日本企業のDXはどこまで進んだ?
電通デジタルのレポートから見る「データ利活用の現状」

[執筆者]
DOORS編集部

近年ビジネスにおけるキーワードの一つとして浮上したのが、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。さらに2020年には新型コロナウイルスの感染拡大に伴ってビジネスのあり方が大きく変化し、デジタル技術がより存在感を増す結果となりました。

そこで今回は、2020年9月に実施された電通デジタルの調査結果を基に、日本企業のDXの現状とデータ利活用の課題についてまとめます。同年6月に成立した改正個人情報保護法に対する意識についてもご説明します。

日本のDXの最先端は?取り組み状況と成果

多くの企業がコロナ禍の影響を受ける中で、DX推進の現状や課題はどうなっているのでしょうか。まずは、取り組み状況と成果についてご紹介します。

大半の企業がDXに着手済

DXに着手している(計画策定中から完了済みまで含める)企業は、全体の74%にのぼっています。2018年度の63%、2019年度の70%と比べても微増傾向にあり、より多くの企業がDXに関心を寄せていることが伺えます。

注力している領域の中で多いのは、「ビジネスモデルの変革進化」「デジタル時代に対応する事業ドメインへの進化変革」「業務プロセスや業務システムの先進化」の3つとなっています。DXを起点として、ビジネスの変革を求める企業が増えていると考えられます。

なお、50%の企業が新型コロナウイルスの感染拡大によって取り組みが「加速した」と回答していました。中でも「DXによる業務の効率化・生産性の向上の取り組み」「短期的な既存事業・サービスに対するDXの取り組み」「中長期的なビジネスモデルの根本的な変革に向けた取り組み」の3つに対する回答が多いようです。リモートワークなどを含め、コロナ禍に対する働き方や事業を変化させる短期的な取り組みと、中長期的なビジネス変革を求める取り組みの両方を進める動きが多いと考えられます。

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DXの成果は限定的?

取り組みの成果として、「非常に成果が出ている」「ある程度の成果が出ている」「取り組んだ一部に成果が出ている」を合わせると48%となっており、成果を感じる企業は決して少なくないことが分かりました。

ただし、「非常に~」と「ある程度の~」の2つに限ると20%であり、ビジネス変革という大きな目標を成し遂げているのはあまり多くないと考えられます。あくまで限定的な成果が目立つという結果となっています。

領域別に見ると、「デジタル全社戦略の策定と実行」「IT基盤の構築やソリューションの導入」の2つで成果を出した企業が多いようです。しかし「イノベーション文化」「顧客体験向上」が下位となっていることを踏まえると、顧客に実感してもらえるような価値を創出できている企業はまだ多くないことが伺えます。

DX推進の障壁はどこに

DX推進の障壁として、「デジタルやテクノロジーに関するスキルや人材の不足」「投資コスト」「新しい業務プロセスの設計や実行力不足」が多く選ばれていました。2020年度の調査では人材不足が始めてトップとなっており、DXに関わる人材の確保や育成が重要な課題となっていることが分かりました。

DXを担う人材・組織構築の課題

前述の通り、人材不足に課題を感じる企業が多くあります。調査では、人材について掘り下げて聞いているため、その結果についても整理してみましょう。

育成の仕組み作りは未だ手探り

人材課題の具体的な内容として、「自社内で育成を担える人材がいない」がトップに挙げられていました。「自社内で育成するための教育プログラムや教育機会が乏しい」「知識、経験がある即戦力を外部から採用したいが、なかなか良い人材に出会えない」という回答も多くなっています。

これらの結果を踏まえると、デジタル人材の確保や育成の仕組み構築が、DXの加速・継続をより左右していくことになると推測されます。また、電通デジタルは、人材確保・育成の優先順位が高まったことで、ビジネスサイドと人事サイドの連携がより重要になると解説しています。

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未だにビジネス部門・IT部門の連携は困難

電通デジタルでは部門間連携についても課題意識を持っており、DX推進ではビジネスサイドの描くビジョンや業務プロセスを汲んだ形でシステムやツールの選定を行ったり、開発や運用を行ったりすることが必須であると述べています。その一方で、組織の壁がまだまだ高いことを示す結果も出ています。

