏) ソフトバンクの法人事業統括でIoTデータ利活用事業を推進しているデータユーティリゼーション部所属の円田です。よろしくお願いいたします。

ソフトバンク・川俣 裕幸氏(以下、川俣氏) 同じくソフトバンクの川本と申します。私も円田さんと同じくソフトバンクの法人部門で業務を行っており、配送最適化サービス「Routify」におきましては、プロジェクトマネージャーとして携わらせていただいている状況です。本日はよろしくお願いいたします。

萩原 よろしくお願いいたします。ブレインパッドからは、本案件のアルゴリズム開発を担当したデータアナリストとして内池さんをお呼びしました。

ブレインパッド・内池 もえ(以下、内池) ブレインパッドの内池です。データサイエンティストという立場からクライアントに伴走し、データ活用に関する課題と日々向き合っています。直近は、機械学習数理最適化といった技術の社会実装もテーマとした案件でご支援させていただく機会が多く、「Routify」のプロジェクトもその1つです。本日はよろしくお願いいたします

では、改めて「Routify」のサービス概要についてお聞きしてもよろしいでしょうか?

円田氏 「Routify」はLPガス配送に特化したサービスです。2つのAIモデル(残留予測モデルと配送計画モデル)を一気通貫で提供することで、効率的な配送計画の提供を実現するサービスとなっています。

LPガスの小売りを担う1万社以上のLPガス配送会社をターゲットと考えており、小さい規模でも安心して利用可能なサービスです。そのため、中小規模の企業にも利用してもらいたいと考えております。

萩原 なぜソフトバンク様が「Routify」を構築されるに至ったのか、お聞きしてもよろしいでしょうか?社会的背景や課題、ソフトバンク様が取り組まれる意義も併せておうかがいできればと思います。

円田氏 ソフトバンクは通信事業をベースとして、サービスを提供しています。その上で、「Routify」の開発は、2019年からIoT機器向けの通信ボードをLPガススマートメーター向け通信ボードとして提供していることがきっかけです。

スマートメーターが広がることによって、遠隔監視・自動検診が可能になるため、これまで取れなかったデータというものが取れるようになってきました。そのデータを活用して業務のDXを目指すという取り組みをスタートすることになりました。

社会背景や課題に目を向けると、LPガス業界も他の業界と同様に将来的な人手不足が事業継続課題の一つと捉えられています。また、LPガス事業特性上、地方部に多く提供されており、他のインフラ事業に比べて発生確率が高い状況です。そのため、早期に取り組みを開始する必要があると業界内では考えられていますね。

加えて、LPガス配送業務にフォーカスすると、配送員の勘と経験による属人化が問題視されており、未経験者や経験の浅い方が配送した場合には効率が著しく低下する可能性があります。そのため、ソフトバンクは勘と経験をデータから導き出せないかという風に考え、「Routify」の取り組みを2020年から開始しました。

ソフトバンクは「企業・社会の課題をデジタルの力で解決する」ことを社会的意義と捉えております。今回のLPガス業界の取り組みに関しても、LPガス事業を継続し地方のインフラを支えるという社会的意義があることから、ソフトバンクが取り組むべき課題だと捉えていますね。

萩原 ソフトバンクは「Routify」以外でもソフトバンクのIoTとしてAI・データ分析での価値創出、ネットワークなど様々なサービスを提供していますよね。その中で、「Routify」の位置付けや存在価値みたいなものをどういうふうに捉えられていますか?

円田氏 IoTの活用が期待される分野はいくつかありまして、今回の「Routify」は交通インフラと社会インフラの両面に該当します。配送計画の出力は、交通インフラモビリティが目指す円滑で快適な移動の実現を可能とし、今後ナビゲーション連携や渋滞情報のリアルタイム連携などでさらなる効率化が進められるでしょう。

残量予測部分に関しては、「Routify」は現在、配送計画立案のために使われている部分が大きいとですが、今後はより社会インフラに近い需給バランスの予測というところでも活用しようと検討している最中です。

また、需給バランスの部分では、LPガスの仕入れ価格は為替や社会情勢に大きく影響を受けてしまう部分もあります。そのため、精度の高い需要と供給を予測することで、LPガスのコストをさらに削減できると想定しています。


開発ストーリー

萩原 「Routify」にはモデルがあり、九州大学との産学連携の共同研究から生まれたものというふうにお伺いしております。では、産学連携による共同開発や「Routify」を実際のモデルにしていく流れの中で、パートナーとしてどのように考えてブレインパッドを選択したのでしょうか。プロジェクトマネージャーを勤められていた川俣さんにお伺いできればと思います。

