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【後編】130名超のデータサイエンティスト集団の人材マネジメント方法に迫る

公開日
2021.04.09
更新日
2024.02.22

リスキリングの意義などをより深く知りたい方はこちらもご覧ください。
なぜ今「リスキリング」が必要なのか?DX時代に生き残るための、人材育成の考え方と3つのステップ

プロジェクト推進スキルの向上するために

前編はこちら

DOORS 基礎と専門スキルを備えているだけで十分、一線級のデータサイエンティストのように思いますが、必要スキル3番目に挙げていた「プロジェクト推進スキル」について教えてください。

池田 外部のプロジェクトマネジメント研修やドキュメント(提案書や報告書の書き方)研修なども実施していますが、それだけで身につくものではありません。プロジェクトを実施する中で身につけることのほうがはるかに大きいと思います。プロジェクトマネジメントに関しても技術共有と技術継承を大切にしており、先ほど話した1人プロジェクトにしないこと、ベテランと組ませることというのは、プロジェクト推進スキルの向上にも通じることです。

DOORS 先輩から後輩にプロジェクトマネジメントの方法とノウハウを伝えるということですね。これに関して工夫していることはありますか。

池田 PM(プロジェクトマネージャー)としての経験が浅い人にいきなりプロジェクトを任すのではなく、ベテランのPMをサポートに付けて案件を何度か経験してからPMとして独り立ちしてもらうということを徹底しており、ある種の仕組みとしています。

DOORS その仕組みのねらいは?

池田 メンバーからPMに上がる際には、必要とされる知識も求められる役割や責任も大きく変化します。いきなり明日からPMをやれと言われても、きっちりできる人は少ないでしょう。そこで「PMになるための準備期間」を明確に設けているのです。また第三者視点からのアドバイスではなく、同じ案件に携わっており言語化しにくい部分も含めて共有できているベテランのPMが、的確なアドバイスやサポートを行ってくれることで、一人で問題を抱え込むことがなくなり、責任も分担され、PMとしてのストレスを半減できます。

DOORS これはクライアント企業でもすぐに取り組めそうなことですね。ところで世間ではPMP試験やプロジェクトマネージャー試験のようなPM認定試験やPMBOKのようなプロジェクトマネジメント標準があります。こういうものを活用していますか?

池田 プロジェクトマネジメントの体系は重要で、学んで習得する必要はもちろんあります。WBSでタスクを整理して、QCD(Quality/Cost/Delivery)をしっかり管理するなど取り入れている部分もありますが、分析プロジェクトは結果に応じて方針を頻繁に変更する必要があり、アジャイル開発に近いところがあるので、全面的に活用しているわけではありません。PMBOKでもアジャイルについて言及されてきましたが、実務への適用ということではまだ体系的に整理されているものではないと感じます。またクライアントによってもプロジェクトの進め方はそれぞれで、しかも3カ月から半年程度で完了するものが多いので、きっちりした体系に則って進めるより、都度その状況に応じて最適なやり方を考えながらプロジェクトを実施するほうが現実的だと個人的に思います。

データサイエンティストにとっても、プロジェクトマネジメントの体系を学ぶことは重要。

自己啓発のモチベーションを維持する方法とは?

DOORS データサイエンティストに必要なスキルの概要とブレインパッドでの人材マネジメント方法はわかりました。クライアント企業にも参考になる部分は多かったと思います。3つのスキルを挙げてくれましたが、個別ではなく全体で共通する考え方や方法論はありますか?

池田 ブレインパッドの分析部門としては、モチベーション管理とレビュー体制の工夫でデータサイエンティストの育成を支援しています。

DOORS まずモチベーション管理から教えてください。

池田 新卒で入社したデータサイエンティストの多くは大学や大学院でデータサイエンスを学んできた人たちで、入社時点では研究者的な考え方をしている人も多いです。もちろんそれは悪くないですが、いわゆるビジネス的な思考に馴染みがなかったり、重要性を意識していない人も少なくありません。そのような人たちに、ビジネスとしてデータサイエンスを実践するからには、ビジネスとしての結果やインパクトを出してこそ価値が認められるということをまずしっかりと伝えるところから始めます。

そこでまず案件を通して、実務としての分析の考え方を身に付けていただき、その上で自分のキャリアとして向かいたい方向性を見つけられるように促していきます。そのためには個々人がどのようなキャリアイメージを持っているかを聞くことが大切ですし、その上で会社として何を身に付けて欲しいかを伝えることが大切で、その上で互いに納得する仕事をしっかり見極めてプロジェクトのアサインをするようにしています。

もちろん先ほども述べたように学ぶことへのモチベーションは元々高い人が多いので、勉強の場や機会を積極的に作ってあげることもモチベーションの向上に繋がりますが、アサインの意図や身に付けて欲しい能力、達成して欲しい成果をしっかり伝えるということはやはり重要で、期待していることを丁寧にきちんと伝え、成果を出させるための支援を続けていれば、本人にとって良い方向に成長していくのではないかと考えます。

DOORS 研究者的な思考からビジネス的な思考への変化は重要ですね。モチベーション維持のためにはやはり、配置ローテーションも必要ですよね?