ビジネス部門とIT部門の連携における課題として、「システム/ソフトが複数・多岐にわたり、連携が難しい」「ITとビジネスサイドの意思疎通が図れない」とデータ連携やチーム連携自体の難しさを挙げる声が多くなっています。

この点を踏まえて、電通デジタルは新たな組織・業務プロセスの設計を推奨しています。現状の組織・現場の取り組みだけでは限界があるため、経営層を巻き込んだ上でチームや業務の刷新を目指した方がDXの成功可能性が高まりそうです。

データ利活用における改正個人情報保護法のインパクト

当レポートでは、トピックスとして改正個人情報保護法の成立を取り上げています。最後に、データ利活用の検討に際して避けては通れない改正個人情報保護法の内容と対応についてご説明します。

改正個人情報保護法とは?概要と施行日

改正個人情報保護法は、2020年に成立しました。改正法の施行は一部を除いて公布後2年以内とされており、2022年の4月頃(春)には全面的に施行される予定です。

改正ポイントは多岐にわたりますが、例えば「個人データの第三者提供記録が本人による開示請求対象に含まれるようになった」「情報漏えい等が発覚した場合には個人情報保護委員会への報告および本人への通知が義務となる」など、個人データの取り扱いに関わるルールが大きく変更されています。

また、データの利活用に関わるルールの変更も大きなトピックです。個人情報を加工して個人を特定できない情報(仮名加工情報)について、旧法では個人情報に該当していたのが、改正法では事業者の義務が緩和され、前述の開示請求対象や漏えい等発覚時の報告義務対象から外れることになります。

以上のように、データ利活用に関わるルールが変更されることから、DX推進に際しても十分に内容を理解しながら進めることが必要となります。大きな影響を受ける企業も少なからず存在すると考えられます。

企業活動へのインパクトは未だ理解薄?

今回の調査では、改正個人情報保護法についての設問も含まれています。同法への課題について、「現場社員の法律の理解不足」が最も多くの回答を集めました。電通デジタルは、この結果を基に「まだ改正法のインパクトに関する理解が進んでおらず、課題として十分認識されていない」と述べています。

個人情報保護委員会によってQ&Aやガイドラインが整備されていくとはいえ、今の段階から情報収集と社内周知を進める必要がありそうです。

法対応にも部署連携が重要に

改正個人情報保護法の対応部署として、IT部門・総務部門・法務部門といったバックオフィス部門が多く挙げられました。マーケティング部門・営業部門・事業企画部門は下位であり、事業部門の対応の必要性は薄いと考えられているようです。

電通デジタルはこの点を問題視しており、バックオフィス部門と事業部門の両者の連携が重要であると述べています。DX推進と並行して法対応を進めるためには、バックオフィスだけではなく事業部門での活用を見据えた対応策の策定が求められます。

まとめ

今回の調査結果からは、DXに取り組んではいるものの、大きな成果を挙げている日本企業が多くないことが分かります。また、DX人材および人材育成の仕組みの不足が大きな課題となっている現状も理解できます。データ利活用に関連して、改正個人情報保護法への対応も今後推進することが必要です。

DXに際しては、システムのみならず人と組織の再構築・育成の仕組み作りが必要不可欠です。新型コロナウイルスの感染拡大への対応も必要ですが、中長期的な視点でDXを推進・拡大させるための鍵が人材・組織の整備と言えそうです。

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(参考)

電通デジタル「日本企業のデジタルトランスフォーメーション調査2020年版」
個人情報保護法委員会「令和2年 改正個人情報保護法について」

WRITER執筆者プロフィール

株式会社ブレインパッド

DOORS編集部

ブレインパッドのマーケティング本部が中心となり、主にDXにまつわるティップス記事を執筆。また、ビジネス総合誌で実績十分のライター、AI、ディープラーニングへの知見が深いライターなど、外部クリエイターの協力も得て、様々な記事を制作中。

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