川俣氏 2019年には、ソフトバンクとしてスマートメーター事業をスタートさせていただきました。円田の方からも説明があったように、LPガススマートメーター向けの通信ボードを開発したことで、「今までは月に1回健診のデータを取っていたものが、日時で検診データを取得できる」世界に変わっています。

そのため、得られるデータを「ソフトバンクはどのように活用するのか」といった点を検討するようになりましたね。当時は、手探りの状態でスタートしましたが、LPガス業界の方々と様々なお話をさせていただく中で、「ガスボンベの配送業務に課題がある」ということを一つ発見しました。

そういった背景も踏まえて、ソフトバンクとして、「非効率な配送業務に対してどういった打ち手が打てるのか」という部分を考えました。ソフトバンクとしては、データ・AI・クラウドを使って解決していこうという形で「Routify」のプロジェクトがスタートしています。

元々「Routify」は、「ソフトバンクの内製で全てをやり抜く」と考えてはいました。しかし、ソフトバンクとしては自前だけではなく、様々なパートナーと手を取りたいという流れになっています。

その中で、産学連携として、九州大学の、日本の中でも数理研究の中では第一人者の藤沢先生のチームと連携することになりました。2020年の5月から共同研究がスタートし、この研究に関しては、九州大学とソフトバンク、(後述いたしますが)パートナーであるアイエスジー様と共に行いましたね。2021年の9月には、対外発表という形でPOC(概念実証)を行っていましたが、そこから先は主要サービスの検討・作成というような段階に入っています。

共同研究は「AIのアルゴリズムによって、残量予測モデルと配送計画モデルを九州大学に活用いただきながら、ソフトバンクがシステムとして実装していく」という形式でスタートし、研究自体は日本の中で世間的にも注目を集めるOR(オペレーションズ・リサーチ)学会でのプレゼンテーションもさせていただいています。OR学会は数理を用いて最適な解を導くORを推進する団体であり、非常に高いご興味をいただきながらプロジェクトをスタートしています。

また、並行して「開発パートナーを探したい」と考えていたため、ブレインパッドだけでなく、色んなお客様にお声がけさせていただきました。

パートナーに求めるもの

萩原 壮大なバックストーリーがあったことがうかがい知れました。リリースにつながるまでの動きも大変だったとイメージされますね。では、新しいパートナーを探すときにどういった思いを持っていたのかという点についてお話をおうかがいしてもよろしいでしょうか?

川俣氏 ブレインパッドに今回お声がけを行う時点ですでにPOC(概念実証)のフェーズに入っており、実フィールドにおける「Routify」の運用がスタートする一歩手前になっていました。そのため、「Routify」に対して「どのように商用サービスとして展開していくか」といった部分を考えていました。

その時点での「Routify」は、「ブラッシュアップしなければ、まだまだサービスとして顧客に届けられない」といった段階であったことから、パートナーには大きく3つの観点から検討していました。

  • 1つ目はサービスリリースまでスピード感を持って伴走していただけること
  • 2つ目が産学連携の時に開発した2つのAIモデルをうまく活用していただけること
  • 3つ目が開発はあくまでも手段であり、顧客の課題解決に共に尽力してくれること

特に3番目を重んじでいました。同じような志を持って動いてくれる企業を探していたという状況ですね。

ソフトバンクとしては新規事業であるため、新たなチャレンジになります。正直に言えば、その時点では分からない課題も多く、かなりの無理をお願いすることになる場面のあるのかなと考えていました。そういった意味で、「パートナーとして伴走していただけなければ、苦しい」と思っておりました。

そんな背景がある中でブレインパッドをパートナーとして選ばせていただいたのは、ブレインパッドの最大の強みである、AIの開発から社会実装までを含めた経験が豊富であるという点でした。加えて、ブレインパッドのプレゼンテーションの内容も社内的に非常に評判が良かったこともあって、「ブレインパッドと共にプロジェクトを行いたい」という声が社内から上がっていたのも大きかったです。

「Routify」、開発上の苦悩

萩原 無理を強いる可能性が高いというお話があったうえで、ここからはブレインパッドのデータサイエンティストとしてプロジェクトのモデル開発のリーダーである内池さんにお話しをおうかがいしていきます。

「Routify」の商用化を目指していくものの、スタートは産学連携から始まったことによってどのようなことがハードルとなり、どういった点が大変でしたか?