池田 はい。特定の業務だけを続けていると対応力や柔軟性がつきにくいこともあり、ローテーションは積極的にやっています。もちろん本人の希望を聞きながらですが。

DOORS 一般企業の場合、データサイエンティストはDX推進室のような少数精鋭の部署に配置されることが多いと思います。そのような場合、そもそもローテーションって、何なのでしょうね・・・?

池田 もちろん多くの企業において社員の仕事のローテーションが簡単にできるわけではないと思います。とは言え、ある程度以上の規模の会社でDXを検討する際は色々な部署や関係者と調整して、様々な課題に取り組む必要があります。そこで同種のテーマをずっと同じ人に担当して貰うのではなく、タイミングを見て交代し、別の課題に取り組むということを検討することも本人のスキルの幅を広げると考えることができると思います。

DOORS なるほど。自分がローテーションしなくても仕事がローテーションしていくという考え方もあるのですね。また、レビュー体制をどうしているのかも教えてください。

池田 ブレインパッドの分析サービス部門では、品質管理の専門スタッフがいて、各プロジェクトに1人ずつレビュアーとしてアサインしています。レビュアーはプロジェクト発足以前の提案段階からアサインしていて、提案やクライアントへの報告時や納品時など要所要所のタイミングでPMのアウトプットを確認したり、アドバイスを行います。

DOORS レビュアーをアサインするねらいは何ですか?

池田 主な目的はプロジェクトの品質の担保ですが、PMの負荷や負担を軽減するというねらいもあります。プロジェクトは基本的にPMが責任を持って推進するわけですが、場合によっては意図せずにリスクや負荷が高い選択をしていたり、より妥当な選択があるのではと不安を感じていることがあります。そこに相談相手ができることで、視野が広がることと、責任が分担されることでPMの負荷も軽くなることが期待できます。レビュアーは様々なプロジェクトに関与しているため、他のプロジェクトの成功のポイントや要因、逆に言うとどんなところで躓きやすいかも数多く知識としてとして知っているので、方針を確認する役割を担っています。もちろん場合によってはPMと意見がぶつかることもありますが、議論することはクオリティを上げる上で重要なことだと思うので、結果としてプロジェクト全体のリスクは低減できると考えています。

ブレインパッドがクライアント企業にできるご支援について

DOORS これから社内データサイエンティスト部門を立ち上げたい企業や、立ち上げたが人材育成がうまくいっていない企業にブレインパッドができる支援があるとすれば何ですか?

池田 お客様が登りたい山の高さや登り方、またお客様のスタンスや考え方、保有するリソースなどによってご提案内容は変わってくるかと思いますが、大きく3つのことができるのではないかと考えます。

1つ目は企業内にDX人材やデータサイエンティスト、データ活用人材を育成するための企業研修です。データサイエンス部門を立ち上げるにあたって、分析の基礎はあるが実地経験がないという方々に対して、お客様のご要望に合わせてカスタイマイズした研修と実習を提供するものです。こちらに関しては、10年以上に渡り新卒からデータサイエンティストを育ててきたブレインパッドのノウハウ・エッセンスが詰まっているため、多くの企業様からご好評をいただいています。

2つ目はアドバイザリー支援です。クライアント企業にブレインパッドのデータサイエンティストが週に数回程度訪問して、クライアント企業内の社内データサイエンティストが行っている分析に対してアドバイスするというもので、クライアントの分析組織が自走して分析できるようサポートしております。

3つ目はプロジェクトを通じたスキルトランスファーです。プロジェクトはいくつものステップで実施されることが多いのですが、その第1ステップではブレインパッドがプロジェクトをリードして分析を実施します。その際にドキュメントや仕組みを整え、クライアント側でも分析が進められるよう、分析の方法やプロジェクトの進め方含めてお伝えいたします。

DOORS データサイエンティストの人材マネジメント方法について多くの示唆をいただけたと思います。最後に読者の方へメッセージがあれば。

池田 個人的にはデータサイエンティストの育成を通して、データを活用した効率的な意思決定が可能になり、働く人がみな生産的な活動に従事できるようになれば、これ以上の喜びはありません。終わりのない取り組みではありますが、私たちもお客様の成長に負けないよう努力を続けてまいりますので、社会にインパクトを残すような仕事をこれからも一緒にやっていければと願っています。

お話を伺った方

株式会社ブレインパッド
アナリティクス本部
アナリティクスサービス部 副部長
池田裕章

2011年にブレインパッドに入社。主にアドテクやデジタルマーケティングに関連する分析や機械学習を用いたシステム開発に関連するプロジェクトにおける分析パートのリーディングなどを担当。現在は受託分析部門の副部長としてマネジメント業務に従事。100名を超えるデータサイエンティストの育成やアサインを担う。

DX人材やデータサイエンティスト、データ活用人材を育成に関する記事

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「DX=IT活用」ではない!正しく理解したいDX(デジタル・トランスフォーメーション)とは?意義と推進のポイント

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2004年の創業以来、「データ活用を通じて持続可能な未来をつくる」をミッションに掲げ、データの可能性をまっすぐに信じてきたブレインパッドは、データ活用を核としたDX実践経験により、あらゆる社会課題や業界、企業の課題解決に貢献してきました。 そのため、「DXの核心はデータ活用」にあり、日々蓄積されるデータをうまく活用し、データドリブン経営に舵を切ることであると私達は考えています。

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