内池 先ほどの川俣さんのお話にもあったように、「Routify」のプロジェクトの始まりは産学連携の体制によるアルゴリズムの研究開発でした。そのため、商用化までの限られた時間の中で、アルゴリズムを「実用的」で「安定した状態」にし、「低コスト」で運用できるというレベルまで昇華させる必要がありました。大変だったのはこの3点に尽きると思います。

1つ目の「実用的」という部分ですが、実際のガス配送業務をより具体的に想定して必要な制約を漏れなく・正しく認識し、数式やプログラムに落とし込んでいく必要がありました。制約の内容は、例えば「この家庭には何月何日の何時に配送しなければならない」とか「何時までには各物件への配送全て終えて配送拠点に戻ってこなければならない」といったものです。

これらを全て数理最適化の言葉に翻訳していかなければならないという大変さがありました。

制約に関して、「本当にプログラムを書いて記述するべきなのか」といった見極めや「制約を絶対に満たさなければならないのか、それとも絶対ではなくできれば満たしたいのか」といった見極めを、現場の方々と議論に議論を重ねました。ガス事業者やソフトバンク様と何度も会話を重ねながら、少しずつブラッシュアップしていく必要がありましたね。

そして2番目の「安定」に関してですが「Routify」は毎日の配送に使っていただくサービスです。そのため、現場で使用できる配送計画を夜間の限られた時間の中で必ず得られなければなりません。

しかし、配送最適化の問題は、数理的にも計算量が非常に膨大となる「組み合わせ爆発」を起こしやすい分野です。そのため、実際に一般的な数理最適化の枠組みで時間内に安定して最適な解を得るのは非常に困難でした。

そこで発想を変え、❝ベスト❞な計画ではなく❝ベター❞な計画を良しとして、試行錯誤を繰り返し、最終的には実用的な解が安定して得られるようになりました。技術面で最もチャレンジしたポイントですね。

最後3つ目の「低コストで運用できるようにする」についてですが、「Routify」は「新たなガス配送業務を広く浸透させていくことで、社会のあり方を一つアップデートする」といった役割があると認識しています。

その役割から、業務のあり方そのものを再定義した上で「Routify」の導入を進めていく必要があります。そこで10社・20社と導入企業が増えてきた時にコストが10倍20倍という風に跳ね上がるのではなく、限界費用を抑えていく必要があります。

そのような前提があるため、アルゴリズム面の工夫でしたり、新たな発想がたくさん要求されたりしましたね。「実用的で安定していて、低コストで運用できる」といった課題をクリアし、「社会インフラといえる役割を担えるようにしなければ商用化できない」という苦労やハードルをたくさん乗り越えてきました。

萩原 研究段階から実用段階に進むまでには、多くのハードルがあったことがイメージできました。川俣さん、実際リリースまでの過程はいかがでしたか?

川俣氏 はい、苦労しかしていないです(笑)。ただ、2020年の6月30日に商用リリースできたのはブレインパッドとの取り組みとして成功だったと実感しています。内池さんもおっしゃっていましたが途中で何度も困難にぶち当たりましたし、そのたびに「解決できないのではないか」という不安もあったと思います。

しかしそういった場面で、パートナーとして真正面から取り組んでいただいた部分は非常に良かったですね。

また、ソフトバンクは通信キャリアであることから、キャリア品質という高いハードルを設けた上で世の中にサービスをお届けします。今回は、AIのモデル・システム・運用の3つがトータルで基準を満たしていないとリリースできないという条件がありました。一つでも欠けてしまった場合、顧客にサービスを提供した時の影響が出てしまうことから、妥協という意味での取捨選択も行いましたね。

先ほど、内池さんのベストよりもベターだというお話しから、最適な落とし込みができ、ようやくリリースを迎えられたといえるでしょう。

また、理想はサービスであるため、必ず存在するものの、その理想だけを追い求めても到達しきれません。ソフトバンクとしては、「ミッションイシュードリブン」を意識し、目標を少し落としてでもリリースを達成するという目的も必要でした。

現場のメンバーの方々に関しては、連日連夜、膝を突き合わせてというような形ではなかったものの、オンラインが中心のコミュニケーションであってもお互いの信頼関係ができていた状態でした。

全てが順風満帆だったというふうには言えません。しかし、元々持っていた目的を見失わずにパートナーとしてゴールを迎えられたのは良かったです。


「予測」「最適化」を社会実装するために

萩原 「Routify」は、LPガスの配送最適化を実現するサービスであるため、LPガスについて限定したサービスというふうにも聞こえます。しかし、本サービスで行っている機械学習モデルで「何かを予測していく」「予測結果を用いて数理最適化していく」ことは今後々なシーンで活用されていくと予想されるでしょう。

これらが今後社会実装までにたどり着くために今回のプロジェクトの学びを踏まえて何を重視すべきか、何が必要なのかという点を川俣さんからお伺いできますでしょうか?

川俣氏 非常に難しい話題ですよね。「Routify」自体は日本のアナログをデジタルに変えるというコンセプトのサービスです。日本全体を見渡した時に、まだまだアナログな業界や企業、業務といったものは多く存在するというふうに捉えています。その状態をソフトバンクとしては変えていきたいです。

どのように変えるのかといった部分では、アプローチ方法は色々あるとしても、アナログからいきなりDXの実現を行うことは難しいと思います。そのため、アナログいわゆる紙で行っている業務があれば、デジタル・スマートフォンに置き換えてみることがファーストステップですね。

そして、デジタルになったものであれば、デジタイゼーションとして業務に落とし込むことでセカンドステップを実現する。そしてサードステップとして、DXを実現することで新しい価値を見つける、というような「一歩ずつ進んでいく意識」が必要だと思いますね。。

人によっては、「サービスを入れたらDXが実現できるのでは?」と言われますが、それだけではDXの実現はできません。そのため、「どういう風にすればいいのかといった点をよく考える」ことが重要ですね。

例えば、ソフトバンクもサービスを導入した場合、「すぐにこういった結果が出ます」とお伝えしたいとは思います。しかし、「なぜ入れければならないのか?」となった場合には、KGIやKPIを事前に合意した上でゴール設定を共に行なわなければなりません。また、顧客のみで運用を行うわけでなく、伴走が必要です。根気強く進んでいくことが重要だと考えています。

萩原 続いて、内池さんにも今後社会実装までにたどり着くために今回のプロジェクトの学びを踏まえて何を重視すべきか、何が必要なのかをお聞きしてもよろしいでしょうか?

内池 1つ目として、私も川俣さんのお話でもあった通り、作って終わりというわけにはいかないと思います。そのため、方法論としてはトライ&エラーを繰り返して、ブラッシュアップしていくことが非常に重要だと考えています。

例えば、業務を数式に落とし込んでいくという作業は非常にシビアなものです。そのため、簡易的に作り、できたものに対して現場から意見をいただいて改善していくといったサイクルを何度も繰り返していかなければなりません。そういったサイクルの中でこそ、価値のある実際に使えるものが生まれ、新たな発見をすることも可能になると考えています。

2つ目はマインドです。「業務のシステム化をするのではなく、業務のあり方を再定義する」といった気持ちで取り組んでいくことが重要ではないかと考えています。言い換えると、「次世代の標準は我々が作っていくのだ」という意思表示が必要不可欠なのではないでしょうか。

3つ目は、誰に対しても優しい取り組みにすることです。例えば、「Routify」は、「コストやエネルギーが削減でき、現場のスタッフの支えにもなる。使用することで社会課題を解決し得る」といった三方よしの精神が非常に重要です。実際に、「みんなにとって嬉しいものでなければ、社会実装を名乗れるほど浸透していかない」といえます。

萩原 今回のプロジェクトでは、配送業務の配属コストの高さや、従事されてる方々の高齢化などの社会課題をデータ活用で解決するというお話をうかがってまいりました。

しかし、社会課題には様々なものがあり、「デジタル・AIが何か解決してくれるんじゃないか」と期待はなかなか大きいと想定されます。そうした社会的な要請に対して、私たちはどのように応えていけばいいのかというところについてお話をうかがいたいなと思います。では、川俣さんからお答えいただけますでしょうか?

川俣氏 顧客や業界の課題や正しい本質を理解することが最も重要です。課題に対しては、一つだけではなく複数の打ち手を用意・試行錯誤し、その中で見つかった正解があれば深掘りするということが必要かと思います。これは当たり前のことではあるものの、当たり前をやり続けることが最も難しいんですよね。

また、「Routify」の配送業務に関しても、先ほど内池さんも言っていた「未来を自分たちが作っていくんだ」という強い意思を持つことが大切です。しかし、一人では実行が難しいため、プロジェクトメンバーとして共に動くことに期待しています。

萩原 内池さんはいかがでしょうか?

内池 「Routify」のプロジェクトはまさに社会課題をデータ活用で解決する取り組みでした。私たちの仕事の一つひとつが積み重なり、次の社会を作っていくと私は思っています。そのため、「Routify」の取り組みに対して今の気持ちを徹底して継続していくことが第一歩ですね。

そして、横を見れば社会課題は他にもたくさんあります。解決のニーズがある課題を見極め、「Routify」と同じように「データを起点にして一つひとつ解決していく」ことが民間企業の役割です。ブレインパッドが掲げている「データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる」というミッションそのものですね。

業界全体を上げて志を共にするソフトバンクのような仲間を持ち、社会をアップデートしていきたいです。

萩原 最後に円田さんも、お話おうかがいできますでしょうか?

円田氏 今、お二方が言われたことが全てですね。データ利活用は、「使う側と使われる側の双方がいいね・便利だね」とならない限り有用なサービスであっても広がっていきません。

そういった意味では、今回のLPガス配送は事業者のデータを使う側であれば、コスト削減や事業継続の課題解決が可能です。また、使われる側の安定供給や小売価格の維持の課題解決にも繋がっているため、評価される可能性が高いと想定しています。

またソフトバンクは、産学官連携・共創のデータ連携基盤の構築を目指しています。しかし、そういったデータの活用は一歩間違えばプライバシーの侵害といったよからぬ結果を招いてしまうケースも想定されます。そうならないためにも、データを使う側・使われる側を意識しながら社会をより良くしていくための活動を行っていきたいですね。

データ活用の未来

萩原 ここからは、「Routify」の今後の方向性やサービスの戦略についておうかがいできますでしょうか?

円田氏 まずは、LPガス配送業務に対して「便利・効果的に使ってもらうアップデート」を行うことが大切だと思っています。モデルの精度の向上・UIの改善も必要です。まだまだ配送員の方には使いづらいと言われるような点もあり、改善の余地があります。

また、多くの事業者様からは「システム面に対して、こうしてほしい」といったような要望もあるため、様々な業務に対応できるようにしていく予定です。

LPガスである程度実績を作った後は、同じように残量を予測して配送するという他商材の業務改善に取り組みながら、もっと広いモビリティ最適化に繋げるつもりです。

萩原 LPガスの領域で広げていき、他商材についても広がりが期待できるということですね。

ではソフトバンク様とデータ活用というテーマについて、どういった未来が拓けていくと考えていますか?

円田氏 ソフトバンクとして、最も重要になってくる点は、「産官学が一体となって共創したデータ活用基盤を作っていく」ことですね。データを一箇所に集め、ある程度活用できる状態にした後で、LINEやYahoo・PayPayといったユーザーとの直接の接点になりうるサービスを通じて、業界内だけでなく、業界の利用者に対しても価値あるサービスを提供していければと考えています。

萩原 データ活用の伴奏パートナーとしてブレインパッドはどのように写っていますか?

円田氏 難しい社会課題へ挑戦していく中で、ソフトバンクにはないケイパビリティ(企業全体の組織的な能力)を持っていると感じています。高度な技術者がいるということも含めて、共にビジネスを作り上げるために必要な経験がブレインパッドの中にあると思っています。そういった意味で、データ活用分野のブレインパッドのこれまで培った勘と経験は、今回のプロジェクトで発揮してもらっているといえるでしょう。

萩原 高い評価をいただいているようで安心いたしました。

さて、あっという間に終わりの時間になってきました。ここまでの様々なお話をおうかがいし、世の中にはまだまだ社会課題と言えるような歪みや慣習は残っていると感じます。今回のテーマである輸配送領域(ロジスティクス領域)はその一例に過ぎないことも改めて実感しました。そういった中で「データ利活用」を文字通り社会実装するためには、地道な・リアルな挑戦が重要であると分からせられた気がします。「データやAIが仕事を奪う」なんていうこともよく言われてきてはいますが、まだまだその段階には及んでおらず、データ利活用の余地は大きいと言えるでしょう。

スーパーコンピューター一つで全て実装が成されるようなDXではなく、「DX」という言葉からは想像がつかないようなアナログな挑戦の繰り返しが、DX化には必要なのかもしれないですね。

本日はどうもありがとうございました。


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株式会社ブレインパッドについて

2004年の創業以来、「データ活用を通じて持続可能な未来をつくる」をミッションに掲げ、データの可能性をまっすぐに信じてきたブレインパッドは、データ活用を核としたDX実践経験により、あらゆる社会課題や業界、企業の課題解決に貢献してきました。 そのため、「DXの核心はデータ活用」にあり、日々蓄積されるデータをうまく活用し、データドリブン経営に舵を切ることであると私達は考えています。

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